休眠会社とは、事業活動を行っていない会社のことです。
経営者の高齢化と後継者問題が原因で、やむなく休眠会社という方法をとる企業も多いことから、休眠会社をM&Aで買収するケースもあります。
休眠会社の経営者は、買収希望の買い手に会社を売却した方が、廃業するよりリスクやコストを抑制できる場合があります。
この記事では、休眠会社の特徴だけでなく、休眠会社を売買するメリット・デメリットや売買成功のポイント・プロセスについて解説します。
- 休眠会社とは事業を休んでいる法人のこと
- 休眠会社の売買方法の解説
- 休眠会社を売買するメリットは4つ
- 休眠会社の売買では債務の有無など注意する
- 休眠会社の売買でのポイントは調査をしっかりとする
- 休眠会社の売買の流れを紹介
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そもそも休眠会社とは?
こちらでは、休眠会社の特徴とペーパーカンパニーとの違いについて解説します。
休眠会社とは
休眠会社とは、会社として登記されているものの、長い間にわたり運営実態がない会社のことです。
会社法では「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」と明記されています。(第472条1項)
休眠会社として登録する場合、事業運営をとめるのだけではなく、税務署・都道府県・市区町村への届出が必要となります。
とはいえ、休眠会社の届出は簡単で費用も掛からないので、届出をしておいた方が税金の面でお得です。
休眠会社とは、法人としては存在するが事業を休んでいる状態のこと。
休眠会社が生まれる理由
いろいろな理由で事業が行き詰まる企業も多いはずです。
とはいえ、いきなり廃業すればそれに関する費用もかかります。
休眠会社が出来るのには、下記のような理由が考えられます。
- ご自身の会社を一時的に休眠会社にして、チャンスがあればいずれまた事業を再開しようと経営者が考えている
- 会社を清算する手続きが面倒でやる気も失っている
- 会社を始めたものの別会社を作ることになった
- 後継者が誰もおらず会社を休眠せざるを得ない
会社を設立したときの事業から別事業に転換、事業を増減を検討する過程で必要のない会社が生じて休眠させるケースもよくあります。
また、現在は経営者が高齢化して後を譲りたくても、後継者が誰もおらず会社を休眠せざるを得ないという「後継者問題」が中小企業を中心に目立ち始めています。
休眠会社とペーパーカンパニーの違い
こちらでは、似たような名称である「ペーパーカンパニー」について説明します。
ペーパーカンパニーとは?
ペーパーカンパニーとは、登記・登録済みの営業活動がない会社を指します。
「幽霊会社」や「ダミー会社」という、あまり喜ばしくない別名もあります。
設立自体が犯罪となってしまう危ない会社という意味なのかと、疑問を持つ方々も多いことでしょう。
ペーパーカンパニーは「タックスヘイブン」と呼ばれる、法人税の減免措置など、税制上の優遇措置を行い、先進国等域外の企業進出で雇用や手数料で歳入を得たい地域に設立します。
つまりペーパーカンパニーは、休眠会社と同様、節税対策に効果を発揮します。
休眠会社との違い
休眠会社とペーパーカンパニーの最も大きな違いは、会社法で明記されているか否かです。
休眠会社は会社法で規定されているものの、ペーパーカンパニーは法律に明記されていません。
そのため、ペーパーカンパニーは、法律の抜け穴をついているという悪いイメージがもたれ、実際のところ大抵の場合「脱税」目的の設立とみなされ違法になります。
少なくとも税金を支払うのがもったないからと言って、ペーパーカンパニーで税金逃れを企てても税務署の目は節穴ではありません。
悪事は必ず明るみに出るので注意しましょう。
ペーパーカンパニー:登記・登録済みの営業活動がなく、会社法にも明記されていない。
休眠会社:登記・登録済みで営業活動はないが、会社法で明記されている。
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単なる休眠会社では買い手がついてくれない可能性もありますので、売り手が抑えるべき3つのポイントを紹介します。
許認可を手に入れる
売り手は、ご自身の会社がどんな許認可を持っているか、よく確認する必要があります。
この許認可は買い手への大きなアピールポイントとなります。
そもそも許認可とは?
許認可とは、特定の事業を行うため、行政機関から取得する必要がある許可のことです。
この行政機関には、警察署や保健所や都道府県などがあげられます。
事業によっては、複数の行政機関に許認可の申請を行う必要が出てくる場合もあります。
なお、許認可が必要な業種なのに、無許可で事業を行うと刑事罰が科されてしまうこともあるので注意しましょう。
なんで許認可が武器になる?
休眠会社は営業を停止している状況なので、キャッシュフロー(企業活動や財務活動で実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れ)は生み出しません。
それでも休眠会社が注目されるのは、何かしらの許認可を持っているからです。
許認可が必要な業種は飲食店・自動車関連・病院・介護・警備業・風俗業・運送業など多岐にわたります。
許認可を得るには、それなりの年数・お金がかかるケースもありますが、買い手は休眠会社を買うことで、面倒な許認可申請をすることなく許認可を取得できます。
更に、休眠会社の買収は相場より安い点も大きなメリットです。
許認可が必要な事業への進出を考えている企業からすると、許認可を持っていて相場よりも安い休眠会社を買収するのが、手っ取り早い方法となる。
繰越欠損金を確認する
買い手の中に許認可の取得はもちろん、「繰越欠損金」目当てに買収を試みる方々もいます。
繰越欠損金とは?
繰越欠損金とは、その年度に出してしまった赤字を、翌年度以降の黒字と相殺できる仕組みです。
繰越欠損金があれば、黒字になった分だけ税金を軽減する方法として有効だからという理由で買い手から重宝されています。
とはいえ繰越欠損金は改正を繰り返しており、2016年の税制改正で、2018年4月1日以後に開始する事業年度で生じた欠損金額の繰越期間は10年とされています。
また、大企業の場合はこの改正で、2017年4月1日から繰越欠損金で控除できる金額が5割に下げられました。
大企業が繰越欠損金を活用するメリットは減ったものの、中小企業は以前と同様に全額控除されます。
しかし注意点も
買い手には繰越欠損金を利用する一定の制約があり、新事業ではなく休眠会社の既存事業を継続する場合は税金の軽減が可能です。
この方法を使った戦略はいろいろあるものの、買い手に繰越欠損金のメリットがあれば、売り手も売却が容易となります。
繰越欠損金があれば、節税対策になるために売却しやすくなる。
表明保証条項について確認する
繰越欠損金を狙う買い手がいても、あまりにも莫大な債務を売り手が負っているのは困りものです。
そんな時は、当事者で表明保証条項について話し合う必要が出てきます。
表明保証条項とは?
表明保証条項とは、一般的にM&A取引で契約当事者の一方が、他方の当事者に対し、契約目的物などの内容に関連し、一定時点の一定の事項が真実・正確であることを表明、その内容を保証する条項のことです。
表明保証条項は、後述する「最終契約書」を締結する際に書面化する必要があります。
この条項は、対象企業の貸借対照表に計上がされていない「偶発債務(債務保証、係争中の損害賠償債務、先物売買契約、手形割引、裏書譲渡))」を保全するため、買い手に対し追加的な債務が存在しないこと等を保証する取り決めです。
売り手が見栄をはると、ろくなことは無い
売り手としては、休眠会社であってもなるべく高く売りたいはずです。
表明保証条項に不利な条件を明記したくないのはわかります。
しかし、実態よりもリスクを少なめに買い手へ報告する、債務の一部を隠すという行為が発覚すると表明保証条項違反となります。
このような事態になれば、売買が不成立となる他、違約金を請求されることにもなるでしょう。
債務は明確にすることで、売却価格を下げざるを得ない場合もありますが、嘘をつくと取り返しのつかない結果となります。
自社の債務を正直に開示し、表明保証条項へ誠実に従うことが大切です。
休眠会社の債務をしっかりと明記する必要があり、虚偽の報告をすると表明保証条項違反にもなり得る。
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こちらでは、休眠会社の買収を目指す買い手へのプローチ法について紹介します。
買収したい休眠会社を探す
買い手が休眠会社を買収したい場合、これまで培ってきた各業界とのパイプを活かして休眠会社を探しても良いでしょう。
しかし、最近ではM&Aに関する「マッチング・サイト」が数多く登場しています。
これらのサイトに登録し、検索すればご自身の条件に合った休眠会社が見つかるかもしれません。
M&Aマッチング・サイトとは?
まさしく「売りたい企業と買収したい企業を結びつける」サイトのことです。
売り手・買い手とも、登録自体は無料で可能ケースが多いです。
- 買い手の会社情報
- 買いたい理由
- 希望買収価格
- 買収の条件 等
などを明記・登録をします。
マッチング・サイトでは、公開されている売却希望案件はありますが、非公開案件を揃えている所も多いです。
非公開案件をチェックしたいときは、マッチング・サイト運営業者へお問い合わせください。
マッチング・サイトはやはり有料?
基本的にマッチング・サイトで売り手にアプローチしても、当事者だけで交渉を進めるなら無料です。
マッチング・サイトでは、M&A仲介業者が売り手と交渉を調整してくれる場合もあり、交渉が成立したら(売り手側が)成功報酬を支払うスタイルの業者や、逆に成功報酬ではなく買い手が着手金・月額報酬を支払うスタイルの業者と様々です。
マッチング・サイトを利用すれば話がスムーズに進むケースは多いものの、利用条件等は事前によく確認しておきましょう。
なお、休眠会社の案件は最初から扱わないというマッチング・サイトもあります。
マッチングサイトを使う事で、交渉事をスムーズに出来る事もある。
報酬は成功報酬のも有れば、着手金・月額報酬制など様々である。
休眠会社のトップと面談する
マッチング・サイトを利用するにしても、業界のパイプを頼って売り手との交渉へ臨むにしても、基本的にトップ同士での面談となります。
その際、売り手の希望売却価格ばかりを聞くのではなく、買い手側も売り手へ要望します。
その内容を記載した書面が「意向表明書」です。
- 希望する企業提携の形態
- 買収希望価格
- スケジュール
- デューデリジェンスの実施
- 費用負担
- 秘密保持
意向表明書で記載されるのは、上記の内容となります。
とはいえ、意向表明書に当事者双方が拘束されることはありません。
法的拘束力が認められるのは後述する「最終契約書」です。
ただし、売り手が愕然とするような安い買収希望価格を出してしまうと、「このお話は無かったことに」と、早々に買い手候補から外される場合もあるので注意しましょう。
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売却額の無料見積もりはこちら!休眠会社売買のメリット4選
こちらでは、休眠会社売買のメリットを4つ紹介します。
- 比較的安く会社を買収できる
- 社会的信用を得られやすくなる
- 財務状況がクリアな会社の場合
- 廃業コストを抑えることが可能
比較的安く会社を買収できる
休眠会社はそもそも事業を行っていないため、事業に対して評価することが難しいのは事実です。
売買相場はどれ位?
しかし、休眠会社がどのような用途で使用できるかで、概ね売買相場は決まってくると言われています。
一例を上げましょう。
有限会社:資本金1,000万円以上の場合→相場価格約30万円
株式会社(看板用休眠会社):資本金1,000万円~2,000万円未満の場合→相場価格約30~50万円
看板用休眠会社とは、現時点でこれと言った問題は有していないものの、買い手の調査途上で過去の経歴等に不明な部分があり、買収すると若干のリスクを伴うかもしれない会社のことです。
まだ不明点があるため、相場価格は後述する事業用休眠会社より、やや安い相場価格となります。
株式会社(事業用休眠会社):資本金1,000万円~2,000万円未満の場合→相場価格約35~60万円
事業用休眠会社とは、事業内容がクリーンでかつ長期間休眠状態にある会社、または旧経営者と常時連絡可能で信頼できる会社、手堅く事業を行っていた会社等があげられます。
確かに安いが
実際に事業を行っている売り手とのM&Aと比較し、かなり安いという印象を受けるかもしれません。
しかし、前述したような許認可の有無や業界ごとの相場なども考慮すると、一概に上記のような価格で買収できるとは限りません。
社会的信用を得られやすくなる
売り手としては、会社の社歴が長ければ有利です。
それだけ堅実に事業を行ったきたと評価され、社会的信用を得やすくなるからです。
ご自身の会社が、現在では新規設立の出来ない【有限会社】(有限責任社員のみが出資する会社)なら、会社の社歴の長さを証明することにもなるでしょう。
社歴の長い会社は買い手へ売却しやすいだけでなく、高く売却価格を設定しても売買が成功する確率は高いです。
社歴が長ければ、社会的信用度が高いと見なされて売却しやすくなる。
新規設立の出来ない有限会社なら、評価は高くなりやすい。
財務状況がクリアな会社の場合
休眠会社でも帳簿・決算書も付いていて納税済ならば、買い手の信頼を得られやすくなります。
それだけ買収した後の債務や税金のトラブルを回避しやすくなるからです。
売買されている休眠会社には財務状況が不明な会社も多いので、財務状況を誠実に記録して買い手に報告できるなら、売買しやすくなり相場よりも高く売却できます。
財務状況をしっかりと報告できるぐらい管理しておけば有利になる。
廃業コストを抑えることが可能
廃業手続きを選んでしまうと、登記・法手続きの準備など、それなりにコストと手間がかかります。
また、債務を返済する必要もあり、かなりの労力を伴う作業になるのです。
しかし、休眠会社にする場合、行政機関へ休業届けを提出するだけです。
休眠会社にしている間、着々とM&A交渉を進めれば、契約成立後に売却益を得ることもできます。
廃業するコストよりも休眠会社にする方が手間もコストも掛からない。
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売却額の無料見積もりはこちら!休眠会社売買の注意点2選
こちらでは、休眠会社を売買する際に注意すべき2つのケースを解説します。
後から債務が発覚する可能性がある
売り手側はなるべく高く売却したいので、都合の悪い状況(例:多額の債務の存在等)を隠すケースも否定できません。
買収後に事実が発覚すれば、売り手はもとより買い手までイメージダウンや、顧客から信用を失うおそれもあります。
そのため、前述した表明保証条項を締結する、後述する「デューデリジェンス」の徹底が必要です。
繰越欠損金が使用できない場合もある
前述したように、繰越欠損金がいかなるケースでも、全額控除されるわけでは無い点に気を付けましょう。
繰越欠損金を利用する場合
- 新事業ではなく休眠会社の既存事業を継続すること
- 大企業の場合は繰越欠損金で控除できる金額が5割に下げられた
上記の2点に注意が必要です。
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売却額の無料見積もりはこちら!休眠会社売買の成功ポイント3選
こちらでは、休眠会社売買の成功ポイントを3つ紹介します。
- より財務的に質の良い休眠会社を選ぶ
- 休眠会社売買によって生じるメリットを理解する
- M&A仲介会社やアドバイザーを活用する
より財務的に質の良い休眠会社を選ぶ
財務状況が透明な売り手は魅力です。
それに加え、財務状況が比較的良好なら、買収後のトラブルも避けられるはずです。
まずは売り手の提示した財務状況ばかりを信用せず、デューデリジェンスを徹底して行い【財務で気になる点が無いか】【法律に抵触する事実は無いか】を洗い出しましょう。
そこまで行い問題が無ければ、表明保証条項の締結で安心して買収ができます。
財務状況が透明で良好な休眠会社を選ぶと、買収後に金銭トラブルが起こりにくい。
休眠会社売買によって生じるメリットを理解する
売り手の場合は、買収によって事業承継できる点と売却益がメリットと言えます。
買い手の場合は、新規事業を展開したいときに必要な許認可を得られるというメリットがあります。
特に買い手の場合は、休眠会社を買収に関して、その後の明確なビジョンを描いておかないと、休眠会社から継承した事業を上手く展開することができないかもしれません。
売り手も買い手も、M&Aに向けて用意周到な準備が必要となります。
売り手は事業継承と売却益を得られ、買い手は許認可を得られる。
ただし、買収後の事業展開ビジョンを持っておかなければ失敗するかもしれない。
M&A仲介会社やアドバイザーを活用する
M&Aがはじめてという売り手・買い手は多いはずです。
無理やり当事者で話を進めては、M&Aのプロセスで問題が発生するおそれもあります。
M&Aをスムーズに進めるには、専門家を立てることが有効と言えます。
M&Aの専門家とは、M&Aに携わった経験のある公認会計士や弁護士等があげられます。
ただし、公認会計士は税金・会計、法律分野は弁護士が明るいものの、M&A全般の知識を持っているとは限りません。
そのため、M&A全般の交渉をサポートしてもらいたいなら、前述したM&A仲介会社の助力を得ましょう。
M&A仲介会社なら、交渉相手の選定からクロージングまでトータルでサポートしてくれる場合が多いです。
M&Aを行う際には、専門家や仲介業者の助けがある方が上手くいく可能性が高い。
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売却額の無料見積もりはこちら!休眠会社売買の流れ
こちらでは、休眠会社売買の事前準備から登記変更までの流れを解説します。
- 売り手が債務を明確にする
- 売り手が確定申告をする
- 売買の交渉に応じてくれる相手方を探す
- 休眠会社売買の交渉開始
- 基本合意書を締結する
- 買い手のデューデリジェンス開始
- 最終契約書を締結
- 登記変更等へ
売り手が債務を明確にする
休眠会社の売却前に、売り手が債務を明確にしておく必要があります。
休眠会社の売買契約をする場合、隠れた債務が見つかると、買い手が不信を抱き売買契約も不成立になることは多いです。
その他、買い手から契約違反として違約金の請求を要求される場合があります。
後々このようなトラブルとならないために、自社にとって不利な部分であっても明確に買い手へ債務を報告することが必要です。
大慌てで買い手に売却をアプローチするのではなく、事前準備にしっかり時間をかけ、買い手の信頼を得られるような努力が求められます。
売却前に債務を明確にしておかなければ、後々トラブルに発展する可能性がある。
売り手が確定申告をする
休眠後、売り手が確定申告をしていない場合は確定申告が必要です。
確定申告は2年間猶予があるものの、申告が行われないと、認定の取り消し処分を受けてしまいます。
取り消し処分を受ければ、休眠会社の売買どころではなくなります。
確定申告は毎年2月中旬~3月中旬と決められた期間内に、原則として申告が必要です。
ただし、確定申告を行っていなくても、申告していなかった部分を後からでも申告すれば、優遇措置が受けられる場合もあります。
売却前に申告期日が過ぎていてもまとめて申告しましょう。
休眠会社でも確定申告をする必要があるため、売却前に確定申告をしておく必要がある。
期日を過ぎていても、優遇措置がある場合もある。
売買の交渉に応じてくれる相手方を探す
事前準備がしっかりできたら、いよいよ売り手の方は交渉に応じてくれる買い手を探します。
地域密着型の企業なら地方銀行が、同地域の買い手を紹介してくれるかもしれません。
より広く買い手とアプローチしたいならば、M&A仲介業者の「マッチング・サイト」を利用しましょう。
売り手はもとより買収をしたい買い手も、マッチング・サイトに登録できます。
登録だけなら双方無料になる場合が多いです。
このマッチング・サイトには、会社名(匿名で掲載可)・希望売買価格・売買条件等を掲載します。
公開案件に掲載しても良いですが、M&A仲介業者側と相談して非公開案件とすることも可能です。
ただし、M&A仲介業者の中には休眠会社へのマッチングサービスは行わないものもあります。
登録前に、M&A仲介業者の方へ休眠会社でも登録できるか確認しておきましょう。
同地域で売買相手を探すなら地方銀行に相談するのがおすすめ。
より広く売買相手を探すならマッチングサイトを利用するのがおすすめ。
休眠会社売買の交渉開始
交渉したい相手企業へアプローチまたは相手方からアプローチがあれば、いよいよ交渉開始です。
たとえM&A仲介業者マッチング・サイトを利用しても、当事者間で直接交渉して売買に向けた話し合いを進めることができます。
ただし、その前に相手方と「秘密保持契約」を締結しましょう。
これは『互いに情報の漏洩を行わない』ということを書面化する防衛策です。
基本的に経営者同士が売買に向けた調整をしていきます。
一方、仲介業者にサポートを依頼すると、双方の利害調整や各プロセスでアドバイスもしてくれます。
交渉の際、買い手は前述した「意向表明書」を作成し、取引希望の内容について売り手へ提示します。
- 基本的に売り手への希望
- 買収の手法や希望価格
- スケジュール
意向表明書は、上記の3点となることが多いです。
ただし、意向表明書自体に法的拘束力はありません。
買い手の希望通りにならなくても、いきなり交渉が打ち切られることはほとんどありません。
交渉を始める前に【秘密保持契約】を締結して、会社情報の漏洩を防ぐ必要がある。
基本合意書を締結する
当事者同士で交渉し売買価格・条件等に納得したら、「基本合意書」の締結で売買にむけた決まり事を書面化します。
基本合意書へ主に次にような内容を明記します。
- 休眠会社売買の基本条件(売却価格等)
- 休眠会社売買ののスケジュール
- 独占交渉権
- デューデリジェンス
- 誓約事項
- 法的拘束力
この基本合意書も「法的拘束力」を明記はするものの、基本合意書の中で法的な制約がいきなり発生するわけではありません。
ただし、基本合意書は売買の交渉当事者同士が合意の上で締結する書類であり、以後プロセスを円滑に進める効果が期待できます。
交渉が成立すれば、基本合意書を締結して、以降のプロセスを円滑に進める準備をする。
買い手のデューデリジェンス開始
基本合意書を締結後、買い手は売り手の財務状況・買収に関するリスク等の調査として「デューデリジェンス」が実施されます。
この調査は財務はもとより、法務・人事・技術・事業・IT等にまで及びます。
また、売り手はこの調査に協力しなければいけません。
特に休眠会社は、長期間の経営が行われておらず、権利等を会社として残しているだけの状態なので、通常の会社の売買よりもより徹底した調査が行われるはずです。
当然、売り手が都合の悪い事実を隠していたら、会社売却の契約は不成立となるリスクがあります。
とはいえ、デューデリジェンスで目立った問題等が認められなければ、買い手の信用を得ることができ、買い手も売り手も安心して売買へ向けた手続きへ進めます。
デューデリジェンスと言うリスク調査が始まり、売り手は買い手の調査に協力する必要がある。
最終契約書を締結
デューデリジェンスで問題が認められなければ、いよいよ「最終契約書」を締結する手続きへ進みます。
この段階になれば、売買交渉のプロセスも佳境に差し掛かります。
最終契約書には法的拘束力があり、一度締結すれば、当事者双方が定めた契約内容に拘束されます。
主に次の内容が明記されます。
- 対象の特定・取引金額確定・価格調整:契約の対象とその価格を決定
- 表明保証条項:売り手が売買契約の対象・目的物が存在することを表明・保証、買い手も売買契約の対象となるものを買収することを表明
- 補償条項:表明保証条項の違反、契約上の義務違反があれば、相手方が被った損害を補償
- 誓約事項:クロージング後、売り手・買い手が実行する行為、逆に禁止行為等を定め、それらの行為の履行または不履行を義務付け
- 秘密保持義務:契約締結内容、話し合いの経緯等について、その秘密の保持を明記
- 競業避止義務:売り手が売却した事業と同一の事業を行わないことの明記
その他、前提条件や解除条件・損害賠償・公表の方法・費用負担・裁判管轄などの取り決めも明記します。
意向表明書・基本合意書以上に、慎重かつ精密な契約内容の記載が求められます。
最終契約書の作成の際は、会社売買に詳しい弁護士またはM&A仲介業者側の助力も得ながら、決まり事を記載した方が無難です。
また、当事者が話し合い、「これは最終契約書に明記しておいた方が良い」と判断した事項は、しっかり書面化しておいた方が後々のトラブル回避につながります。
最終契約書は、会社売買の最も重要な取り決めになり、内容に拘束力が発生する。
作成は専門家も交えて行うのが無難。
登記変更等へ
最終契約書の締結後は、休眠会社の登記変更や、買い手が売却金を売り手へ送金する等、いろいろな作業を行い終了となります。
休眠会社を売買されると休眠会社の代表者が変わります。
その際、会社が法人格を有し、実際に存在していることを認めてもらう必要があるので登記変更申請が必要です。
なお、株式譲渡による売買方法を行ったなら、その分の持株比率はそのまま取得者(買い手)のものとなります。
一方、前述した繰越欠損金を目的に買収した場合、同じ事業を行う必要があるので、会社概要を確認した上で事業を行う必要があります。
最終契約締結後は、登記変更や売買代金の送金などの事務処理をする。
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売却額の無料見積もりはこちら!休眠会社の売買 まとめ
最後にM&A交渉に臨む際、必要となる「秘密保持契約書」に言及しておきましょう。
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement、Confidencial Agreement:略してNDA)とは、M&A交渉前に締結する契約のことです。
M&Aの交渉では特に売り手は、財務状況等の詳細な開示を行います。
これが漏洩すればトラブルに発展するケースも考えられます。
そのため、買い手候補となる企業すべてとこの契約をまず締結し、その後に交渉を進めれば、情報漏洩のリスクは回避できます。
休眠会社を売買する際は、通常のM&Aとは異なる部分も多く有り、注意が必要な面も多くなりますので、しっかりと確認をしながら行うようにしましょう。
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