このような話は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
収入が増えるとともに発生する税金を少しでも減らせたら嬉しいですよね。
結論からいうと、不動産投資は節税効果はあっても、あくまでも付帯効果であるので完全には言い切れません。
不動産投資は払いすぎを防ぐための方法であり、節税対策に直結しないのです。
また、節税ができるとはいえ、どうすれば節税になるのかを、税金や仕組みの基礎から知らなければ損してしまいます。
本記事では、不動産投資と税金についてだけでなく、不動産が節税になる理由を徹底解説しています。
不動産投資を行うまえに、事前準備の参考にしてください。
- 不動産投資の節税効果
- 不動産投資で節約できる税金
- 節税効果が変わる!重要な物件選び
目次
不動産投資は節税効果はある?
節税を目的にして不動産投資を行う方は少なくありません。
その理由は、「不動産所得」によって収入に対して課税される税金を抑えられるからです。
「節税」といえば、支払う必要があるお金を節約できると思いがちですが、必ず条件や限度がありますので注意しましょう。
- 税金を減らして節税する
- 税品の支払いを繰り延べ(先伸ばし)にして節税する
不動産投資は譲渡所得税や固定資産税など様々な税金がかかるので、取引の際にはできるだけ節税を心がけたいところですね。
不動産投資で節税を行いたいと思っている方は、①のほうが当てはまります。
それでは不動産投資でどうやって税金を減らせるのかをご説明します。
不動産所得によって節税できるか左右される
以下では、不動産の節税に関係する「不動産所得」についてご紹介します。
不動産所得とは、お持ちの不動産を収益化したときの収入のことです。
不動産投資で成功したいと考えていても、基礎の知識がなければ失敗しやすいです。
ここでは不動産所得の種類や計算方法をご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
不動産所得は3種類
不動産所得には3種類あります。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存ずる権利の設定および貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
※事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く
節税効果を目的で不動産投資を行うのであれば、1番の「土地や建物などの不動産の貸付け」による家賃収入の所得がメインになります。
不動産投資で得た収入を「不動産所得」として算出しますが、節税が可能かどうかはその金額によって左右されます。
不動産所得の計算方法
不動産所得にかかる税金「所得税」を求めるには、計算式を用いて算出します。
不動産所得の金額は、必要経費を差し引いた額です。
総収入金額の中には、貸付けによる賃貸料の収入以外にも、更新料や返還を要しない敷金や保証金、電気代や水道代が含まれます。
今一度、合計金額を確認してみましょう。
不動産投資の必要経費に当てはまるものは、不動産収入を得るために、直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるものです。
固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費の4つが必要経費に挙げられます。
所得税がそれぞれ別に算出されるわけではなく、合計の金額から所得税が割り出されるので注意しましょう。
所得税・住民税が不動産投資で節税できる
結論からいうと、不動産投資で節税はできます。
ここまで、節税になる税金に関して詳しく解説してきましたが、本題に入りましょう。
不動産投資を利用して税金を抑えられるのは、「所得税」と「住民税」です。
「減価償却」または「損益通算」を利用することで、節税が期待できます。
上記の2つの仕組みは、税務上で認められている不動産投資の節税方法です。
正しい知識を持って、最大限活用しましょう。
減価償却を行う場合
減価償却を行うことで赤字分を給与所得にあて所得を圧縮することが可能です。
ここでの節税とは、本業の収入から発生する給与所得を圧縮させ、納める税金を少なくすることです。
一定期間の分割をして減価償却が大きいほど、赤字を大きくすることが可能で節税効果が高くなります。
給与所得350万円
不動産所得▲200万円
差額150万円が合計所得金額となり、給与所得が節税となる
※▲はマイナスを表す
不動産投資を開始しても1年目は家賃収入が少ないので、必ずその年は赤字になります。
経費などの費用を毎年計算することで、法人税の税額を抑えることもできるので利用したいですね。
土地は年月を重ねても価値が下がらないので対象外になります。
減価償却を行い、最終的に納める税金額を抑えましょう。
損益通算を行う場合
不動産投資で損益通算を行うことで、不動産所得で出た赤字を自身の給与と相殺することができます。
すでに不動産を購入しているので、減価償却費は実際にお金として出ていくことはありません。
減価償却費は経費として計上され、不動産投資の節税対策が成立します。
厳密な計算は建物の築年数や投資をしたときの利回りによって異なるので一度確認しておきましょう。
不動産投資で節約できる税金
不動産投資で節税できる仕組みについてご紹介しました。
不動産を生かして、賃貸として副収入を得たい方は、どんな税金なのかを理解しておく必要があります。
この章では、税金の種類別での節税方法をご案内します。
先に経費や税金を確認しておくことで、購入時から節税に適した物件探しもできます。
それでは1つずつ解説していきます。
所得税
所得税とは、給与所得に応じて税率が変動する税金です。
所得税がなぜ節税できるかというと「減価償却」で作った会計上の赤字を「損益通算」して所得を圧縮できるからです。
損益通算→不動産投資の赤字額を給与所得と相殺できる
所得税は、総所得額に対して税金の金額を割り出します。
確定申告を行うことで表向きの所得から赤字分を引き、最終的な所得を圧縮することが可能です。
不動産所得がもしマイナス100万円の赤字になっても、仕事の収入と合算することで年収が下がるため、支払う所得税を抑えることができます。
不動産投資では、赤字額を給与所得と相殺して支払う税金を抑えられます。
住民税
住民税とは、所得税と同じく給与所得に応じて税率が変動する税金です。
また、住民税と同じで「減価償却」で作った会計上の赤字を「損益通算」して所得を圧縮できるため、節税することができます。
不動産投資の初期は支払う経費が多くかかるため、赤字が発生することが一般的となっています。
住民税は毎月の給与からの天引きがほとんどなので、本来の税金の支払額にするために必ず確定申告をしましょう。
法人税
法人税とは、法人の所得に対して課せられる税です。
個人的に不動産投資をすると住民税と所得税の最高税率は55%となりますが、法人の所得の場合は最大33%になります。
法人を設立してから不動産投資を行う際には、法人税の申告をする費用を税理士に払いますが、法人化することで節税効果が期待できます。
課税所得が800万円以上の場合には、法人のほうが節税のメリットが生まれるような仕組みとなっているので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
不動産次第では大きな節税に繋がることが期待できます。
相続税
相続税とは、不動産を相続する際にかかる税金です。
相続税は不動産に限らず「金や株券債権、車」など資産と扱われるもの全てに税金として支払います。
不動産も資産の一つなので、家族への譲渡の際にも税金がかかります。
相続税を抑えるために、不動産を活用するのも1つの手です。
1億円の賃貸用の不動産を相続すれば、5,000万~6,000万の現金を受け取ったのと同じ評価軸になるのは嬉しいですね。
評価額次第で節税を行うこともでき、課税額を圧縮したり、小規模宅地等の特例によって節税対策が可能です。
相続税についてもっと知りたい方は、国税庁の「相続税の仕組みのわかりやすい解説」をご覧ください。
贈与税
贈与税は、資産と呼べる「不動産や株券、債権」等を無償で譲り受けた際に発生する税金です。
- 一般贈与財産
- 特例贈与財産
1年間で110万円を超える財産を受け取った場合は、贈与税の課税対象です。
また、贈与税は贈与するモノによって税率が異なります。
こちらも相続税と同様に現金ではなく、不動産での贈与になると20~30%の税率を抑えることができます。
また、60歳以上の祖父母または父母などの親族から、20歳以上の子や孫に贈与する場合に適用される「相続時精算課税制度」も有効です。
仮に3500万円の不動産を贈与する場合に相続時精算課税制度を使えば、課税対象は3500万円から2500万円の控除を引いて1000万円です。
贈与税についてもっと知りたい方は、国税庁の「贈与税をもらったとき」をご覧ください。
不動産投資で節税するためには確定申告が必要
不動産投資の節税には、確定申告は必須です。
確定申告について理解を深めておけば、どういう仕組みで節税となるのかがわかるでしょう。
確定申告は難しく思われがちですが、確定申告をすれば多く支払った税金の還付を受けることが可能です。
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
白色申告は帳簿付けが簡単ですが、最終的に課税所得を算出する際の控除額が青色申告よりも少ないのがデメリットです。
帳簿付けが簡単なので、税金を払っても楽に済ませたいという方におすすめの申告方法ですね。
青色申告は複式簿記という複雑な帳簿付けが必要になりますが、白色申告よりも控除額が大幅に多いのがメリットとして挙げられます。
確定申告を使って節税できる「経費」
確定申告を使うことで、所得税を損益通算して抑えることができますが、不動産投資で節税をする場合は経費が最も重要です。
経費が多ければその分総所得を減らすことができ、課税所得を抑えられます。
経費を最大限活用するために、経費になる項目を知っておきましょう。
項目 | 概要 |
---|---|
管理費 | 不動産を管理するための点検費用、不随品の管理、日常清掃など |
修繕費 | 破損した部分・備え付け家電の修繕費など |
修繕積立金 | 将来的な築年数の劣化に備えて積み立てる費用 |
管理会社への委託金 | 不動産の管理会社に支払う費用 |
損害保険料 | 自然災害に備えるための保険料 |
減価償却費 | 建物などの減価償却費 |
ローンの利息 | 不動産をローンで購入している場合の利息分(※元金の返済は経費になりません) |
その他の費用 | 印紙税や不動産取得税、固定資産税などの税金。不動産投資に関係する細かな費用。 |
上記にある減価償却費は実際には費用は発生しません。
不動産の土地は築年数による劣化はないので減価償却費に充てることは不可能です。
一方で建物は構造によって耐用年数が定められています。
減価償却費そのものにお金の動きはありませんが、不動産投資の節税において重要なポイントです。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm~4mm) | 27年 |
重量鉄骨造(厚さ4mm越え) | 34年 |
RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 |
出典:東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数」
これまでは不動産投資で初期費用や税金も含めて必要なコストを正確に把握し節税の仕方なども紹介してきました。
不動産投資は売買でも賃貸でも税金と費用がかかります。
また不動産投資はあなたが思っている以上に、資金が必要となったり維持費がかかったりするかもしれません。
では、不動産投資で節税すべき人はどういった方なのでしょうか。
不動産投資で節税すべき人と節税すべきでない人
不動産投資で節税効果が高く期待できる人は、課税所得900万円(年収1,200万円)の課税所得が高い人です。
課税所得が900万円以下の方にはあまりおすすめできません。
所得税の課税方式は累進課税制度を利用しているため、住民税と所得税の税率に対して、譲渡所得との差が開くことが理由として挙げられます。
以上のことから、不動産投資で節税すべき人は、課税所得900万円(年収1,200万円)の課税所得が高い人と言えます。
また、節税すべき人に当てはまっていても、節税対策のみを目的に不動産投資を始めるのはやめておきましょう。
課税所得が900万円以下の人は不動産投資できないの?
課税所得が900万円以下の方は不動産投資をしてはいけないというわけではありません。
不動産投資の譲渡所得で大きな節税を求めている方には、住民税と所得税の税率との差が開かないため効果が期待できないということでした。
さきほどご説明した損益通算による給与所得の圧縮は十分できますので、できる限り節税を行いましょう。
また、不動産投資が事業規模になった場合は、税務署に青色申告すれば最大65万円の特別控除を受けることが可能です。
節税効果が変わる!重要な物件選び
不動産投資は物件選びでかかる税金も異なります。
「アパート・マンション経営や、土地を活用した不動産投資」など各条件によって節税することが可能です。
年間の課税所得が900万円を超える方に不動産投資での節税をおすすめできますが、課税所得だけで判断はできません。
減価償却費が大きければ会計の赤字を大きくできるため、損益通算をすることができて節税が可能です。
減価償却費は購入した時点で決定するので、購入する前にチェックしておきましょう。
それではなぜ節税効果が出やすいのか、ご説明します。
木造×築古物件は節税効果が期待できる
木造×建築古物件は、節税効果が期待できます。
木造物件が節税効果が出やすい理由は、法定耐用年数が他の構造の物件よりも22年と短いため、大きな減価償却が可能だからです。
築古物件が節税効果が出やすい理由は、法定耐用年数が過ぎている場合、同じ構造でもより大きな減価償却費を期待できるからです。
木造×築年数が経過している物件は、節税対策が容易でおすすめできます。
築古物件も木造築古物件も、減価償却を短期に計上できるだけでなく、節税に有利な物件です。
中古区分マンションは節税効果が期待できる
中古区分マンションは、節税効果が期待できます。
新築区分マンションは減価償却期間が長く、1年間に計上できる減価償却日が少額なので、節税には不向きです。
法的に税率が大幅に免除されないため新築物件は税金面で高くなります。
また初期費用が高くなり、年間の不動産所得が赤字になることがデメリットです。
そのため、中古区分マンションの方が節税効果が期待できると言えます。
不動産投資の節税に関するよくある質問
不動産投資では、不動産の運用だけではなく、税金面についても十分な理解が求められます。
損をしないために、不動産投資の節税に関するよくある質問をまとめました。
不動産投資で節税効果の高い年収は?
不動産投資で節税効果の高い年収とは、課税所得が900万円または年収の目安が1200万円の方です。
所得税の課税方式は累進課税制度を利用しているため、住民税と所得税の税率に対して、譲渡所得との差が開くことが節税に活用できるからです。
課税所得が900万円以上から徐々に税金面で優遇されるようなシステムとなっています。
節税目的の不動産投資における物件の選び方は?
節税対策で不動産投資を行うのであれば、「木造×建築古物件」「中古区分マンション」は、節税効果が期待できます。
木造物件は、法定耐用年数が他の構造の物件よりも22年と短いため、大きな減価償却が可能だからです。
新築区分マンションは減価償却期間が長く、1年間に計上できる減価償却日が少額なので、節税には不向きです。
節税の効果があまり出ないのが、新築区分マンションで、減価償却費が最も少ない物件といえます。
また不動産運用ならば管理費が無駄にかからない不動産もおすすめです。
タワーマンションで節税できるって本当?
タワーマンションで節税は可能です。
タワーマンションは相続税の評価軸と、時価の開きが大きくなるため、不動産投資にうってつけといえます。
また、タワーマンションは相続税だけではなく、固定資産税も非常に有利に働きます。
上記のことから、土地を持っているよりも住宅地を持っている方が節税対策になることがわかりますね。
固定資産税は、土地や建物の評価軸に対して1.4%の税金がかかりますが、住宅用の狭い土地であれば6分の1に納めることができます。
原価償却日の償却期間はどれくらい?
減価償却費は建物の構造によって、償却期間が決められています。
税法上、定められた耐用年数は以下です。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm~4mm) | 27年 |
重量鉄骨造(厚さ4mm越え) | 34年 |
RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 |
出典:東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、不動産投資での節税方法、節税できる税金についてご紹介しました。
不動産投資を行うことはとても大切ですが、税金面での節税対策を忘れてはいけません。
上手に経費を計上すれば、不動産投資の節税に繋がります。
また、節税すべき人に当てはまっていても、節税対策のみを目的に不動産投資を始めるのはやめておくのがおすすめです。
収入が増えることだけを目標にするのではなく、出ていくお金を減らせるように不動産投資を行いましょう。