自己破産の手続きにはどれくらいの期間がかかるの?
自己破産の手続きを最短で終わらせるにはどうすればよいの?
自己破産とは多額の借金があっても一定の条件を満たせば、全額免除してもらえる制度のことです。
借金の返済に苦しんで自己破産を決意した方なら、少しでも早く手続きを終わらせたいと望むことでしょう。
ただ、自己破産をするためには裁判所で複雑な手続きをする必要があり、すべてが終了するまでにはそれなりの期間がかかります。
本記事では、自己破産にかかる期間と手続きの流れを詳しく解説し、長引く原因となることや最短で終わらせる方法もご紹介します。
自己破産の手続き期間中の注意点やブラックリストから解放されるまでの期間、費用についても解説しますので、参考になさってください。
- 自己破産にかかる期間は手続きの種類により異なる
- 自己破産手続きの期間は最短で3~4か月だが長引くと1年を超えることもある
- 自己破産の手続き期間中は職業制限などいくつかのデメリットが生じる
- 自己破産後も5~7年は借入れやクレジットカードの利用ができない
- 自己破産をするなら相談料・着手金無料の「はたの法務事務所」がおすすめ
本記事を監修した専門家
自己破産手続きにかかる期間はどれくらい?
自己破産には以下の3種類の手続きがあり、期間はどの手続きになるかによって異なります。
- 同時廃止事件では3~4か月程度
同時廃止事件とは、債権者への配当に充てるだけの財産がない場合にとられる自己破産手続きのことです。
財産の処分や配当が行われないため、短期間で手続きが終了します。 - 少額管財事件では4~6か月程度
少額管財事件とは、一定の範囲を超える財産がある場合や、借金の原因に浪費などの問題がある場合にとられる自己破産手続きのことです。 - 通常管財事件では6~12か月程度
通常管財事件とは、少額管財事件よりも債権者数が多かったり、財産状況が複雑だったりする場合にとられる自己破産手続きのことです。
以下で、それぞれの手続きの大まかな内容と、手続きによって期間が異なる理由もご説明します。
同時廃止事件になると3~4か月程度
同時廃止事件は3種類の破産事件の中では最も短期間で終了する手続きであり、裁判所での手続きにかかる期間は3~4か月程度が目安となります。
同時廃止事件では、財産の処分や債権者への配当、免責に関する詳しい調査などは行われません。
破産手続き開始決定が出るとすぐに免責の手続きに移るため、短期間で終了するのです。
ただ、債務者が同時廃止事件を希望しても、必ずしも同時廃止事件に付されるわけではありません。
どの手続きで自己破産を進めるべきかについては、裁判所が事案の内容を考慮して判断します。
同時廃止事件となるケース
- 債権者に配当するだけの財産がない
- 免責不許可事由がない
- 申立て書類に不備がない
免責不許可事由とは、破産者の借金を免除すべきでないケースとして破産法に掲げられている事由のことです。
浪費やギャンブルで借金を作ったようなケースが、典型的な免責不許可事由に当たります。
(免責許可の決定の要件等)
引用元:破産法
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
(以下略)
また、弁護士に依頼せず自身で自己破産を申し立てた場合は、同時廃止事件にはなりにくい傾向があります。
なぜなら、自己破産の必要書類である申立て書類に不備があるケースが多く、適正に申立てが行われているかどうかを詳しく調査する必要があると判断されやすいからです。
同時廃止事件の手続きの流れ
同時廃止事件の手続きの流れを簡単にご紹介すると、以下のようになります。
弁護士に相談する
必要書類を収集する
申立ては弁護士が行う
裁判所が申立て書類を精査する
裁判官と面談をする
問題がなければ破産手続開始決定・同時廃止決定が出る
免責審尋が行われる
問題がなければ免責が許可される
免責許可決定が官報に掲載される
免責許可決定から約1ヵ月で確定する
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
同時廃止事件では、破産手続きが開始されると同時に終了します。こういうと違和感を持つ方が多いと思いますが、法律上の「破産手続き」とは「管財手続き」のことを意味するのです。自己破産手続きは、「破産手続き(管財手続き)」と「免責手続き」の2段階に別れているのですが、同時廃止事件では破産手続きの部分が省略されるため、免責手続きだけが行われます。そのため、比較的短期間で全体の手続きが終了するのです。
少額管財事件になると4~6か月程度
少額管財事件では、裁判所での手続きにかかる期間は4~6か月程度が目安となります。
少額管財事件では破産管財人が破産者の財産を換金処分して債権者に配当したり、免責に関する詳しい調査を行ったりします。
少額管財事件では、破産管財人が破産者の所有する不動産や車などの財産を処分して換金し、債権者に配当することがあります。
また、破産者が財産隠しをしていないか、借金を浪費やギャンブルなどに使っていないかなども調査されます。
この手続きのことを「管財手続き」といいますが、本来の管財手続きよりも簡略化されているのが少額管財事件の特徴です。
そのため、同時廃止事件よりも長い期間がかかりますが、通常管財事件よりは短期間で終了します。
平均的な期間が4~6か月程度となっています。
ただし、少額管財事件は全国すべての裁判所で行われているわけではないことにご注意ください。
もともとは東京地方裁判所が独自に運用し始めた制度であり、現在では多くの裁判所で行われていますが、取り扱っていない裁判所もあります。
少額管財事件となるケース
- 債権者に配当すべき財産があるが、換価処分が容易
- 免責不許可事由がある、またはその疑いがある
- 財産状況を詳しく調査する必要がある
個人の自己破産で管財事件となるケースでは、通常管財事件よりも少額管財事件に付されるケースの方が多くなっています。
とはいえ、少額管財事件も管財事件の一種ですので、手続きは少し複雑です。
少額管財事件の手続きの流れ
手続きの流れを簡単にご紹介すると、以下のようになります。
同時廃止事件の場合とほぼ同様
ただし、同時廃止事件よりも必要書類が多くなりがち
そのため、準備期間も長くなる傾向にある
破産手続開始決定までは同時廃止事件の場合と同様
破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任される
破産管財人と面談をする
破産管財人が財産の管理・換価処分・債権者への配当を行う
免責に関する調査が行われる
債権者集会が開かれる
最終の債権者集会で免責審尋も行われる
問題がなければ、管財手続きの終了後1週間程度で免責許可決定が出る
同時廃止事件の場合と同様
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
弁護士に依頼すれば同時廃止事件となるようなケースでも、自分で自己破産を申し立てると少額管財事件に付されることが少なくありません。裁判所としては、弁護士が付いていなければ申立てが適正に行われているかをチェックしにくいため、破産管財人を通じてチェックしようとするのです。自己破産手続きを早く終えたいなら、弁護士に依頼して同時廃止事件を目指すことが得策であるといえます。
通常管財事件になると6~12か月程度
通常管財事件は3種類の破産事件の中で最も長い期間を要し、裁判所での手続きにかかる期間は6~12か月程度が目安となります。
通常管財事件では、管財手続きが簡略化されず厳格に行われます。
破産管財人の業務量も多くなりがちで、手間がかかるケースが多いのが特徴的です。
そのため、一般的に少額管財事件よりも長い期間を要します。
もっとも、事案の内容によって手続き期間に大きな幅が生じるという実情もあります。
通常管財事件でも、事案によっては6か月以内に終了することもあれば、逆に1年以上かかる事案もあることに注意しましょう。
通常管財事件となるケース
- 換価処分すべき財産の数が多い
- 換価しにくい財産がある
- 自営業者などで財産状況や債権者との権利関係が複雑である
- ギャンブルや浪費など借入の経緯に問題が多い
通常管財事件の手続きの流れ
通常管財事件の手続きの流れは、基本的に少額管財事件の場合と同じです。
ただし、管財手続きが厳格に行われるという点に違いがあります。
少額管財事件の場合とほぼ同様
ただし、債権者数や財産が多い場合にはさらに長期間を要することがある
少額管財事件の場合と同様
基本的には少額管財事件の場合と同様
破産管財人の業務に手間がかかることが多いため、手続きが長引きがち
少額管財事件の場合と同様
少額管財事件の場合と同様
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
通常管財事件となるようなケースでも、事前に弁護士の指示に従って財産を処分しておくなどの準備をすることで、少額管財事件となる可能性もあります。ただし、準備に時間をかけすぎると、全体的な期間がかえって長引くことにもなりかねません。弁護士の知識とノウハウによって手続き期間が異なってくることも多いので、実績が豊富な自己破産におすすめの弁護士に相談・依頼することが重要です。
同時廃止事件の手続きの流れと期間
ここからは、自己破産の手続きの種類ごとに、手続きの流れを詳しく解説していきます。
どのような手続きにどれくらいの期間がかかるのかもご説明しますので、参考になさってください。
まずは、同時廃止事件の手続きの流れと期間からみていきましょう。
- 申立ての準備(1~3か月程度)
- 申立て~破産手続開始決定(即日~1か月程度)
- 免責許可決定(2~3か月程度)
- 免責許可決定の確定(1か月程度)
それでは、時系列に沿ってご説明します。
申立ての準備(1~3か月程度)
申立ての準備では、借金額の正確な調査や、さまざまな書類の収集、裁判所へ提出する申立て書類の作成などを行います。
準備段階から専門的な知識を要する作業が数多くありますので、弁護士・司法書士に依頼して準備を進めることが一般的です。
まずは、自己破産事案の実績が豊富な弁護士・司法書士に相談してみましょう。
相談の結果、自己破産をすることに決まったら、弁護士・司法書士と委任契約を結びます。
依頼を受けた弁護士は、当日または翌日には各債権者へ受任通知を送付します。
受任通知が債権者に届くと督促や返済が止まるので、落ち着いて自己破産の申立て準備を進めることが可能です。
その後は弁護士が債権調査を行い、依頼者は必要書類を集めて弁護士に提出します。
依頼者が準備しなければならない書類は次の通りです。
【依頼者が準備する必要がある書類】
- 住民票
- 家計表
- 給与明細または確定申告書の控え
- 源泉徴収票または納税証明書・非課税証明書
- 預貯金通帳のコピー
- 退職金見込額証明書(給与所得者の場合)
- 不動産登記事項証明書(不動産を所有している場合)
- 固定資産評価証明書(不動産を所有している場合)
- 賃貸借契約書(賃貸住宅に居住している場合)
- 車検証(自動車を所有している場合)
- 自動車の時価を証明するもの(自動車を所有している場合)
- 保険証券(生命保険などの保険に加入している場合)
- 解約返戻金見込額証明書(生命保険などの保険に加入している場合)
- 有価証券(株などの有価証券を保有している場合)
事案の内容によっては他にも書類が必要となることがあるので、弁護士の指示に従って収集してください。
必要書類の収集と並行して弁護士と打ち合わせを行い、弁護士が次の書類を作成します。
【弁護士が作成する書類】
- 申立書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 陳述書
すべての書類が揃ったら、弁護士が裁判所へ書類一式を提出し、申立てを行います。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
いろいろ説明しましたが、弁護士に依頼した以上は、その弁護士の指示に従えば準備が整います。早く申し立てたい場合には、その旨を弁護士に伝えましょう。弁護士の都合にもよりますが、可能な限り優先的に準備を進めてもらえます。
申立て~破産手続開始決定(即日~1か月程度)
自己破産の申し立てが受理されると、裁判所が申立て書類を精査します。
そして、裁判所に呼び出されて、裁判官との面談を行います。面談で聞かれる内容は、借入の経緯や収入・財産の状況、現在の生活状況などが中心です。
この面談のことを「破産審尋」または「債務者審尋」といいます。審尋には弁護士も同席し、必要に応じて補足説明や意見を述べてくれます。
面談の結果、管財手続きの必要がないと判断されると同時廃止決定(破産手続開始決定と破産手続廃止決定)が行われます。
申立てから同時廃止決定が行われるまでの期間は、1か月程度が平均的です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
裁判官との面談では、ほとんど方が緊張されます。しかし、弁護士と綿密な打ち合わせを行い、弁護士が的確な申立て書類を作成した場合には、面談は書類の確認のみで済むことが多いものです。やはり、経験豊富な弁護士によるサポートが重要といえるでしょう。
免責許可決定(2~3か月程度)
同時廃止決定が出ると、それから2か月程度後に免責審尋が行われます。
免責審尋は、個室において裁判官と破産者とで個別に行われることもあれば、法廷で裁判官と複数名の破産者とで同時並行的に行われることもあります。
破産者から詳しい事情を聴く必要があるときは個別に、簡単な確認だけで済む場合は同時並行的に行われるのが一般的です。
併せて、裁判所は各債権者に対して、約2か月の期間を定めて、免責に対する意見があれば申述するように通知します。
免責審尋の結果や債権者からの意見を踏まえて、裁判所が免責を許可するかどうかを判断するのです。
免責不許可事由がなければ、免責許可決定が行われます。同時廃止決定から免責許可決定までの期間は、2~3か月程度が一般的です。
なお、現在では多くの裁判所で免責審尋が省略されています。
なぜなら、免責審尋は旧破産法で定められていた手続きであり、平成17年から施行されている現行の破産法では規定が削除されているからです。
実際にも、裁判所は破産審尋(債務者審尋)の際に、既に詳しい事情を確認しているため、重ねて免責審尋を行う必要性は乏しいといえます。
ただ、東京地方裁判所では旧来通り、全件で免責審尋を行っています。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
免責審尋が行われない場合は、同時廃止決定の後2~3か月待っているだけで免責許可決定が出ます。免責審尋が行われる場合でも、多くの場合は簡単な確認程度で済みます。スムーズに免責を得るためにも、申立て準備をしっかり行うことが重要です。
免責許可決定の確定(1か月程度)
免責許可決定が出ると、約2週間後に官報に掲載されます。
官報は一般人も確認できるため、自己破産のデメリットの一つです。
官報に掲載されてから2週間が経過すると、免責許可決定が確定します。したがって、免責許可決定が出てから確定するまでの期間は1か月程度です。
免責の確定により、自己破産手続きは完了です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
免責許可決定が確定しても、通知は何もありません。免責確定の証明書が必要な場合は、裁判所に「免責許可決定確定証明」を申請すれば、すぐ交付してもらえます。免責許可決定日の1か月後くらいに申請してみましょう。
少額管財廃止事件の手続きの流れと期間
次に、少額管財事件の手続きの流れと期間を詳しくみていきましょう。
- 申立ての準備(1~3か月程度)
- 申立て~破産手続開始決定(1か月程度)
- 破産手続き(管財手続き)(3~5か月程度)
- 免責許可決定(1週間程度)
- 免責許可決定の確定(1か月程度)
同時廃止事件の場合と重なる部分も多いので、異なる部分を中心にわかりやすくご説明します。
申立ての準備(1~3か月程度)
同時廃止事件の場合とほぼ同様です。
ただし、財産が多い場合には必要書類も多くなるので、効率よく書類を集めることが重要となります。
また、免責不許可事由があるか、その疑いがある場合には、弁護士と綿密な打ち合わせを行い、詳細かつ説得的な陳述書を作成してもらう必要があります。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
免責不許可事由があっても、内容や程度によっては同時廃止事件に付されてスムーズに免責が得られることもよくあります。借金で浪費やギャンブルをしていたものの、全体的に見ると浪費やギャンブルに使った割合がさほど高くないケースが典型例です。ただし、そのためには陳述書の記載内容を工夫する必要があります。このような場合、同時廃止事件となるかどうかは弁護士の腕前にかかっているといっても過言ではありません。自己破産手続きを早く終わらせるためには、弁護士選びが極めて重要です。
申立て~破産手続開始決定(1か月程度)
裁判所の破産手続開始決定が出るまでの流れは、同時廃止事件の場合と同様です。
ただし、破産手続「廃止」決定は行われないことと、破産管財人が選任されることが同時廃止事件の場合とは異なります。
管財手続きの費用として予納金を納めなければならないことにも注意が必要です。
予納金とは、文字通り、破産手続きが始まる前に予め裁判所に納めなければならないお金のことです。
原則として、予納金を納めるまで破産手続開始決定は行われません。
そのため、少額管財事件となることが見込まれるケースでは、早めに所定の金額を用意しておく必要があります。
少額管財事件の予納金は、裁判所によって異なることもありますが、20万円程度が一般的です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
予納金をすぐに払えない場合には、数か月程度なら裁判所が待ってくれることもあります。実務上は、予納金が準備できてから自己破産の申し立てを行うことが一般的です。少額管財事件となりそうな場合は、依頼した弁護士からその旨の説明があるはずなので、早めに予納金を用意しましょう。
破産手続き(管財手続き)(3~5か月程度)
破産手続きとは、すなわち管財手続きのことです。
管財手続きとは、破産管財人が破産者の財産を管理し、必要に応じて換金処分を行い、債権者への配当を行う手続きのことです。
その他にも、破産管財人は破産者の財産状況の調査や、免責に関する調査も行います。
破産者は、破産管財人の業務には協力しなければなりません。
具体的には、まず破産管財人との面談に呼び出されますので、必ず出頭し、事情を正確に説明する必要があります。
面談で聞かれる内容は、借入の経緯や収入・財産の状況、現在の生活状況などです。聞かれたことに対して、ありのままに答えましょう。
依頼した弁護士も面談に同席しますので、わからないことがあればサポートしてもらえます。
面談後も、破産管財人から業務の進行に応じてさまざまなことを指示されたり、現況の報告を求められたりすることがあります。
破産管財人への対応がおざなりになると、最終的に免責が得られない可能性もありますので、注意が必要です。
破産管財人の業務が終了すると、債権者集会でその顛末や免責に関する意見が述べられ、管財手続きが終了します。
債権者集会には、破産者も依頼した弁護士と一緒に出頭します。
なお、個人の自己破産における債権者集会では、債権者が出頭することはあまりありません。
第1回債権者集会は、破産手続開始決定から2~3か月後に開催されます。
少額管財事件では1~2回の債権者集会で終了することが多く、管財手続きにかかる期間は3~5か月程度が平均的です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
破産者から見ると破産管財人は「敵」のように感じられるかもしれませんが、中立・公平な立場の人です。地元の弁護士の中から選任されます。破産管財人の性格次第で厳しく対応されることもありますが、基本的にはソフトに対応する破産管財人が多いものです。破産管財人のことを過度に恐れる必要はありません。
免責許可決定(1週間程度)
少額管財事件では、最終の債権者集会の際に引き続いて免責審尋も行われます。
免責不許可事由がなければ、管財手続きの終了後1週間程度で免責許可決定が出ます。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
免責が不許可となるケースは稀です。ただし、免責不許可事由がある場合には、破産管財人から相応の金額(数十万円~100万円程度)を積み立てることを指示されることがあります。その金額を債権者へ配当することと引き換えに、免責の許可を得るためです。少額管財の手続きは免責の許可を得るために行われるという側面もありますので、破産管財人の指示にはしっかりと従いましょう。
免責許可決定の確定(1か月程度)
同時廃止事件の場合と同様、免責許可決定が出てから1か月程度で免責確定となります。
通常管財廃止事件の手続きの流れと期間
次に、通常管財事件の手続きの流れと期間をみていきましょう。
- 申立ての準備(1~3か月程度)
- 申立て~破産手続開始決定(1か月程度)
- 破産手続き(管財手続き)(5~11か月程度)
- 免責許可決定(1週間程度)
- 免責許可決定の確定(1か月程度)
基本的には少額管財事件の手続きの流れと同じなので、異なる部分のみご説明していきます。
申立ての準備(1~3か月程度)
少額管財事件の場合と同様ですが、必要書類がさらに多くなりがちなので、準備期間も長引くことがあります。
効率よく進めれば1~3か月程度で準備可能なこともありますが、3か月を超えることも少なくありません。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
弁護士でも、通常管財事件の経験がなければ準備に手間取ることがあります。弁護士からの的確な指示がなければ、申立ての準備をスムーズに進めることは極めて困難です。通常管財事件になりそうなケースでは特に、経験豊富な弁護士に依頼することが重要となります。
申立て~破産手続開始決定(1か月程度)
少額管財事件の場合と同様、破産手続「廃止」決定は行われず、破産管財人が選任されます。
ただし、予納金は少額管財事件よりも高額であり、最低50万円以上を納めなければなりません。
とはいえ、通常管財事件となるのは所有財産が多いケースに限られます。そのため、予納金を用意できないことは、あまりありません。
破産手続き(管財手続き)(5~11か月程度)
少額管財事件の場合と流れは同じですが、破産管財人の業務に手間がかかることが多いため、平均的に5~11か月程度の期間を要します。
債権者集会が1回で終わるケースはあまりなく、2回、3回と開催されるのが一般的で、4回以上にわたることも少なくありません。
1度の債権者集会にかかる時間は5~10分程度ですが、平日の日中に開催されるため、そのたびに仕事を休まなければならない方も多いでしょう。
破産管財人が管理する財産をすべて換金処分するなどして配当するか、換金不能であると裁判所が判断するまで、管財手続きは終わりません。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
実情として、破産管財人の多忙が原因で管財手続きが長引くことも少なくありません。破産管財人も弁護士なので、他の業務が忙しくて破産管財業務が進まないこともあるのです。対策としては、依頼した弁護士を通じて、適宜、破産管財人に進捗状況を尋ねるということも考えられます。
免責許可決定(1週間程度)
少額管財事件の場合と同様に、最終の債権者集会の際に免責審尋も行われ、免責不許可事由がなければ約1週間後に免責か許可決定が出ます。
免責許可決定の確定(1か月程度)
免責許可決定が出た後は、自己破産事件の種類による違いはありません。
通常管財事件の場合も、免責許可決定が出てから1か月程度で免責確定となります。
自己破産の手続き期間が長引く原因
ここまでにご説明した自己破産の期間は、あくまでも順調に手続きが進むことを想定した場合の目安です。
しかし、次のような事情があると自己破産の手続きが長引いてしまいます。
- 必要書類の収集が進まない
- 依頼した弁護士が多忙
- 財産が多い
- 財産状況が複雑
- 免責不許可事由がある
- 免責に反対意見を出す債権者がいる
- 自分で手続きをする
長引く原因を事前に排除するか対策を検討しておけば、自己破産手続きをスムーズに進めることが可能となります。
以下で、それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
必要書類の収集が進まない
弁護士に自己破産手続きを依頼しても、依頼者自身が取得しなければならない必要書類がいくつかあります。
必要書類が集まらなければ弁護士も申立ての準備を進められませんので、期間が長引く原因となるのです。
仕事や家事が忙しい方は大変だとは思いますが、できる限り時間を確保して必要書類の収集を進めましょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
実際のところ、弁護士からの指示を受けてもなかなか書類をそろえてくれない依頼者の方も少なくありません。放置していると弁護士との信頼関係にヒビが入り、辞任されるおそれもあるので注意が必要です。書類の取得方法が分からない場合は、弁護士に質問すれば教えてもらえるので、放置せず書類を集めましょう。
依頼した弁護士が多忙
依頼者が早急に書類を準備できたとしても、弁護士が多忙なために自己破産の申立て準備が進まないことも、ときにはあります。
弁護士に必要書類を提出して数週間が経っても連絡がない場合には、進捗状況を問い合わせた方がよいでしょう。
依頼してから数か月が経っても弁護士の事務所から連絡がない場合も、同様に問い合わせるべきです。
自己破産の申し立てを1年以上、場合によっては数年にもわたって放置されるケースも実際にあります。
依頼した弁護士や事務所のスタッフの対応に誠意が感じられない場合には、早めに他の事務所に相談した方がよいかもしれません。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産の申立て準備は、やろうと思えば1週間以内に終えることも可能です。ただ、弁護士は一般的に数十件~100件という案件を1人で抱えているため、特定の案件の処理にのみ集中できないのが実情です。自己破産の手続きを急ぎたい場合は、その旨を弁護士に伝えて、なるべく優先的に処理してもらえるように申出ましょう。
弁護士費用の積み立てに時間がかかる
弁護士に自己破産の申し立てを依頼するためには、一般的に数十万円の費用がかかります。
自己破産の費用を一括で支払えない場合には分割払いを認めてくれる事務所は多いですが、基本的には完済するまで申立ての準備は進めてもらえません。
多くの場合、弁護士費用の積み立てに3~6か月程度の期間がかかるでしょう。
その後に自己破産申し立ての準備が始まりますので、どうしても準備期間が長引いてしまうのです。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
弁護士費用の積立期間は弁護士との協議によって決まります。1年以上の分割払いに応じてもらえることもあります。ただし、借金の返済をストップしてから6か月程度が経過すると、債権者から裁判を起こされる可能性が高まることに注意が必要です。弁護士への依頼後は返済が止まりますので、弁護士費用の支払いを最優先にしましょう。
財産が多い
債務者の保有財産が多い場合は、必要書類の準備に手間がかかるとともに、破産管財人の業務が多くなります。
そのため、破産手続き(管財手続き)に期間を要し、全体的期間が長引く原因となります。
財産が多い場合には、後ほどご説明しますが、事前に財産を換金しておくことで自己破産手続きの期間を短縮できることもあります。
換金しやすい財産がある場合には、依頼した弁護士に相談して適切な処置をとるとよいでしょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産の申し立て前に財産を勝手に処分すると、財産隠しなどの免責不許可事由に該当するおそれがあるので、安易に処分すべきではありません。財産を処分しておきたい場合は、必ず依頼した弁護士に相談して指示に従うようにしましょう。
財産状況が複雑
財産が多い場合だけでなく、財産状況が複雑な場合も、自己破産の準備期間や管財手続きの期間が長引くことが多いです。
財産状況が複雑なケースとしてよくあるのは、次のような場合です。
- 不動産があるが立地などの条件が悪く買い手が容易に見つからない
- 売掛金などの債権があるが回収が容易でない
- 申立て前に財産が売却され、代金を浪費している
- 財産を隠ぺいしている疑いがある
自己破産の申し立てを適正に行うことにより、財産状況を必要以上に複雑化させないことがまずは重要となります。
それでも財産状況が複雑なケースでは、破産管財人からの問い合わせや指示には迅速に対応するようにしましょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産の申し立ての際に、財産の一部を計上し忘れるケースも少なくありません。意図的な隠ぺいでなければ大きな問題にはなりませんので、裁判所や破産管財人から指摘を受けた場合にはすぐに追加で計上しましょう。
免責不許可事由がある
免責不許可事由で自己破産による免責が認められない場合や、その疑いがある場合には、原則的に管財手続きが行われます。
そのため、同時廃止事件の場合よりも自己破産にかかる期間が長引きます。
著しい免責不許可事由がなければ、最終的には免責が許可されることが多いですが、破産管財人の調査に時間を要するのです。
なお、ギャンブルで多額の借金を作った場合のように軽微とはいえない免責不許可事由があっても、事情によっては裁量免責が得られる可能性があります。
破産者にめぼしい財産がなくても、債権者へ配当するためのお金を積み立てることも、ひとつの「事情」として裁量免責につながることがあります。
裁量免責の可能性がある場合には、そのために必要な行動を破産管財人が指示・指導しますので、誠実に従うようにしましょう。
免責不許可事由の可能性がある方は、他の自身に合ったおすすめ債務整理を検討する必要があります。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
免責不許可事由の内容や程度が重ければ、お金を積み立てたところで裁量免責は得られません。免責不許可の可能性が高い場合には、最初から他の債務整理を検討すべきです。債務整理に詳しい弁護士に相談して、最適な手続きを選択しましょう。
免責に反対意見を出す債権者がいる
債権者から免責に対する反対意見が出ると、最終的に免責が許可されるとしても、免責確定までの期間が延びてしまいます。
債権者は破産者の免責の許否について、裁判所に対して意見を述べることができます。
反対の意見が述べられた場合、破産者は反論の書面を提出しなければなりません。
裁判所は、債権者の意見と破産者の反論を精査して、免責の許否を判断します。
免責許可決定が出た後も、債権者は2週間以内に即時抗告という不服申立てをすることが可能です。
即時抗告が行われると、高等裁判所に破産事件の記録が送られ、免責許可の当否が審理されます。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
金融機関や貸金業者が免責に対する反対意見を出すことは滅多にありませんが、個人の債権者は感情的な問題で反対意見を出すことがしばしばあります。個人からお金を借りている場合の自己破産手続きでは、反対意見にも注意が必要です。
自分で手続きをする
自己破産の手続きは自身でもできますが、弁護士に依頼して行う場合よりも手続き期間が長引いてしまうのが実情です。
まず、申立て準備の段階でさまざまなことを調べる必要があるため、手間取ってしまうでしょう。
裁判所に申し立てても、書類に不足や不備があると補充や訂正の手間がかかり、破産手続開始決定までの期間が延びてしまいます。
何よりも、弁護士が付いていなければ少額管財事件に付される可能性が高くなります。
管財手続きでも、弁護士からのアドバイスがなければ破産管財人への対応に苦慮し、スムーズに進まないことになりかねません。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
事案の内容にもよりますが、平均的な事務処理能力がある方なら、自己破産の申し立てもさほど難しいわけではありません。それでも、専門的なことを逐一調べながら手続きを進める必要がありますし、精神的な負担は重いはずです。少額管財事件となれば20万円程度の予納金が必要となりますので、費用面でのメリットもあまり大きいとはいえません。基本的には、自己破産をするなら弁護士に手続きを任せる方が得策であるといえるでしょう。
自己破産の手続きを最短で終わらせる方法
次に、自己破産の手続きをスピーディーに進めるための方法をご紹介します。最短で手続きを終わらせたい方は、しっかりとご確認ください。
- 必要書類を効率よく集める
- 財産を事前に換金しておく
- 即日面接制度を利用する
- 債権者と話し合って理解を得ておく
- 自己破産に強い弁護士に依頼する法テラスは利用しない
それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
必要書類を効率よく集める
自己破産の申し立てに必要な書類を効率よく集めるコツは、少しずつ集めるのではなく、ある程度の時間を確保してでも一気に集めてしまうことです。
住民票や通帳のコピーなどは直近のものが必要なので、時間がかかると取り直さなければならないこともあります。
可能な限り一挙に集めて、書類一式を弁護士に提出しましょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
一定の書類はどうしても依頼者自身が取得する必要がありますが、実は弁護士の指示の仕方によって、書類の集めやすさも大きく異なります。弁護士が必要書類の種類を口頭で説明するだけでは、依頼者は取得方法が分からないこともあるでしょうし、取得漏れも発生するでしょう。一方では、必要書類の種類と取得方法、申請先などを記載した一覧表を手渡した上で、わかりやすく説明してくれる弁護士もいます。依頼する際には、親身に対応してくれる弁護士を選ぶことをおすすめします。
財産を事前に換金しておく
一定の基準を超える財産がある場合には、申立て前に換金しておくことで同時廃止事件となる可能性が高まることもあります。
現金は99万円までが自由財産となりますが、その他の財産は裁判所にもよりますが、一般的に評価額20万円までのものが自由財産となります。
例えば、解約返戻金見込額が50万円の生命保険に加入している場合、そのまま自己破産を申し立てると管財事件となります。
しかし、事前に保険を解約して現金50万円に換えておけば、他にめぼしい財産がなければ同時廃止事件となる可能性が高いのです。
ただし、東京地方裁判所では33万円を超える現金がある場合には少額管財事件に付すという運用が行われています。
裁判所によって同時廃止事件の対象となる財産の範囲が異なることに注意が必要です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
財産を処分して得られたお金を浪費や特定の債権者に対する返済に充てたりすると、管財事件に付される上に、免責不許可となるおそれがあります。基本的には、得られたお金は保管しておきましょう。ただし、必要な生活費や弁護士費用に充てることは認められています。財産を処分して得られたお金で弁護士費用を支払えば、同時廃止事件となる可能性がさらに高まるのでおすすめです。
即日面接制度を利用する
即日面接制度を利用すれば、自己破産の申し立てから破産手続開始決定までの期間を短縮できます。
即日面接制度は、東京地方裁判所が独自に実施している制度です。
弁護士に依頼して東京地方裁判所に自己破産を申し立てる場合で、かつ、少額管財事件を希望する場合にのみ利用できます。
ただ、面接の結果、事案の内容次第で同時廃止事件となることも通常管財事件となることもあり得るので、必ずしも少額管財事件になるとは限りません。
即日面接制度を利用すると、原則として面接日の翌週水曜日に破産手続開始決定が行われます。
急を要する事情がある場合には、最短で面接した当日に破産手続開始決定を得ることも可能です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
東京地方裁判所以外の裁判所でも、即日はいかないまでも早期の面談と破産手続開始決定を行う制度を実施しているところがあります。申立先の裁判所における手続きの運用状況は地元の弁護士が熟知していますので、依頼した弁護士に確認するようにしましょう。
債権者と話し合って理解を得ておく
個人の債権者がいる場合には、事前に事情を伝えて話し合い、理解を得ておくことで免責に対する反対意見の提出を防ぐことができます。
その結果、自己破産手続きがスムーズに進むはずです。
弁護士に依頼している場合は、個人の債権者との話し合いも弁護士が代行してくれます。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
個人の債権者がどうしても納得してくれない場合には、「自己破産手続きが終わってから少しずつでも返す」という約束をすることが有効です。自己破産で免責された借金は、債務者が任意に支払うのであれば債権者が受け取っても構わないという状態となるからです。ただし、自己破産手続きが終了する前に特定の債権者にのみ返済すると、免責不許可となるおそれがあるので、ご注意ください。
自己破産に強い弁護士に依頼する
自己破産手続きをスムーズに進めるためには、弁護士に依頼する方が得策です。
弁護士の力を借りることで、申立ての準備を効率的に進められますし、申立てやその後の手続きも正確かつ的確に進められます。
また、自身で申し立てれば管財事件となるような事案でも、弁護士に依頼することで同時廃止事件に、それが無理でも通常管財事件ではなく少額管財事件できる可能性が高まります。
その他にも次のようなことが可能となるので、弁護士に自己破産を依頼するメリットは大きいです。
- 受任通知の送付により督促と返済が止まる
- 裁判所での手続きを一任できる
- 即日面接制度を利用できる
- 免責される可能性が高まる
- 家族に内緒で手続きしやすい
- さまざまなアドバイスが得られる
ただし、弁護士にも得意分野と不得意分野があるため、依頼する際には自己破産に強い事務所を選ぶことが重要です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産に強い弁護士かどうかは、自己破産事案の実績が豊富にあるか、積極的に取り組んでいるかどうかで判断することをおすすめします。インターネットで検索してホームページを閲覧したり、事務所に直接問い合わせるなどして確認してみましょう。
法テラスは利用しない
自己破産手続きを最短で終わらせるという観点からは、法テラスの利用はおすすめできません。
法テラスでは一定の条件を満たせば民事法律扶助制度を利用できるので、費用を抑えるためには法テラスの利用が有効です。
しかし、民事法律扶助制度を利用するためには審査があることに注意が必要です。
審査には1~2週間程度の期間がかかります。審査に通ってはじめて弁護士に自己破産を依頼できるので、その分だけ全体の期間も延びてしまうのです。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
法テラスでは、原則として担当弁護士を選べないことにも注意が必要です。紹介された弁護士が自己破産に詳しくなければ、さらに別の弁護士を探さなければならないこともあります。自己破産手続きを早く進めるためには、最初から自己破産に強い弁護士を選んで相談する方が得策です。
自己破産の手続き期間中に制限されること
自己破産手続き中の生活においては、次のような制限がかかります。
早期に制限を解除してもらうためにも、自己破産手続きをなるべくスピーディーに進めることが大切です。
- 一部の職業に就けない
- 引っ越しや旅行には裁判所の許可が必要
- 郵便物が転送されることがある
一部の職業に就けない
自己破産の手続き中は、一部の職業に就けなくなることがあります。
その理由は、特定の職業においては、法律で「破産者でないこと」が登録や就業の条件として定められているからです。
自己破産によって制限を受ける職業の種類を細かく挙げると多岐にわたりますが、問題となりやすい主な職業は以下の通りです。
- 税理士、行政書士、宅建士など「士業」と呼ばれる職業
- 生命保険の外交員
- 証券会社の外務員
- 建設事業者
- 旅行業務取扱管理者 など
免責許可決定が確定すると破産者ではなくなるため、職業制限は解除されます。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産以外の債務整理には職業制限がないので、制限される職業に就いている方は個人再生を検討することが多いです。ただ、自己破産でも職業制限を受けるのは免責確定までの間だけです。一時的に休業したり、部署異動などで職種を変更したりすることが可能であれば、自己破産を検討してもよいでしょう。
引っ越しや旅行には裁判所の許可が必要
自己破産の手続き中に引っ越しや2泊以上の宿泊を伴う移動をする際には、裁判所の許可を得なければなりません。
この制限には、破産者の裁判所への出頭や破産管財人とのやりとりに支障をきたさないようにするほか、浪費を防ぐ目的もあると考えられています。
家賃が低い住居に住み替えるための引っ越しや、仕事のための出張など、正当な目的があれば裁判所の許可が得られます。
しかし、娯楽目的での長期間の旅行や海外旅行などは許可されない可能性が高いので、注意が必要です。
免責許可決定が確定すると、引っ越しや旅行の制限は解除されます。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
バレなければよいという考えで旅行などをしてしまうと、破産法の規定に違反したという理由で免責不許可となる可能性があります。引っ越しや旅行をするなら、必ず、依頼した弁護士に相談して許可申請の手続きをとりましょう。
郵便物が転送されることがある
自己破産が管財事件に付された場合、破産者宛の郵便物はすべて、破産管財人宛に転送されます。
この制限は、破産管財人が破産者の財産や免責不許可事由の調査をする目的で行われるものです。
転送された郵便物は、破産管財人が開封して内容を確認しますが、問題がなければ破産者に返還されます。
管財手続きが終了すると、郵便物の転送は解除されます。同時廃止事件では、そもそも郵便物の転送は行われません。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
転送された郵便物の返還方法は、破産管財人の事務所と協議して決めます。定期的に事務所から回送してもらうこともできますし、自分で都合の良いときに取りに行くことも可能です。なかには緊急を要する郵便物もありますので、破産管財人の事務所とはスムーズに連絡がとれるようにしておくことが大切です。
自己破産の手続き期間中にしてはいけないこと
自己破産の手続き中には、次のようなことをしてはいけません。
- 新たな借入れ
- 借金の返済
- 裁判所等への虚偽の申告
- 浪費やギャンブル
- 闇金の利用
それぞれ、してはいけない理由も具体的にご説明します。
新たな借入れ
自己破産の手続き期間中の借入れは、免責の対象外です。返済義務が免除されないので、生活が苦しくなってしまうでしょう。
それだけでなく、詐欺破産罪に該当して刑事罰を科せられるおそれもあります。
自己破産を弁護士に依頼した後は、信用情報機関に事故情報が登録されるため、金融機関や貸金業者からの借入れはできなくなります。
親族や友人・知人など個人から借りることはできますが、刑事罰という重大なペナルティーを受けるおそれがあるので注意しましょう。
なお、自己破産申し立ての準備中に借入れをした場合は、基本的に返済できないことを知りつつ借りたことになるため、詐欺的な借入れとみなされます。
その場合は、免責不許可事由に該当するとともに、やはり詐欺破産罪に問われるおそれもあります。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産の手続き期間中にどうしてもお金が必要になった場合は、親族等から借りるのではなく、援助(贈与)という形をとりましょう。破産手続開始決定後に贈与されたお金は新得財産として自由に使うことが認められるので、自己破産手続きに支障をきたすことはありません。
借金の返済
自己破産の手続き期間中に特定の債権者にのみ返済をすると、「偏頗弁済」として免責不許可事由に該当します。
破産手続開始決定が出ると、債権者が破産手続き外で権利を行使することは認められません。
そのため、金融機関や貸金業者が返済を請求してくることはありませんが、個人の債権者は法律を知らずに請求してくることがあります。
厳しく請求されたとしても、特定の債権者にのみ返済すると免責が認められなくなるので注意しましょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
親族など個人の債権者に対してどうしても返済したい場合は、先ほどもコメントしたように、自己破産手続きが終了してから返済することです。まずは破産法のルールを守って手続きを進め、免責を得ることが先決です。
裁判所等への虚偽の申告
裁判所や破産管財人に対して虚偽を申告したり、説明を拒んだりすることは、免責不許可事由に該当します。
自己破産の申し立てをしてから免責が許可されるまでの間には、裁判所あるいは破産管財人からさまざまなことを尋ねられます。
その際、場合によっては財産を少なめに申告したり、借金で浪費やギャンブルをしたことを隠したり、したくなるかもしれません。
しかし、自己破産手続きをスムーズに進めて免責を許可してもらうためには、必ずありのままの事実を正直に申告するようにしてください。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
虚偽の申告は必ずバレると考えるべきです。自己破産手続きでは、借入の経緯を具体的に説明するとともに、収入や財産に関する書類はすべて提出しなければなりません。虚偽の申告をすると必ず不自然な点が出てくるため、依頼した弁護士、裁判所、管財事件ではさらに破産管財人から厳しく追及されます。ただ、うっかりして真実と異なる事実を申告した場合には、気付いた時点ですぐに訂正や補充を申し出れば、大きな問題にはなりません。必ず、誠実な対応を心がけてください。
浪費やギャンブル
自己破産前に浪費やギャンブルで借金をしたり、自己破産手続き期間中に浪費やギャンブルをして財産を減らすことも、免責不許可事由に該当します。
破産手続開始決定後に得た収入は新得財産として自由に使えますが、浪費やギャンブルに使うことは控えましょう。
自己破産は債務者の経済生活の再生を図るための手続きなので、手続きが終了するまで、債務者のお金の使い方は裁判所にチェックされているのです。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
浪費やギャンブルが原因で自己破産に至った方は特に、手続き終了後も浪費やギャンブルはしない方がよいでしょう。それくらいの覚悟がなければ、経済生活を立て直すことは困難です。ご自身の意志で浪費やギャンブルをやめられない場合は、依存症外来を受診するなどして医学的な手当を受けることをおすすめします。債務整理に強い弁護士に相談すれば、信頼できる精神科の医師を紹介してくれることもあります。
闇金の利用
自己破産の手続き期間中に闇金を利用すると、「新たな借入れ」の場合と同様に、詐欺破産罪に問われるおそれがあります。
闇金からの借金は、借りた時期が破産手続開始決定の前でも後でも、免責の対象外です。
闇金に手を出すと法外な利息を要求され、払えなければ脅迫的な取り立てや悪質な嫌がらせをされ、経済生活を立て直すことが困難となります。
自己破産後は正規の金融機関や貸金業者からの借入れができないため、闇金から借りる方が少なくありませんが、決して闇金に手を出してはいけません。
闇金問題は弁護士に相談しましょう。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自己破産をすると、自宅に闇金からのダイレクトメールが届くことがよくあります。破産者の氏名や住所は官報に掲載されるため、その情報をチェックした闇金が勧誘してくるのです。お金を借りたいという誘惑にかられることもあるかもしれませんが、闇金の利用は絶対に避けてください。デメリットが大きすぎます。
自己破産後にブラックリストから解放されるまでの期間
自己破産手続きがすべて終了しても、一定期間はブラックリストに登録され続けます。
そのため、新規の借入やクレジットカードなどを利用できない状態が続くことに注意が必要です。
しかし、いずれはブラックリストから解放されます。ここでのポイントは、次の2点です。
- ブラックリストとは信用情報機関に事故情報が登録された状態のこと
- 自己破産による事故情報が削除されるのは5~7年後
以下で、重要なポイントをわかりやすく解説します。
ブラックリストとは
ブラックリストとは、信用情報機関のデータベースに事故情報が登録された状態のことです。
「ブラックリスト」という名称の帳簿やファイルのようなものが存在するわけではありません。
債務者が長期の延滞や債務整理をしたことを「金融事故」といいます。
自己破産をしたことも金融事故に該当するので、事故情報として信用情報機関のデータベースに登録されます。
事故情報が登録されていると、金融機関や貸金業者から支払能力に問題があると判断されてしまうことがほとんどです。
そのため、新規の借入れや各種ローン、クレジットカードなどの審査に通らなくなるのです。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
自分で自己破産を申し立てた場合には、破産手続開始決定が官報に掲載された時点でブラックリストに登録されます。弁護士に自己破産を依頼した場合は、受任通知が債権者に届いた時点でブラックリストに登録されます。ブラックリストに登録される前は借入ができますが、返済できないことが明らかな状態で借入をすると免責不許可事由に該当する可能性があります。無理な借入れは控えましょう。
ブラック解消までの期間は5~7年
自己破産による事故情報は5~7年で削除され、その後は再び、新規の借入れやクレジットカードの作成などが可能となります。
つまり、自己破産後5~7年でブラック状態が解消されるということです。
信用情報機関には次の表に記載の3種類があり、それぞれ、事故情報が削除されるまでの期間が異なります。
したがって、どこから借入れをしていたのかによって、ブラック解消までの期間が異なる可能性があります。
信用情報機関の名称 | 主な加盟業者 | 自己破産の事故情報が削除されるまでの期間 |
---|---|---|
株式会社日本信用情報機関(JICC) | 消費者金融、クレジットカード会社、信販会社 | 免責許可決定が確定するまで |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | クレジットカード会社、信販会社、消費者金融 | 免責許可決定から5年 |
全国銀行個人信用センター(KSG) | 銀行や信用金庫、信用保証協会など | 破産手続開始決定から7年 |
3つの信用情報機関は相互に情報交流をしています。
そのため、KSCの事故情報保有期間である「破産手続開始決定から7年」が経過するまではブラック状態が続くケースが多いのが実情です。
元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント
ブラックリストに登録されたくないという理由で自己破産の申し立てを躊躇する方も多いですが、それは得策ではありません。他の債務整理でもブラックリストに登録されるからです。債務整理をしなくても、借金を2~3か月延滞するとブラックリストに登録されることにも注意が必要です。その場合は延滞を解消しないかぎり、いつまでもブラック状態が続く可能性もあります。自己破産をすれば5~7年でブラック状態が解消されるのですから、自己破産をしてでも早期に借金問題を解決する方が得策なのです。
自己破産の期間についてよくある質問
自己破産の期間については、他にもさまざまな疑問や不安があることでしょう。
ここで、よくあるご質問に対して、まとめてお答えします。
- 自己破産手続きに最低でも数か月の期間がかかるのはなぜですか?
- あえて自己破産手続きに時間をかけることはできますか?
- 自己破産の手続き中、取り立てや返済は止まりますか?
- 自己破産の手続き中、裁判所に行かなければならないことはありますか?
- 早くクレジットカードやローンを利用できるようにするためにはどうすればよいですか?
それでは、ひとつずつみていきましょう。
- 自己破産手続きに最低でも数か月の期間がかかるのはなぜですか?
- 自己破産手続きに最低でも数か月の期間がかかるのは、法律に定められた手続きを行う必要があるからです。
裁判所が借金の全額免除を認めるためには、借入の経緯や収入・財産の状況などを裁判所が精査する必要があります。
その上で、一定の基準を超える財産がある場合には、換価処分するなどして債権者への配当も行わなければなりません。
借金の全額免除という大きなメリットを得るためには、相応の期間や労力を費やす必要があるのです。
- あえて自己破産手続きに時間をかけることはできますか?
- 裁判所での手続きを引き延ばすことはできませんが、弁護士・司法書士に依頼した後、申立てまでに時間をかけることは可能です。
弁護士費用や司法書士費用を分割で支払うために、数か月~1年ほどの時間をかけることはよくあります。
ただし、時間を置くと債権者から裁判を起こされる可能性が高まるので、なるべく早期に申し立てる方が望ましいといえます。
- 自己破産の手続き中、取り立てや返済は止まりますか?
- ご自身で自己破産を申し立てた場合には、破産手続開始決定が出ると取り立てや返済が止まります。
弁護士・司法書士に依頼した場合は、数日後には受任通知が債権者に届き、その時点で取り立てや返済が止まります。
自己破産手続きが順調に進めば、もう取り立てを受けることはありませんし、返済する必要もありません。
- 自己破産の手続き中、裁判所に行かなければならないことはありますか?
- 自己破産の手続き中、債務者本人も最低1回は裁判所に行く必要があります。
多くの裁判所では、申立て後の破産審尋に出頭しなければなりません。同時廃止事件となれば、基本的に裁判所への出頭はこの1回だけです。
東京地方裁判所で即日面接制度を利用して同時廃止事件となった場合は、免責審尋への出頭1回だけで済む可能性があります。
管財事件となった場合は、さらに債権者集会に出頭しなければなりません。
債権者集会の回数は事案によって異なりますが、少額管財事件なら1回で終了することも多いです。
弁護士に依頼した場合、依頼者が裁判所へ出頭する際には弁護士も同行します。
- 早くクレジットカードやローンを利用できるようにするためにはどうすればよいですか?
- ブラック解消の時期を早めるためには、速やかに自己破産手続きを進めることです。
多くの場合は破産手続開始決定から7年でブラック解消となりますので、早めに破産手続開始決定を得ることがポイントとなります。
申立ての準備に手間取っていると、破産手続開始決定までに時間を要してしまうので、効率よく準備を進めましょう。
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