遺産分割とは?メリット・デメリットだけでなく手順や必要書類まで徹底解説!

亡くなった家族(被相続人)の遺産に関する配分は、最も慎重に進めるべき作業となります。

遺産には、被相続人の預金や現金・株券等の金融資産だけではなく、土地・家屋という不動産資産もあります。

遺産を受け継ぐ方々(相続人)が、わだかまりなく、仲良く遺産を取得できれば理想的ですが、なかなか上手くいかないケースも数多いです。

家族・親戚で、遺産相続によるトラブルの話は、よくありますよね。
遺産相続で揉めないために良い方法は無いのでしょうか。

この記事では、遺産分割の方法とメリット・デメリット遺産分割の手順やトラブルとなった場合の解決方法等について説明します。

遺産分割をザックリ言うと
  • 遺産分割とは遺産の相続分を配分すること
  • 遺産分割には4つの方法がある
  • 遺産相続と遺産分割の関係性は深い
  • 遺産分割には注意点も多い

遺産分割とは

遺産分割とは

私の父親が亡くなりました。そこそこ資産はあるようですが、遺言書は見つかりません。
この場合は遺産をどうすれば良いのでしょうか。

こちらでは、遺産分割について解説します。

遺産分割について
  • 遺産分割とは?
  • 遺言書があればそれに従い分ける
  • 遺産分割の権利者は?

遺産分割とは?

遺産分割とは、複数人の相続人がいる場合に、各相続人がどの割合で遺産を受け継ぐのかを決める作業のことです。

もしも相続人が1人の場合は、亡くなった人の財産をそのまま受け継ぎます。

遺産相続の手続きは必要になるのですが、遺産分割そのものが発生しないことになります。

MEMO

遺産の相続割合を決める事を遺産分割と言い、相続人が一人の場合は遺産分割の必要は無い。

遺言書があればそれに従い分ける

亡くなった人が遺言書を残していた場合、各相続人は原則として遺言書の内容に従いその遺産を配分していきます。

しかし、遺言書が無い場合や、遺言書の内容に納得いかない相続人がいて、相続人全員の合意を得られたなら、一から遺産分割を決めることになります。

MEMO

遺言書があれば、遺言書にしたがって遺産配分を決定するが、遺言書に不満がある場合には相続人全員の合意があれば一から決める事も出来る。

遺産分割の権利者は?

亡くなった人が、遺言書で誰に遺産を譲るか指定しなければ、相続人は法律で決められることになります。

遺産の配分を決める法律である「民法」では、相続人の範囲を【故人の配偶者(夫または妻)】【子または孫もしくはひ孫】【父母または祖父母】【兄妹姉妹】【甥・姪】までに限定しています。

上記の方々を「法定相続人」と呼びます。

法定相続人は遺産を均等に受け取れるわけでは無く、優先順位や取得割合がそれぞれ異なります。

MEMO

遺産の相続人の範囲や相続順位・割合は、民法で定められている。

遺産分割と遺産相続の違い

遺産分割と遺産相続の違い

法律とかがやはり絡んできますね。やや動揺してます。
母親の他、弟が2人いるので分けるのは大変そうです。
遺産分割と遺産相続の違いってなんなのでしょうか。

こちらでは、遺産分割と遺産相続の特徴について解説します。

遺産分割と遺産相続の特徴
  • 遺産相続とは?
  • 遺産分割は相続人が2人以上いるなら必ず協議を!
  • 遺産分割協議書は相続人の数だけ作成

遺産相続とは?

遺産相続とは、亡くなった人(被相続人)が保有していた、預貯金・株式等の金融資産や建物・土地のような不動産を配偶者や子等の相続人が引き継ぐことです。

遺言書が無い場合は、前述した通り相続人は法律で決められることになります。

遺産相続にはいろいろな手続きが必要で、その手続きを経て、ようやく遺産を取得できます。

なお、遺産相続したくないなら相続放棄の手続きを取ることもできます

MEMO

遺産相続とは、亡くなった人(被相続人)の資産を残された遺族が引き継ぐことである。

遺産分割は相続人が2人以上いるなら必ず協議を!

遺産分割は前述した通りですが、各相続人が勝手に早い者勝ちで遺産をGETして自分の物にすることはできません。

後から相続人の間でケンカにならないよう、「遺産分割協議」を行います。

その際に遺産分割の内容を書面化したのが遺産分割協議書です。

遺産分割協議書とは、遺産について相続人の間で話し合い、決定した分割内容を記載した書類のことです。

遺産分割協議書は、相続人全員で作成しますので、協議書に相続人全員が署名押印して作成しなければいけません。

なお、押印する印鑑は実印を準備します。

MEMO

相続人が複数いる場合には、トラブルにならない様に、遺産分割協議書を作成しておく。

遺産分割協議書の押印は実印で行うこと。

遺産分割協議書は相続人の数だけ作成

協議書の作成部数は相続人の人数分を作成します。

各自が協議書のコピーではなく原本を保管するので、必要な部数全てに相続人全員が署名押印しなければなりません。

遺産分割協議書は、被相続人が亡くなったと分かった場合に、口座を凍結した金融機関へ提出する事で、被相続人の預貯金を得られる様になります。

また、相続税を申告の際、遺言書が無かった場合に提出するべき書類として必要となります。

遺産分割協議書の作成期限は法律で明確に定められていませんが、被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に相続税の申告を被相続人の住所地を管轄する税務署に行わなければいけません

そのため、相続税の申告までに遺産分割協議書の作成をした方が良いでしょう。

MEMO

遺産分割協議書は、相続人全員分を作成しなければいけない。

被相続人の金融資産の引き出しや相続税の申告時に必要になる書類となる。

遺産分割の方法

遺産分割の方法

一口に遺産分割と言っても、金融資産等のように相続人間で配分しやすい財産があれば、土地・家屋のように相続人間で分け難く、中には不動産価値が全くないケースも存在しますね。
遺産分割にはどんな方法があるのでしょうか。

こちらでは、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4種類を解説します。

遺産分割の方法
  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

現物分割とは

現物分割とは、遺産を相続人の間で、そのまま相続分に応じて分けることです。

例えば、広大な土地がある場合は、各相続人が相談しながら適正に配分する、土地・家屋は配偶者が取得するものの、金融資産は子に譲るという方法が挙げられます。

単純に分けることで相続人全てが納得するならまだしも、遺産の数や相続人が多くなればなるほど配分の仕方は単純に分け難くなり、複雑になっていきます。

つまり、財産や権利の帰属先は明確になるものの、公平性を欠きトラブルに発展するおそれもあります

MEMO

金融資産・不動産資産を、そのまま相続人の間で配分してしまう方法である。

公平性を欠きトラブルになるケースもある。

代償分割とは

代償分割とは、特定の相続人が被相続人の遺産を得る代わりに、他の相続人にはその相続分に応じたお金を支払うことや、特定の相続人の所有している資産を譲るというような分割を言います。

相続人にとって、土地・建物のように分割が困難な遺産であったり、容易に相続人の間で分割できない理由があったりするようなときに用いられる方法です。

しかし、被相続人の遺産を譲り受けた相続人には、他の相続人に自分の資産を譲渡し得るだけの財力も有していることが必要です。

MEMO

建物などの分割しにくい資産を相続する際に用いられる方法であり、相続資産の代わりに現金などの資産にして配分する方法である。

自己資産が無ければ難しい分割方法でもある。

換価分割とは

換価分割とは、遺産を売却してお金に換えてから相続分に応じて分割する方法です。

具体的には、被相続人が住居としていた家屋や、土地を相続人の誰もが希望しなかった場合、他へ売却して分けやすいようにする例が挙げられます。

しかし、不動産業者を介することで手数料等が発生します。

また、良い思い出のたくさんある実家に未練がある場合、このような分割になかなか踏み切れないこともあるでしょう。

MEMO

土地・建物が相続資産となた場合に、不動産資産の保有を誰も希望しない場合などに用いられる方法である。

不動産仲介業者の手数料などが掛かるケースが多い。

共有分割とは

共有分割とは、各相続人の間で持分を決めて、各相続人が共有する形で行う分割方法です。

土地・家屋のような不動産を持分に応じて、相続人の間で公平に利用することができます。

しかし、相続人が更に亡くなり、その配偶者や子などが、その共有分を相続するというように、共有者が将来にわたってどんどん増えていくことになります。

そうなると、相続人の間でトラブルが発生するおそれもでてきます。

MEMO

土地建物を相続人全員で共有する相続方法となります。

二次相続などが起こると、相続人が多くなりトラブルになり得る方法でもある。

遺産分割のメリット・デメリット

遺産分割のメリット・デメリット

遺産分割さまざまな方法がありますね。
相続人の多い家庭ではお互いに意見を出し合い、穏便に分割をすすめたいです。
それでは、遺産分割のメリット・デメリットついて教えて欲しいです。

こちらでは、遺産分割のメリットとデメリットを解説します。

遺産分割のメリット

遺産分割の際は協議書を作成します。

記入は手書きの他にパソコン等での作成も可能です。

遺産分割協議書を作成すれば、次のような効果が期待できます。

遺産分割協議書の作成効果
  1. トラブル予防
  2. 分割内容を明確にして保存する事が可能
  3. 相続手続きに必要な場合も

トラブル予防

遺産分割協議の際は、相続人間の意見の対立もあるはずです。

しかし、遺産分割協議が成立し協議書も作成されれば全員の合意が明らかとなります。

そのため、他の相続人達が後から「やっぱり被相続人の現金が欲しい」とか「合意を白紙にしたい」などという言い分は通りません。

ご自身は安心して得た遺産を使用できます。

MEMO

遺産分割協議書は、相続人全員の合意が必要となるため、後々のトラブル予防になる。

分割内容を明確にして保存する事が可能

それぞれ望んだ遺産が得られても、口頭で決めただけでは相続内容に関して、時間が経てば各相続人の記憶も曖昧になっていきます。

そうした場合に、書面化しておくことで内容の保存が可能となります。

また、前述したように書面化しなければ、金融機関から凍結された被相続人の預金を遺産分割することすらできません。

協議後は書面化するので、取得した各遺産が容易に把握できて、相続内容を正確に保存できます。

MEMO

相続内容などを、書面化して保存することで、相続内容などの確認などが可能となる。

相続手続きに必要な場合も

凍結された預貯金を受け取れるため遺産分割協議書が必要となる他、不動産資産でも同様に相続人へ不動産の相続登記をする際、法務局から協議書の提出を必ず要求されます。

遺産分割協議書があればいろいろな相続手続きは円滑に進むことでしょう。

MEMO

遺産分割協議書を作成することで、公的な手続きなどを円滑に進めることが出来る。

遺産分割のデメリット

遺産分割は慎重に進めるべきですが、遺産分割協議書まで作成した後に別の相続人が出てくる場合もあります。

このような場合、基本的にせっかく決めた遺産分割が白紙となってしまいます。

例えば、被相続人に前妻がいて、その前妻の子が登場することもあります。

被相続人に前婚があった事実を知らない場合、相続人達はいきなり現れた前妻の子に納得ができないことでしょう。

しかし、前妻の子には相続権があるので(なお、遺言書で指定されない以外に前妻は相続権なし)、前妻の子は遺産分割協議に参加する権利があります。

つまり、一から協議はやり直しとなります。

このような事態にならないよう、自分たちの他に遺族はいないと思ったとしても、相続人調査をきちんと行うことが大切です。

相続人調査に関しては専門家が存在します。

注意

自分達が知らない相続人があらわれるケースもあり得る。

相続人を調べる際には、被相続人の改製原戸籍謄本を確認する事で、相続人を把握する事が出来る。

遺産分割の手順と必要書類

遺産分割の手順と必要書類

相続人調査は大切ですね。予想外の相続人の登場は恐怖すら感じます。
それでは、遺産分割の流れを教えてください。

こちらでは、遺産分割の流れと必要書類と注意点について解説します。

遺産分割の手順

遺産分割の流れは次のようになります。

遺産分割協議がスムーズに進み、遺産分割協議書を作成、相続税を申告するまでを説明します。

遺産分割の手順
  1. 被相続人が亡くなり相続財産の調査
  2. 協議または遺言で遺産分割
  3. 遺産分割協議書作成
  4. 遺産分割協議書に従った遺産分割を実行
  5. 相続税を申告

第一段階|被相続人が亡くなり相続財産の調査

被相続人の預貯金等の金融資産・建物や土地といった不動産・家財等を調査します。

遺産が多いと、それだけ調査をするまでには時間もかかります。

この作業は専門家に依頼すればスムーズです。

第二段階|協議または遺言で遺産分割

遺言があればそれに従った遺産分割をします

ただし、前述したように相続人の中で遺言内容への不満があったり、遺言書がなかったりした場合は、相続人全員の合意で遺産分割協議を行います。

調査した相続財産をもとに話し合いが進められます。

第三段階|遺産分割協議書作成

協議をして遺産分割に合意をしたら、遺産分割協議書を作成します。

作成手続きの際、準備書類を持ち寄りましょう。

これに関しては後述します。

第四段階|遺産分割協議書に従った遺産分割を実行

遺産分割協議書に従った遺産分割を行います。

第五段階|相続税を申告

相続税申告を被相続人の住所地を管轄する税務署で行います

遺産分割協議書が作成されていれば申告の際、申請書および他の必要書類と共に提出します。

ただし、相続財産の課税価格が基礎控除以下(3,000万円+600万円×相続人数)であれば申告は原則不要です。

 

上記の流れは、話がまとまって遺産分割に同意し協議の成立したケースです。

遺産分割協議を行えば必ず話がまとまるとは限らず、遺産分割の話し合いがこじれてしまうこともあります。

遺産分割に必要な書類

遺産分割の話し合い自体には、相続財産の調査をした調査表があれば事足りるはずです。

遺産分割協議書を作成する場合

ただし、遺産分割協議書を作成する場合は次の書類を準備します。

  • 被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本(現在戸籍や必要に応じ、改製原戸籍謄本、除籍謄本を準備)
  • 被相続人の住民票の除票・戸籍の附票
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • 相続人全員分の実印および印鑑登録証明書

公正証書で作成する場合

後々のトラブルを避け円滑な遺産分割に役立つ協議書ですが、公正証書としておいた方が更に証明力は高まります

その場合の手続きは公証役場で行います。

準備書類は更に多くなりますので、公証役場の指示に従い、書類の収集を行いましょう。

主に提出する書類は次のようなものが必要です。

  • 公正証書作成のための資料:遺産分割協議書またはメモ書きのようなものでも可。
  • 被相続人の戸籍謄本等:誕生~死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が該当。
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑登録証明書・実印
  • 不動産資産に関する証明書類:固定資産評価証明書、登記事項証明書が該当。
  • 金融資産に関する証明書類:預金通帳、有価証券の残高証明書等。
  • 負債に関する証明書類:借入先の残高証明書等。

更に追加の書類が要求される場合もあります。

なお、公証人手数料もかかります。

遺産の価格によって手数料も異なってきます。

価格が100万円以下なら手数料は5,000円で済みますが、価格が5,000万円を超える場合の手数料は43,000円以上と高額になります。

手数料については、日本公証人連合会「法律行為に関する証書作成の基本手数料」を参照してください。

遺産分割の注意点

遺産分割協議を行う場合には、いくつかの注意すべき点が有ります。

ケースによっては、遺産分割協議のやり直しとなる事態も想定されます。

こちらでは、想定されるケースをあげ対応策について説明します。

遺産分割協議の注意点
  • 相続人に未成年者や認知症の人がいる場合
  • 相続人が参加できない、行方知れずになっている場合

相続人に未成年者や認知症の人がいる場合

遺産分割協議は相続人全員で行わなければいけません

たとえ相続人が未成年者や、認知症の方々でも協議の場に参加させる必要があります。

しかし、判断能力が十分ではない方々の場合は、正確に内容を把握し合意できるとは限りません。

この場合は、公正な協議の実現のため家庭裁判所に申し立て、未成年者は「特別代理人」を、 認知症の人には「成年後見人」を選任してもらいます。

この方々が、代わりに遺産分割協議書へ署名押印することで、有効な書類となります。

注意

未成年や認知症など、判断能力が十分ではない方が相続人にいる場合は、家庭裁判所の定める代理人・後見人を選任する必要がある。

相続人が参加できない、行方知れずになっている場合

遺産分割協議は相続人全員の合意は必要ですが、一堂に会する必要はありません。

遠方にいる方々へメールまたは電話で分割内容を連絡、後日、署名押印・印鑑登録証明書の提出で合意させることもできます。

ただし、相続人が海外に住んでいたり行方知れずとなって、どこに住んでいるかわからない事態も考えられます。

これらのケースはそれぞれ次のような手続きを行います。

  • 海外に住んでいる相続人→在外公館で「サイン証明書」(印鑑登録証明書代わり)を取得
  • 所在不明の相続人→家庭裁判所に申し立て「不在者財産管理人」の選任、家庭裁判所の許可を得る

前述のようなプロセスを経れば遺産分割協議ができます。

注意

相続人が海外に住んでいる場合や所在不明な場合には、それぞれ手続きが必要となる。

遺産分割のトラブル事例

遺産分割のトラブル事例

遺産分割をするにあたり、相続人の間で揉めそうなケースはあるのでしょうか。
遺産分割に関するトラブル事例について知りたいです。

こちらでは、遺産分割のトラブル事例を2つ取り上げましょう。

遺言書はあったが遺留分を考慮していない内容だった

事例をあげて解説しましょう。

登場人物

  • 被相続人A:Bの夫
  • 配偶者B:Aの妻
  • 父C:被相続人Aの父親
  • 母D:被相続人Aの母親

事例

被相続人AとBの間に子がいない状態で相続が発生。

被相続人Aは、遺言書を残していたが、遺産を父C・母Dが2等分するような内容だった。

内容

一見、前述した遺言書の内容は、これまで育ててくれた父C・母Dへの感謝を示したものと言えなくもないです。

しかし、この内容では配偶者Bの遺留分が全く考慮されていません。

遺留分とは、相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産のことをいいます。

この事例では、遺留分は相続財産1/3を配偶者B、1/6を父C・母Dとなります。

もちろん、この遺言の内容でも配偶者Bが納得すれば遺言通りに遺産分割がなされますが、配偶者Bが納得しなければ改めて遺産分割協議を行います。

父C・母Dが協議に応じない場合、配偶者Bは「遺留分侵害額請求権」を行使し、自身の遺留分1/3の金銭を受け取ることができます。

生前に被相続人の面倒をみた人が寄与分を主張

事例をあげて解説しましょう。

登場人物

  • 被相続人A:Bの夫で要介護者
  • 配偶者B:Aの妻
  • 弟C:被相続人Aの弟
  • 妹D:被相続人Aの妹・被相続人Aの介護を積極的に担当

事例

被相続人AとBの間に子がいない状態で相続が発生。

遺言書が無く遺産の法定相続分は配偶者Bが3/4、弟Cが1/8、妹Dが1/8となる。

しかし、妹Dは被相続人Aの介護を積極的に担当し、それに見合った寄与分を要求

内容

寄与分とは、①被相続人の財産形成に貢献してきた相続人、②被相続人の療養看護に努めてきた相続人など、被相続人の生前に何らかの貢献をしてきた相続人と、他の相続人との公平さを図るために設けられた制度のことです。

事例では②に当たります。

寄与分がある相続人は、法定相続分プラス相続財産から寄与分の額が上乗せされます。

この寄与分の算定に困る人は多いですが、妹Dは被相続人Aが要介護者で介護を担当しています。

この場合では、過去の裁判例でも引用されている計算方法を使用します。

計算方法は次の通りです。

介護報酬基準額×介護日数×裁量的割合(0.7~0.8)

もちろん寄与分を加算する・しないで相続人間でトラブルが発生すれば、最終的に裁判所の調停や審判で解決することとなります。

遺産分割で頼りになる専門家は?

遺産分割で頼りになる専門家は?

遺産分割は行ったことがなく、相続人だけで作業するのは不安が残ります。
遺産分割で頼りになる専門家がいれば助力を頼みたいです。

こちらでは、遺産分割で頼りになる専門家を取り上げましょう。

各手続き・調査について

「士業」と呼ばれる専門家は数多いです。

この士業と呼ばれる方々はそれぞれ専門的な役割を担います。

相続人調査・相続財産調査

相続人に誰がいるのか、相続財産はどんな物があるのかを調査する場合、「行政書士」が頼りになります。

このような各調査を専門に活躍する行政書士がいるので、ホームページを良くチェックして依頼してみましょう。

なお、弁護士もこの作業はできますが、行政書士の方が料金体系を安く設定している傾向があります。

権利に関する登記関係

「司法書士」の専門手続きです。

被相続人から相続人への名義変更の相続登記所有権保存登記抵当権抹消登記や、相続の対象が会社に及ぶ場合は会社役員変更登記等を行います。

土地・建物の表示に関する登記関係

土地家屋調査士の専門手続きです。

建物表示登記建物滅失登記土地分筆登記土地の境界画定等における手続き・登記を行います。

税務関係

税理士の専門手続きです。

相続税の算定相続税の申告所得税の準確定申告等を行います。

年金関係

社会保険労務士が頼りになります

国民年金で加入者が亡くなった場合に支給される遺族基礎年金寡婦年金死亡一時金の手続きや、厚生年金の加入者が亡くなった場合に支給される埋葬費遺族厚生年金の手続き等を行います。

(1)~(5)は遺族が手分けして行っても構いません。

しかし、故人の葬儀等で大忙しの場合は、上記の専門家へ依頼した方が手間も省けます。

相続人間でトラブルが起きたら

相続人の間でトラブルになってしまった遺産分割を解決できる専門家は弁護士のみです。

一見、弁護士さんと言えば裁判で弁護活動を行うというイメージがあります。

もちろん、裁判になった場合は弁護士業務としてトラブルの解決を目指すわけですが、その前段階でトラブルを丸く収める努力も行います。

弁護士は調整役

遺言書の内容に不満がある場合や、相続人間で遺産分割協議がこじれている場合に、弁護士が多様な財産分与の案を提示します。

実は、トラブルの原因が遺言書の内容であっても、遺産分割協議であっても、関係する相続人全員の同意があれば、分割内容を自由に変更しても問題はありません。

円満にトラブルを解決しつつ、遺産分割を進める調整役的な部分も弁護士の仕事です。

当然、裁判所での解決にも関与

弁護士の調整も実らず、裁判所で遺産分割問題の解決が図られる場合は、弁護士の真価が発揮されることでしょう。

調停や審判に臨む場合、裁判所への申立書の作成・準備書類の収集等で、かなりの手間をとられてしまいます。

これらの書類作成や、ある程度の書類収集は弁護士が代行でき、裁判所への書類提出や手続きも弁護士の仕事です。

更に調停では弁護士も同席し、良きサポーターとして依頼した相続人を助けてくれます。

審判では弁護士が法廷で数々の資料の提出や主張を行い、問題の解決へ尽力してくれます。

遺産分割によくある質問

遺産分割によくある質問

遺産分割の説明を受けているうちに、いろいろ疑問点が出てきました。
いくつか質問よろしいでしょうか。

こちらでは、遺産分割に関してよくある質問を3つ取り上げます。

遺産分割によくある質問
  1. 愛人の子が相続人に名乗り出たら?
  2. 遺産分割後に新たな遺産が出てきたら?
  3. 遺産分割協議で解決ができなかったら?

愛人の子が相続人に名乗り出たら?

遺産分割の際には前妻の子の他、被相続人と愛人との間に生まれた子が相続人として、遺産を要求してくるケースもあります。

当然ながら前妻の場合と同様、基本的に愛人(内縁の妻)は法定相続人となりません。(遺言書で指定されれば相続人になる可能性あり)

愛人(内縁の妻)との間に生まれた子どもは、法律上の婚姻関係のない男女の間に生まれた者として「非嫡出子」と呼ばれます。

最近は民法の規定が見直され、嫡出子も非嫡出子も同じ相続割合となっていいます。

他の相続人達にとって、何とも納得できないケースではあります。

しかし、この非嫡出子(愛人の子)が、法定相続人として被相続人の財産を相続するためには、被相続人から認知されなければなりません。

認知とは、法律上の婚姻関係のない男女間に生まれた子を、自分の子であると認めることをいいます。

女性は自分が生んだことが明らかであるため認知をすることはないですが、男性の場合は認知を行います。

この認知の有無が、遺産分割に大きな影響を及ぼします。

注意

非嫡出子の場合は、被相続人が認知していれば相続権が発生する。

遺産分割後に新たな遺産が出てきたら?

被相続人の財産調査をして遺産分割したつもりでも、新たな遺産が発見されることもあります。

その場合には、遺産分割協議をやり直す方法もあります。

それでは面倒と思うならば、遺産分割協議書へ事前に新たな遺産が発見され場合の対応を明記しておきましょう

例えば、遺産分割協議書の最後の方に、つぎのような文章を付加しておくことが考えられます。

「上記の遺産および債務以外に、新たな遺産および債務が発見された場合には、相続人〇〇が全ての遺産及び債務を取得・承継する」

このように遺産(または債務)の帰属先を明記していれば、新たに遺産が見つかっても、いちいち遺産分割協議の話し合いをする必要はありません。

注意

新たな遺産が出てきたときのために、事前に遺産分割協議書に明記しておく。

遺産分割協議で解決ができなかったら?

遺産分割協議でも話がまとまらない場合は、最終的に裁判所で解決することになります。

こちらでは、協議でも解決できなかった場合の措置を解説していきます。

遺産分割調停

最終的には裁判で解決する道が残されているとしても、「裁判で他の相続人と争いたくない」と思う人は多いはずです。

この場合には「遺産分割調停」という方法があります。

分割で争いがある相続人たちの話し合いの場は家庭裁判所になります。

しかし、中立の立場から問題の解決を目指す「調停委員」を交えて調停が進行します。

調停委は、弁護士、医師、大学教授、会社員、宗教家、カウンセラー等の職業を持つ多彩な方々が選ばれています。

つまり、多角的な視点から遺産分割の問題を捉え、解決のための調整を図ることが期待できます

弁護士も調停に同席でき、法的な根拠から相続人の主張の正当性を述べてくれます。

MEMO

遺産分割の協議で揉めた場合は、遺産分割調停で様々な人に間に入って貰って解決をする。

遺産分割審判

前述した遺産分割調停には回数の制限はありませんが、争っている相続人の間でどうしても溝が埋まらないこともあります。

その場合には「遺産分割審判」に移行します。

遺産分割審判は、調停のように話し合いを続けるという形で進めていくのではなく、争っている当事者が主張・立証をするという形で進んでいきます。

また、審判を進めるにあたり、当事者の主張には法的な証拠が求められます。

弁護士による適切な証拠の収集・提出や主張は、審判を有利に運ぶためどうしても必要になります。

遺産分割審判は調停委員からの報告や、当事者の主張・立証を踏まえて、最終的には裁判官が判断を下します。

ただし、審判の途中で争っている相続人が和解したら審判は終了となります。

MEMO

遺産分割調停で解決できない場合には「遺産分割審判」に移行して、より法的な証拠を出し合って話し合いを行う。

即時抗告審

調停で話し合いがまとまらず、審判にも不満がある場合は、審判が告知された日の翌日より2週間以内に不服の申し立てを行います。

不服申し立てに関連する書類は家庭裁判所を経由して高等裁判所へ提出されます。

この手続きは、弁護士が代理して行うことができます

また裁判所へ出廷する場合も、証拠になる書類や記録等が提出されます。

この時期になると、相続の解決はかりの長期化を強いられることになり、相続人の間の信頼関係も収拾が不可能な段階に達していると考えられます。

そのため、争う相続人がお互いに歩み寄りを見せる努力も怠ってはいけません。

MEMO

遺産分割審判でも決着が付かない場合に、即時抗告審が行われて、裁判所の力を全面的に借りることになる。

遺産分割 とは|まとめ

遺産分割 とは|まとめ

遺産分割はなるべく、相続人が互いに歩み寄り話し合いで合意へ達することが望まれます。

前述したように遺産分割がこじれたら、調停や審判により決着することも可能です。

しかし、お互いの主張ばかりをぶつけるのではなく、相続人同士が妥協できる一致点を見つける努力を行いましょう。

そうすることで、深刻な関係悪化に発展する事態を防ぐことができるはずです。