「デューデリジェンス」とは、M&Aを実施するときの売り手の価値・リスク等の調査のことです。
M&Aデューデリジェンスは、M&Aの相手企業のことを事前に調べて、M&Aの実施後に様々なトラブルに遭わないようにするのが目的となります。
そこで、この記事では、M&Aデューデリジェンスを行う項目だけでなく、費用・期間など重要なポイントについて解説をします。
- デューデリジェンスとは何か?
- デューデリジェンスの種類
- デューデリジェンスのチェックポイント
- デューデリジェンスの基本的な手順と流れ
- デューデリジェンスを行う際の注意点
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事業/会社売却の相手を探す!目次
デューデリジェンス(買収監査)って?
こちらでは、M&Aのデューデリジェンスの意味や目的・費用について解説をします。
- M&Aのデューデリジェンスの意味
- M&Aのデューデリジェンスの目的
- M&Aのデューデリジェンスの費用
M&Aのデューデリジェンスの意味
デューデリジェンスとは、売り手の【価値】【将来の収益性】【リスク調査・分析】を行う作業のことです。
このデューデリジェンスは1つの視点だけでなく、主に財務・法務・人事・技術・事業・ITという6つの視点から売り手を評価します。
この評価で導き出された内容によっては、M&Aを中止することも想定されます。
買収価格だけではなく売り手を統合したことで得られる将来の利益、リスクを冷静に判断します。
M&Aのデューデリジェンスの目的
デューデリジェンスは主に次の目的で実施されます。
- 売り手の価値の確認調査:売り手の提出した資料のみならず、売り手の全ての情報を調査、分析し、総合的に算定する必要がある。
- 説明責任:買い手側の顧客や株主等が納得できるM&Aを行うメリットを説明する。
- 確実なM&A手法の確定:売り手について総合的な調査した後、M&A当事者にとって最も適切な手法を選ぶ。
- 対応方法を書面化:調査で売り手の問題が表出した場合、その対応方法を契約書の修正して取り決める。
- PMIの方向性を定める:M&A後に行われる当事者の統合作業の際、その方向性がデューデリジェンスにより決められる。
M&Aのデューデリジェンスの費用
M&Aの規模や調査期間や調査内容によっても、デューデリジェンスにかかる費用は大きな差が出てきます。
更に後述する財務・法務・人事・技術・事業・ITデューデリジェンスは、中小企業同士のM&Aなら、買い手は従業員を割いて調査作業に当たらせるのは困難なことでしょう。
この作業に関してはM&A相手をマッチングしてくれる仲介会社へ、デューデリジェンスも依頼することができます。
仲介会社へ依頼する際の費用は、概ね数十万円~数百万円程度が目安と言えます。
もちろん、デューデリジェンスの一部を買い手が編成したチームで行えるなら、その費用は更に軽減できるはずです。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンスの主要な種類6選
こちらでは、6つのM&Aのデューデリジェンスについて解説します。
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- 技術デューデリジェンス
- 事業デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
財務デューデリジェンス
売り手の財務状況に関する調査で、売り手企業価値・買収額等を確認した上、M&Aを実行に移すかどうか意思決定します。
財務デューデリジェンスの目的
財務デューデリジェンスでは主に次の目的があります。
- 買収価格の交渉・決定:M&Aの適正な買収価格の交渉・決定のための情報収集
- 財務リスク:簿外負債の有無・帳簿体系を調べ、M&A実施の可否の考慮要素を増やす
- 説明責任:株主等の利害関係者に合理的なM&Aであることを説明する
財務デューデリジェンスの流れ
買い手がM&Aのデューデリジェンスを行うのも構いません。
しかし、M&A専門業者に依頼すると効率的です。
- 調査する人材を選ぶ
- 調査範囲を決める
- 実際の調査へ
手順1:調査する人材を選ぶ
買い手は、提携している公認会計士・税理士・会計コンサルティング会社等を利用し、財務デューデリジェンスを実施してもらうことが考えられます。
ただし、数字に強い提携先の専門家でも、M&Aに関係するデューデリジェンスを行った経験があるとは限りません。
この場合、M&Aのノウハウを蓄積しているM&A専門の仲介業者に、デューデリジェンスを一括して依頼した方が効率的といえます。
手順2:調査範囲を決める
売り手の財務諸表等の書類調査のような地道な確認作業は重要です。
その他、売り手の担当者等へヒアリング調査等も行い、様々な調査で財務上の売り手の実態を明らかにしていきます。
売り手企業の特徴に合わせ、どんな調査が必要なのか専門家の助言を参考に調査範囲を確定しましょう。
手順3:実際の調査へ
デューデリジェンスをするには、帳簿類・会計書類等、膨大な量の書類をチェックします。
そのため、買い手企業にいちいち郵送されてくるのを待っては、いつまで経っても調査が進まない恐れもあります。
そのため、ほとんどのケースでは売り手の事務所または部署へ一箇所に資料を集め、調査員が出向き調査する方法をとります。
当然、書類等に疑義・不明点があれば責任者等へヒアリングや、更なる資料開示請求が行われます。
実際の調査期間は概ね3日〜1週間程度といわれています。
売り手も速やかな調査が行われるよう、帳簿類・会計書類等の開示・説明に誠実な対応が求められます。
法務デューデリジェンス
売り手の法令順守状況、訴訟等に発展するリスクがないかどうか調査する作業です。
法務デューデリジェンスの目的
このデューデリジェンスは、売り手に法的なリスクはないかチェックするのが目的です。
この作業によりM&Aを進めるべきか判断します。
この調査は、株主関係・組織の現状・関連会社・資産・法令順守状況に及びます。
ただし、仮に法的な問題が発覚しても、即座にM&Aが中止となるわけではありません。
買い手側は法的なリスクを勘案しつつ、価格交渉をすることもあります。
法務デューデリジェンスの流れ
買い手側の従業員がチーム編成で、M&Aのデューデリジェンスを行っても構いません。
しかし、やはり法務には専門家の助力があれば効率的です。
- 調査する人材を選ぶ
- 提出書類を請求する
- 実際の調査へ
手順1:調査する人材を選ぶ
買い手がM&Aに経験豊かな場合、自社でチームを組んで調査しても良いでしょう。
しかし、法律的に問題ないかの調査なら、M&Aに関するデューデリジェンスのノウハウを持つ、弁護士法人や弁護士に頼んだ方が無難です。
なお、M&A専門業者には弁護士が在籍している場合もあります。
M&A専門業者に依頼するなら、法務デューデリジェンスも対応可能か相談してみましょう。
手順2:提出書類を請求する
専門家のアドバイスも踏まえ、売り手から概ね次のような書類を提出してもらうことになります。
- 定款
- 商業登記簿・不動産登記簿
- 社内規定
- 株主名簿
- 株主総会・取締役会議事録
- 許認可
- 法令順守状況
- 取引関係
- 資金調達方法
- 人事・労働関係
- 動産所有権
- 知的財産権
- 訴訟係属状況
これらに関する書類から、違法の事実、法的に欠陥のある部分の有無を探ります。
手順3:実際の調査へ
前述のように提出された資料のこまめなチェックが必要となります。
しかし、売り手は売却価格が減額されたり、M&A自体が成立しないことをおそれたりして、不利な資料は基本的に提出しないはずです。
そのため、売り手の担当者にヒアリングし、提出していない書類がないか確認、再度の提出を要求するケースもあり得ます。
実際の調査期間は概ね1か月~2か月程度と言われています。
人事デューデリジェンス
人事面に特化した調査です。
想定していなかった人材の存在、組織の課題等を調査する作業となります。
人事デューデリジェンスの目的
売り手の人員数や報酬水準等はもちろん、人事制度の仕組みや、運用実態・組織風土の違いを調査で明らかにするのが目的です。
この調査を十分に行うことで、売り手の従業員や労働組合が反発、交渉が難航するのかどうかを予見することもできます。
人事デューデリジェンスの流れ
買い手側の従業員がチーム編成で、M&Aのデューデリジェンスを行っても構いません。
しかし、この調査にもM&A専門の仲介業者の助力があれば効率的です。
- 就業条件等の分析
- 基幹人事制度の分析
- 退職金・年金制度の分析
- 企業文化の分析
- 分析結果の活用
手順1:就業条件等の分析
売り手の就業規則に記載された、就業時間・休憩時間・休日・休暇・出張旅費等の内容を把握します。
就業条件の分析を行えば、M&A後に当該仕組みを存続させた場合、新会社にどのくらの財務的な影響が出るか予測できます。
手順2:基幹人事制度の分析
売り手企業の等級・評価・報酬という基幹人事制度の仕組みを確認します。
基幹人事制度の分析を通じて、人件費の水準・構成要素を把握、事業計画における財務の影響を検証します。
手順3:退職金・年金制度の分析
売り手の退職金・年金制度をチェックして、統合後の財務の影響を予測します。
もちろん、将来発生することになる退職金・年金の推定額も計算します。
手順4:企業文化の分析
売り手の企業文化である、組織文化や価値観や人事マネジメントの方針を分析します。
労働組合の有無、外注先も忘れずに確認します。
手順5:分析結果の活用
売り手の給与や退職金制度等を変更すべきか否かの決定に、これまでの調査が活かせます。
もちろん、いきなり給与等を下げたら従業員や労働組合が反発して人心は離れていきます。
このようなM&A後のリスクを避けるため、人事への対応を慎重に検討します。
技術デューデリジェンス
売り手の製造または開発中の技術製品を含む、技術面の詳細な評価を指します。
技術デューデリジェンスの目的
売り手がM&Aを進める際に、技術製品へ焦点をあて、想定されるリスクについて調査します。
そのため調査は、ソフトウェアシステム・ハードウェア・および開発中のテクノロジフトウェアシステム・ハードウェア・および開発中のテクノロジー全般に及びます。
技術デューデリジェンスの流れ
同じ業種なら、買い手側の従業員がチーム編成で、M&Aのデューデリジェンスを行うことが想定されます。
しかし、この調査にもコンサルタントの助力があれば効率的です。
- 情報収集
- 実際の調査開始
- プロセスの分析・活用
手順1:情報収集
物理的な施設で見つかった技術文書はもちろん、レポート、データなど、さまざまな情報を書類等で売り手から提供してもらいます。
手順2:実際の調査開始
買い手またはコンサルタントが編成した技術デューデリジェンス・チームは、書類等に目を通すことはもちろん、施設を見学、労働者とのインタビュー、更なる研究開発活動に関する文書を調査します。
手順3:プロセスの分析・活用
調査は売り手の保有する技術の種類、材料の量、および技術を扱う従業員の協力レベルに応じて1〜3週間続きます。
調査後は調査結果に関する情報を提供するレポートを作成、デューデリジェンス文書の一部として活用されます。
事業デューデリジェンス
売り手の経営管理・事業モデル、将来のキャッシュフロー等を詳細に調査分析する作業です。
事業デューデリジェンスの目的
この調査で得られた情報を、財務デューデリジェンス・事業計画の分析に活用するので、売り手の沿革・経営状況・事業モデル・商品力・労使関係・事業の社会性・経営者のコンプライアンス対応など、会社の経営・事業に関する項目全般を調査をします。
この調査を基に、事業のビジネスモデル・内部資源等を充分に把握して、今後の事業計画を策定・検討することが目的となります。
事業デューデリジェンスの流れ
同じ業種なら買い手側の従業員がチーム編成で、M&Aのデューデリジェンスを行うことも想定されます。
しかし、業種外の場合は、この調査にコンサルタントの助力があれば効率的です。
- 情報収集
- 各種分析
- ポートフォリオの検討
手順1:情報収集
事業に関する書類請求はもちろん経営者・事業部門責任者へのインタビュー、現場で活動する中間管理職・担当者に対してインタビューも行いつつ、ビジネスモデルの分析を進めることになります。
手順2:各種分析
次の主に5種類が実際の分析として行われます。
- ビジネスモデル分析
- SWOT分析
- マーケット分析
- 競合他社分析
- 収益性分析
(1)ビジネスモデル分析
売り手からビジネスモデルを説明してもらい、ビジネスモデル理解します。
この分析では、経営者・事業部門責任者の資質も評価します。
(2)SWOT分析
売り手の強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)を分析します。
この分析で、経営課題を具体化して事業の方向性を明確にします。
(3)マーケット分析
マーケットに対する売り手の商品力の分析を行います。
マーケットの現況、過去の状況や傾向、今後の見通し等を分析します。
(4)競合他社分析
売り手の主要な競合他社を分析・比較します。
売り手の業界内での位置付け、強み・弱み、改善点が明確になります。
(5)収益性分析
上記4つの分析・財務デューデリジェンスで入手した過去の営業成績の情報を加え、売り手の収益性の分析を行います。
手順3:ポートフォリオの検討
各分析が終われば売り手の市場成長率・市場占有率から、現在の立ち位置や各事業の立ち位置、投資分散の状況等を把握します。
ITデューデリジェンス
売り手が採用している情報管理システムの取り扱い方法を調査・分析する作業です。
ITデューデリジェンスの目的
売り手の既存システムとの融合における活用法と作業量・コストを考慮し、基幹業務に関するシステムをどのように結合すれば良いか判断するのが目的です。
そのため、売り手のITシステムに加えて、IT戦略策定・ITコスト・ITに関する人材等も調査対象となります。
ITデューデリジェンスの流れ
買い手側の従業員でチームを組み、デューデリジェンスを行っても良いですが、ITに強い部署・人材がいないこともあります。
この場合、調査にコンサルタントの助力が必要となるでしょう。
- 情報収集
- 課題・リスクを分析
- IT統合方針を策定
手順1:情報収集
売り手のITに関する書類やデータ、IT担当者にインタビューを行い情報収集、IT部門の諸要素(強み・弱み)等を網羅的にチェックします。
手順2:課題・リスクを分析
収集した情報をもとに、不明点・課題を洗い出します。
必要ならば、売り手を訪問またはオンライン会議等で詳細確認を行います。
売り手のITシステムの課題、リスクへの対策案を策定、ITの現状について評価した調査結果報告書を作成します。
手順3:IT統合方針を策定
情報収集や課題・リスク分析を踏まえ、売り手のITシステムを維持するのか、破棄するのか、一部を買い手へ移管するのか、買い手・売り手双方が刷新するのかを決定します。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンスで確認する重要なポイント5選
こちらでは、デューデリジェンス確認する5つのポイントを取り上げます。
- 買収価格が適正か確認する
- ディールブレーカーがないか確認する
- 買収スキームは適格かを確認する
- 契約内容を確認する
- M&A成立後の事業運営の方向を確認する
買収価格が適正か確認する
財務・法務・人事・技術・事業・ITという6つのデューデリジェンスで、売り手側の課題が明確化されたとしても、いきなりM&Aの交渉を中止するのは早計です。
表出したリスク・課題に見合った買収価格を再び算定し、売り手へ提示することが想定されます。
売り手の売却価格を鵜呑みにするのではなく、調査で得たリスクを根拠として、それに見合った金額へ修正を試みるのです。
売り手が再提示された買収価格に応じなければ、残念ながらM&Aは不成立となってしまいます。
ディールブレーカーがないか確認する
デューデリジェンスを行う上で、いろいろな視点からの調査を通し、「ディール・ブレーカー」の有無を慎重にチェックする必要があります。
ディール・ブレーカーとは、M&A取引の検討を中止せざるを得ないような重大な障害のことです。
例えば売り手が非常に高い技術力を持っていても、買い手側の信頼にも影響してしまうような重大なコンプライアンス違反が発覚したら、もはやM&Aは中止した方が無難です。
買収スキームは適格かを確認する
M&Aのための手法(合併・買収)は様々に存在します。
例えば、当初はAという手法でM&Aを行うつもりだったが、調査を進めていく上でBという手法が最適と判断されることもあります。
デューデリジェンスは、M&A当事者が行うべき買収スキームを選ぶ際の指針となります。
特に売り手の現状評価をよく確認すると、当初行おうとしていた手法が不適切だったと気付く場合もあります。
失敗しないM&Aを行うためには、たとえ売り手の重大なディール・ブレーカーが認められなくとも、交渉を急がずデューデリジェンスにしっかり時間をかける必要があるのです。
契約内容を確認する
デューデリジェンスを行えば、売り手の問題点を事前に洗い出しておくことができます。
買い手としては、負担したくないリスクについて、契約によって遮断することができます。
最終契約書の作成前、デューデリジェンスで売り手の問題を把握し、それに関して書面化しておけば、統合の際にリスク発生の危険性を可能な限り回避できます。
最終契約書の前には概ね意向表明書、基本合意書が取りまとめられますが、これらの書類の内容がそのまま最終契約書に転記されるわけではありません。
デューデリジェンスの分析・評価によっては、大きな修正を得て最終契約書が作成されます。
M&A成立後の事業運営の方向を確認する
売り手とM&Aを行うことで、買い手の事業運営の方向性に資するものとなりえるのかを、デューデリジェンスで確認することができます。
売り手の提出書類やデータや売り手側の経営者インタビューにとどまらず、労働者等とのインタビューを通し、その強み・弱みを把握できます。
それを踏まえ将来の予測して、M&A後はどこの強化に当たるべきかがわかるはずです。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンスの手順・流れ
こちらでは、M&Aにおけるデューデリジェンスの手順の流れを解説します。
- 資料開示・分析
- 方針決定
- インタビュー・現地調査
- 結果の分析・報告書の作成
資料開示・分析
買い手が売り手側へM&Aに関わる資料開示請求を行い、売り手は要請に応じ資料を開示します。
売り手から開示された資料から、売り手の財政状況や市場面・顧客面等、さまざまな面から問題点が把握されることになります。
当然、資料内容に不明点・不審点があれば、未記載の問題が発覚するかもしれないので、売り手へ必ず確認しておくべきです。
この事前の段階でM&A当事者は、秘密保持契約を締結し情報漏洩リスクを抑える必要があります。
方針決定
資料を得た上で買い手は、【どの分野をデューデリジェンスの対象とするのか】【調査範囲を過去何年分行うのか】を決定するため事前に協議します。
あらかじめデューデリジェンスの方針を決定しておけば、効率的にデューデリジェンスを行うことが可能になります。
とはいえ、M&A未経験の買い手側は無理に自社で、方針決定を行わず、M&A仲介会社のアドバイスも得ながらデューデリジェンスの枠組を決めた方が無難です。
インタビュー・現地調査
デューデリジェンスは書類に目を通すだけでは不十分です。
現地に赴き、経営者はもちろん労働者、労働組合(あれば)へインタビューし、売り手の現状把握を行います。
この調査の過程で、書類に未記載の新たな課題が見つかるかもしれません。
調査は買い手側の従業員が行っても構いませんが、M&A交渉に明るい仲介会社やコンサルティングに依頼しても良いでしょう。
結果の分析・報告書の作成
結果分析の内容は、レポート等による方法で最終報告として上げられます。
最終報告を受け、M&Aの妥当性について議論され、その後の方針が決定することになります。
また報告書は、仲介会社やコンサルティングに依頼した場合は、依頼した業者から提出していもらいます。
報告書に疑義があれば再度提出を要求し、この度のM&Aが有効なのかを冷静に判断しましょう。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンスでよくある質問2選
こちらでは、よくある質問を解説していきましょう。
M&Aのデューデリジェンスには他にどんな種類がある?
デューデリジェンスには前述した6種類のみならず、ケースによって行うべき調査が追加されます。
6種類の調査に問題がなくても、次に紹介するデューデリジェンスで問題が出ると、結局M&Aがとん挫する場合もあるので気を付けましょう。
こちらでは
- 不動産デューデリジェンス
- 顧客デューデリジェンス
- 環境デューデリジェンス
- 知的財産デューデリジェンス
について説明します。
不動産デューデリジェンス
主に投資用不動産の取引・会社のM&A・プロジェクトファイナンス等の際に実施される、詳細かつ多角的な調査です。
様々な不動産を対象に実施され、次のようなデューデリジェンスが行われます。
- 敷地状況調査:不動産の所在・地番、地目、地積、災害リスク等
- 建物状況調査:劣化・不具合等の目視、遵法性、修繕計画等
- 環境調査:有害物質、土壌汚染リスク調査等
顧客デューデリジェンス
「カスタマーデューデリジェンス」とも呼称されます。
取引に直接かかわる新規顧客・既存顧客の調査を指すことが多いです。
個々の顧客に注目して、特定・評価したリスクを前提に顧客情報・顧客の取引内容を調査します。
そして調査結果をリスク評価と照らし合わせつつ、リスク低減する措置を考慮・実施します。
M&Aでは売り手の顧客をGETできる強みがあるものの、何らかの理由で顧客が離れるリスクもあります。
この調査により、しっかりと売り手の顧客を囲い込む方策が打ち出せることでしょう。
環境デューデリジェンス
売り手の価値やリスク調査の際に、環境面に特化して行う作業のことです。
土壌汚染等、環境上のリスクを明らかにする調査といえます。
世界的に環境問題への意識が高まる現状では、このデューデリジェンスの重要性が増しています。
とくに今後は海外を対象としたM&Aの増加が予想されています。
そのため、日系企業が海外企業を対象として、現地の工場汚染調査、汚染リスク等を実施するニーズが高まっています。
知的財産デューデリジェンス
とくにベンチャー企業・中小企業では、M&Aの際に知的財産が重要な資産と位置付けられるケースも少なくありません。
知的財産デューデリジェンスの重要性が高まっています。
とはいえ、実際価値を図る評価基準は設けられていません。
この事情を考慮すると、調査実施には、法令や判例、慣習といった高度な知的財産に関する専門知識が必要とされるでしょう。
M&A仲介業者には、知的財産を得意とする士業専門家が在籍していたり、提携していたりするケースがあります。
知的財産の調査に不安があるなら、M&A仲介業者へ相談・依頼した方が無難です。
M&Aのデューデリジェンスのインタビュー対象者になった場合は?
インタビューを受ける側なら、自社の強みはもちろん誠実に自社の問題・課題を打ち明けることも必要です。
そのために「秘密保持契約」を締結し、情報漏洩リスクを抑える措置もあるのです。
その他、より有利な売却価格を得ようと、自社に不利な情報を開示しないのは問題です。
いずれ調査の過程で不利な情報は判明してしまうことでしょう。
そうなると買い手は、発覚した問題以外にも何か伝えられていないことがあるのではと売り手に大きな疑念を持ってしまいます。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンスの注意点2選
こちらでは、デューデリジェンスを行う際の2つの注意点ついて解説します。
デューデリジェンスのチェックリストで事前準備
デューデリジェンスを行う場合、何もやみくもに調査する必要はありません。
無駄な労力は可能な限り避けたいものです。
デューデリジェンスには色々な種類があり、それと共に、ある程度標準化されたチェック項目がありますので、チェック項目を参考に調査作業を開始し分析を行います。
M&A仲介業者やコンサルタント業者は、これまで培ってきた経験則の基で、効果的に調査できるチェックリストを作成しています。
そのため、M&A未経験の会社なら、M&A専門家にチェックを依頼した方が断然確実で効率的です。
デューデリジェンスのタイミングに注意
当然、最終契約書を取り交わした後、デューデリジェンスを行ってはあまり意味がありません。
タイミングとしては、基本合意契約が締結された後、最終契約書にかかわる最終条件交渉へ移る前に行われるのが一般的です。
ただし、会社の規模や行うべきデューデリジェンスの内容によって、さらに早くから調査を開始した方が良い場合もあります。
開始のタイミングはM&A専門家とよく話し合っておく必要があるでしょう。
事業/会社売却の相手を探す!M&Aのデューデリジェンス まとめ
デューデリジェンスはM&A交渉を慎重に進めるための、必要不可欠な作業です。
売り手を信用しないわけでは無いですが、適切なプロセスを踏んだ後でなければ、当事者は安心してM&Aを実施できないことでしょう。
M&A当事者双方の、誠実かつ積極的な協力がデューデリジェンスには重要となります。
事業/会社売却の相手を探す!