仮想通貨の税金は、株のような金融商品と同じく取引で利益が生じた場合に課税対象となる仕組みです。
しかし、仮想通貨は取引による利益以外にも課税対象となるタイミングがいくつかあります。
本記事では仮想通貨で税金が発生する主なケースを解説し、仮想通貨の税区分や国税庁が進める確定申告のやり方などを解説します。
仮想通貨は最大税率が所得税45%となっていますが、合法で行える節税対策も解説するため最後までお読みください。
- 仮想通貨で税金が発生するケースは年間利益が20万円以上
- 仮想通貨の税区分は雑所得
- 仮想通貨の確定申告のやり方は5ステップ
- 仮想通貨の節税対策はふるさと納税やiDeCoが簡単
目次
仮想通貨は税金がかかる?
仮想通貨は他の金融商品と同じく、利益を出せば税金がかかります。
ただ、仮想通貨の税金は複雑で難しく、まずは以下について解説します。
- 仮想通貨で課税対象となるケース
- 仮想通貨を持っているだけなら税金はかからない?
仮想通貨で課税対象となるケース
仮想通貨で課税対象となるケースは、「年間20万円以上の利益が発生した場合」になります。
学生や主婦など扶養に入っている方は年間33万円以上の利益が発生した場合に課税対象となります。
また、仮想通貨における利益の発生は、売買を行って生じたときだけではありません。
他の仮想通貨へ交換した際に利益が生じたり、仮想通貨で決済を行った際に利益が生じたりしても、課税対象となります。
例として、以下のシナリオで考えてみましょう。
- 1BTC=100万円のときに1BTCを購入
- 1BTC=110万円のときにPCを購入
- 支払いをBTCで済ませる
「PCの購入金額110万円(1BTC)ーBTCの取得価格100万円=10万円の利益」となるのです。
仮想通貨を持っているだけなら税金はかからない?
仮想通貨を持っているだけなら税金はかかりません。
仮想通貨を買って保有していると含み益が生じるときがありますが、含み益に税金はかからず、現金化したり利益が生じる行動をしたりして初めて税金がかかります。
そのため、税金を安く抑えるためにあえて利益確定をせず、含み益の状態のまま残しておく投資家もいます。
仮想通貨の税区分「雑所得」の概要
仮想通貨で年間20万円以上の利益が生じると所得税が発生しますが、仮想通貨は所得税の中でも「雑所得」に当たります。
所得税の区分は10種類以上あり、雑所得は給与などに該当する給与所得、事業利益に該当する事業所得などに当てはまらない所得です。
雑所得は「総合課税」に該当するので他の所得金額と合算した金額に対して所得税が発生し、所得税は累進課税となるため以下のように金額によって所得税率が変動します。
課税される 所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から 1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から8,999, 000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
株式投資の税区分は「譲渡所得」となり、所得金額に関わらず一律約20.315%の税率が適用されますが、雑所得に分類される仮想通貨は所得金額に応じて税率が変動するため、税金が高いと言われる原因になっているのです。
仮想通貨は損益通算や赤字繰越ができない
損益通算とは、同じ所得税に区分されている税金を利用して同一年分の利益と損失を相殺することです。
例えば株式投資が対象となっている譲渡所得は、事業所得や給与所得など他の所得税と税金の相殺ができるので、あえて株式投資で損失を発生させ税金を抑えることができます。
赤字繰越は、年間を通じて得た総収入金額から経費を差し引いた場合に生じた損失の金額を、翌年以降3年間繰り越せる制度です。
株式投資は年間の損益がマイナス(損失)だった場合、翌年以降3年間はマイナスの状態を繰り越して税金を抑えられます。
そして、仮想通貨には損益通算や赤字繰越ができません。そのため、株式投資より節税対策が行いづらいデメリットがあるのです。
ただ、雑所得内での損益通算は行えるため、他にも雑所得に区分される所得を得ている場合は損益通算ができないか確認してみるとよいでしょう。
仮想通貨の税金計算方法
仮想通貨の税金計算方法を、以下のケースに分けて解説します。
- 仮想通貨で売却利益が出たときの計算方法
- 仮想通貨で決済をしたときの計算方法
- 仮想通貨で他の仮想通貨を購入したときの計算方法
- ステーキングやレンディング、エアドロップなどの計算方法
仮想通貨で売却利益が出たときの計算方法
仮想通貨で年間20万円の売却利益が出たときの計算方法は、まず以下2つのどちらで計算するかを決めます。
- 移動平均法:仮想通貨を購入するたびに購入額と残高を平均して所得を計算する
- 総平均法:1年間の購入平均レートを基に計算した総購入金額と、売却合計金額の差額を計算する
仮想通貨の売却利益は「売却時の価格×売却枚数-購入時の価格×購入枚数」で求められるため、仮想通貨取引所から取引履歴のデータをダウンロードし計算してみましょう。
仮想通貨で決済をしたときの計算方法
仮想通貨で決済をしたときの計算方法は、売却利益と変わらず購入時の価格からどれだけ高い価格で決済したかで決まります。
例として、以下のシナリオで考えてみましょう。
- 1BTC=100万円のときに1BTCを購入
- 1BTC=110万円のときにPCを購入
- 支払いをBTCで済ませる
「PCの購入金額110万円(1BTC)ーBTCの取得価格100万円=10万円の利益」となるのです。
仮想通貨で決済をする際は、事前に購入時の価格と今現在の価格を参照して、決済した場合に利益がどれだけ生じるかを確認しておきましょう。
仮想通貨で他の仮想通貨を購入したときの計算方法
仮想通貨で他の仮想通貨を購入したときの計算方法は、決済と同じく購入時の価格からどれだけ高い価格で交換したかで決まります。
例として、以下のシナリオで考えてみましょう。
- 1BTC=100万円のときに1BTCを購入
- 1BTC=110万円のときにすべてETHへ交換
「ETHへの交換金額110万円(1BTC)ーBTCの取得価格100万円=10万円の利益」となるのです。
現金化していないので利益にはならないと勘違いしてしまう方が多いですが、どんな通貨に交換したかに関わらず利益が生じたタイミングで決まります。
ステーキングやレンディング、エアドロップなどの計算方法
仮想通貨にはステーキングやレンディング、エアドロップなどさまざまな収益方法がありますが、上記の計算方法は以下のようになります。
- ステーキング:報酬の取得時と売却時の両方が課税対象
- レンディング:報酬の取得時と売却時の両方が課税対象
- エアドロップ:報酬の取得時と売却時の両方が課税対象
基本的には収益方法に関わらず仮想通貨を受け取った時点で1度所得が発生したとみなされ、売却時に2度目の所得が生じたとみなされます。
仮想通貨の確定申告のやり方
仮想通貨の確定申告のやり方を解説します。
- 仮想通貨取引所から「年次取引報告書」を受け取る
- 仮想通貨の損益を算出する
- 総所得金額を算出する
- 算出した金額を確定申告書に記入する
- 税金を納付する
1.仮想通貨取引所から「年次取引報告書」を受け取る
まずは仮想通貨取引所から「年次取引報告書」を受け取りましょう。
年次取引報告書の情報を基に、1年間の仮想通貨取引の損益を計算します。
2.仮想通貨の損益を算出する
仮想通貨の損益を算出する方法は主に以下2つのどちらかを用いて計算します。
- 移動平均法:仮想通貨を購入するたびに購入額と残高を平均して所得を計算する
- 総平均法:1年間の購入平均レートを基に計算した総購入金額と、売却合計金額の差額を計算する
最も簡単なのは、国税庁ホームページにあるExcelを使って計算書の項目を埋めながら計算していく方法です。
以下のステップで行えます。
- 年間取引報告書の記載項目を入力
- 仮想通貨での決済があれば必要事項を入力
- 前年末の残高があれば年始残高に入力
- 売却価額・売却原価・所得金額が自動計算
3.総所得金額を算出する
仮想通貨取引の損益計算が終わったら、総所得金額を計算しましょう。
総所得金額は、雑所得以外の給与所得や譲渡所得など、所得税をすべて含めて計算します。
そして、総所得金額から基礎控除や社会保険料控除などの各種控除を差し引いたものが課税所得になります。
4.算出した金額を確定申告書に記入する
算出した金額をすべて確定申告書に記入できたら、確定申告は終了です。
確定申告書は税務署で受け取れますが、国税庁のホームページからe-taxを利用して行う方が速く済むのでおすすめです。
5.税金を納付する
確定申告書が準備できたら、算出した税金を納付しましょう。
税金関連のことで疑問点があれば、確定申告期間の終了間際ではなく余裕を持って税務署に問い合わせておきましょう。
仮想通貨の節税対策【合法】
仮想通貨の節税対策は以下があります。
- 個人事業主として開業する
- 法人を設立する
- ふるさと納税やiDeCoを始める
- 年内で損益通算をする
個人事業主として開業する
個人事業主として開業届を提出すれば、青色申告が可能になります。青色申告を行えば所得から65万円の控除ができるため、65万円以内の利益であれば税金がかからずに済みます。
ただ、青色申告控除を行うためには仮想通貨の税区分を雑所得ではなく事業所得として計上する必要があり、事業所得は以下のような条件を満たさないといけないためフリーランスや経営者ではないと認められにくいと言われています。
- 事業として仮想通貨取引を行っている
- 継続的に仮想通貨取引の事業を行っている など
自身が行っている仮想通貨取引が事業として認められるかどうかは税務署によって判断されるため、確認しておくのもよいでしょう。
法人を設立する
個人の場合、所得税率は最大約55%までありますが、法人であれば最大約33%で済みます。(住民税や法人住民税を含む)
そのため、所得税率が約55%になっている方は、法人を設立して節税するのがおすすめです。
ただ、法人を設立すると自身で給与を決め会社にも資金を残しておかないといけないので、資金の移動には注意する必要があります。
ふるさと納税やiDeCoを始める
ふるさと納税は所得税と住民税の控除の対象となり、納めた税金に応じて返礼品を受け取れるため、税金は減りませんがリターンが得られるので実質的な節税対策と言えます。
iDeCoは掛け金がすべて所得税の控除対象となる仕組みになっており、所得税を直接減らせるメリットがあります。
ただiDeCoに投資した掛け金は60歳以降ではないと引き出しできません。
そのため、iDeCoに投資して税金を減らす、仮想通貨の取引量を増やして利益増加を狙う、のどちらの方が将来的なリターンが大きくなるか判断してから使いましょう。
年内で損益通算をする
仮想通貨取引は、年内であれば損益通算が行えます。
例えば、ビットコイン投資を含めた所得金額が年間330万円の場合は所得税率が20%ですが、40万円の含み損になっているイーサリアムをあえて売却し損失を計上すれば、ビットコインとイーサリアムで損益通算を行え合計所得は290万円になります。
290万円になると所得税率が10%になり、場合によっては含み損を出すことで得られる利益が大きくなる可能性があるのです。
仮想通貨の税金に抜け道はある?
仮想通貨の税金に抜け道はありません。
税務署は口座情報を閲覧できる権限を持っているため、脱税をしてもいずればれてしまうでしょう。
仮想通貨の税金を払わなかった時のペナルティはある?
仮想通貨の税金を払わなかったときは、ペナルティがあります。
具体的には以下2つがあります。
- 加算税:税金の申告や納付に不備があった際にペナルティとして課せられる税金
- 延滞税:税金を未納のまま放置している間に利息に相当するものとして課せられる税金
申告期間内に確定申告を済ませないと、加算税の「無申告加算税」対象となり、納税額に対して15%(50万円を超える部分には20%)の課税割合で加算されます。
そして、延滞税は以下の利息が課せられます。
納期限までの期間の翌日から2ヵ月 経過する日まで | 年率7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方 |
納期限の翌日から 2ヵ月経過した後 | 年率14.6%と延滞税特例基準割合 + 7.3%のいずれか低い方の割合 |
ペナルティが課せられると税率が大幅に上昇してしまうので、必ず申告期間内に納税しましょう。
仮想通貨の税金についてよくある質問
仮想通貨の税金についてよくある質問をまとめました。
- 海外取引所を使った場合でも税金はかかる?
- 仮想通貨の確定申告をする際に必要な書類は?
- NFTの利益も仮想通貨の税金に関係する?
海外取引所を使った場合でも税金はかかる?
海外取引所を使った場合でも、仮想通貨取引は税金がかかります。
国内取引所と同様に年次取引報告書を受け取り確定申告を済ませましょう。
仮想通貨の確定申告をする際に必要な書類は?
仮想通貨の確定申告をする際に必要な書類は以下の通りです。
- 年次取引報告書
- 確定申告書
- 源泉徴収票(会社員の場合)
他にも必要に応じてふるさと納税の書類や青色申告書類などが必要になります。
NFTの利益も仮想通貨の税金に関係する?
NFTの利益も仮想通貨の税金に関係します。
NFTの販売で得た利益は「総合課税」として税金計算を行います。
NFTを売却し利益を得れば事業所得として計上する必要があり、利益が仮想通貨なのであれば、その仮想通貨を売却して利益が出れば雑所得を計上する必要があるのです。
仮想通貨の税金-まとめ
- 仮想通貨で税金が発生するケースは年間利益が20万円以上
- 仮想通貨の税区分は雑所得
- 仮想通貨の確定申告のやり方は5ステップ
- 仮想通貨の節税対策はふるさと納税やiDeCoが簡単
仮想通貨は税率が高く、計算も株式投資などより複雑です。
そのため、年間20万円以上の利益が出ており確定申告をする必要がある方は、早めに準備を済ませわからない点があれば税務署へ問い合わせておきましょう。