iDeCo(イデコ)に興味があっても、よく分からないという人が多いのではないでしょうか。
iDeCoは2017年に加入対象が拡大し、節税効果が高く、将来の資産形成にも役立つことで、一気に注目されています。
この記事では、
- 「節税のためにiDeCoを始めたいけど、どんな制度か分からない」
- 「実際どのくらい節税できるの?」
そんな人のために、iDeCoの種類から節約効果、注意点などを解説しています。
どの程度節税できるのか具体的に数字も出して解説しているので、iDeCoの節税効果が気になる人はチェックしてみてください。
目次
iDeCo(イデコ)とは?
iDeCoは「個人型確定拠出年金」のことです。
個人型確定拠出年金とは、自分で年金を積み立てて資産を作る制度になります。
積み立てたお金は、投資信託や定期預金、保険を利用して資産を運用していきます。
通常の投資信託や定期預金などと内容は同じですが、決定的に違う点が、
- 節税効果がある
- 60歳まで引き出せない
この2つです。
詳しくは後述しますが、節税効果に関しては、非常に大きな金額を節税できるため注目されています。
また月5,000円からiDeCoに加入することが可能で、増額も1,000円単位となります。
そう考えると、大きな負担も抱える必要がないため、気軽に利用できるといえるでしょう。
iDeCo(イデコ)はどんな人が加入できる?
iDeCoの加入制限はそう厳しくなく、国内に居住している「20~59歳までの方」であれば、大抵の方が加入できます。
ただし、以下の条件に当てはまる方は加入できませんので注意が必要です。
国民年金保険料が「未納」か「免除」となっている
国民年金保険について未納である場合は当然ではありますが、免除となっている場合でも加入は認められません。
この免除については、一部免除の場合も同様です。
ただし、障害基礎年金を受けている方などの加入は認められています。
農業者年金や企業年金に加入している
農業者年金の被保険者や、現在勤務している企業で「企業型確定拠出年金」が用意されており、それに加入している場合も原則は加入できません。
しかし、規約で個人での同時加入が認められていれば、iDeCoへの加入は認められます。
iDeCo(イデコ)に向いている人は?
iDeCoへの加入条件を見ていきましたが、大抵の方が加入できる環境にあることはお分かりいただけたでしょう。
とはいっても、必ずiDeCoに加入しなくてはいけないわけではなく、自身にとって必要あれば、加入するべきということになります。
iDeCoへ加入をした方が良い方の特徴をまとめておきますので、自身が当てはまっているのかを確認してみましょう。
- 老後の資金が心配な方
- 現行の年金制度に不安を感じる方
- 収入が多く税金対策をしたい方
iDeCo(イデコ)には2種類ある
iDeCoには2つの種類があります。その種類とは、
- 元本確保型
- 元本変動型
の2つです。
どちらにもメリットとデメリットがあります。
どちらを選択するか事前に決めておくと、金融機関や商品選びがスムーズにできます。
もちろん、1つに絞るのではなく、両方を組み合わせて運用していくこともできます。
元本確保型
元本確保型の商品は定期預金と保険です。
この2つは、あまりリスクを取らずにコツコツと確実に積み立てていく特徴があります。
元本割れになるリスクも少ないため「お金を減らしたくない人」におすすめです。
運用で減ることはありませんが、ほとんど増えることもないと考えておいたほうがいいでしょう。
節税効果はあるため、資産を増やすというよりは、税金対策として始める人が多いです。
ただし、運用ではお金が減りませんが、手数料はかかります。
この手数料は最低でも年間2,004円で、高いところでは5,000円以上になります。
元本確保型では手数料分のお金が減ることになるので、注意しましょう。
元本確保型は、お金を減らしたくない人向け
■ メリット
- 元本割れリスクが低い
- 節税効果がある
■ デメリット
- 資金はほとんど増えない
- 手数料分のお金が減る
元本変動型
元本変動型の商品は投資信託です。
投資の専門家が預かったお金で、株式や債券などで資産運用をするため、元本割れのリスクがあります。
資産が減る可能性もありますが、当然増えていく可能性もあります。
リスクは商品によって異なり、そこまで大きなリスクを取っていない商品もあるため、運用成績などを確認したうえで購入しましょう。
iDeCoでは長期間の投資になりますし、運用で発生した利益に対して非課税というメリットもあるので「少しのリスクはあってもいいから増やしたい人」にはおすすめです。
もちろん、元本確保型と同様に節税効果もあります。
元本変動型は、多少のリスクをとっても増やしたい人向け
■ メリット
- 資産が増える可能性がある
- 節税効果がある
■ デメリット
- 元本割れリスクが大きい
- 運用成績を確認した上で選ぶ必要がある
iDeCo(イデコ)の節税メリット
iDeCoには3つの節約になるポイントがあります。
- 積立時
- 運用時
- 受取時
このタイミングで税制優遇が受けられます。
では、この3つについて詳しく解説していきます。
メリット1.積立金は全額所得控除になる
iDeCoの積立金には税金がかからず、全額が控除の対象です。
課税対象となる金額が減るため、所得税と住民税が軽減されます。
節税される額は積立金や年収によって変わりますが、毎年控除になるので、数十万円から数百万円の大きな額が節税になります。
控除は特別な手続きは必要なく、会社員の人は年末調整で、自営業の人は確定申告の際に申請すれば控除になります。
メリット2.運用で発生した利益は非課税
iDeCoでは、運用で発生した利益には課税されない決まりになっています。
通常の投資であれば利益の20.315%が税金として支払いが必要ですが、iDeCoなら発生した利益はそのまま再投資に回されます。
仮にiDeCoで毎月2万円を30年間積み立て、年利3%あった場合に利益は400万円以上にもなります。
その全てが非課税なので、80万円以上が節税になります。
その利益も再投資されることで、複利効果でさらに利益を生んでくれるため、資産は大きく成長します。
メリット3.受取時も一定額までなら非課税
iDeCoの受取方法には、一時金として一括で受け取る方法と、年金方式で分割で受け取る方法の2つがあります。
どちらの方法でも税制優遇が受けられます。
人によってどちらが節税の効果が高いかが異なります。
基本的には、
- 退職金が少ない人:一時金
- 公的年金が少ない人:年金方式
がおすすめです。
では、詳しく解説していきます。
一時金の場合
iDeCoを一括で受け取った場合は、退職所得になります。退職所得には「退職所得控除」が適応され、加入年数によって控除額が決まります。
加入年数20年以下は1年で40万円の控除で、20年を超えると1年で70万の控除が適応されます。
計算式は以下の通りです。
- 加入年数が20年以下の場合 :40×加入年数
- 加入年数が20年を越えている場合: 800+70×(加入年数-20)
これでは少しわかりづらいので、以下に具体例を紹介しておきます。
たとえば、30年間iDeCoで積立を続けた場合、
- 800+70×(30-20)=1,500
となり、1,500万円まで控除されます。
受取金がiDeCoと退職金などの退職所得を合わせて1,500万円以下なら、税金はかかりません。
一括での受取は、退職金の少ない人やiDeCoの受取が多い人(加入年数が長い人)におすすめです。
年金方式の場合
iDeCoを分割で受け取る場合は雑所得になるため、公的年金等控除の対象となります。
公的年金などを合わせた、年間の年金収入が65歳未満は70万円、65歳以上は120万円まで税金がかからない決まりです。
それ以上の年金収入がある場合は、次の計算式で課税対象の所得が算出できます。
(年金収入の合計)×(割合)-(控除額)=(課税所得)
割合と控除額は以下の表を参考にして計算します。
年金収入の合計 | 割合 | 控除額 | |
65歳未満 | 70万円越〜130万円未満 | 100% | 700,000円 |
130万円〜410万円未満 | 75% | 375,000円 | |
410万円〜770万円未満 | 85% | 785,000円 | |
770万円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | 120万円越〜330万円未満 | 100% | 1,200,000円 |
330万円〜410万円未満 | 75% | 375,000円 | |
410万円〜770万円未満 | 85% | 785,000円 | |
770万円以上 | 95% | 1,555,000円 |
たとえば65歳未満の年金収入が300万円の人は、
と計算できます。
条件によって異なりますが、公的年金が少ない人は分割での受取がおすすめです。
具体的にどのくらい節税になる?
具体的にどのくらい節税になるかご紹介していきます。
条件によって異なるため、参考程度にしてください。
条件として、
- 30歳で課税所得:300万円
- 積立額:毎月2万円
- 所得税と住民税の合算割合:20%
とします。
最初に積立時の節税額です。
1年間で積立額は24万円(2万円×12ヶ月)で、節税額は4万8,000円になります。
30歳から60歳までの30年間で計算すると144万円の節税になります。
次に運用時の節税額について解説します。
年利3%で計算すると30年間で運用益は445万4738円です。
本来なら投資信託で得た運用益に対しては20.315%課税されますが、iDeCoなら課税されないため、90万4,980円の節税になります。
積立時と運用時を合わせると234万4,980円もの節税になります。iDeCoを利用するだけで、ここまで大きく節税できることが分かります。
ただし、運用益が出なかったり、今後税率が変わると結果も変わってくるので注意しましょう。
iDeCo(イデコ)の始め方は3ステップだけ
ここまででiDeCoが節税に非常に有効なことが分かりました。
iDeCoの始めるには、たった3ステップをこなすだけとなります。
ここでは、その手順にも触れながら、金融機関と商品の選び方のポイントについても解説しているので、参考にしてください。
STEP1.金融機関で口座を開設する
まずは、金融機関を選んで口座を開設する必要があります。
金融機関を選ぶポイントとしては「商品ラインナップ」と「管理手数料」です。
とくに管理手数料は毎月支払うもので、最も安いところで167円、高いところでは500円以上と大きく違います。
iDeCoは数十年と長期間に渡って運用していくため、月に数百円とはいえ慎重に選ぶ必要があります。
商品ラインナップは金融機関で違うため、欲しい商品がある金融機関を選びましょう。
ただし、ラインナップが多ければいいというわけではなく、なかには厳選した商品を絞っている金融機関もあります。先に自分の欲しい商品を選ぶのもおすすめです。
STEP2.商品を選ぶ
商品には「元本確保型」と「元本変動型」の2つのタイプがあります。
この選択は難しいところなので慎重に検討しましょう。
投資信託である元本変動型は、非常に多くの商品があるため選ぶのは大変かもしれません。
しかし、iDeCoは長期間の運用になるので、きちんと運用成績やリスクなどを確認しておきましょう。
また、投資信託の場合は信託報酬という手数料もかかり、信託報酬は0.2%の商品もあれば、1.5%の商品もあります。
この差は非常に大きいため、必ずチェックしましょう。
iDeCo(イデコ)のおすすめ銘柄・金融機関は?【2024年最新】STEP3.定期的に見直しをする
iDeCoを購入したあとは定期的な見直しが必要です。
とくに元本変動型の投資信託では、元本が減る可能性もあるため、ほったらかしではいけません。
3ヶ月から半年に1度、資産がどのように変化しているのかチェックしましょう。
もしも、大きく資産が減っていた場合やほかに魅力的な商品があったときは、切り替えることもできます。
ただし、商品によっては解約手数料が発生することがあるため、何度も頻繁に商品を変更するのはおすすめしません。
iDeCo(イデコ)で節税する際のデメリット
節税をするのに最適なiDeCoですが、いくつかデメリットもあります。
投資信託などの投資をしている人でも、iDeCoならではの特別な決まりもあるので注意してください。
今回は5つの注意するポイントをまとめたので、事前に確認しておきましょう。
デメリット1.雇用形態によって掛け金の上限額が決まっている
iDeCoは毎月無制限に積立できるわけではありません。
上限は以下のとおりです。
掛け金上限 | |
会社員(企業年金なし) | 2万3,000円 |
会社員(企業型確定拠出年金の加入者) | 2万円 |
会社員(確定給付企業年金の加入者) | 1万2,000円 |
公務員 | 1万2,000円 |
自営業 | 6万8,000円 |
専業主婦・主夫 | 2万3,000円 |
企業年金の有無などにより、1万2,000円から6万8,000円と決まっています。
転職すると就職先によっては上限額が変更されるので、注意しましょう。ちなみに下限額は5,000円となっています。
デメリット2.引き出せるのは60歳になってから
引き出せるのは原則60歳になってからです。
途中で解約したい、引き出したいと思っても、引き出せないので気を付けましょう。
途中で解約できる条件もありますが、厳しい条件となっているため、ほとんどの人が条件には当てはまりません。
以下が解約の条件で、全てに当てはまっている必要があります。
1.国民年金の第1号被保険者のうち、国民年金保険料の全額免除又は一部免除、もしくは納付猶予を受けている方
2.確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
3.通算拠出期間が3年以下、又は個人別管理資産が25万円以下であること
4.最後に企業型確定拠出年金又は個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から2年以内であること
5.企業型確定拠出年金の資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと※ 1.の要件は、日本国の国民年金保険料の免除を受けていることが必要であり、外国籍の方が帰国後に国民年金の加入資格がなくなった場合は、これに該当しません。
ほかに解約ができるケースとしては、
- 加入者が死亡した場合
- 加入者が怪我や病気により障害状態になった場合
のみです。
基本的には解約できないと考えておきましょう。
収入が少ない、安定していない、これから転職する予定がある人は加入を慎重に検討しなくてはいけません。
それでも支払いが厳しくなったら、毎月の支払額を最低限の5,000円に設定するといいでしょう。
デメリット3.元本割れの可能性
元本変動型の商品は、元本割れの可能性があります。
減税されても結果的には資産が減ってしまうこともあります。
元本割れのリスクは商品によって変わるため、事前に運用成績などを確認しておくことが大切です。
資産を減らしたくないなら、元本確保型で節税効果だけを狙いましょう。
デメリット4.運用には手数料がかかる
運用には管理手数料と信託報酬がかかります。
これは金融機関と商品によって異なるため、iDeCoを始める前にチェックしておく必要があります。
元本確保型の場合、運用益がほとんど見込めないため、発生する利益よりも手数料のほうが多いこともあります。
デメリット5.口座は1人1つまで
投資信託の口座はいくつも所有できますが、iDeCo専用口座は1人1つまでしか持てません。
変更は可能ですが、手続きが大変で、引き継ぎまでの期間は運用が止まってしまいます。
開設の特典などを目当てに開設するのもいいですが、そのあと変更するのは大変なため、口座の開設はきちんと検討してからにしてください。
iDeCo(イデコ)で節税しながら老後に備えよう
iDeCoの種類と節税効果、始め方を解説してきました。
iDeCoは毎月積立するだけで、節税に対して大きな効果があり、将来の資産形成に有効な方法です。
しかし、節税には非常に有効ですが、いくつか注意する点もあります。とくに元本変動型は投資信託、つまり投資になるため、元本が減る可能性があるので、注意しなくてはいけません。
そういった注意点もありますが、節税効果が高く、老後の備えるためには非常に役立つ制度です。
ぜひ今回の記事を参考にして、iDeCoへの加入を検討してみましょう。