総数引受契約は、募集株式発行の際に全ての募集株式を特定の引受人に割当てる契約です。
不特定多数の引受人を募ることをしないので、その分手続きが簡略化されます。
総数引受契約を利用すれば、簡略的に資金の調達ができるので、多額の費用を要する工場建設・設備投資や海外進出等の事業の拡大を迅速に実行できます。
そこで、この記事では、総数引受契約の特徴や総数引受契約に記載するべき事項から、手続きを進める場合の必要書類や総数引受契約を進める際の注意ポイントについて解説します。
- 総数引受契約とは、募集株式の引受人を事前に決めて引き渡す契約
- 総数引受契約の5つの記載事項は重要事項!?
- 総数引受契約の必要書類は5種類
- 総数引受契約の手続き手順は4ステップ
- 総数引受契約のポイントと注意点
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目次
総数引受契約とは?
このような場合には【総数引受契約】を検討してみるべきでしょう。
こちらでは、総数引受契約の特徴と第三者割当増資との違い等について解説します。
- 総数引受契約とはなに?
- 総数引受契約の目的
- 総数引受契約と第三者割当増資との違い
総数引受契約とはなに?
総数引受契約(「Underwriting Contract」または「Underwriting Agreement」)とは、募集株式の発行する会社が募集株式の引受人を事前に決め募集株式を引き渡す契約です。
この契約では1人の引受人へ全ての募集株式を引き渡しても、複数人へ募集株式を分けて引き渡してもOKです。
総数引受契約ならば、簡略な手続きで募集株式のを引き渡しが可能で、通常ならば必要なプロセスである「募集株式の申込み」「割当決議」を省略することができます。
募集株式を特定の人に引き渡す契約であり、通常必要なプロセスが省略できる方法。
総数引受契約の目的
募集株式には下記のような2つのケースがあります。
- まだ出資者が決まっていないケース
- 既に出資者の決まっているケース
株式を発行して出資して貰う際に、上記の様なケースに分かれます。
まだ出資者が決まっていないなら、募集株式の引受人を募集します。
希望通りに引受人が集まるかどうかは、やってみないとわかりませんが、有名企業ならあまり心配する必要はないでしょう。
なお、募集株式の引受人複数人いるときは、募集株式の割当配分を決める必要がありますが、出資者が決まっていて募集株式を発行するなら上記の手続きは省略可能です。
こうすれば、総数引受契約による手続きを行うことにより、手続きが簡略化できて出資を受けるまでの期間も短くできます。
この契約を利用する目的は、手続きを簡略化し速やかに引受人から出資してもらうことです。
募集株式を発行する場合に、出資者が決まっていれば、手続きを簡略化して迅速に資金調達が出来る。
総数引受契約と第三者割当増資との違い
こちらでは第三者割当増資という方法と総数引受契約との違いをみていきましょう。
第三者割当増資とは
こちらも会社の資金調達方法の一つであり、株主であるか否かは関係なく、特定の第三者に新株を引き受ける権利も与えて増資します。
「株式を引き受けたい」と申し込みをした人に対して、新株もしくは会社が処分する自己株式が割り当てられます。
第三者割当増資は、会社の株主資本の充実・財務内容を健全化させることが目的です。
この方法は、未上場企業が資金調達の一環として行うことが多いです。
総数引受契約はオプション?
特定の相手から出資を募るのが第三者割当増資なので、「総数引受契約をあまり変わりないじゃないか?」と思う方々もいるはずです。
まさしくその通りであり、第三者割当増資と総数引受契約は全く別の方法というわけではありません。
第三者割当増資を簡略化した方法が総数引受契約です。
総数引受契約は、いわば第三者割当増資のオプションの一つといえます。
第三者割当増資は、誰に対しても募集株式を割り当てられる方法であり、未上場企業の資金調達として使われる事が多い。
第三者割当増資を簡略化した方法が総数引受契約である。
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総数引受契約の記載事項
こちらでは、総数引受契約書を記載するべき内容について解説します。
- 募集株式の種類と株式数
- 募集株式の割当て方法・募集株式の払込み金額
- 増加する資本金・資本準備金に関する事項
- 払込み期日・それを取り扱う場所
- その他
募集株式の種類と株式数
募集株式の発行では引受人の要望等を考慮し、いろいろな優先権を付与した種類株式を発行することができます。
そのため、当該契約書には募集株式の種類・株式数の明確な記載を要します。
例えば次のように総数引受契約書へ記載しましょう。
株式会社株式会社〇〇〇〇屋(以下甲)及び本引受人〇岡〇勇(以下乙)は、以下のとおり募集株式の総数引受契約を締結する。
第1条:甲は乙に対して、新たに発行する募集株式〇〇〇株全てを割り当てる。乙は本契約に承諾し募集株式の総数の引受を行う。
前述したように募集株式全てを割り当てても良いですし、その一部を割り当てても構いません。
当然のことですが、相手が支払ってくれないと契約した意味は無いので、引受人が無理なく支払える株式数はしっかり確認しておきましょう。
募集株式の割当て方法・募集株式の払込み金額
募集株式の引受人は複数人いる場合もあります。
総数引受契約書には引受人名・各引受人に割り当てる株式の種類・株式数を記載します。
以下の表のように記載すればわかりやすいでしょう。
例:募集株式で法人1社・個人1人が引受人となる場合(普通株式500株)
第2条:募集事項
1.特定の第三者に以下のとおり募集株式の割当てを受ける権利を与える。
割当てを受ける者 | 割り当てる募集株式の種類 | 割り当てる募集株式数 |
---|---|---|
株式会社〇〇〇〇社 | 普通株式 | 400株 |
〇岡〇勇 | 普通株式 | 100株 |
合計 | 500株 |
また、募集株式1株あたりの払込み金額も明記します。
引受人の払込み金額は割り当てられた募集株式数に、1株あたりの払込み金額を乗じた金額です。
例えば1株につき10,000円の場合
2. 募集株式の払込金額
募集株式1株につき 金1万円
ということは、表の株式会社〇〇〇〇社が支払うお金は
10,000円×400株=4,000,000円
400万円となります。
増加する資本金・資本準備金に関する事項
本契約書は変更登記の際に提出する書類です。
そのため、記載は必ずしも行わなくても良いのですが、増加する資本金・資本準備金に関する事項は記載した方が良いでしょう。
本契約書では次のように記載しましょう。
3. 増加する資本金
募集株式1株につき 金〇万円
4. 増加する資本準備金
募集株式1株につき 金〇万円
払込み期日・それを取り扱う場所
本契約書には、払込み日を指定しているなら該当日、払込み期間で指定しているなら最終日を明記します。
本契約書では次のように記載しましょう。
例:2021年7月1日と払込期日を明記する場合
5. 金銭の払込期日
令和3年7月1日
もちろん本契約書では、払込日に加え払い込む金融機関も指定します。
変更登記の際は払込みがあったことの証明書類も必要です。
払込み期間ギリギリではなく、余裕を持って行うことが大切です。
次のように記載します。
6. 払込取扱場所
東京都豊島区〇〇 △△銀行 □ □支店
その他
総数引受契約書を取り交わした年月日・当事者の住所・当事者名を記載して押印します。
本契約書では次のように記載しましょう。
例えば令和3年6月1日に株式会社〇〇〇〇社と契約を締結した場合
本契約成立の証として、本書2通を作成して甲乙は署名又は記名捺印の上、各1通を保有する。
令和3年6月1日
甲:東京都港区〇〇
株式会社〇〇〇〇屋
代表取締役 〇門 〇治郎 (会社代表印)
乙:東京都新宿区〇〇
株式会社〇〇〇〇社
代表取締役 〇平 〇之助 (会社代表印)
※なお引受人が個人の場合は、住所・氏名・個人印(認印OK)で記名捺印します。
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総数引受契約の必要書類
こちらでは、総数引受契約に関する必要書類等を解説します。
- 取締役会議事録
- 株主総会議事録
- 払込証明書
- 資本金計上証明書
- 変更登記申請書
変更登記の際はいろいろな書類が必要
総数引受契約を引受人と契約を交わすこと自体では、必要な物といえば当事者の本人確認書類や印鑑くらいです。
しかし、株式を新たに発行した場合、資本金の額・発行済株式数の数が増加するため、総数引受契約書の効力が発生した時から2週間以内に、変更登記申請を行わなければいけません。(会社法第915条第1項)
変更登記申請の際に提出する書類は、総数引受契約書の他に次の通りです。
- 取締役会議事録
- 株主総会議事録
- 払込証明書
- 資本金計上証明書
- 変更登記申請書
次項からそれぞれの書類について解説します。
取締役会議事録
ご自身の会社が取締役会設置会社ならば、総数引受契約に関する決定を取締役会で行います。
取締役会で討議された議事内容を記録した書類が【取締役会議事録】です。
取締役会議事録は、会社法で作成が義務付けられ、書面や電磁的記録で作成する必要があります。
作成時期は法定されていないものの、取締役会の日から合理的な期間内に作成しなければいけません。
ほとんどの会社は1週間以内を目安に作成しています。
当然ながら変更登記申請前には作成を終えている必要があります。
取締役会議事録の内容は、募集株式の種類・発行数や誰が引受人となったのか、定款の変更、株主総会の開催等の事実を記載します。
この書類を添付すれば、取締役会設置会社が取締役会にて、総数引受契約に関する決定を行ったことが証明されます。
変更登記申請前に、取締役会を開催して討議された内容を記した【取締役会議議事録】が必要になる。
株主総会議事録
支配株主(会社の発行済み株式に対し、議決権のある株式の過半数を保有する株主)の異動、総数引受契約に反対する株主からの請求等、株主総会の開催が必要となることもあります。
この場合は、株主総会を開催して株主からの承認を得ることが必要です。
特別決議は、総議決数の過半数の株主が出席して2/3以上の賛成が必要です。
このように、株式会社の最高意思決定機関である株主総会で、どのようなことが議題となり、どんな事項がどのようなプロセスを経て決定したのかを記録するものが【株式総会議事録】です。
株式総会議事録の形式自体は、法律上でこうしなければけないという決まりも無く、インターネット上のひな型・書籍のサンプルを参考に作成すれば十分です。
ただし、株式総会での決定を正確に記録するためには、一般的な記載項目として
- 総会の名称・開催の日時・場所・終結時刻
- 取締役・監査役の出欠状況
- 議決権を有する株主総数・出席株主の議決権数
- 議事の開催~終結までの経過
- 総会に付議された議案の決議結果
の明記は必要となるでしょう。
株主総会を開き、過半数以上の出席者の3分の2以上の賛同を得た上で、議事録の作成が必要となる。
払込証明書
引受人からお金が指定銀行への振り込まれたら、振り込みについて証明するための書類である【払込証明書】を作成します。
株式発行で資本金額増加したときの記載は、次のように作成します。
当会社の募集株式については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します。
払込みがあった募集株式数 〇〇〇株
払込みを受けた金額 金〇〇〇万円
令和3年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇屋
代表取締役 〇門 〇治郎
その他、出資金が払い込まれた預貯金口座の通帳の表紙、入金が記帳されているページをコピーしましょう。
作成した証明書・記帳のコピーをとじれば完成です。
これで引受人から実際に出資があったことを証明できます。
払込が確認できた時点で、払込証明書を作成します。
払込があった預貯金口座の通帳の表紙と入金が記帳されたページのコピーもしておく。
資本金計上証明書
こちらは、資本金の額が会社法・会社計算規則の規定に従い、計上されたことを証明する書面となります。
次のように証明書を作成します。
1.払い込みを受けた金銭の額(会社計算規則第43条第1項第1号) 金〇〇万円
2.給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額(会社計算規則第43条第1項第2号) 金〇〇万円
3.1+2 金〇〇万円
資本金の額〇〇万円は、会社法第445条及び会社計算規則第43条の規定に従ってされたことに相違ないことを証明する。
令和3年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇屋
代表取締役 〇門 〇治郎
変更登記申請書
株式会社変更登記申請書を作成します。
会社法人等番号・商号・本店所在地・登記の事由(もちろん募集株式発行)など、登記すべき事項を記載します。
そして、これまで述べてきた添付書類と共に、会社の本店所在地を管轄する法務局に対して申請を行います。
なお、契約した内容によっては提出する必要書類が異なるので注意しましょう。
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総数引受契約の手続きの流れ
こちらでは、総数引受契約の手続きのプロセスについて説明します。
- 募集事項の決定
- 募集株式の申込み・割当決議
- 出資の履行
- 登記申請
第1段階|募集事項の決定
株式会社は、その発行する株式または、その処分する自己株式を引き受ける者について募集したいなら、その都度、募集株式に関する次の事項を定めければいけません。(会社法第199条第1項)
- 募集株式の数(種類株式発行会社の場合、その種類・数)
- 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭or給付する金銭以外の財産の額)またはその算定方法
- 金銭以外の財産を出資目的とするなら、目的・当該財産の内容・価額
- 募集株式と引換えにする金銭の払込みor財産の給付期日orその期間
- 株式発行の時は、増加する資本金・資本準備金に関する事項
株式の発行は会社にとって重要な手続きであり、まずは上記の事項をどうするか慎重に検討する必要があります。
ほとんどIPO(新規公開株)達成企業が外部から株式で資金を調達しています。
その資金を基に自社サービスを拡大させ成功するに至っています。
スタートアップ時には数百億円を超えるような資金調達もありえます。
また、数億円単位に及ぶ株式での資金調達も決して稀なケースではないのです。
とはいえ内容を決めたら、いきなり募集株式の申込みをするのではなく、ケースによっては、株主総会もしくは取締役会(公開会社の場合)による決議の必要があります。
株式の発行・処分をする場合には、募集事項を定めなければいけない。
第2段階|募集株式の申込み・割当決議
株主総会もしくは取締役会による決議で決めた内容を基に、発行する株式を引受ける人が申し込みします。
企業は引き受ける人へ決定した募集事項等を通知
引き受ける人は次の内容を明記した書類を企業へ交付
- 申込みをする者の氏名または名称および住所
- 引受けようとする募集株式の数を記載した書面
など
上記の内容を株式会社に交付することになります。(会社法203条2項、3項)
ただし、この手続きは省くこともできます。
なぜなら総数引受契約の場合は、双方の合意のもとで事前に引き受ける人と割当てる募集株式数が決まっているからです。
一方、割当決議とは申込みをしてきた人へ、どれだけの株式を割当てるかについて定める決議です。
ただし総数引受契約の場合、事前に割当て株式数が決まっており、募集株式の申込み同様に省いても構いません。
なお、譲渡制限株式(種類株式の一種)の場合、原則として株主総会または取締役会の決議が必要です。
こちらの場合、事前に定款へ特別の規定を設けていればやはり決議は不要です。
募集株式に対して、引き受ける人が申し込みをする。
双方合意の基で割り当てる募集株式数が決まっている場合は、申し込みに関わる書類を省略することが出来る。
第3段階|出資の履行
引き受ける人は、募集事項に記されている期日または期間内に、割当てられた募集株式の払込金額全額を支払う必要があります。(出資の履行)
金銭で出資するならば、企業が設定した期日までに発行会社の金融機関の口座へ入金されていないと登記申請ができなくなります。
そのため、期日ギリギリというよりは、余裕を持って振り込みましょう。
実質的に期日の15時頃が出資のタイムリミットといえます。
もちろん金銭で支払うのは基本ですが、金銭以外の財産で出資することもできます。
ただし、募集株式の払込金額全額に相当する財産を給付する必要があります。
引き受ける側は、募集事項に記載されている期日・期間内に余裕を持って払込金額全額を支払う。
第4段階:登記申請
出資の履行がなされれば、法務局で登記の変更申請を行い、総数引受契約の手続きは完了することになります。
登記申請は、引受人の払込みで増資の効力が発生した日から2週間以内に行わなければいけません。(会社法第915条第1項)
登記の変更申請には前述した書類を提出する必要があります。
また、総数引受契約で資本金を増やすので、登録免許税を納付することになります。
増加した資本金の額の0.7%が登録免許税となり、3万円に満たないなら申請1件につき3万円を納付します。
増資をしてから2週間以内に登記事項の変更申請をしなければいけない。
増資した金額の0.7%or3万円の登録免許税を支払わなければいけない。
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総数引受契約の注意ポイント4選
こちらでは、総数引受契約の3つの注意ポイントを紹介します。
- 引受人の強大化はまずい?
- 譲渡制限株式は面倒?
- ベンチャーキャピタルとの契約
- 契約違反への対応に不安あり
引受人の強大化はまずい?
公開会社が募集株式を発行することで、特定の引受人が議決権の1/2を超える場合もあります。
その時は、本契約で定めた代金支払期日の2週間前までに、特定引受人の氏名・議決権数等を株主への通知または公告(※)をしなければいけません。
この通知・公告から2週間以内で、少数株主が本契約に対して異議申し立てを行ったなら、会社側は支払期日の前日までに株主総会を開催します。
そして、株主から総数引受契約の同意を得る必要がありますが、実際に行うとなれば株主総会の開催に時間が掛かることでしょう。
せっかくの総数引受契約へ弊害が生じるおそれもあります。
そのため、ほとんどの会社では事前に株主総会で株主の同意を得るやり方がとられます。
また、やむを得ない事情があるならば、株主総会を開催せず、手続きを進めることも特例として認められています。
(※)公告:公人・私人が法令上の義務で、特定の事項を広く一般に知らせることを言う。この方法は、官報・新聞への掲載・掲示等の文書、インターネット等の電磁的方法により実施される。
募集株式を発行して特定の引受人が議決権の1/2を超える場合は、代金支払期日の2週間前までに、特定引受人の氏名・議決権数等を株主への通知または公告をしなければならない。
譲渡制限株式は面倒?
公開会社の場合、前述のように支配株主の異動が伴う場合以外は、株主総会の開催は省略できますが、譲渡制限株式の場合は勝手が違います。
譲渡制限株式とは、譲渡する場合に制限の掛けられている株式を指します。
会社が不利益となってしまう第三者へ株式を渡さないため、株式の所有者を明確にさせるために譲渡制限株式を行います。
定款で株式譲渡制限が定められている非公開会社ならば、株主が少しでも変わると経営に与える影響が大きくなります。
そのため、募集株式の発行数に関係なく株主総会を開催しなければいけません。
ただし、事前に定款へ特別の規定を設けていれば決議は不要です。
会社が不利益となってしまう第三者へ株式を譲渡しないために、譲渡制限株式の設定をしている場合は、株主総会を開催する必要がある。
ベンチャーキャピタルとの契約
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業・スタートしたばかりの企業など、高い成長が予想される未上場企業に対して出資を行う投資会社のことです。
投資先の企業が上場・成長した後、保有している株式を売却または事業を売却して、キャピタルゲイン(当初の投資額と株式公開後の売却額との差額)を得る目的で、未上場のとき積極的に投資を行うのです。
この投資会社から資金調達をする最大のメリットは、調達できる金額が大きいということです。
ご自身の会社のビジネスモデルの可能性によっては、数億円という大きな資金を手にできる可能性もあります。
しかし、ベンチャーキャピタルと契約する場合は、総数取引契約書の他、投資契約書を締結することも求められるはずです。
特に創業間もないベンチャーへの出資は、経営の行き詰まってしまうようなリスクも考えられます。
そのため、ベンチャーキャピタルが定めた条件で投資契約書を結び、投資によるリスクを軽減するのです。
気になる契約内容は早期に資金回収をするため、株式の売却を行うというような規定等も想定されます。
ベンチャーキャピタルと契約するならば、投資契約書の内容をまずはしっかりチェックし、納得の上で契約を締結しましょう。
ベンチャーキャピタルとの契約では大きなメリットもあるが、投資契約書を締結する場合も多いため、投資契約書の内容チェックをしっかりしないといけない。
契約違反への対応に不安あり
こちらは、特定引受人の方々への注意点です。
それは、表明保証に関して契約完了後、募集株式を発行した会社に契約違反等があった場合、返金請求の通らないことがあげられます。
表明保証とは、契約内容・提供した企業情報に間違いがないことを保証する書面です。
募集株式を発行後、表明保証に反する事実が判明しても、株式を割り当てることが省かれており、通常行われる手続きを踏んでいなかったとみなされる可能性が高いからです。
また、特定引受人損害については、会社が当該損害を補償すれば、実質的に第三者が市場価格等より低い価格で株式を取得したとみることも可能です。
よって【有利発行(※)】に当たり得るとされる場合も考えられます。
そのため、このような返還請求も認められるかは疑問があると指摘されています。
有利発行(※):新株または新株予約権の発行をするなら、社会通念上妥当と考えられる公正価格で行われるのが一般的である。しかし、時価未満(無償付与含む)で発行され、これが新株または新株予約権の引受人にとって特に有利となることがある発行をいう。
表明保証に関して契約完了後に、募集株式を発行した会社に契約違反等があった場合は、返金請求が通らないことがある。
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総数引受契約のよくある質問2選
こちらでは、2つの良くある質問について解説しましょう。
総数引受契約で付与された引受権を会社が無視したらどうする?
会社が引受権を無視した取扱い等、契約に違反した場合は、考えられ得る対抗策は次の2つです。
- 新株発行の無効の訴え
- 募集株式の発行の差止め
しかし、裁判所では『いずれの訴えも第三者が申し立てることはできない』と判断しています。
その理由として、引受人が得た引受権は、優先的に募集株式を割当てる旨を会社が約束するものに過ぎないとしています。
そもそも契約違反の効力は、民法上の債務不履行にしか該当しないと指摘されています。
引受権は、『株主に対し募集株式の割当てを受ける権利も付与する』というような、会社法上の意義はないと結論が出ています。
はじめての総数引受契約、誰に相談するべき?
こちらでは総数引受契約を締結する際、助力を得るべき専門家について紹介します。
弁護士
皆さんご存知の、依頼を受け、法律事務を処理することを職務とする専門職です。
会社法に精通する弁護士も多く、会社訴訟や株主代表訴訟、内部統制やリスクマネジメント、コーポレート・ガバナンス、株主総会対策等の多方面で企業サポートが期待できます。
ただし、弁護士には得意不得意があり、企業法務全般を得意とする人もいれば、刑事法務全般、相続問題全般等が得意な人もいます。
総数引受契約をはじめとした企業法務全般へ精通する弁護士に依頼したいなら、つてを頼るのももちろんですが、ホームページ等から弁護した実績をチェックしましょう。
ホームページでは、経歴が簡潔に書かれているので、どんな分野の法律が得意なのかすぐにわかります。
その上で、総数引受契約に関する事前相談を行い、報酬等の見積もりを出してもらいましょう。
既に提携している弁護士がいるなら、まずそちらに相談してみましょう。
提携弁護士なら自社の現状も良く理解しており、迅速なアドバイスが得られることでしょう。
弁護士は法律に精通しているが、得手不得手があるので、弁護士選びも慎重に!!
M&A仲介会社
意外かもしれませんが、企業買収のアドバイザーであるM&A仲介会社も、総数引受契約等をサポートしてくれる場合があります。
資金調達の方法としてはM&Aがあるものの、どうしても抵抗があるなら、募集株式で何とかしたいものです。
M&A仲介会社には専属している弁護士もいて、いろいろと総数引受契約のメリット・デメリット、リスクを軽減する方法について教えてくれます。
もちろん、トラブルが起こってから善後策を検討するのではなく、トラブルを未然に防ぎ、円滑な総数引受契約が締結できるよう取り計らうのです。
M&A仲介会社では、単なる友好的買収のみならず、このような資金調達方法を指南してくれるのです。
ただし、M&A仲介会社の全てが、総数引受契約を含めたサポートも行ってくれるとは限りません。
まずはM&A仲介会社へ事前相談し、第三者割当増資・総数引受契約等もサポートしてくれるかどうか、確認してみましょう。
もちろん、M&A仲介会社へ依頼する場合は、サポート料もかかるので、M&A仲介会社側から事前に見積りは出してもらいます。
M&A仲介会社でも、総数引受契約や第三者割当増資のサポートをしてくれる場合もある。
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総数引受契約|まとめ
総数引受契約は、ご自身の会社にとって、頼もしい資金調達方法となることでしょう。
しかし、これまで述べてきたように、募集株式を行う会社側にも引受人にもメリット・デメリットは必ず存在します。
ケースによってが、ご自身の会社と引受人がトラブルとなる事態も考えられます。
このようなトラブルは会社の信用にも関わってしまいます。
総数引受契約を初めて行う場合は、自社で何とかしようと無理に考えず、専門家の助力やアドバイスも受けながら円滑に手続きを進めていきましょう。
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