「この頃、会社の経営状態が良好ではありません……。」
「毎月きちんと売り上げは立っているものの、現金が枯渇した状態が慢性化しています……。」
「これから法人化したいので、中小企業が資金繰りを安定させるポイントについて知りたいです……。」
安定して会社を経営していく上で、収支をきちんと管理することは欠かせません。
この会社の収支を管理して調整することを、資金繰りといいます。
本記事では、中小企業の経営者向けに会社の資金繰りを改善するためのポイントや、苦しくなる理由について解説します。
なお既に資金繰りに苦しんでいる中小企業向けに頼れる相談や機関なども合わせてお伝えしていきます。
この記事をお読みいただければ、中小企業の資金繰りについてわかるようになるでしょう。
- 中小企業の資金繰りとは、収支を管理して調整すること
- 中小企業は黒字倒産しないように、資金繰りを管理するべき
- 在庫を抱えていたり、経費を使いすぎている中小企業は資金繰りが悪化しがち
- 売掛金の入金サイトが長い中小企業は、資金繰りが悪化しがち
- 売掛金の入金サイトを改善したい中小企業は、ファクタリングの利用を検討するべき
- 資金繰りが苦しい中小企業は、顧問の税理士などにアドバイスを求めると良い
目次
中小企業の経営者必見!資金繰りとは簡単に言うと何?
資金繰りとは簡単にいうと、会社が支払いに困らないよう、収入と支出を管理し調整することをいいます。
日本では、先に商品やサービスを提供し後から代金が支払われる信用取引が一般的です。
そのため、収入や支出を考えた上で取引しなければなりません。
たとえ売上が発生していたとしても入金日が遠く、現金を回収できない期間が長ければ、その分黒字倒産するリスクも高まるでしょう。
1,000万円の売上が発生していて、入金が90日先だとします。
その間に、1.500万円の支払いが発生していることがわかっているにもかかわらず、現金を用意できなければ支払いを済ませられません。
こういった現金の枯渇が黒字倒産を引き起こします。
国内では黒字倒産する中小企業が後を絶ちません。
そのような事態を引き起こさなさいためにも、資金繰りを考えることがポイントになります。
つまり、中小企業にとって資金繰りと経営は切っても切り離せない関係にあるのです。
資金と利益は別
経営者の中には、資金と利益を同じものとして捉えている方が少なくありません。
しかし、資金と利益は別物です。
ここでは資金と利益の違いを解説していきます。
資金とは、会社の現金や預金など、すぐに支払いにあてられるお金のことを指します。
その一方で利益とは、会社の儲け分を指します。
もっと簡単にいうと、収益から費用を差し引いたお金だといえるでしょう。
そんな利益を細かく分類すると、5種類に分けられます。
- 売上総利益:粗利ともいわれる売上からコストを差し引いた金額
- 経常利益:事業全体で得た利益
- 営業利益:粗利からコストを差し引いた金額
- 当期純利益:税引き前当期利益から全てのコストを差し引いた最終的な利益
- 税引き前当期利益:税金を支払う前の利益
ここでのポイントは、資金と利益は別だと認識することです。
混同しがちな二つの言葉ですが、全く別のものだと認識しましょう。
資金繰りとキャッシュフローの違いとは?
資金繰りとキャッシュフローの明確な違いについて、ご存知の経営者はそう多くないでしょう。
どちらも資金の流れについて説明しているという点では同じです。
しかし目的が大きく異なります。
キャッシュフローを活用することで、過去から現在までの資金の増減を把握できます。
つまり、中小企業がキャッシュフローを活用すれば経営課題を見つけられるだけでなく、分析したり改善したりするのに役立ちます。
未来の収支の流れを把握するために利用されるのが資金繰り、過去の資金の流れを把握するために利用されるのがキャッシュフローだということを忘れないようにしましょう。
中小企業の資金繰りが苦しくなる4つの理由
「なぜ資金繰りが苦しくなってしまうのでしょうか……?」
「資金繰りが苦しくなる中小企業と、そうでない中小企業の違いが知りたいです……。」
ここでは資金繰りが苦しくなる事業者に当てはまる特徴を4つお伝えしていきます。
既に資金繰りに困っている中小企業だけでなく、困らないよう対策をとりたい事業者も参考にしてください。
- 商品にならない在庫を抱えすぎている
- 売掛金をなかなか回収できていない
- 人件費や接待交際費など経費を使いすぎている
- 何らかの事情で売掛金を回収していない
1.在庫を抱えすぎている
一つ目の特徴として、在庫を抱えすぎているというものがあります。
在庫や商品を作るために仕入れた材料などを抱えているということは、資金繰りが苦しくなる一因です。
お金を払って仕入れた商品が利益を生まないまま眠っているということは、それだけ資金が減少しているということになります。
特に商品として売れないような在庫を多く抱えている場合、資金繰りが苦しくなってしまうでしょう。
ここでのポイントは、抱える在庫は常に最小数を意識するということです。
2.売掛金の回収に時間がかかっている
二つ目の特徴として、売掛金の回収に時間がかかっているというものがあります。
商品やサービスを納入してから入金までに時間がかかると、それだけ資金繰りが苦しくなります。
このような特徴に当てはまる場合は、取引先に売掛金の入金を早めてもらえないか打診するなど、何らかの対策を練る必要があるでしょう。
しかし、いきなり入金日を早めてもらおうとすると、関係が悪化するなど最悪の場合、取引事態が停止してしまう可能性もあります。
そのような事態に陥らないためにも、相手の様子を見ながら慎重に交渉しましょう。
3.無駄な経費が多い
三つ目の特徴として、無駄な経費が多いというものがあります。
ここでいう無駄な経費とは、高すぎる人件費や接待交際費などのことを指しています。
資金繰りが苦しいのに、高額な給料を支払っているということはないでしょうか?
根拠があっての数値であれば切り詰めることは難しいでしょう。
しかし特に根拠はないにもかかわらず高い給料を支払っているのであれば、適正な金額に見直すべきタイミングかもしれません。
なお接待交際費を含め、無駄な経費が発生している場合も要注意です。
安定した経営基盤を気づくためにも、経営状態が良好なうちから無駄な経費を使わないよう意識しましょう。
4.取引先が倒産し売掛金を回収できない
四つ目の特徴として、取引先が倒産し売掛金を回収できないということがあります。
本来であれば入金されるはずだったお金を回収できないということは、資金繰りの悪化に直結します。
初めて契約する企業との取引に不安を感じる場合や、取引先の資金繰りが悪化していることを知っている場合などは、保証型ファクタリングを利用するという手もあります。
活用することで、万が一取引先が倒産して売掛金が入金されない場合に、ファクタリング会社が売掛金の一部を負担してくれます。
なお審査で取引先の与信管理を行ってくれるため、安全な事業者なのか否かをプロの視点で見極めてもらえます。
売掛金の入金に不安を覚えた際は、保証型ファクタリングの利用を検討しましょう。
また自社で売掛金の入金漏れがないか確認することもポイントです。
これまで入金を取引先任せにしてきた中小企業は一度、入金漏れがないか確認しましょう。
中小企業が資金繰りを改善する8つの方法
資金繰りが苦しくなっている中小企業は、根本的にお金の流れを改善する必要があります。
ここでは、改善するための方法を8つお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
黒字倒産することがないよう、資金があるうちに改善策を練るべきです。
- 必ず資金繰り表を作成する
- 経費の削減に努める
- 入金日などの条件を交渉する
- ファクタリングで売掛金の早期回収を目指す
- 全ての支払いに優先順位をつける
- M&Aで事業を譲渡する
- 事業の縮小を検討する
- 最終手段として、法的整理を検討する
1.資金繰り表を作成する
一つ目のポイントは、資金繰り表を作成することです。
会社のお金の出し入れをまとめた書類のことを資金繰り表といいます。
3ヶ月から6ヶ月先までに発生するお金の出し入れを記入することで、将来発生する支出に備えることが可能です。
将来的に発生する支出が可視化されることで、足りない分を資金調達するなど余裕を持った準備ができるようになるのです。
資金繰りに苦しむ中小企業のほとんどが、そもそも資金繰り表を作成していなかったり、十分な情報が記載されていなかったりします。
言い換えれば、きちんとした資金繰り表を作成できる中小企業の方が、経営状態が安定しているといえるでしょう。
資金繰り表の作り方やフォーマットとは?
ここからは、会社の経営を安定させるために重要な資金繰り表の作り方やフォーマットについて解説していきます。
まず大前提として、資金繰り表に決まった作り方やフォーマットなどはありません。
そのため自社でエクセルなどを使用して作成するのも良いでしょう。
なお自社で作成するのが面倒な場合は、Webで「資金繰り表 テンプレート」などと検索してみましょう。
無料でダウンロードできるフォーマットが多数公開されています。
自社にとって使いやすそうなものをダウンロードしてみてください。
資金繰り表に記載するべき項目とは?
資金繰り表に必ず記載するべき項目については、以下の通りです。
- 営業収支
- 経常収支
- 経常外収支
- 財務収支
現金がどれだけ発生しているのかを現すのが、営業収支です。
営業収支がプラスに転じていると、問題ないように見えます。
しかし、一時的な収入でプラスに転じているだけなのか、それとも本当に利益が発生しているのか見極めることが重要です。
本業とは関係ないところで発生した収入と支出を合わせて、経常収支といいます。
経営状況が一番反映されます。
本業の成績が反映される営業収支がプラスに転じている場合でも、利息や返済などが大きい場合、経常収支がマイナスになるかプラスの数値が低くなります。
税金や設備投資を経常外収支としてまとめることがあります。
設備投資に多額のお金を注ぎ込んだ場合、経常外収支がマイナスとなる可能性があるでしょう。
銀行から借り入れしたお金の収支のことを財務収支といいます。
- 借入金が増加した場合:財務収支がプラスになる
- 借入金を返済した場合:財務収支がマイナスになる
借入金の返済額は、営業収支の増減に直結します。
営業収支がプラスに転じた場合は、より多くの借入金を返済できるはずです。
つまり、財務収支が大きくプラスに傾いている場合、経営状態が良くないと判断できるでしょう。
2.経費を削減する
二つ目のポイントは、経費を削減することです。
ここでいう経費には、下記のような支出が含まれます。
- 従業員への給料
- オフィスの賃金
- 旅費交通費
- 水道光熱費
- 通信費
- 消耗品費
- 接待交際費
- 福利厚生費
- 減価償却費
上記はあくまでも一例ですが、毎月支出の大きな割合を占めている経費がどれなのか確認しましょう。
むやみやたらと高い給料を支払っているのであれば、見直すべきポイントだといえるかもしれません。
しかし削減しすぎて、会社にとって必要な人材が流出しないよう気を配る必要はあります。
どんな中小企業にも共通していえる経費削減方法は、以下の通りです。
- ペーパーレス化する
- 水道光熱費を見直す
- オフィスの賃料を見直す
- 設備を見直す
- 人件費を見直す
- 借り入れがある場合は一本化を検討する
ペーパーレス化することで、ペーパー代を削減できるのはもちろん、印刷にかかるインク代やメンテナンス費などを削減できます。
一見、大したことのない経費に思えるかもしれませんが、細かいところも見直していくのがポイントです。
水道光熱費に関しては、少しでも料金が下がる電力会社と契約しましょう。
毎月必ず発生する経費であるため、少しでも料金が下がるのであれば経費削減につながります。
1年間では大したことのない金額でも、数年経てば大きな金額が浮くことになるでしょう。
オフィスの賃料が高いと感じた場合は、無駄なスペースがないか見直したり、契約を見直したりすることをおすすめします。
無駄が多いと感じたら適切な広さのオフィスに引っ越したり、賃料引き下げを交渉したりと、打つ手はたくさんあります。
オフィスに関する経費に関しては、経営者が積極的に取り組まない限り、改善されない項目です。
少しでも無駄が多いと感じているのであれば、すぐに改善策を練りましょう。
設備に関して、いきなり大金を払って購入するのではなく、リース契約するという手もあります。
長期的な視点で自社にとってどちらの方が良いのか検討しましょう。
人件費に関しては、正社員を採用するのではなく、足りない分をアウトソーシングするという手もあります。
なお複数から借り入れがある中小企業は、一本化することも検討しましょう。
複数の会社や銀行に返済していると、その分金利がかかります。
しかし一本化することで、金利も返済額も少なくなる可能性があります。
少しでも無駄な支出がないよう、一度全ての支出を洗い出して見直してみましょう。
3.取引条件を見直す
三つ目のポイントは、取引条件を見直すことです。
特に、慢性的に資金繰りに苦しんでいる中小企業は、取引条件の見直しが重要になってくるでしょう。
売掛金の入金が遅いせいで、資金繰りに苦しんでいるということはないでしょうか?
黒字なのに入金が遅いせいで資金繰りに苦しんでいるケースに該当する場合、取引先に条件の見直し交渉を持ちかける必要があるかもしれません。
売掛金の入金を早めてもらえないか交渉するか、買掛金の支払い期間を伸ばせてもらえないか交渉しましょう。
しかしどちらの交渉も取引先の事情を汲んだ上で、慎重にしないと大惨事となる可能性があります。
自社の都合だけ押し通すような交渉を持ちかければ、最悪の場合、取引停止となる危険性もはらんでいます。
信用を失わないように、タイミングを見計らって慎重に交渉しましょう。
4.ファクタリングを利用して売掛金を早期回収する
四つ目のポイントは、ファクタリングを利用して売掛金を早期回収することです。
先ほど、取引先に入金を早めてもらえないか交渉する手段があるとお伝えしました。
しかし、全ての中小企業が条件交渉を持ちかけられるわけではありません。
条件交渉を持ちかけたところで、信頼関係が失われることが目に見えている場合もあるでしょう。
このようなケースに該当する場合には、ファクタリングの利用が最適です。
融資やビジネスローンなどとは異なり、借り入れではありません。
そのため信用情報に傷をつける恐れがないのです。
資金繰り改善のためにファクタリングを利用するメリット
入金が遅いせいで資金繰りに苦しむ中小企業向けに、ファクタリングを利用するメリットを解説します。
- 借り入れではなく売却になる
- 信用情報に残らない
- 2社間取引を選択すれば、取引先に知られずに現金を回収できる
- 自社の業績に関係なく利用できる可能性が高い
- 最短だと即日で売掛金を回収できる
主なメリットについては、上記の通りです。
ファクタリングには、2社間取引と3社間取引という2種類の取引方法があります。
主な違いは、取引先を含めた契約か否かということです。
2社間取引はファクタリングに申し込んだ中小企業と、ファクタリング会社もしくは銀行という2社で行う取引となります。
そのため取引先に知られずに、売掛債権を売却して現金を回収できるのです。
取引先に知られずに資金調達したい中小企業にとって、最適な手段だといえるでしょう。
なおファクタリングの利用時には必ず審査を受ける必要があります。
しかし審査基準が取引先の信用力であるため、自社の業績はあまり審査に影響しません。
つまり資金繰りに苦しんでいる中小企業でも取引先さえしっかりしていれば、利用できる可能性が高いのです。
例えば、下記の事例に当てはまる中小企業でもファクタリングの審査に通過している例はたくさんあります。
- 税金を滞納している中小企業
- 債務超過している中小企業
- 赤字決算が続いている中小企業
つまり、融資に絶対通らないような条件の中小企業でも、ファクタリングで資金調達に成功している事例はたくさんあるということです。
さらに、最短だと申し込んだ当日中に現金を回収できるのもファクタリングのメリットです。
2社間取引であれば、遅くても5営業日以内に現金を回収しているケースが多くなります。
入金日の関係で資金繰りに苦しんでいる中小企業は、ファクタリングの利用を検討してみましょう。
資金繰り改善のためにファクタリングを利用するデメリット
資金繰りを改善するためにファクタリングを利用するデメリットは、手数料がかかることです。
2社間取引、3社間取引どちらを利用しても必ず手数料がかかります。
一般的に2社間取引であれば10%から30%程度、3社間取引であれば2%から20%程度の手数料がかかるといわれています。
資金繰りが苦しい中で、何度もファクタリングを利用すれば、さらに資金繰りに苦しむことになるでしょう。
長期的な利用には向いていませんが、一時的な措置として利用する分には、最適な資金調達手段です。
5.支払いに優先順位をつける
五つ目のポイントは、支払いに優先順位をつけることです。
資金繰りが苦しい中小企業の特徴として、支払い書や請求書などが届いたら順番で支払っているというものがあります。
もちろんどの支払いも滞りなくさばく必要がありますが、支払いに優先順位をつけることが重要です。
具体的には、支払い期日が決まっている支払いを優先する必要があります。
- 手形小切手などの決済
- 外注費
- 仕入れ費用
- 従業員の給料など人件費
- オフィスの賃料
- 水道光熱費
- 借り入れの返済
- 税金の支払い
上から順に重要な支払いをまとめてみました。
手形小切手などの決済は必ず期日内に支払う必要があります。
信用を失わない、取引を継続するという意味でも、外注費や従業員などへの支払いも滞りなく支払うべきでしょう。
しかし、借り入れの返済や税金の支払いに関しては、相談することで優遇措置を検討してもらえることがあります。
銀行への返済がある場合は、資金繰りが苦しいため従来の返済スケジュールを守るのが厳しいということを伝えてみましょう。
場合によっては、返済スケジュールの見直しや、返済期日の延長などに対応してくれる可能性があります。
なお税金に関しても相談することで、分納に応じてもらえる可能性があるでしょう。
何も相談しないまま未納が続くよりも、分納の方が良いはずです。
しかしこれからお金を借りようとしている場合は、税金の未納などが理由で融資を断られてしまうことがあります。
そういったことを踏まえた上で、支払いに優先順位をつけたり、相談したりしましょう。
6.M&Aする
六つ目のポイントは、M&Aを利用するということです。
M&Aとは会社や事業の譲渡のことで、会社を丸ごと譲渡する株式譲渡と事業部の一部を譲渡する事業譲渡があります。
ここでは事業譲渡という意味で、M&Aという言葉を用いて解説していきます。
譲渡したいと考える自社にとっては将来性のない事業でも、他社からすれば売り上げの見込みがたつということも珍しくありません。
既にその事業に精通した技術などを持っている場合は、M&Aも一つの手段として検討してみましょう。
自社にとって不採算となっている事業を譲渡することで、資金繰りが改善する可能性があります。
特にこれまで紹介してきた経費の削減や取引条件の見直しなどをしても資金繰りが改善しなかった中小企業は、積極的にM&Aを検討してみてください。
7.事業縮小を検討する
七つ目のポイントは、事業縮小を検討するということです。
最初から事業縮小を検討する必要はありませんが、これまで紹介してきた改善策を試しても効果がなかった場合に、最終手段として検討しましょう。
特に、連続で赤字となっている事業や部門、利益率が悪い商品などは縮小を検討するべきです。
仮に将来的には売り上げの増加を見込める事業や商品だったとしても、資金繰りを改善するためには縮小が必要でしょう。
資金繰りの改善のために事業縮小した結果、会社の経営が安定することは稀ではありません。
会社の資金繰りが改善されたタイミングで、縮小した事業に取り掛かっても遅くはないでしょう。
資金繰りが苦しくてどうしようもない状況なのであれば、まず会社の経営を安定化させることに舵を切る必要があります。
8.法的整理を検討する
八つ目のポイントは、法的整理を検討するということです。
法的整理を検討するのは最終段階で、M&Aや事業縮小をしてもどうしようもならなかった場合に限られます。
その際、弁護士や税理士に相談しながら進めていきましょう。
うまくいけば、事業を再開できる可能性もあるでしょう。
なおここからは、法的整理に関連する手続きや法律などについて解説していきます。
民事再生法
経済的に困窮している場合に再建することを目的とした法律が民事再生法です。
この法律が適用されたとしても、従業員を解雇する必要はなく、勤務し続けてもらうことができます。
なお現在の経営者陣が経営を退く必要もありません。
手続きの流れとしては、債務者が裁判所に申し立てを行うところからスタートします。
その後、再生手続開始決定を裁判所が下します。
資産調査などが行われた後に再生計画案を作成し、裁判所に認可されたら、再生計画案が認可されることになります。
一般的に成功させるハードルが高いといわれる民事再生ですが、下記のポイントを踏まえておくことが重要です。
- 実現性の高い再生計画案を提出する
- 儲けを出せるような経営戦略を練る
- 現金決済でも問題ないよう、スポンサーを用意しておく
まずは、実現性の高い再生計画案を提出することが大切です。
資金繰りが苦しく倒産しかけた会社を再生させるためのプランのことを、再生計画案といいます。
つまり、会社を再生させるために具体的かつ、実現性の高いプランを作成する必要があるのです。
ここでのポイントは、債権者の同意を得るために、会社を倒産させるのではなく民事再生した方がメリットがあるということを示せるか否かということです。
続いて、儲けを出せるような経営戦略を練ることもポイントになります。
売り上げを増加させ、経費を削減するように努めましょう。
最後に、現金決済でも問題ないよう、スポンサーを用意しておくというのも重要なポイントです。
民事再生の手続きには、5ヶ月以上の期間がかかることが一般的です。
基本的には認可されるまで全ての取引が、現金決済となるでしょう。
もちろん銀行などから融資を受けることも不可能です。
そのため民事再生が認可されるまでの間、現金決済に困らないようスポンサーを探しておく必要もあるでしょう。
会社更生法
民事再生法同様、経済的に困窮している場合に再建することを目的とした法律です。
上記二つの法律は、対象となる事業者が異なります。
- 民事再生法:基本的に、中小企業が対象
- 会社更生法:基本的に、大企業が対象
上記で解説した民事再生法と大きく異なり、株主だけでなく債権者も更生手続きの対象となる点に注意が必要です。
2002年以前は複雑さが原因で、非常に困難を極める手続きでした。
しかし2002年に法改正があり、現在では効率的に手続きできるようになっています。
破産法
これまでにお伝えした民事再生法や会社更生法、これからお伝えする特別清算などは、破産法を基に制定されています。
破産手続きを進めると、会社は消滅します。
特別清算
会社を廃業するために行う手続きのことを、特別清算といいます。
倒産手続きのうちの一つだと言い換えることができるでしょう。
この手続きの特徴は、債権者の同意次第で異なる割合で返済できることです。
手続き方法としては、裁判所に特別清算したいことを申し立てます。
その後、裁判所の関与の元、手続きが開始されることになります。
中小企業の資金繰りが苦しいときに頼れる支援窓口や機関とは?
資金繰りが苦しい中小企業の経営者に注意していただきたいのは、社内で問題を抱え込まないということです。
経営陣だけで問題を抱え込んでしまうと、問題を客観視できず、解決策を見出せないことも少なくありません。
そこで、ここでは資金繰りが苦しいときに頼るべき支援窓口や相談機関などを解説していきます。
それぞれ特徴や利用するメリットなども合わせてお伝えするので、参考にしてください。
- 国や地方自治体が運営する相談窓口
- 中小企業診断士や行政書士などの専門家
- 顧問の税理士
1.国や地方自治体の相談窓口
一つ目の相談先として挙げられるのが、国や地方団体の相談窓口です。
- 金融庁:相談ダイヤル
- 経済産業省:中小企業金融・給付金相談窓口
上記はあくまで一例で、自治体ごとに相談窓口を設置しているケースがほとんどです。
このような行政が運営する相談窓口を利用するメリットは、いずれも無料で相談可能な点にあります。
新型コロナウイルスによる影響で、資金繰りに苦しんでいる中小企業は上記の窓口を利用しましょう。
2.中小企業診断士や行政書士
二つ目の相談先として挙げられるのが、中小企業診断士や行政書士などの専門家です。
中小企業診断士や行政書士などの専門家に頼るべきタイミングは、以下の通りです。
- 書類作成に関するアドバイスや代行を依頼したいとき
- 各種手続きを認可してもらうために、アドバイスが欲しいとき
- 各種手続きを進める上で、どのような注意点があるのか知りたいとき
- 一連の手続きをサポートして欲しいとき
このようなタイミングで、専門家を頼りましょう。
書類の作成一つとっても、複雑で困難を極めるものばかりです。
スムーズに手続きを進めるためにも、最初から専門家に指示を仰ぎましょう。
3.税理士
三つ目の相談先として挙げられるのが、税理士です。
ほとんどの中小企業は普段から付き合いのある税理がいるでしょう。
資金繰りが苦しくなった時点で、顧問の税理士に相談して適切なアドバイスをもらってください。
プロとして依頼元の中小企業に必要な対策を講じた上で、最適なアドバイスをくれるでしょう。
中小企業は制度を上手く利用して資金繰りをしよう
この記事では資金繰りが苦しい中小企業向けに、資金繰りが苦しくなる理由や、資金繰りを改善するためのポイントなどについて解説してきました。
資金繰りが苦しくなる理由はさまざまなものがありますが、不要な在庫をいつまでも抱えている企業や、無駄な経費が多い企業は要注意です。
改善策を練らないまま営業していると、どんどん資金繰りが悪化してしまうでしょう。
なお入金サイトが長いために資金繰りが苦しくなっているのであれば、ファクタリングを利用して売掛金の早期回収を目指すのがおすすめです。
記事内でもお伝えしたように、3社間取引であれば取引先に知られずに売掛金を早期回収できます。
現段階では資金繰りに苦しんでいない中小企業も、資金繰り表を作成して日頃から経費削減を心がけるなど、できることはたくさんあります。
顧問の税理士などに相談しながら、安定した経営を目指しましょう。
この記事が、中小企業の経営者の参考になれば幸いです。