従業員承継とは?成功させる3つのポイントやメリット・デメリットをわかりやすく解説

少子高齢化で人手不足や経営者の平均年齢上昇など、後継者選びに悩む経営者は増え続けています。

事業を引き継ぐ後継者が見つからない
経営者として退く時期や方法がわからない

このように悩む経営者が多い中、経営者自身が第一線に立っている以上、後継者選びや育成するには現実的にむずかしい状況ではないでしょうか?

とはいえ、親族で引き継ぐ人がいなければ従業員から選出する方法も検討しなければなりません。

そこで後継者不足の問題解決方法として、従業員に事業承継する経営者が増えています。
本記事では従業員承継を中心に以下のことがわかります。

この記事の内容をざっくり言うと
  • 事業承継の種類がわかる
  • 従業員承継をするメリット・デメリット
  • 後継者に会社を委ねる際に選ぶ3つの選択肢とは
  • 従業員承継されるまでの流れがわかる
  • 従業員承継を成功させる3つのポイント

本記事を最後まで読んでいただければ、後継者選出の方法や従業員に会社を任せる際の手順や注意点がわかります。

従業員承継はもとより、後継者選びのヒントになる内容になっております。

会社を引き継ぐ事業承継とは?

従業員承継_とは

事業承継とは現経営者が別の後継者に事業を引き継ぐことです。

後継者となれば事業だけではなく、資産や企業文化も引き継ぐことになるため、今までつちかってきた会社の強みなど継続性が求められます。

さらに日本全体の少子高齢化が進む中、経営者の平均年齢も年々上昇している状況です。とくに中小企業においては、経営者の高齢化による後継者不足が顕著にでており、70歳を超える中小企業経営者の約半数がいまだに後継者が見つからない状況にあります。

経営者_年齢層

出典:中小企業庁HP

後継者が決まらないままとくに対策もしなければ、廃業する企業が増え続け結果的に日本経済の衰退をすすめてしまう恐れがあります。

そのため

事業承継とは今後の日本経済全体の行方を左右する重要な取り組みになっているのです。

では、事業承継はどのようにされていくのか?それらを紹介していきます。

親族内で承継する

事業承継でまず検討するのは、親族内の事業承継ではないでしょうか?

以前は事業承継となれば約9割が親族内で行っていましたが、現在は約6割まで減少しています。

その理由として少子高齢化はもとより、親が経営する会社を子が引き継がないケースが増えているためです。

最近では、高校卒業後は大学に進学しそのまま大企業入社を目指したり、より専門的な職業につきたい若者が増加しています。

よって、子の卒業を心待ちにしていた親は、そのまま経営者として事業を続けざる得ない状況になります。

従業員に承継する

親族に事業承継ができない場合、次に検討する方法は従業員への事業承継です。

従業員であれば事業内容を熟知しているので、ムーズな事業承継ができたり、従業員との関係性もそのままに事業引き継ぎが可能です。

従業員から後継者を選べば選択肢も広がり、早い段階から経営者育成が可能になります。

しかし、従業員承継は多額な資金が必要です。

たとえば、黒字経営であれば譲渡価格が高額になる可能性があり、逆に赤字経営であれば借り入れも後継者が引き継ぐことになります。

そのため従業員承継を断念してしまう方もいます。

M&Aで第三者に承継する

親族や従業員に後継者が見つからない場合、最後に選ぶ方法として第三者企業が後継者になるM&Aを行う方法があります。

M&Aの事業承継は、事業に新しい風が吹き込むので企業価値向上につながる可能性や、廃業が免れるので従業員の雇用も守れます。

しかし、今まで築き上げてきた企業を他人に譲りたくない想いから、あえて廃業を選択する経営者も少なくありません。

大切なのはM&Aを行うことで従業員を守れること、日本経済にも利益をもたらすことにもつながることから、中小企業庁も積極的にM&A事業承継を推進しています。

従業員承継の現状と課題

従業員承継_現状_課題

これまでの事業承継は、親族内承継が一般的でしたが、働き方の多様化や少子高齢化の影響を大きく受けています。中には黒字経営にもかかわらず、後継者が不在とのことで廃業を判断する企業も多く存在する現状です。

 

経営者_高齢化

出典:中小企業庁HP

しかし、親族内承継が減少している一方で増加傾向にあるのが従業員承継です。
全体的に従業員承継の割合は増加していますが、とくに30年続く企業になると従業員承継の割合が顕著に上がっている傾向があります。

従業員承継

このように最近では従業員による事業継続は大変注目されており、実績件数も増加傾向にあります。

出典:国民生活金融公庫総合研究所 村上義昭氏 論文より

従業員承継を行うメリット

従業員承継_メリット

後継者選びに従業員承継をする企業が増えています。
増加理由として従業員承継はさまざまな利点が存在するためです。

この章では従業員承継におけるメリットを5つ紹介します。

後継者候補が従業員になるので選択肢が広がる

従業員承継は多くの候補者から選べますが、親族承継であれば選択肢は身内のみになります。

となれば、その限られた候補の中から適任者を判断する必要があり、場合によっては子供や親族から事業承継を拒否されることもあるでしょう。

一方従業員承継であれば、対象者となる選択肢が広がるので、資金面や本人の意思などを尊重した柔軟な検討が可能になります。

企業文化が引き継げる

事業承継を行う際、M&Aとなれば第三者が経営者として従事します。

その際、大きな課題として挙げられるのが、企業文化や社内風土が変わってしまうことです。

仮に同業者同士でM&A行っても、業務フローや社内での人間関係までうまく融合するのは非常に難しいです。

ですが従業員承継であれば、社内をよく知る後継者が就任するので、企業文化などすべてにおいてスムーズに事業承継できる可能性があります。

勤務経験があるため業務を円滑に承継できる

長年の勤務経験がある従業員が、事業承継を行えば業務も円滑に承継できます。

業務が円滑に承継できれば、経営者が成長させてきた業務も引き継ぎできるので安心して後継者に任せるでしょう。

さらに従業員も今までの業務と変わらず従事できるので、業務面でも大きな混乱が避けられます。

従業員承継であれば業務を円滑に承継できるので、業務に支障がでるリスクもおさえられます。

従業員や取引先、金融機関から信頼を得られる

事業承継で経営者が変わると、さまざまな場面で信頼関係を築いていくことになります。

すると従業員や取引先との信頼関係の構築や、万が一借り入れが必要になった場合、金融機関とのやりとりに良い影響も及ぼします。

金融機関のやりとりで説明すると、金融機関は過去の取引実績に基づいて取引をします。
つまり、現経営者が作った実績がある状態から付き合いが開始されるのです。

さらに、事業承継で悩んでいる経営をいち早く気付けるのも、日頃から付き合いのある金融機関になります。

そのため金融機関の中には、M&Aの勉強会を開催していたり、M&A専任スタッフの常駐している金融機関もあるので長い目でみて信頼関係は必須と言えるでしょう。

元々企業に従事していた従業員であれば、会社を引き継ぐことは自然な流れと認識されるため、信頼感を得られる可能性は高くなります。

要するに、信頼関係構築にかかる時間が大幅に削減できるので、さまざまな状況で何かとやりやすい環境が維持できます。

後継者の育成ができる

従業員を後継者として事業承継を選択すれば、経営者育成に時間をかけられます。

候補となる従業員に早い段階から人を束ねる立場を経験させたり、役員としてマネジメントを経験させたり時間をかせて育成できます。

そのため親族承継やM&Aを行うより、さらに深く経営者としての育成が可能になるのです。

従業員承継を行うデメリット

従業員承継_デメリット

ここまで従業員承継についてのメリットを紹介してきましたが、その反面デメリットも存在します。
ここでは従業員承認によるデメリットを3つ紹介します。

従業員承継に資金が必要

従業員承継には株式買い取りに必要な資金確保が重要になります。

中小企業であっても事業承継に数千万円から数億円かかる場合があります。

そのため、会社から給与をもらっている従業員は大きな壁になるでしょう。

また資金調達に難色を示す従業員に、経営者が評価額より安く株式を譲ってしまうと、贈与があったとみなされ多額の税金を納める可能性があります。

その際、M&Aの一種でもあるMBOで対策できますので、資金調達にお困りなら一度検討も必要かと思います。

親族から反対される可能性も

今日にいたるまで親族のみで事業運営してきた企業であれば、従業員の経営承継に前向きな意見をもらえない可能性があります。

後継者が親族より会社のことを知っているとはいえ、やはり親族で守ってきた企業を従業員に任せることに難色を示すこともあるのです。

そのため、従業員に事業承継すると決めた際、経営に関与する親族へ説明をして納得をもらう必要があります。

事業リスクを引き継ぐ覚悟が必要

事業承継は、事業が抱える債務や事業をする上でリスクまでも引き継ぐことになります。

後継者は事業の現状把握や、リスクを念頭に置いた上で事業を引き継ぐべきかを決める必要があります。

そのため、後継者が個人保証の引き継ぎそのものを拒否するケースや、金融機関がオーナーの個人保証解除を認めないケースも考えなければいけません。

ですので、債務や事業リスクを経営者自身が洗い出しをし、早い段階から後継者に共有します。

従業員承継で後継者に委ねる3つの方法

後継者_委ねる

記事の冒頭でお伝えした事業承継の方法として「親族承継」「従業員承継」「M&A」と紹介しました。

ここでは従業員承継に絞り、さらに深堀をした3つの方法を紹介します。

従業員承継を行うと決めている方はぜひ参考にしてください。

株式贈与あるいは遺贈する

まずは株式そのものを贈与あるいは遺贈する方法です。

従業員承継で頭を悩ます大きな問題、それは従業員が株式買取の資金調達をすることです。

その点、株式を持っているオーナー経営者が株式の譲渡、あるいは遺贈することで実質的に株式取得にかかる費用が抑えられます。

贈与税はかかってしまいますが、後継者にとってはメリットが大きい手法になります。

しかし、オーナー経営者側は譲渡しても利益が発生しないため、従業員承継でも贈与などはなかなか選ばれない手法です。

経営権を譲渡する

経営権を譲渡することで従業員承継を行う方法もあります。

経営権の移動には取締役会の決議が必要ですが、それにより取締役や社長といった業務の引き継ぎが可能になります。

株式を譲渡あるいは売却する

従業員譲渡では株式の譲渡、あるいは売却が一般的な方法になります。

ただし、従業員承継を行う後継者は、多額の資金調達をしないといけないため注意が必要です。

とくに従業員承継であれば、段階的に資金調達が可能なMBOも視野に入れる必要があるでしょう。

MBOについては専門家の指導を受けながら実施することも可能です。

従業員承継されるまでの流れ

従業員承継_流れ

この章では、実際に従業員承継が行われる流れとして一通りのフローを解説します。

従業員承継がスムーズに行えるように事前確認としてぜひ参考にしてください。

会社の資産や売上などの状況確認

従業員承継を実施する上でのファーストステップは企業の現状把握と将来のイメージです。

「経営者だから現状確認しなくても大丈夫」と考えてしまいがちですが、イメージと現実がかけ離れていると今後の運用もうまくいきません。

まずは会社の資産や売上などを確認し、今後の事業プラン形成をしていきます。

経営者があらためて会社を俯瞰的に見ることで、これまで見えなかったこともわかるでしょう。

引き継ぎ候補者を選定する

将来プランや事業状況が把握できたら次は候補者選びになります。

実際に事業を任せられる従業員を選出するのですが、ここで気をつけたいのが候補者を限定せず広い視点で探すことです。

次世代を担う人材を選ぶので、初期段階では時間をかけても従業員の資質を尊重した広い視点が必要です。

事業承継計画書を作る

事業承継を円滑に進める上では事業承継計画書を作成し、スケジュール管理や課題消化をする上では必須といえます。

適任となる後継者が見つかった際、経営者と後継者との価値観や意見相違などは避けたいものです。

その点、事業承継計画書を共有すれば確実に事業承継に向けて進められます。

後継者の育成

後継者が決まり事業承継計画書が作成できたら、事業後継者となる育成をしていきます。

すでに従業員は会社のことを知っているので、今さら何を教えるべきなのか?と疑問に思うかもしれません。

育成で伝えるべきことは、経営に関するノウハウやマネジメントなどといった育成です。

会社経営と従業員が現場で培ったスキルは違うため、経営とはどのようにしていくべきかを学ぶ必要があるのです。

また、他社の経営者交流会などの参加もいい学びになるでしょう。

会社株式を後継者に譲渡する

育成がひと通り済んだところで、経営者は現在保有している株式を後継者に譲渡します。

実際、株式評価額によっては多額の資金が必要になるので、従業員は資金調達の方法を講じる必要があります。

また、円滑な事業承継を行うために現経営者は株式売却をした際、売却益に応じた税金対策も同時に検討する必要があります。

引き継ぎをする

株式譲渡も完了し取締役会、株主総会を経て最後に後継者へ事業の引き継ぎを行います。

従業員承継が完了したら承継後は登記手続きが必要になります。そちらについても事前に確認しておきましょう。

従業員承継を成功させる3つのポイント

従業員承継_ポイント

ここまで従業員承継の概要や流れをご紹介しました。

その上で従業員承継を行うならば、成功率を上げるポイントをおさえておきたいところ。

この章では従業員承継を成功させるポイントを3つご紹介します。

人材選びは慎重に行う

普段の働きぶりから優秀な社員を選ぶのは前提ですが、経営者になる以上周りの人間との協調性やリーダーシップなどが発揮できる人材選びが必要になります。

とはいえ、指名された従業員はいくら社長命令でもかなりのプレッシャーを感じることでしょう。

従業員の気持ちを尊重しながら、十分な説明や気持ちに寄り添い納得をもらうことが大切です。

承諾をもらっていないにもかかわらず、独自の判断で勝手に進めるのは避けるべきです。

資金面でも後継者をサポートする

従業員承継では資金面がかなり高いハードルになります。

従業員の立場からすると、多額な資金が必要になるため資金繰りで悩んでしまう従業員は多いです。

万が一従業員承継後に経営難になってしまったり、資金繰りが厳しくなる可能性などに対して後継者は常に不安になっていることでしょう。

その点、現経営者が資金面でサポート表明するだけでも、後継者は安心かつ冷静判断のもと事業承継できるでしょう。

事業承継に詳しい専門家からフォローをもらう

従業員承継だけではなく事業承継全般にいえることですが、事業承継を実施するならば専門家からアドバイスやフォローをもらうと確実かつ円滑に進められます。

事業継承はさまざまなプロセスから成り立っており、専門家の知識が必要な場面や、時には判断をお願いすることもあるでしょう。

また、専門家であれば事業承継のノウハウや経験を持っています。

となれば、専門家は経営者側と後継者側双方のフローもわかっているので、より確実なフォローが行えます。

事業承継を包括的にサポートできる専門家選びは必須と言えるでしょう。

従業員承継のまとめ

ここまで従業員承継について紹介してきました。

本記事をまとめると以下のようになります。

本記事のまとめ
  • 事業承継は親族承継、M&A、従業員承継にわけられる
  • 後継者が見つからない解決方法として従業員承継が増加している
  • 従業員承継は後継者選びの選択肢が広がる
  • 従業員承継は多額の資金が必要になる
  • 事業リスクを引き継ぐ可能性がある
  • 現経営者は後継者へのサポートが大切になる

大きく分類すると事業承継の一部に従業員承継があります。

その中でも後継者が見つからない解決法として、従業員承継が選ばれ増加し続けています。

その上で、従業員承継を検討する際は、従業員と経営者双方がメリット・デメリットを理解し、他の事業承継との比較も大切な判断材料になります。

企業が末永く継続し続け、従業員の雇用を守るためにも、従業員承継については常に情報を入れておく必要があります。