業務提携とは、2社以上の独立した企業が互いの経営資源を出し合い協力体制を築くことを指します。
単独では達成が難しい課題を解決して、競争力向上や事業展開を図ることが期待できる施策です。
とはいえ、提携する分野や目的は様々であり、企業間の関係等で多種多様な業務提携のスタイルが存在します。
そこで、それぞれの提携のスタイルに応じた契約を締結しなければいけません。
この記事では、業務提携の特徴と種類から、メリット・デメリットや業務提携契約の流れについて解説をします。
- 業務提携は他社と協力して事業拡大や販売網の拡大を図る方法である。
- 業務提携には主に3つの種類がある。
- 業務提携では、提携する両者にメリットがある。
- 業務提携による情報漏洩などのリスクがある。
- 業務提携は、提携方法によって契約条項も変わる。
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こちらでは、業務提携の手法と目的について解説をします。
- 業務提携とは
- 業務提携と資本提携の違い
- 業務提携と業務委託の違い
- 業務提携の目的
業務提携とは
業務提携とは、企業間の資本移動を伴わない提携です。
2社以上の企業が共同で事業を行い、互いの資金・技術・人材等の経営資源を提供します。
その結果、シナジー効果を得ることで事業競争力の強化が図れます。
主に下記の様な提携が挙げられます。
技術提携:ライセンス契約・共同開発契約等を結び技術利用する
生産提携:製造委託契約等を締結、製品を生産する
販売提携:販売店契約・代理店契約・OEM(自社ブランド製品の製造の委託等)契約を結び商品販売する
業務提携の種類については後述します。
業務提携と資本提携の違い
業務提携も資本提携も他社の経営資源を利用し、自社の経営資源を補う手法です。
しかし業務提携と資本提携には、相手方企業の事業または経営権の取得を求めるか否かに違いがあります。
業務提携の場合は、他社の株式・経営の取得までは行わず、柔軟で緩やかな協力関係を築きます。
その意味では対等関係が維持できる手法と言えます。
資本提携の場合は、他社の経営資源を自社で取得または支配下に置くこととなります。
つまり事業提携は、経営資源を他社に残しつつ自社でも利用する方法となり、提携したい当事者双方に心理的な抵抗が少ないやり方と言えます。
業務提携は両者が対等な関係を維持できる提携方法となる。
資本提携は、経営資源を取得する事で提携先を配下に置く方法となる。
業務提携と業務委託の違い
業務提携は協力しながらシナジー効果を得ることになりますが、業務委託はある業務を完全に委託する方法です。
つまり、一方の会社の事業を他社へまる投げするのが業務委託です。
その分、委託した企業は他の作業へ集中できることになります。
ただし、受託した企業が完全に作業をすることとなり、その分責任も大きくなっていきます。
また、委託した企業の描いた理想通りの業務の成果とは、程遠い結果となることも考えられます。
まる投げに不安があるのなら、やはり業務提携で自社も事業に携わることが大切です。
業務提携は自社も事業に加わる方法であるが、業務委託は完全に事業を提携先に任せる方法となる。
理想の成果とかけ離れるリスクもある。
業務提携の目的
業務提携の主な目的は下記の様になっています。
- 提携当事者同士が生産能力の強化を目指したい
- 互いの販売網や人材
- ブランドを有効利用したい
- 互いの技術を開発・製造に役立てたい
業務提携を有意義に進めるなら、提携内容を当事者同士がよく話し合いながら決めて、契約書に細かく明記することが大切です。
また、提携契約を進める前に、提携を考えている相手企業の信用力も見極めておくことも必要となります。
他社と力を合わせる手法は非常に有効ですが、提携先とトラブルが頻繁に発生してはシナジー効果など期待できない状況となります。
提携前に、提携内容や信用が出来る提携相手なのかを十分に検討しておきましょう。
業務提携前に、提携内容や提携相手の信用力などを見極めも重要になる。
業務提携の種類
こちらでは、技術提携・生産提携・販売提携等の特徴について解説します。
- 技術提携
- 生産提携
- 販売提携
- その他の提携
技術提携
技術提携とは、他社の技術を自社開発・製造へ役立てるための業務提携です。
一般的に、ライセンス契約・共同技術開発といった形態で提携が進められます。
- ライセンス契約:知的財産権保有者が、その保有者から許諾を受けた人に対し、契約条件下で自由に使用することを認める契約。技術はあるものの商品開発力・販売力を持たない企業が、収益確保のためこの提携を望む場合は多い。
- 共同技術開発契約:複数当事者が、特定の技術や製品の研究開発を分担、協力するために締結される契約。
特に提携当事者の独自技術や研究開発の過程で得られた技術・データ等の漏洩には注意するべきです。
提携の際は、秘密保持の徹底が明記された契約内容を結ぶことも大切です。
技術の開発などを共同で行うため、技術・データの流失・漏洩に注意が必要になる。
生産提携
生産提携とは、提携の相手方に対し生産の一部・製造工程の一部を委託することで、生産能力を拡充する業務提携です。
「製造委託契約」の形で約束事を取り交わします。
製造委託契約では、提携により製造する製品の仕様・品質レベルや、原材料をどうするのか、製造数量・対価・検収方法等を細かく決めます。
生産提携の場合、日常的な品質管理・欠陥が生じると責任等の問題になる恐れも出てきます。
書面に契約内容をしっかり明記して双方が合意しましょう。
そうすれば、不当な製品受領の拒否や返品、対価減額や支払遅延の発生、委託者の地位濫用でトラブルに発展する事態を回避することができます。
生産に関する業務提携となるため、品質管理なども必要になるが、生産性の向上が見込める業務提携である。
販売提携
販売提携とは、他社の販売網や人材、ブランドの使用を行うための業務提携です。
次の4種類の形態があります。
- 販売店契約:販売店が自己の名前・責任で、仕入れた商品を指定されたテリトリー内で再販売、在庫リスクを負担する契約。個別契約が基本で、共通して適用することが可能な一般条件を予め決めれば、供給元とで取引を安定的・効率的に行える。
- 代理店契約:代理店がメーカーの代理として、商品販売を行う契約。メーカー側の商品を代理店が扱う権限の範囲も明確に決めることが重要。
- OEM契約:受託者であるメーカーが、委託者である販売店の商標で販売する製品製造を受託する契約。具体的には、他社の製造する製品に自社商標・ロゴ等をつけ、製造・販売する仕組み。
- ODM契約:受託者であるメーカーが開発から設計・生産までの流れを行った製品製造を委託者である販売店が自分のブランドなどで販売する仕組み。OEM契約より販売提携の色が強い。
- フランチャイズ契約:特定の商品・サービスの提供で独占的権利を有する親企業が、加盟店に対し、一定地域内での独占的販売権を与える契約。一方、加盟店は特約料を支払うことになる。
その他の提携
その他、さまざまな業種の企業で広く活用されている提携としては、材料の仕入れ提携、原材料の調達提携もあげられます。
これらの提携では規模のメリットが期待できます。
1社だけで仕入れると高価になりがちでも、複数の企業が提携して仕入れれば、大口の顧客として扱われ、材料単価の下がるケースがあります。
技術の共有・開発の他、このようにコストを抑える工夫として、業務提携が活用される場合も多いのです。
仕入れなどの原材料へのコスト削減の方法としても、業務提携が行われている。
業務提携のメリット・デメリット
こちらでは、業務提携のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
業務提携のメリット
業務提携を行うなら、コスト削減だけではなく、互いの独立性は高く維持され機動的な運用が期待できます。
業務提携のメリットは各種類によって次の効果があげられます。
- 技術提携のメリット
- 生産提携のメリット
- 販売提携のメリット
技術提携のメリット
技術提携は、主力事業に属する技術ならば業界内のシェアを高めることへ役立ちます。
逆に、自社では活用度の低い知的財産権・物的資源でも、それらを提携企業へ活用させることで収入を得ることができます。
提供を受けて技術利用する企業の場合は、研究開発費用の削減や新製品開発サイクルの短縮等のメリットがあります。
共同技術開発ならば、各自のリソース(資源)を持ち寄ることで技術力がアップして、1社だけでは難しい新規開発が可能になる効果も期待できます。
業界内のシェアを高めることや、技術提供による収益が見込める。
新事業へのコスト削減や技術力向上が見込める。
生産提携のメリット
生産を委託する企業としては、自社生産よりも低いコストで製品在庫を揃えられることができます。
その分、販売事業・新製品等の開発に力を注ぐことができます。
また、たとえ生産能力を欠いた企業でも、委託先から製品供給されるので、自社ブランドの構築・拡充も可能です。
一方、生産を受託する企業としては、生産規模の維持・拡大から生産余力の効率的な活用が期待できます。
その他、大手企業の有名ブランドの製品製造を通し、ノウハウや実績の蓄積が得られます。
生産に関するコスト削減や新事業・新商品の開発へ資金を回せる。
生産に関する効率が上がる事や、ノウハウを得られることが出来る。
販売提携のメリット
製品を供給する企業の場合、自社に不足している販売力を補い製品販路や認知度を拡大することが可能です。
一方、供給を受けて販売する企業としては、優先的・独占的な販売権を得られるので、安定的な販売・営業活動の展開ができます。
着実に売上・実績を積み上げることが期待されます。
販売力の強化や製品の認知度拡大に期待が出来る。
安定的な販売・営業活動が出来る事で、収益の安定化が目指せる。
業務提携のデメリット
業務提携はメリットばかりなく、次の事態をよく考慮する必要があります。
- 情報漏洩のリスク
- 関係の希薄化・自然消滅もあり得る?
情報漏洩のリスク
業務提携を締結後は、互いの経営資源・内部情報を相互に公開することになります。
そのため、自社の独自技術・ノウハウが提携以外の目的で悪用されてしまうリスクや情報が外部に流出してしまうリスクもあります。
たとえ、わざとでなくても、ご自身の会社が提携先の技術を盗用する形になる場合や、提携先の秘匿するべき情報を誤って流出させる事態になっては一大事です。
このようなリスクを防ぐため、秘密保持契約の締結・情報管理体制の構築の徹底が求められます。
契約違反となる事項の明確に線引き、秘密情報や事業メンバーの行動についての厳格な管理が必要不可欠です。
提携企業との間で情報共有をすることで、互いの技術・ノウハウ・情報が漏洩するリスクがあるため、秘密保持契約を締結する必要がある。
関係の希薄化・自然消滅もあり得る?
どちらかが、相手方の傘下に入るというわけではない業務提携の場合、比較的身軽な契約といえることでしょう。
しかしながら、逆に提携関係が親密になるどころか、時間が経てば希薄化しやすい側面もあります。
もしも、業務提携の担当者が異動した場合、提携関係も希薄化、自然消滅に向かう事態もあるのです。
そのため、異動する担当者が新しく業務提携を担当する人へ、提携の内容・現状を正しく伝え、滞ることがないように配慮する必要もあります。
時間が経てば、提携関係が薄れる可能性もあることから、担当者だけではなく企業どうして提携に関するケアをしておかなければいけない。
業務提携の契約条項と契約の流れ
こちらでは、業務提携の契約条項や契約の流れと注意点について解説します。
業務提携の契約条項
業務提携の契約条項で定めるべき内容は、提携の種類によって多少異なります。
こちらでは、前述した技術提携・生産提携・販売提携ごとの特有の条項などを紹介します。
技術提携の契約条項
技術提携の場合には、7項目ほど検討するべき条項があります。
- 提携の範囲・用途
- 独占性
- 使用料
- 技術に関する保証
- 特許・商標の有効性に関する保証
- 改良技術の条件
- 秘密保持・流用防止
(1)提携の範囲・用途
特許等、公に登録された技術のライセンスならば、登録内容により技術の範囲を特定します。
ノウハウのライセンスなら、その内容を契約書へ具体的に明記し特定します。
また、共同技術開発の場合、開発対象・目的を限定します。
こちらを明記すれば、技術の範囲をある程度絞り込めて、不本意な情報提供を求められるような事態は避けられることでしょう。
(2)独占性
ライセンス契約の場合、使用権は独占的にするか否かを明記します。
独占的使用権を与えた方が使用する側は歓迎することでしょう。
しかし、非独占的使用権にとどめれば、選択肢の幅広がりリスクも低減できます。
独占的使用権を与えなければ相手方が納得しないようならば、ロイヤリティの支払いを求めることで利害調整するのも良い方法です。
(3)使用料
下記のどの使用料を活用するかを明記する。
- イニシャルペイメント:頭金を支払う方法
- ランサムペイメント:契約期間中の使用料を一括で支払う方法
- ランニングロイヤリティ:ライセンスされた技術で生み出された製品の製造数量・売上高で課金する方法
- ミニマムロイヤリティ:最低限のライセンス収入確保する方法
また、それぞれの金額なども明記する。
(4)技術に関する保証
互いの技術に関する保証の範囲を明確にします。
(5)特許・商標の有効性に関する保証
特許権・商標権に関する保証を明確にします。
(6)改良技術の条件
改良技術の扱いを明記し、何らかの義務を規定して制限も加えます。
(7)秘密保持・流用防止
秘密が漏洩しないよう適切な情報管理を明記し、場合によって第三者との共同研究開発の制限も盛り込む必要があります。
生産提携の契約条項
生産提携の場合には、5項目ほど検討するべき条項があります。
- 受発注の方法等
- 生産方法
- 商標表示方法
- 品質保証
- ユーザーからの苦情対応
(1)受発注の方法等
当事者の受発注の方法はもちろん、価格の算定基準や協議方法、最低発注数量、分割納入・納期前納入、納期遅延が生じた場合の処理方法、代金の支払い方法等を具体的に明記します。
(2)生産方法
原材料の種類・品質、製品の仕様・図面・製造工程等を明記します。
原材料・生産方法の細目の変化も考慮する必要があるでしょう。
(3)商標表示方法
製品に発注者の商標・ブランド名を表示するならば、表示場所・サイズ・カラー等を契約書に明記します。
(4)品質保証
生産した製品の品質基準・納入時の検品方法・保証期間・保証内容に反した場合の対応を明記します。
(5)ユーザーからの苦情対応
ユーザーが欠陥に気づきクレームを入れたり、製品の使用によって損害が発生し訴訟を起こされたりした場合の、互いの協力義務・賠償責任の分担に関する規定を盛り込みます。
販売提携の契約条項
販売提携の場合には、5項目ほど検討するべき条項があります。
- 販売権
- 最低取引数量
- 形式
- 販売促進
- 競業避止義務
(1)販売権
独占的販売を認めるか、それとも非独占的な販売権にとどめるかを決めます。
また、必要に応じて販売を許可する地域、最低取引数量等の設定も盛り込みます。
(2)最低取引数量
期間を区切り最低取引数量も設定します。
ペナルティ(契約解除、損害賠償請求等)の明記はできますが、過剰に厳しい内容であれば契約締結は難しくなります。
(3)形式
前述した販売店契約・代理店契約・OEM契約・フランチャイズ契約、いずれの形式で行うか明記します。
(4)販売促進
販売促進の方法、コスト負担の割合、ノウハウ・人員の提供等を検討して、条項として盛り込みます。
(5)競業避止義務
「競合製品は取り扱わない」という義務を盛り込むことも検討します。
ただし、制約内容が不当な拘束条件とみなされると、独占禁止法違反となるリスクはあります。
業務提携の契約の流れ
業務提携は概ね次のような手順で進められます。
- 提携先を決める
- 提携内容を決める
- 相互の利益や費用、役割分担を決める
- 業務提携契約書を取り交わす
第1段階|提携先を決める
自社の業務提携の目的を明確にして目的に合った提携先を探します。
効率的な探し方については後述します。
第2段階|提携内容を決める
目的に合い、かつ交渉に乗ってくれそうな相手方が見つかったら、提携内容を決定・調整していきます。
提携の種類によって検討する内容は前述した通りです。
第3段階|相互の利益や費用、役割分担を決める
互いに公平な内容となるよう、しっかりと時間をかけて交渉し、双方の納得できる利益配分・費用負担・役割分担をまとめます。
第4段階|業務提携契約書を取り交わす
提携内容が定まったら、業務提携契約書を作成・契約を締結します。
業務提携の注意点
業務提携は、契約書内に提携企業間の協力体制の構築の明記が必要です。
しかし、将来的に担当者が異動する可能性、業務提携を解消するケースがあることも念頭において、契約を話し合う必要があります。
提携を解消してしまうと、在庫・雇用の扱い、費用・損失の負担等をめぐって利害対立が起きるおそれもあります。
とくに当事者の一方が、自社の都合のみで解消を要求すると、交渉が難航し訴訟に発展するケースは少なくありません。
そのため、どんなケースになれば業務提携解消となるか、解消後の対応について契約書へ明記しておいた方が無難です。
業務提携の解消条件や解消時の対応などもしっかりと決めておく必要がある。
業務提携の成功事例とポイント
こちらでは、成功事例・成功のポイントを4つに分けて紹介します。
- 国内企業の業務提携をした事例
- 国内企業の技術提携契約をした事例
- 海外企業の業務提携の事例
- 海外企業の業務提携の事例
国内企業の業務提携をした事例
新しい生活様式の拡大を見据えて、物流に関する戦略的な業務提携をした事例です。
- 当事者:楽天グループ+日本郵便
- 目的:物流事業の強化
業務提携の背景
もともと楽天グループと日本郵便は、物流事業での協業を行っていいたものの、「新型コロナ・ウィルス」による国内・国外が大混乱の最中、両社は新しい生活様式の拡大を意識しました。
そこで、現在の協業をより強化して、物流に関する戦略的な業務提携の締結へ基本合意書を取り交わしました。
成功のポイント・成果
もともと早い段階から物流事業で協業していたこともあり、物流強化の共通した目的を持ち、業務提携を行っても双方に目立った支障の無かったことが成功のポイントです。
この業務提携により、共同の物流拠点の構築・共同の配送システム、受取サービスの構築等が図られることになります。
さらに、この事業を推進するのが2社出資の合弁会社「JP楽天ロジスティクス株式会社」です。
将来的には、他のEC事業者・物流事業者へもプラットフォームへの参加を促進して、オープンなプラットフォームの構築をめざすとしています。
国内企業の技術提携契約をした事例
無人決済型コンビニエンスストアの実用化を目指すための技術提携契約をした事例です。
- 当事者:株式会社ファミリーマート+株式会社TOUCH TO GO社
- 目的:無人決済・無人オーダーシステムの実現
業務提携の背景
短時間で買い物を済ませることができる利便性、省人化による店舗オペレーションコストの低減を目指すファミリーマートは、無人決済・無人オーダーシステムの実現を模索していました。
そこで、無人決済店舗システムを開発した、TOUCH TO GO社に目を付け技術提携契約を締結しました。
成功のポイント・成果
コンビニエンスストアは、もともと慢性的な人手不足で、省人化による店舗オペレーションコストを抑えることは、どのコンビニエンスストアでも課題と言えます。
ファミリーマートが、この課題の解決に先んじて動いたことは、成功のポイントと言えるでしょう。
利用者は商品を持って決済端末の前に行き、表示された商品リストを確認して支払いを行えば購入完了という簡単なシステムが話題となりました。
無人決済システムを活用した実用化店舗第1号店は、東京都千代田区に2021年3月31日にオープン、利用者からこの便利さが好評を得ています。
海外企業の業務提携の事例
海外でプライベートブランド商品の販売に乗り出すべく業務提携をした事例です。
- 当事者:スギホールディングス+大樹医薬
- 目的:販売提携と技術提携
業務提携の背景
調剤薬局併設ドラッグストア「スギ薬局」を展開するスギホールディングスは、プライベートブランド商品の海外販売に注力したいと考えていました。
そこで、台湾の大手ドラッグストアチェーン企業である大樹医薬に目を付け業務提携を結びました。
成功のポイント・成果
この業務提携で、自社プライベートブランドの販売権・商標使用権は大樹医薬に提供されたものの、それだけではありません。
スギ薬局の商品の陳列・販売方法、店舗オペレーション等のノウハウの共有、人材交流について進めていくことを決めたのも成功のポイントでしょう。
つまり、販売提携を中心としつつ、ノウハウの共有という技術提携の側面も合わせた提携内容と言えます。
海外企業の業務提携の事例
新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を推し進めるべく、海外のバイオテクノロジー企業と業務提携をした事例です。
- 当事者:武田薬品+米Novavax社、武田薬品+米Moderna社
- 目的:ワクチンの供給の加速
業務提携の背景
日本国内の新型コロナウイルスによる大混乱へ対応するため、ワクチンの大規模な製造・販売を行うことを目指した武田薬品は、2020年8月に米Novavax社、新型コロナワクチン製造技術の使用権を取得しました。
その後11月には米Moderna社とも提携し、同社から5,000万回分のワクチンの供給を受けて製造販売が行われる予定です。
成功のポイント・成果
武田薬品は製薬業国内最大手であり、世界をリードする他企業と連携しつつ、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を推し進めてきました。
また、開発が順調なインフルエンザワクチンと同じ製造技術、アジュバント(補助剤)を使っていることも、提携成功のポイントです。
武田薬品は山口県光市の工場に生産設備を整えつつ、厚生労働省から301億円の助成金を活用し、日本国内向けのワクチンの開発と製造、流通を行うことが予定されています。
事業/会社売却の相手を探す!業務提携で頼りになる専門家は?
こちらでは、業務提携を支援する専門家について解説しましょう。
業務提携に参加した経験のある弁護士等
業務提携では、様々な権利関係が焦点となってきます。
後々、独自の技術等の漏洩や、法的なトラブルとならないよう、契約書は法律のプロのアドバイスのもとで作成した方が良いでしょう。
その場合は、弁護士の助力を得ることが有効な手段となり、業務提携に参加したことのある弁護士へ依頼した方が良いでしょう。
ただし、業務提携の交渉全般をサポートしてくれるわけではないので、その点は注意が必要です。
業務提携での支援をしたことがあるかどうかは、弁護士事務所のホームページを見れば一目瞭然です。
業務提携に関する内容が明記されていたら、その領域に経験豊かな弁護士と言えるはずです。
業務提携では、様々な権利関係が生じることから、契約書の作成は業務提携を経験している弁護士に相談するのが良い。
また、業務提携全般をサポートしてくれるわけではない点には注意が必要。
業務提携全般のサポートならM&A専門仲介会社
業務提携は、M&Aのような企業買収といえないものの、M&Aを専門に扱う仲介会社がサポートしてくれる場合も多いです。
◎そもそもM&Aとは?という方はこちらもあわせてお読みください。
M&Aとは?M&Aの基本・やり方をわかりやすく解説!メリットや注意点・成功事例も
それこそ、事前相談~クロージングまでトータル的に支援しくれる仲介会社がほとんどです。
特にM&A専門の仲介会社なら、マッチングサイトへ登録すれば、業務提携を希望する相手方も紹介してくれるケースがあります。
M&Aでないからと考えず、M&A専門の仲介会社に業務提携を支援してもらえるか相談してみましょう。
まずはM&A専門の各仲介会社のホームページを確認し、どんなサービスを得られるのかチェックすることが大切です。
業務提携でも、M&A仲介会社が全面的なサポートをしてくれる場合が多い。
業務提携によくある質問
こちらでは、業務提携でよくある2つの質問を取り上げます。
秘密保持を徹底するためにはどうすれば良い?
秘密保持を徹底するためには、業務提携契約書に秘密保持を徹底する記載は必要ですが、交渉前に「秘密保持契約書」を取り交わすことが望ましいです。
なぜなら、交渉中も当事者の独自の技術・秘匿すべき事柄を開示する必要も出てくるからです。
秘密保持契約書は次のような内容となります。
- 契約の目的:業務提携で秘密を守るという目的を明記
- 秘密保持の範囲:業務提携の際の秘密保持の範囲を確定
- 秘密保持義務:義務の内容を明記
- 目的外使用禁止:目的の達成以外の使用を禁止について明記
- 損害賠償・差し止め:契約に違反した場合の用の差し止め請求・損害賠償請求等を明記
- 複製禁止:得た情報を複製する制限も盛り込む
- 情報の返還・破棄
- 契約期間
- 反社会的勢力の廃除:契約の相手方が暴力団等の「反社会的勢力」でないことを確認する条項も入れる。
いわゆる「努力義務」というわけではなく、差し止め請求・損害賠償請求等も定めるので、この契約の締結は「拘束力」を有します。
締結後は双方とも誠実な対応が求められます。
業務提携を効率的に実行するコツとは?
業務提携を円滑に遂行するため、提携企業同士が業務スケジュールを的確に共有、合同ミーティング等で随時情報交換を行うことが大切です。
残念ながら、最近の「新型コロナウイルス感染症」の拡大で、当事者が直に顔を合わせることは難しくなっています。
しかし、リモートでの意見交換を多用して、双方の意見の違い等を調整していくことが大切です。
また、コロナ禍後の人事交流等も進めていく準備は行っておいた方が良いでしょう。
業務提携の交渉段階で、そうした点を協議して協力体制や交流に関する規定を契約書へ忘れずに明記します。
また、提携事業の担当者の異動に伴い、業務提携が希薄化することを避けるため、契約書は第三者から見ても明快に理解できる内容とします。
契約に関係する資料は、契約交渉時から組織的に管理する等の心掛けが必要です。
業務提携では情報交換が重要となり、交渉段階で様々な事をしっかりと協議をして第三者にも解りやすいような契約書を作成する必要がある。
業務提携|まとめ
業務提携には、前述したように様々な提携スタイルがあります。
しかし、『いずれか一つで提携しなければいけない』という訳ではありません。
提携を目指す当事者同士のニーズに合う、提携スタイルの組み合わせが理想的な提携方法といえます。
業務提携の際には、やはりM&A専門家等のアドバイスも聞きつつ、慎重に手続きを踏んでいくことが良い方法です。
事業/会社売却の相手を探す!