M&A交渉のプロセスは売り手・買い手だけの話し合いばかりでなく、書面化の作業も必要となります。
書面化の作業としては【秘密保持契約書】【意向表明書】【基本合意書】【最終契約書】の4つがあげられます。
その中でも【意向表明書】は「Letter of Intent:LOI」とも呼ばれ、買い手が売り手に対し、事業譲受・会社買収等の意思を示す書類でが、必ず作成すべき書面とはいえません。
しかし、売り手に書面で伝えた方が、誤解もなくM&A交渉を進められることでしょう。
そこで、この記事では、意向表明書(LOI)の特徴・記載すべき内容・提出の際に気を付け付けるべきポイント・意向表明書を含めたM&Aにおける契約書の種類と順番等について解説します。
- LOI(レターオブインテント)とはM&Aの意向確認書
- LOI(レターオブインテント)の内容は会社内容や売買条件など
- LOI(レターオブインテント)を締結するのは売買の意向を確認するため
- LOIとMOUの違いは、内容と締結するタイミング
- LOI(レターオブインテント)を出す際の注意点は3つ
- M&Aにおける契約書の種類と順番を解説
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LOI(レターオブインテント)とは?
こちらでは、LOI(レターオブインテント)の特徴と役割について解説します。
LOI(レターオブインテント)の特徴
M&Aを行う場合、たった一度の交渉で最終契約に至るケースはまずありません。
売り手・買い手ともにお互いをよくチェックし、段階を踏み、冷静に着地点を探しつつ、最終合意に向けて協議・契約を積み重ねていきます。
その重要な段階の一つが、LOI(意向確認書)の作成・提出です。
LOI(意向確認書)は、買い手が売り手に対してM&Aを行いたいと言う意思を示す書類であり、法的拘束力はありません。
LOI(レターオブインテント)の役割
LOI(意向確認書)は、一方的な意思表示ではなく次のような役割を担います。
- 署名を行い確認
- 今どきのコロナ禍の状況を考慮
- マッチング・サイトでアプローチした内容を再確認
署名を行い確認
LOI(意向確認書)には、互いの署名を記入します。
両者が署名すれば、今後の交渉内容・スケジュール・契約のための規則等を相互に確認できます。
今どきのコロナ禍の状況を考慮
交渉を行う経営者同士が交渉の場を設け、LOI(意向確認書)へ互いに署名する方法こそ、お互いの顔も見えて理想的と言えますが、「新型コロナウイルス感染症」が猛威を振るう中では難しい場合があります。
そんな場合には、郵送によって連署を求めるやり方も良いでしょう。
買い手側が、手紙のような形式で売り手側に書面を送付して連署を求めます。
売り手側は、受け取った書類に連署・コピーした書類を買い手へ返送します。
これで交渉当事者が、今後詰めていく交渉内容が記載された書面を所持できます。
相手方とトラブルが起きた際の覚書として、手元に残しておけます。
LOI(意向確認書)を、郵送によって作成することも可能となっている。
売り手側・買い手側共に、LOI(意向確認書)のコピーを作成するのを忘れないようにしましょう。
マッチング・サイトでアプローチした内容を再確認
最近では「M&Aマッチング・サイト」が続々と開設され、こちらで売り手または買い手を探す方々も多いです。
マッチング・サイトでは、売り手・買い手とも売買条件や希望売買価格を登録・開示している場合が多く(不公開案件もあり)、その内容を見て自社のニーズに合うか否か判断します。
自社のニーズに合う相手方ならアプローチすることができますが、サイトに明記している内容だけでは、お互いの条件・希望売買価格等を十分認識出来ない場合も多いです。
そのため、買い手は改めて意向表明書を作成して売り手に提出することで、買い手は交渉する強い意志を伝え、売り手は交渉内容を再確認できます。
LOI(意向確認書)を作成することで、売買の意思確認が出来て交渉内容の確認が出来る。
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こちらでは、LOI(意向確認書)に記載する内容について解説します。
- 買い手とその概要
- 買収価格
- 大枠のスケジュール
- 独占交渉権
意向表明書に記載する内容は上記の4点となります。
買い手とその概要
買い手がどんな会社なのか、買い手の企業概要を明記します。
- 商号
- 代表者
- 事業内容
- 沿革
- 資本金
- グループ企業の概要
- 財務の状況等
上記の様な内容を記載します。
買い手と売り手が互いによく知っているなら省略しても構いません。
ただし、いかに買い手が上場企業であっても「初対面の売り手の君たちでも、私の会社の名前くらい聞いたことがあるだろう」と、いきなり上から目線で接して企業の紹介をしないのは非常に無礼な態度です。
こんなことでは、LOI(意向確認書)を売り手に提出しても、売り手から反感を招き交渉は早々に破綻するでしょう。
買い手は売り手に対し、誠意をもって買収したい姿勢を示すべきです。
M&Aを行う上での自己紹介となります。お互いに誠意を持って向き合いましょう。
買収価格
買い手の希望買収価格を記載しますが、LOI(意向確認書)の段階ではあくまで「希望」であり、明記されているからと言って交渉当事者を拘束するわけでありません。
当然、買い手は「このまま通らないかもしれない」と考えておいた方が無難です。
M&Aマッチング・サイトを利用した場合、サイトに希望売買価格を公表する場合があり、こちら見てどちらか一方からアプローチしたことでしょう。
売り手・買い手双方の条件・希望価格に合っても、以後の交渉プロセスで価格は変動することが十分あり得ます。
その変動する作業の一つが「デューデリジェンス」です。
デューデリジェンスとは、交渉プロセスがある程度進展し、買い手が売り手の財務・法務等で問題は無いかを調査する作業のことです。
デューデリジェンスの結果次第では、最終合意の際に価格が調整されることもあります。
買収価格を記載しますが、この段階ではあくまでも希望価格となり、交渉・調査次第では金額が大きく変わることもある。
大枠のスケジュール
互いの利害がぶつかる交渉である以上、「スケジュールを決めたところで遅延するのは当たり前」と考える皆さんも多いはずです。
そうは言ってもスケジュールを記載するのは、売り手と買い手で共通のスケジュール認識を共有して、スケジュールに沿って検討を進めていくためです。
「〇月〇日に交渉を決める」と、明確に定めても良いですが、「双方の合意があれば交渉を継続・延長する」という文言を付け加えておいた方が良いでしょう。
また、買い手からみて当然必要と言えるスケジュールが、売り手へ十分に伝わっていないことを防ぐ目的もあります。
例えば、正式なM&Aの意思決定には買い手側の取締役会決議のための期間を要する等の記載が考えられます。
互いにM&Aに関するスケジュールを共有しておくことで、交渉などがスムーズに進む事が多い。
独占交渉権
買い手から売り手へ独占交渉を依頼する内容を明記します。
これを「独占交渉権」と言います。
交渉が進行すれば買い手はデューデリジェンスを実施・その費用の負担が必要となります。
買い手からみれば、この重要な時期に、売り手が他の買い手候補企業を探し、あろうことか先にM&Aを締結してしまうという事態も可能性がゼロとは言えません。
そんなことになれば、買い手の今までの苦労が水の泡です。
そのため、独占交渉権を明記し、他の買い手候補との交渉を禁じるのです。
具体的には、LOI(意向確認書)を作成した自社以外と、交渉しないと約束してほしい文言を記載します。
ただし、この独占交渉権は「交渉の決裂するまで効力がある」ならば、売り手が困惑してしまいますので、独占交渉権にも期限を明記した方が良いでしょう。
ただし、当事者が協議のうえ、合意すれば延長できる旨を記載するケースも多いです。
独占交渉権を締結しておくことは、買い手にとって重要なことになります。
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売却額の無料見積もりはこちら!LOI(レターオブインテント)を締結する意味
こちらでは、売り手と買い手がLOI(意向確認書)を締結する意味とタイミングについて解説します。
LOI(意向確認書)を締結する意味
買い手が安心して交渉を進めるため、前述した独占交渉権を意向表明書へ明記します。
こうすれば、買い手は他の買い手候補との競争で買収金額が釣り上がることも抑えられます。
つまり、買い手にとっては独占交渉権を取得した方が、自社が求める条件での契約締結を進められると言う訳けです。
逆に言えば、売り手からみれば独占交渉権を与えるのは、入札競争が行われず売却価格・条件の向上が見込めないことを意味します。
そのため、独占交渉権に消極的な傾向となり得る売り手へ、買い手が意向表明書を通して「売り手の皆さんとのM&Aに、かなり意欲的ですよ」と、熱いラブコールを示す意味もあるのです。
独占交渉権は、買い手は他社との競合を防げるが、売り手は売却価格・条件の向上が厳しくなり得る。
LOI(意向確認書)を締結するタイミング
売り手へ意向表明書という熱いラブコールを示すならば、提出のタイミングはトップ面談を終了後、買い手候補企業が具体的にM&Aを検討する段階で売り手へ提示します。
その後、売買価格やM&A成約後の運営方針など、諸条件について合意がされた段階で後述する基本合意書を締結します。
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売却額の無料見積もりはこちら!LOI(意向表明書)とMOU(基本合意書)との違い
こちらでは、LOI(意向確認書)・MOU(基本合意書)の違いを説明します。
双方の違いとは?
LOI(意向確認書)・MOU(基本合意書)の違いは下表の通りです。
比較 | LOI(意向確認書) | MOU(基本合意書) |
---|---|---|
法的拘束力 | 基本的に無し | 基本的に無し |
締結時期 | 基本的に序盤 | 基本的に中盤 |
内容 | ・企業概要
・希望買収価格 ・スケジュール ・独占交渉権 |
・対象・取引金額
・従業員・退職金額等の取扱い ・表明保証 ・デューデリジェンス ・誠実交渉義務・独占的交渉権 ・ペナルティ 等 |
MOU(基本合意書)では取り決めが明確に
LOI(意向確認書)も、MOU(基本合意書)も法的拘束力はありませんが、締結時期は、LOI(意向確認書)が交渉の序盤、MOU(基本合意書)は中盤です。
そのため、MOU(基本合意書)の内容は、より具体的な取り決めとなります。
なお、MOU(基本合意書)もLOI(意向確認書)と呼ばれる場合があります。
基本合意書の詳細な内容については後述します。
MOU(基本合意書)は、LOI(意向確認書)よりも具体的な取り決めが記載される。
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売却額の無料見積もりはこちら!LOI(レターオブインテント)を出すときに気を付けるべきポイント3選
こちらでは、LOI(意向確認書)の作成・提出の際の注意点を3つ取り上げましょう。
- 売り手は高い買収価格に油断は禁物
- 買い手は無理なく買収可能な価格を提示
- 秘密保持は大切
売り手は高い買収価格に油断は禁物
M&Aを有利に進めようと、買い手側が予想外の高い買収価格を提示する可能性があります。
しかし、この価格の妥当性には注意が必要です。
なぜなら、買い手が独占交渉権を得るため、あえて高い買収価格を書面で提示後、デューデリジェンスの結果をタテに値下げ交渉を行うケースは珍しくありません。
売り手がそれに納得できないと拒否すれば、契約不成立となる場合があります。
そのため、特にM&A未経験の売り手の場合は、誠実な価格提示がなされているかをM&A専門家にアドバイスを受けた方が良いでしょう。
買い手側が独占交渉権を得るために、当初から高い買取り価格を提示することもある。
買い手は無理なく買収可能な価格を提示
前述したようなデューデリジェンスの後に難癖をつけ、大幅に買収価格を下げる様な方法は売り手から信用を失います。
そのため、LOI(意向確認書)に不当な価額を提示せず、無理の無い価格設定を行いましょう。
価格に幅を持たせるにしても、文言としては「基本的に下限の価格を取引額とする」と、売り手と認識の大きな違いが生じないよう説明を加えれば、契約締結前に破談となるリスクは避けられます。
LOI(意向確認書)には、適正な売買価格の提示をする。
秘密保持は大切
交渉当事者はある程度、話が進んでいくと自社の財務状況を相手方に開示することとなるでしょう。
その開示した内容が漏洩しては取り返しのつかない事態となるかもしれません。
そんなことの無いようにM&Aの交渉前に、「秘密保持契約書」を締結しておいた方が無難です。
なお、秘密保持契約書を取り交わさなくても、LOI(意向確認書)に秘密保持の規定を追加して対応しても良いでしょう。
M&Aの交渉前に社内情報漏洩の備えて「秘密保持契約書」の作成が必要である。
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こちらでは、M&Aを行う際の書類の内容と作成・締結の順番について解説します。
- M&Aの交渉前は【秘密保持契約書】
- M&Aの交渉中は【意向表明書】
- M&Aを進めることについて合意したら【基本合意書】
- クロージングへ【最終契約書】
M&Aの交渉前は「秘密保持契約書」
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement、Confidencial Agreement:NDA)とは、M&A交渉前に売り手・買い手候補が締結する契約のことです。
何故、秘密保持契約書を作成する?
M&A交渉の際には、売り手の経営状況等を買い手もチェックしつつ、当事者が合意できる価格を決めていきますので、買い手・売り手の希望価格が100%通るというわけではありません。
買い手候補が複数いる場合は、それぞれに経営状況等を開示する事となるはずです。
また、買い手を1社に絞り本格的な交渉が開始された場合、買い手としては売り手を買収して自社の利益となるのか、交渉の際に話題とならなかったリスクや債務が存在しないか、慎重に調査することになります。
M&Aのプロセスで買い手が売り手を調査することを「デューデリジェンス」と呼びます。
デューデリジェンスは、売り手の財務状況はもちろん、法務・人事・技術・事業・ITと多岐にわたります。
そのためM&A交渉では、売り手の企業秘密が買い手(買い手候補)に知られることとなります。
そんな場合に情報漏洩が起これば、売り手はM&Aの交渉どころではなくなることでしょう。
そんなことの無いように、交渉当事者(買い手候補も含め)が秘密保持契約書を作成・締結するのです。
M&Aでの交渉における社内情報漏洩を防ぐために、交渉前に「秘密保持契約書」の締結は必須である。
秘密保持契約書の内容
秘密保持契約書では主に次のような内容を明記します。
- 契約の目的
- 秘密保持の範囲
- 秘密保持義務
- 目的外使用禁止
- 損害賠償、差し止め
- 複製禁止
- 情報の返還・破棄
- 契約期間
- 反社会的勢力の廃除
(1)契約の目的
M&Aのための秘密保持契約なので、「M&A達成」を明記しましょう。
(2)秘密保持の範囲
秘密保持の範囲を明確化します。
基本的に開示する側が情報を受け取る側に渡したすべての営業や財務、技術上の情報が範囲となります。
- 周知の事実
- 情報を受け取る側が前から知っていた情報
- 他の原因によって得た情報
上記の様な情報は秘密情報に該当しません。
秘密保持の範囲を広げると開示者に有利です。
逆に、狭めれば情報を受け取る側にとって有利です。
(3)秘密保持義務
秘密保持義務の内容を記載します。
この内容で締結することになれば、原則として情報を受け取る側は、第三者に開示するのが禁止となります。
- 開示する側から同意を得た
- 本件目的達成のためどうしても必要
- 法令上の義務で開示が必要
上記の様な場合は、開示が認められます。
(4)目的外使用禁止
情報を受け取る側が得た情報は、本件目的の達成以外の使用を禁止について明記します。
(5)損害賠償、差し止め
情報を受け取る側が契約に違反したなら、開示する側は情報を受け取る側へ、情報開示や利用の差し止め請求できることを規定します。
また、同時に損害賠償請求もできることを明記します。
(6)複製禁止
情報を受け取る側が、開示する側から得た情報を複製することの制限も規定します。
(7)情報の返還・破棄
秘密保持契約の目的を達成後、開示する側は情報開示を継続する必要がなくなります。
そのため、達成後は情報を受け取る側が、すぐに情報を返還または廃棄することを明記します。
(8)契約期間
契約期間を明記します。
(9)反社会的勢力の廃除
契約の相手方が暴力団等の「反社会的勢力」でないことを確認するための条項も入れます。
M&Aの交渉中は「意向表明書」
これまで解説してきた意向表明書を提出します。
こちらの表明書は前述したように、原則として法的拘束力がありません。
ただし、意向表明書の作成の仕方によっては、記載内容の一部について法的拘束力を持たせることもできます。
そのため、当事者が署名する前に法的拘束力の有無について、良くチェックすることが大切です。
M&Aを進めることについて合意したら「基本合意書」
MOU(Memorandum of Understanding)とも呼ばれます。
基本合意書が作成段階となると、M&Aプロセスも折り返し地点です。
既に意見を表明し合う段階はクリアしているはずですので、いろいろと売り手・買い手があげる条件・価格の差も縮まりつつあるでしょう。
しかし、まだまだM&Aのハードルは多いですが、基本合意書はM&A交渉の中盤の『要』となります。
原則、法的拘束力はない
基本合意書は、最終契約書を締結する前段階として、事前に作成した方が良い書類です。
基本合意書を作成すれば拘束力を伴うのは、基本的に価格(明記した場合)や独占交渉権です。
とはいえ、基本合意書を作成すれば売り手・買い手の意向が書面化され、方針が固まる効果も期待できます。
一部ですが事実上の拘束力もあるのです。
売買価格を明記するならば経営状況、専門家のアドバイスも得ながら、慎重に決定する必要があります。
もしも、価格の最終的な決定が難しいことを想定し、最終契約書で「価格調整ができる」を明記することもできます。
法的な拘束力は無いが、一部の条項に関しては法的な拘束力を持たすことも出来る。
基本合意書の内容
基本合意書では主に次のような内容を明記します。
- 対象・取引金額
- 従業員・退職金額等の取扱い
- 表明保証
- デューデリジェンス
- 善管注意義務
- 誠実交渉義務・独占的交渉権
- ペナルティ
- 契約期間
- 秘密保持義務
- 確認規定
- 協議事項
- 裁判管轄
(1)対象・取引金額
対象を特定し、確定済みなら売買価格を明記します。
もしも売り手の負担する保証債務等がある場合、適切な方法で消滅させると規定します。
そして本件M&Aが成立するには、取締役会の承諾を得る旨の文言の明記も行います。
(2)従業員・退職金額等の取扱い
M&Aで従業員が買い手へ移る契約なら、その対応も記載します。
雇用継続する場合、雇用条件等を規定します。
残念ながら役員や従業員に退任・退職してもらう場合は退職金額も記載します。
(3)表明保証
表明保証条項とは、一般的にM&A取引で契約当事者の一方が、他方の当事者に対し、契約目的物などの内容について、一定時点の一定の事項が真実・正確であることを表明し内容を保証する条項も明記します。
(4)デューデリジェンス
買い手の調査のために売り手等が協力することを明記します。
協力内容(会計処理や財務内容・将来の収益見通し・契約関係や株式帰属・不動産の利用・権利状況等)の調査へ必要な協力することを明記します。
(5)善管注意義務
善良なる管理者の注意義務で保存しなければいけないという規定です。
財産状態等を大幅に変える行為の制限、禁じる規定を記載します。
例えば、新規借入・新規投融資、担保権設定、従業員の賃金・給与の水準の大幅な変更等が該当します。
(6)誠実交渉義務・独占的交渉権
当事者の誠実な努力と独占的交渉権を明記します。
(7)ペナルティ
買い手の調査で売り手等に違反等を発見した場合、価格を修正(減額)することも記載します。
もはや回復困難な事態なら契約解除、悪質な違反なら損害賠償責任を負うことを明記します。
(8)契約期間
定めた期日までに最終契約が締結できない場合、合意は白紙に戻る記載をします。
(9)秘密保持義務
秘密保持規定を盛り込みます。
(10)確認規定
当事者が最終契約締結を高速されるものではないという確認規定も明記します。
(11)協議事項
M&Aのプロセスで問題が発生した場合、当事者が誠実に話し合い解決することを明記します。
(12)裁判管轄
紛争が発生したときの合意裁判管轄を規定します。
ただし、売り手・買い手の交渉状況によっては、かなりM&Aの内容がほぼ問題なく合意に達しているケースと、まだまだ検討の余地があるケースと進捗に差があることでしょう。
その場合は、柔軟に合意内容を当事者同士で調整し、決まり事を盛り込んでいきましょう。
クロージングへ「最終契約書」
最終契約書は「Definitive Agreement:DA」とも呼ばれます。
M&A交渉の正式かつ最終的な契約書です。
最終合意で必ず締結
デューデリジェンスで売り手に大きな問題は無いと判明したら、いよいとM&A当事者が最終合意の段階に入ります。
その際に、最終契約書を作成し、お互いに内容を良く把握した上で契約を締結します。
最終契約書には、M&A当事者が法的に拘束され、契約違反には大きなペナルティが課せられます。
契約内容におかしな点は無いか、M&Aに詳しい弁護士等の専門家の意見も参考に慎重な締結が必要となります。
- 対象の特定・取引金額確定
- 表明保証
- 補償条項
- 誓約事項
- 前提条件
- 解除条件
- 損害賠償
- 秘密保持義務
- 公表について
- 競業避止義務
- 費用負担
- 裁判管轄
(1)対象の特定・取引金額確定
M&Aの対象とその価格を決定します。
とはいえ、最終契約締結時点でも価格の最終的な決定が困難な場合、一定期間終了後、最終価格を決める「価格調整条項」を付加することもできます。
(2)表明保証
当事者同士が、契約対象・目的物の存在を表明、かつ、内容を保証することを意味します。
(3)補償条項
表明保証条項の違反、契約上の義務違反があれば相手方の被った損害を補償する条項について明記します。
(4)誓約事項
クロージングまたはクロージング後も当事者が実行する行為、逆に禁止する行為等を規定します。
(5)前提条件
当事者がそれぞれ前提条件を満たさなかったときは、M&Aから離脱できる権利等を明記します。
(6)解除条件
M&A取引期間中、当事者の財産状態・経営状態に重大な悪影響が発生した場合、買い手に契約締結を拒否する権利を明記します。
(7)損害賠償
当事者が、契約で決めた債務を履行しないことも想定し、損害賠償の予定等を明記します。
(8)秘密保持義務
M&Aの最終契約締結の内容、経緯等の秘密の保持を明記します。
(9)公表について
M&Aに関する事実を公表するなら、公表するタイミングを明記します。
(10)競業避止義務
売り手が売却した事業と同一の事業を禁じる規定です。
(11)費用負担
M&A実行にかかる売り手・買い手双方の費用負担等を明記します。
(12)裁判管轄
M&Aに関係する紛争が発生した場合のため、合意裁判管轄を明記します。
最終契約書作成・締結=M&A成功?
最終契約書を締結、買収したお金が売り手側に振り込まれ、行政機関に各種変更届・手続き等を行えば、確かに「ひと山越えた」感はあります。
当事者が慎重に最終契約書へ合意、更に作成の際、弁護士等の専門家が携わっていれば、締結自体は滞りなく終えられるはずです。
しかし、それだけではM&A成功と言えません。
M&Aが事業譲渡にしても会社売却にしても、もともと別々の会社です。
企業文化が異なる事から、統合する際にトラブルが生じるかもしれません。
そのため、M&A交渉の際に助力を受けた専門家(弁護士やM&A仲介業者等)から、これ以後もアドバイスは受けたいものです。
M&A仲介業者の中には契約締結以後、引き続いてサポート・サービスを提供してくれる業者もあります。
費用は掛かると思いますが、M&A成功のため更なる助力を依頼した方が無難です。
M&A後に、企業文化の違いによるトラブルが起こりえる可能性もある。
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こちらでは、良くある質問を2つ取り上げましょう。
そもそもどうやって買収価格を出す?
買収価格を出すため、売り手企業を評価する方法はいろいろとあります。
メジャーな算定方法に【DCF法】があります。
しかし、こちらは売り手の詳細な財務状況や将来予測を算定に加えるので、買い手が売り手を評価するのは至難の業です。
そのため、上場している株価をもとに、企業価値や会社買収の価格(金額)を算出する【市場株価法】、売り手と同じ規模の類似上場企業の株価をもとに、企業価値・会社買収の価格(金額)を算出する【類似会社比準法】で評価がある程度可能です。
なお、お目当ての相手方の経常利益がわかるなら、その「経常利益の5倍」で単純に計算しても、企業価値の目安になるといわれています。
企業価値の算出方法には【DCF法】【市場株価法】【類似会社比準法】の3つがある。
M&A未経験なのでいろいろと不安
M&A当事者が双方ともM&A未経験なら、初めての作業や交渉でM&Aが難航する場合も考えられます。
また、どちらか一方がM&A未経験なら、相手側はM&Aのノウハウを知っているため、やはり未経験の会社には不利です。
そんな場合はM&A仲介会社を立てて、利害調整等を図ってもらいましょう。
売り手・買い手に公正中立な業者も多く、双方に適切な助言をしてくれることでしょう。
ただし、M&Aの仲介手数料は成功報酬しか受け取らない業者、着手金・月額報酬を受け取る業者と様々です。
まずは、M&A仲介会社に問い合わせの際、支払方法をよく確認しましょう。
M&A未経験なら、仲介業者に依頼するとスムーズに交渉できる可能性が高くなる。
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売却額の無料見積もりはこちら!LOI |まとめ
LOI(意向確認書)は、必ず作成する書面と言えませんが、M&A交渉を円滑に進める役割を担います。
LOI(意向確認書)は、M&A交渉の序盤に用意する書面です。
そのため、内容は基本合意書・最終契約書と比較してもシンプルです。
買い手としては売り手に配慮しながら、基本的な価格・スケジュール設定を決めることが大切です。
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