お金に困って生活保護受給を検討する際には、「そもそも生活保護はいくら受け取れるのか?」と具体的な額が気になりますよね。
生活保護費はいくら?皆一定額なの?
生活保護の支給額はどのような基準で決まる?
といったように、生活保護の相談に向かう際にはさまざまな疑問を持つ方も少なくありません。
生活保護費はそれぞれの世帯の収入状況などによって変わり、受給のためには特定の条件を満たす必要があります。
本記事は生活保護はいくら受け取れるのか、具体的な額や決まり方の基準を解説していきます。
あわせて生活保護受給に必要な条件や受給の際の注意点も紹介していくため、受給を検討する際には積極的にチェックしておきましょう。
- 生活保護は毎月いくら受給できるか
- 生活保護を受給するための基準となる最低生活費の算出方法
- 生活保護を受給するための条件
- 生活保護の申請先と申請の流れ
生活保護は毎月いくら受給できる?
生活保護について調べる際に、気になる点は毎月いくら受給できるのかという点です。
いくら支給されるのか、目安を知ってから検討したい…
受給の相談に行く際には、上記のように悩んでいる方も多いでしょう。
生活保護の支給額における重要なポイントは、以下の通りです。
4つの重要なポイント
- 受給額は生活最低費から世帯収入を除いた金額
- 生活最低費は地域の級地と世帯人数でわかる
- 受給額は8種類の扶助が含まれている
- 生活保護で支払いが免除される費用
場合によっては、受給額を増減するのでしっかりと確認しましょう。
受給額は生活最低費から世帯収入を除いた金額
生活保護は生活最低費から世帯収入を除いた金額が支給されます。
生活保護は、世帯の収入だけでは国が定める保護基準(最低生活費)に満たない場合に、受けられます。その場合、不足する額を保護費として支給し、最低生活を保障します。
東京都福祉保健局「生活保護制度とはどのような制度ですか。」
このように、生活保護は国が定めた最低生活費から収入を差し引いた金額を補足するかたちで給付されます。
生活保護の保護費は収入が最低生活費に対していくら足りないのかで変動する仕組みです。
例えば、最低生活費が15万円で5万円の収入がある場合は、生活保護費として10万円が支給されます。
つまり、生活保護の金額はすべての世帯に対して一定ではなく、世帯別の収入と算出される最低生活費によって異なります。
最低限の生活維持に必要な額はいくらなのか、保護費受給の前に生活保護の担当窓口である福祉事務所と相談をしましょう。
最低生活費は地域の級地と世帯人数でわかる
最低生活費は自分で決められるの?
最低生活費の算出方法や基準がわからない…
生活保護がいくらになるのか事前に調べるには、「地域の等級」と「世帯人数」から設定される最低生活費を調べる必要があります。
東京都福祉保健局では、生活保護制度を次のように説明しています。
さまざまな理由により生活に困窮している人々に対して、生活保護法により、憲法が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障し、積極的にそれらの人々の自立した生活ができるよう援助する制度です。
東京都福祉保健局「生活保護制度とはどのような制度ですか。」
このため、「健康で文化的な最低限度の生活に必要な費用=最低生活費」は、国の基準によって決められます。
同じ日本国内であっても地域や世帯人数によって、最低限度の生活維持にかかる費用の相場は変わるからになります。
生活保護費がいくらになるのか知るには、まず自身が所属する地域がどの級地に分類されるのか調べましょう。
いくつかの地域をピックアップすると、級地は以下のように分けられる仕組みです。
1級地-1 | 東京23区、さいたま市、横浜市、名古屋市、大阪市、京都市、神戸市など |
---|---|
1級地-2 | 札幌市、仙台市、所沢市、千葉市、横須賀市、大津市、宇治市、岸和田市、姫路市、岡山市、広島市、福岡市など |
2級地-1 | 函館市、青森市、山形市、水戸市、宇都宮市、前橋市、あきる野市、海老名市、金沢市、福井市、甲府市、長野市、岐阜市、静岡市、豊橋市、泉佐野市、奈良市、和歌山市、長崎市、鹿児島市、那覇市など |
このほかに、級地は2級地-2、3級地-1、3級地-3と級地の区分けがあり、各市町村はいずれかの級地に分類されます。
級地の詳しい分類については、厚生労働省の資料「級地区分」で確認しておきましょう。
生活保護で受け取れる生活扶助の額は、世帯人数が多くなればなるほど増えます。
しかし、一人当たりの受給額は、世帯人数が増えれば増えるほど少なくなるよう調整されるのが特徴です。
「生活扶助×世帯人数」といったように単純計算をすると、世帯人数が多い家族ほど有利になります。
最低生活費を計算する際には、生活扶助(第1類)の額から一人当たりの支給額を減らして調整する計算率(=逓減率)を確認します。
例えば、2人世帯の場合は、逓減率は1.0のため、最低生活費の算出において生活扶助(第1類)が減ることはありません。
一方、4人世帯の場合は、逓減率が0.95になるため、最低生活費の算出において生活扶助(第1類)に×0.95をするかたちです。
その上で続いて解説する8種類の扶助のなかから必要なものを出し、級地・世帯人数に応じて生活保護費は支給されます。
逓減率は変更がある場合があるため、厚生労働省の公式サイトより最新情報をご確認ください。
受給額は8種類の扶助が含まれている
生活保護の受給額には、以下の8つの扶助が含まれています。
最低限度の生活を維持する上で以下の扶助が必要と判断されれば、生活保護を受け取ることができます。
扶助の種類 | 詳細 |
---|---|
生活扶助 | 通常の日常生活維持に必要な費用 |
住宅扶助 | マンションやアパートの家賃 |
教育扶助 | 義務教育に必要な費用 学用品費や給食費を含む |
医療扶助 | 医療を受けるための費用 費用は医療機関へ直接支給 |
介護扶助 | 介護を受けるための費用 費用は介護福祉機関へ直接支給 |
出産扶助 | 出産にあたって必要な費用 |
生業扶助 | 就労で必要な技術・能力の習得にかかる費用 |
葬祭扶助 | 葬儀を執り行う際にかかる費用 |
なお、生活保護でメインとなる扶助は生活扶助と住宅扶助で、そのなかでも生活扶助は2つの分類で構成されるのが特徴です。
生活扶助(第1類) | 食費などの個人的費用 (年齢別に算定される) |
---|---|
生活扶助(第2類) | 水道光熱費など世帯共通費用 (世帯人数別に算定される) |
最低生活費はおおむね上記の生活扶助に住宅扶助を加えた以下のような内訳で算出されることが多いです。
- 生活扶助(第1類)
- 生活扶助(第2類)
- 住宅扶助
また、生活保護には一時扶助の制度もあるため、例えば以下のような特殊な事情がある方はさらに保護費を支給してもらえる可能性があるのが特徴です。
- 災害で被災した
- 急病のため入院が必要になった
一時扶助の対象になれば、被服費や家具什器費などの支給を受けることができます。
特に、2020年以降は、新型コロナウイルスの関係で急に経済的に困窮した場合に、扶助を受け取る方が増えているようです。
生活保護受給を検討する際には、上記の基本となる8つの扶助と一時扶助について理解を深めておきましょう。
生活保護で支払いが免除される費用
生活保護を受給していると、生活扶助や住宅扶助で保護費を支給してもらえるだけでなく、特定の費用の支払いが免除されます。
保険料を払うためのお金が工面できない…
と困っている方などは、生活保護受給後は支払いが免除される仕組みです。
免除の対象となる費用で代表的なものは、次の費用が挙げられます。
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 雇用保険料
- 住民税
- 所得税
- 固定資産税
- 水道料金の基本料
- NHK受信料
- 公営住宅の入居の保証金・共益費
- 葬式費用
- 公立高校の授業料
- 介護保険料
- 介護サービスの利用料
- 資格取得にかかる費用
- 医療費
例えば生活保護受給者の方は、医療費が医療扶助として支給されます。
保険証は不要になり生活保護受給が決まった段階で、保険証は持てなくなるのが特徴です。
一般的に、生活保護受給中は医療券を利用して病院にかかります。
1 医者にかかるとき
新宿区「生活保護について」
保護を受けると、国民健康保険証、後期高齢者医療証等は使えなくなります。
医者にかかる時は福祉事務所においでください。「医療券」をお渡ししますので、それを持って受診すると治療を受けられます。
ただし、治療を受けられる医者は原則として、生活保護の指定医療機関です。休日、夜間、急病などで「医療券」を持たずに医者にかかった場合は、できるだけ早く福祉事務所へ連絡してください。
上記の通り、医療券を使用して医者にかかる場合は、原則として指定の医療機関のみが利用できるかたちになります。
介護費用についても福祉事務所に事前に相談し、介護扶助の申請をすることで扶助を受け取ることができます。
受けられる介護サービスの内容などは福祉事務所と相談の上、要介護申請の内容とあわせて決定される仕組みです。
また、ほかにも生活する上で必要なものは、生活保護の扶助でまかなってもらえる場合があるのが特徴です。
生活保護を受け取っていると、たとえば以下のようなものの無償配布を受けられます。
- ゴミ袋
- バスの乗車券
- 一部の電車の乗車券
ゴミ袋などの生活用品代や公共交通機関の交通費は、生活していて意外と家計を圧迫するものです。
生活費が毎月ギリギリなので、生活用品もまともに購入できない…
と困っている方は、生活保護の範囲でまかなってもらえるものはあるか、自治体に確認してみましょう。
生活保護を受給するための条件
生活保護の条件について知りたいけれど、詳細がわからない…
仕事をしている状態でも、生活保護の受給は可能?
といったように、生活保護受給の条件について詳細を知る際には、さまざまな疑問があるものです。
まず、生活保護受給に必要な条件を簡単に整理すると、以下の通りです。
必要な条件一覧
- 世帯収入が地域の生活最低費未満の方
- 病気やけがにより就労できない方
- 生活費に充てることできる資産を持っていない方
- 公的融資制度を受給できない方
- 親族などから支援を受けることができない方
それぞれの条件を詳しく確認した上で、生活保護受給を検討している方は自身が当てはまるかをチェックしていきましょう。
生活最低費の一例
生活保護を受給するには、世帯収入が最低生活費未満である必要があります。
例えば、最低生活費が15万円で、世帯収入が8万円なら、15万円-8万円で7万円が生活保護として支給されます。
また、収入は世帯収入で計算するため、同一世帯のなかで収入を得ている方が複数いる場合はご注意ください。
自身の収入が最低生活費を下回っている方がほかの家族とあわせたときに最低生活費を上回る場合、生活保護受給の対象から外れる仕組みです。
級地の分類と世帯人数によって変動する逓減率は、厚生労働省の資料を確認しましょう。
なお、具体的にいくら生活保護がもらえるのか目安がわかる、いくつかの例は以下の通りになります。
ケース① | 30代単身世帯の場合 |
---|---|
年齢 | 32歳 |
居住地 | 東京都新宿区(1級地-1) |
世帯人数 | 1(一人暮らし) |
世帯収入 | 8万円 |
生活扶助(第1類) | 42,020円 |
---|---|
逓減率 | 1.0 |
生活扶助(第2類) | 45,320円 |
住宅扶助 | 53,700円 |
合計(=最低生活費) | 141,040円 |
東京都新宿区は1級地-1に分類されるため、世帯人数1人の逓減率(×1.0)で計算すると、最低生活費は141,040円になることがわかります。
対して、収入は毎月8万円あるため、ケース①で生活保護費として支給される額は61,040円です。
今度は夫婦二人の世帯でいくらの生活保護費がもらえるのか、例を見てみましょう。
ケース② | 夫婦二人暮らしの場合 |
---|---|
年齢 | 58歳・62歳 |
居住地 | 福岡県福岡市(1級地-2) |
世帯人数 | 2(夫婦二人暮らし) |
世帯収入 | 7万円 |
生活扶助(第1類) | 38,050円+35,980円 |
---|---|
逓減率 | 1.0 |
生活扶助(第2類) | 47,910円 |
住宅扶助 | 53,700円 |
合計(=最低生活費) | 175,640円 |
福岡県福岡市は1級地-2に該当するため、2人世帯の逓減率と生活扶助(第2類)の額に基づいて計算すると、最低生活費は175,640円になります。
そこから収入の7万円を引いた105,640円が生活保護費です。
続いて、ケース③は子供を含めた4人世帯の例になります。
ケース③ | 児童を含む4人世帯の場合 |
---|---|
年齢 | 40歳・38歳・6歳・2歳 |
居住地 | 埼玉県川越市(2級地-1) |
世帯人数 | 4(夫婦+子供) |
世帯収入 | 15万円 |
生活扶助(第1類) | 38,240円+38,240円+32,350円+19,850円 |
---|---|
逓減率 | 0.95 |
生活扶助(第2類) | 52,390円 |
住宅扶助 | 45,000円 |
児童を養育する場合の加算額 | 10,190円×2(児童一人につき10,190円) |
合計(=最低生活費) | 240,016円 |
埼玉県川越市は2級地-1に当てはまるため、ケース①・②とは生活扶助・住宅扶助の金額が異なります。
そして4人世帯の場合は逓減率が0.95になり、児童を養育する場合は一人につき10,190円の加算が可能になる仕組みです。
最低生活費は240,016円になり、世帯収入が15万円なので、生活保護費は90,016円の計算になります。
さらに高齢者世帯のケースを確認してみましょう。
ケース④ | 単身高齢者世帯の場合 |
---|---|
年齢 | 73歳 |
居住地 | 千葉県木更津市(3級地-1) |
世帯人数 | 1(一人暮らし) |
世帯収入 | 0円(年金受給なし) |
生活扶助(第1類) | 27,680円 |
---|---|
逓減率 | 1.0 |
生活扶助(第2類) | 37,160円 |
住宅扶助 | 40,900円 |
合計(=最低生活費) | 105,740円 |
最後に見ていくケース④は、千葉県木更津市在住の単身高齢者世帯です。
千葉県木更津市は3級地-1になるため、それに基づいて生活扶助と住宅扶助は決まります。
ケース④の場合は年金の受け取りもなく、その他仕事などによる収入もないため、最低生活費の105,740円はそのまま生活保護費として受け取れるかたちです。
※ケース①~④はあくまで級地と逓減率に基づく概算・目安のため、具体的な最低生活費の額は状況により異なります。
また、最低生活費を計算する際には、世帯によって以下のような内容の加算も可能になることを覚えておきましょう。
種類 | 内容 |
---|---|
障害者加算 | 世帯に障害者がいる場合、最大で26,810円加算 |
母子加算 | 児童1人の場合最大で18,800円加算 児童2人の場合最大で23,600円加算 3人以上の場合は1人につき最大2,900円加算 |
児童養育加算 | 児童1人につき10,190円加算 |
妊産婦加算 | 妊娠6か月未満は最大で9,130円加算 妊娠6か月未満は最大で13,790円加算 産後は最大で8,480円加算 |
冬季加算 | 冬季に増える暖房費を補填する目的で、10月~4月のうち地域に応じて5か月から7か月間支給 ※北海道などの寒冷地などで加算可能 |
実際に上のケース③の場合は4人世帯で児童が2人いたため、児童を養育する場合の加算をしています。
また、上記は一部のため、場合によっては別の内容の加算ができる可能性もあるでしょう。
家族構成などによってかかる必要な生活費は違うため、生活保護ではしっかりと配慮してもらえます。
最低生活費が加算されればされた分だけ、生活保護費は増えると考えられるでしょう。
より多くの生活保護費を受け取れる可能性があるため、詳細は福祉事務所にしっかりと相談する必要があります。
病気やけがにより働くことができない
生活保護を受給できる方は、主に病気や怪我により働くことが困難な方です。
難病を抱えているため、長時間働くことができない…
例えば、上記のように長時間働けない方は、生活に必要なお金を毎月稼ぐことができません。
病気や怪我によって生計維持が困難になったときは、福祉事務所と相談した上で生活保護の受給を検討していきましょう。
どのような病気や怪我で、どの程度困っているのか詳細を伝えた後に受給の可否が決定されます。
ただし、病気や怪我が治って通常どおり働けるようになった際には、生活保護の受給はできなくなるためご注意ください。
病気は治って働ける状態にはなったけど、せっかくなので生活保護はもらったままにしておこう
といったかたちで受給を続けると、不正受給にあたるため要注意です。
不正受給が発覚すれば厳しい措置が取られるため、特に、意図的に事実を隠したり虚偽の申告をしたりするのはやめましょう。
生活費に充てることできる資産を持っていない
生活保護を受給するには、原則として車やマイホームなどの資産を持っていないことが条件になります。
車やマイホームなどの資産は現金化が可能なため、資産を保有していれば、売却することで生活費に充てられると判断されるからです。
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。(支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。)
厚生労働省「生活保護制度」
資産を持った状態で福祉事務所へ生活保護の相談に行っても、基本的に申請は認められません。
家や車をお持ちなら、それを売却して生活費を確保してください
土地を貸して収入を得ているなら、その収入で生計維持は可能だと判断できます
福祉事務所からは、このような回答をもらうことになるでしょう。
また、保護費を受給すると、生活保護でお金を借りるためにカードローンや消費者金融など利用することが難しくなります。
生活費を確保するためにいろいろな対処をしてみたが、ほかに打つ手がない…
と困っている方を支援するのが、生活保護にあたります。
資産を所有している状態では、まだ経済的に余裕があると判断され生活保護を受給することができません。
ただし、以下のようなケースに当てはまる方は、資産を持った状態でも生活保護受給が認められることもあります。
- 持っている資産に大きな価値がない(→売却しても生活費になるとは期待できない状態)
- 持ち家を売却して転居すると、生活に支障が出る(田舎のため近くに転居可能なアパート・マンションがないなど)
- 公共交通機関がないため車を所有していないと移動に支障が出る
上記はあくまで例ですが、「売却することに意味がない」もしくは「売却するとかえって支障が出る」ときなどは、資産所有が認められる場合があります。
最終的には福祉事務所との相談になるため、さまざまなケースがあることも理解しておきましょう。
しかし基本的には、資産を持った状態での生活保護受給は難しい、と認識しておく必要があります。
公的融資制度を受給できない
国や自治体が行っている公的支援制度は、生活保護のほかにもたくさんあります。
名前 | 内容 |
---|---|
生活福祉資金貸付 | 高齢者・低所得者・障害者世帯を主に対象とした、経済支援のための貸付制度 |
求職者支援資金融資 | 求職者支援制度において職業訓練受講給付金を受給する予定の方を対象とした貸付制度 |
母子父子寡婦福祉資金 | 配偶者のいない男子・女子、寡婦の経済的自立を支援する貸付制度 |
雇用保険失業給付 | 失業時に生活の安定を図る目的で給付される給付金制度 |
生活保護受給の条件には、生活保護以外の公的支援を受けられないことが条件として挙げられます。
前述のとおり、生活保護受給は、あらゆる対処を試みた上でどうしても生活の立て直しが難しいとなっている方のみ可能です。
上記のような別の公的支援が受けられるのであれば、福祉事務所からは、まずほかの支援を頼るように案内されます。
国からお金を貸してもらおうとして市役所に相談したけれど、どの審査も通らなかった…
と困っている方は、生活保護受給の相談を受け付けてもらえる可能性があります。
親族などから支援を受けることができない
生活保護受給が可能な方は親族などの近しい方から、仕送りなどの経済的支援を受けることができない方です。
生活保護について福祉事務所へ相談に行くと、多くの場合、親族から支援してもらうことはできないのか聞かれることになります。
仕送りなどでご家族に援助してもらうことはできませんか?
一人暮らしをやめてご両親と住むことで、住居の確保は可能でしょうか?
例えば上記のようなパターンで、身内から経済援助を受けることで生計維持ができないか、細かく確認されます。
もちろん、親族がいたとしても、人によってはさまざまな事情が絡み、経済援助に期待ができないことはあるでしょう。
- 援助が可能なほど経済的ゆとりを持っている親族がいない
- 本来頼れるはずの親族から精神的苦痛を受けている(DVなど)
- 親族と疎遠の状態で連絡のやり取りが難しい
例えば上のような状態では、親族に対して経済支援を頼るのも難しいと考えられます。
そのため生活保護受給を検討するなら、あらかじめ親族からの援助は可能かどうか確認しておきましょう。
不正受給をした場合は返還が求められる
生活保護受給にはしっかりと条件があるため、万が一条件に違反した状態で保護費を受給すれば、不正受給にあたります。
不正受給は場合によっては詐欺罪にあたるため、十分に注意が必要です。
生活保護制度は生活に困窮している方を支援する目的で運用されている制度です。
しかし、それでも生活保護の不正受給件数は、昨今も決して少なくありません。
厚生労働省が発表している、平成23年から令和2年までの不正受給件数、金額のデータは以下のとおりです。
年度 | 不正受給の件数 (単位:件) | 不正受給の金額 (単位:千円) |
---|---|---|
平成23 | 35,568 | 17,312,999 |
平成24 | 41,909 | 19,053,722 |
平成25 | 43,230 | 18,690,333 |
平成26 | 43,021 | 17,479,030 |
平成27 | 43,938 | 16,994,082 |
平成28 | 44,466 | 16,766,619 |
平成29 | 39,960 | 15,530,019 |
平成30 | 37,234 | 14,005,954 |
令和1 | 32,392 | 12,960,895 |
令和2 | 32,090 | 12,646,593 |
件数・金額は徐々に減少傾向にありますが、それでも件数・金額は少ないとは言い難いことがわかります。
さらに、令和2年度における不正受給の内容のデータもチェックしてみましょう。
内訳 | 件数 |
---|---|
稼働収入の無申告 | 15,878 |
稼働収入の過小申告 | 3,551 |
各種年金等の無申告 | 5,678 |
保険金等の無申告 | 771 |
預貯金等の無申告 | 387 |
交通事故に係る収入の無申告 | 391 |
その他 | 5,434 |
生活保護の不正受給は、やはり収入の無申告、過少申告によるものがほとんどを占めます。
なお、生活保護の不正受給には、以下のような厳しい罰則があるため生活保護法を理解しておきましょう。
不注意による申告漏れ | 多くもらっていた保護費を全額返還 (生活保護法第63条) |
---|---|
意図的な申告隠し | 生活保護費を全額返還+過剰分に1.4倍の罰金 (生活保護法第78条) |
悪質な不正受給 | 詐欺罪に該当する (生活保護法第85条) |
生活保護費を不正受給をすると、悪質なケースの場合は逮捕されることも考えられます。
より多くの額を不正受給していると、全国的に報道されて大きな社会的制裁を受けることもあり得るかもしれません。
不正受給には多くのリスクやデメリットが伴うため、罰則とともに十分に理解を深めておく必要があります。
もしかしてこれは不正受給にあたる…?自分では判断できない…
生活保護受給中に上のような状況に困ったときは、速やかに福祉事務所へ相談してください。
生活保護の申請は各地域の福祉事務所からできる
生活保護を受給したいけれど、申請はどこでどのようにすれば良いのだろう
生活保護の申請をする際には、申請方法について困ることも多いものです。
相談や申請に向かうときは、まず申請する場所や申請から受理までの流れをチェックしておきましょう。
ポイント一覧
- 生活保護の申請は各地域の福祉事務所から
- 相談・申請に必要な書類は本人確認書類や経済状況がわかる書類など
- 生活保護担当では説明を兼ねた事前相談が行われる
- 保護費を受給できるかは申請後の調査によって決まる
- 受給後は年数回ケースワーカーから訪問調査などが行われる
まず、生活保護の相談や申請は、各地域の福祉事務所から受け付けています。
福祉事務所は各自治体に最低1カ所は設置されているととらえてよいでしょう。
相談や問い合わせる際には、所属する自治体の福祉事務所を訪ねる必要があります。
申請・相談に必要な書類については共通のルールはありませんが、自治体によって主に次のような書類があるとよいとされるのが特徴です。
- マイナンバーカード(もしくは通知カード)
- 収入証明書(給与明細書や源泉徴収票など)
- 銀行口座の関連書類(通帳のコピーなど)
- 公共料金の領収書または請求書
- 住宅の賃貸契約の関連書類(賃貸物件の場合)
- 固定資産税の通知書類(持ち家の場合)
- 障害者手帳
- 学生証や在学証明書
- クレジットカード、ローンカード
- 医療保険証、介護保険証
- 年金手帳
- 印鑑(シャチハタ不可)など
生活保護受給の可否はそれぞれの世帯収入や資産、支出の状況などをチェックし、総合的に判断されます。
申請前の相談には、経済状況を証明できる書類はできる限り用意する必要があります。
ただし具体的な必要書類は自治体によって異なるので事前に確認しましょう。
相談・申請の段階では書類はほぼ不要となる場合もあるため、詳細は事前に問い合わせて確認するようにしてください。
生活保護の相談に行きたいのですが、必要な書類はありますか?
といったように、事前に電話で問い合わせてから訪問することをおすすめします。
生活保護担当では説明を兼ねた事前相談が行われる
生活保護受給の申請をする場合は、まず生活保護担当から、説明を兼ねた事前相談が行われます。
生活保護とはどのような制度なのか具体的な説明を聞いたあとに、相談に移る流れです。
- 収入と資産の状況
- 働けない理由や事情
- 身内からの援助の有無と今後の可否
主に上記のことについて、細かく確認されます。
そして生活保護受給が望ましいと判断されれば申請書が渡されるため、形式に沿って記入の上、申請書を提出する流れです。
保護費を受給できるかは申請後の調査によって決まる
生活保護は相談後に申請をすれば、必ずしも受給できるようになるわけではありません。
申請後は提出した書類に基づき、生活や資産などについてさまざまな調査が行われます。
本当に生活保護受給が望ましい経済状況なのか、不正受給を防ぐためにも審査は厳しく実施されるのです。
調査・審査結果の通知までにかかる期間の目安は、以下を参考にしてください。
ケースワーカーによる家庭訪問 | 申請翌日~1週間 |
---|---|
収入・資産の調査 | 申請翌日~10日 |
審査結果の通知 | 申請から14日以内 |
生活保護受給の可否については、申請から長くても14日以内にはわかる仕組みです。
一方、どれだけ困窮していたとしても、生活保護受給の可否はすぐに決まるわけではないため注意が必要です。
また、調査に時間がかかる特殊なケースは、結果の通知までに最長30日かかることもあります。
そして受給決定後は、各自治体が定める支給日に生活保護費が支給される流れです。
生活保護の受給は決定したものの、今まさにお金に困っているのでなんとか助けてもらいたい…
といった場合には、臨時特例つなぎ資金貸付が利用できる場合もあるため覚えておきましょう。
受給後は年数回ケースワーカーから訪問調査などが行われる
生活保護を受給している間は、年に数回程度ケースワーカーから訪問調査が行われます。
例えば、訪問調査が行われた際に以下のような状況がケースワーカーの目に入れば、指導が入る場合があります。
- 病気で働けないのにも関わらず留守が多い
- 申告した収入・資産状況に見合わない高価なものが家にある
就労の見込みがあるとケースワーカーに判断されれば、訪問調査のときに就職先や職業訓練を紹介されることもあります。
そもそも生活保護は、生活困窮者を自立に向けて支援することが目的なのを忘れないようにしましょう。
場合によっては生活保護の不正受給とみなされてペナルティを受けることもあり得るため、事実とは異なる申告をすることは絶対に避けるようにしましょう。
宮野茉莉子
1984年生まれ。東京女子大学卒業後、野村證券に入社。ファイナンシャルプランナーとして活躍。2011年よりフリーランスでライターとして活動し、マネー分野の記事を執筆している。
得意分野:金融商品、投資
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