自己破産とは?デメリット・メリットや手続き後の生活についても解説

自己破産とは?

借子さん
借子さん

自己破産って何?

借子さん
借子さん

自己破産のメリット・デメリットを知りたい!

このように考えていませんか?

自己破産は借金で苦しくなった時にとても役立つ手段ですが、なんとなくイメージが悪く、「怖い」と思っている方も多いのではないかと思います。

実は深刻に考えられすぎているケースがほとんどです。

自己破産とは何なのか、自己破産をするとどうなるのか、自己破産にはどんな手続きが必要なのか、しっかりと理解している人は多くないはずです。

そこで、本記事では自己破産の基本からメリットやデメリットに加え、手続きの流れや費用の相場まで詳しく解説していきます。

これを読めば、自己破産について正しく理解できるようになるでしょう。

ぜひ参考にしてみてください。

「自己破産とは」ざっくり言うと
  • 自己破産は裁判所から免責を受けて借金を0にしてもらう手続き
  • 自己破産のメリットは借金の取り立てが止まることなど
  • 自己破産のデメリットはブラックリストに掲載されることなど
  • 自己破産できる条件は客観的に見て借金の返済が不可能なことなど
  • 自己破産すべき人の特徴は資産の額が少ないことなど

目次 開く

自己破産とは?

自己破産とは、裁判所から借金を返せる見込みがないことを認めてもらい、借金の支払いを免除してもらう手続きのことです。

自己破産をすると借金が0円になり、借金に追われることなく生活を立て直すことができます。

借金で困っている方にとってはこれ以上ないほど強力な手段ですが、その分大きなデメリットもあります。

ここからは、自己破産の詳細について詳しく見てきましょう。

自己破産の3つの種類をわかりやすく解説

自己破産の種類は主に以下の3つです。

自己破産の3つの種類をわかりやすく解説

それぞれの自己破産の種類について詳しく見ていきましょう。

同時廃止事件

同時廃止事件とは債務者が持っている財産が少ない時に取られる自己破産の種類です。

具体的には、以下のような条件を満たしている場合に利用することができます。

同時廃止事件の条件
  • 処分するほどの財産がない
  • 手続費用を支払う余裕もない
  • ギャンブルなどの浪費による借金ではない

自己破産をする人はほとんど財産を持っていない場合が多いですので、自己破産では同時廃止事件になることが多いです。

同時廃止事件は手続きが終了するのが約3ヶ月程度と短めで、かかる費用も少なめであり、自己破産の種類の中では特に債務者にとってメリットが大きなものです。

また、もともと財産がほとんどないことから、財産が没収されてしまうこともありません。

なお、同時廃止事件の手続きの詳細は下で詳しく解説しています。

同時廃止手続きの詳細を見に行く

管財事件

管財事件とは処分する財産が多い時に取られる自己破産手続きです。

以下のような場合に取られることが多い自己破産手続きです。

管財事件になる条件
  • 資産の額がかなり大きい
  • 大企業の代表など
  • 浪費による借金をした疑いがある

この条件からもわかるとおり、個人の自己破産で管財事件になるケースはほとんどありません。

なお、管財事件では同時廃止事件よりも多くの費用が必要になります。

管財事件では債務者の調査や処分などを行うために、裁判所が破産管財人を選出するのですが、破産管財人に対する報酬は債務者が支払うことになるからです。

また、財産の処分には時間がかかるため、管財事件は手続き修了までに6ヶ月~1年程度かかることもあります。

少額管財事件

少額管財事件とはある程度財産を持っている時に取られる自己破産の手順です。

少額管財事件は、以下のような条件を満たしている時に適用されることが多いです。

少額管財事件の条件
  • 20万円以上相当の高額の財産がある
  • 33万円以上の予納金を納められるような現金がある
  • 浪費による借金をしていた可能性がある

少額管財事件は総合的に見て、同時廃止事件と管財事件の中間に位置する自己破産の種類と言えるでしょう。

財産の処分をする手順が必要になるものの、財産は小さめになるため、少額管財事件の手続きは2~5ヶ月程度で終了します。

また、少額管財事件でも債務者の財産を処分する破産管財人は選出されますが、破産管財人に支払う報酬(予納金)は管財事件よりも少なめになります。

ちなみに、少額管財事件の手続きについては下で詳しく解説しています。

少額管財事件手続きの詳細を見に行く

自己破産のメリット・デメリット

自己破産にはさまざまなメリットとデメリットがあります。

自己破産のメリット・デメリット

自己破産のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

自己破産の4つのメリット

自己破産のメリットとしては、主に以下のようなものがあります。

自己破産のメリット
  • 借金が0円になる
  • 手続き終了後の財産は回収されない
  • 年金生活者・生活保護者でも利用できる
  • 借金の取り立てが止まる

何と言っても、自己破産の最大のメリットと言えば、借金が0円になり、生活の再建ができることでしょう。

また、自己破産では財産が没収されてしまうものの、自己破産の手続きが終わった後に取得した財産は保持しておくことができます。

自己破産の手続きは自身で行うこともできますが、自己破産におすすめの事務所に依頼することを勧めます。

弁護士や司法書士に依頼することで、借金の取り立てを止めることができるからです。

自己破産の8つのデメリット

自己破産のデメリットとしては、主に以下のようなものがあります。

自己破産のデメリット
  • 5~7年はブラックリストに掲載される
  • 必要最低限の財産以外は処分される
  • 手続き中は職業や資格に制限がつく
  • 住所と氏名が官報に掲載される
  • 連帯保証人に迷惑がかかる
  • 手続き中は裁判所の許可なしに住居を変えられない
  • 手続き中は郵便物を管財人に確認される
  • 税金・養育費などは免除されない
  • 少なくない費用がかかる

自己破産の最大のデメリットはブラックリストに掲載されることと言えます。

ブラックリストに掲載されると5~7年の掲載期間中は住宅ローンを含めて新たに借金できなくなる上に、自己破産でクレジットカードを作ることもできなくなります。

また、多くの財産は処分されてしまうものの、以下のような財産は例外として没収されないで済みます。

自己破産で没収されない財産
  • 99万円以下の現金・預貯金
  • 生活に必要な寝具・家具・衣類
  • 1ヶ月分程度の食料や燃料
  • 仕事で使う道具
  • 仏壇・神棚・位牌
  • トロフィーなど

一方、以下のような財産は没収されてしまいます。

自己破産で没収される財産
  • 現金・預貯金(99万円を超えるもの)
  • 退職金
  • 保険の解約返戻金
  • 土地
  • 不動産(住宅など)
  • 車・バイク
  • 貴金属・宝石類
  • その他金目のもの

また、自己破産の手続き中には以下のような職業はできなくなります。

自己破産手続き中にできない仕事
  • 貸金業の登録者
  • 質屋
  • 良好業務取扱の登録者と管理者
  • 生命保険募集人
  • 警備業者の責任者と警備員
  • 建築業
  • 風俗業管理者
  • 廃棄物処理業者 など

そして、自己破産で免除される借金はあくまで債務者本人のものだけです。

連帯保証人や保証人がいる場合には借金が一括で請求されてしまい、連鎖自己破産につながるケースも少なくないので注意しましょう。

自己破産できる2つの条件

自己破産できる条件は主に以下の2つです。

それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。

客観的に見て借金の返済が不可能なこと

自己破産できる条件としてまず挙げられるのは、客観的に見て借金の返済が不可能なことです。

自分では借金の返済が不可能だと思っていても、裁判所から借金の返済が可能だと判断されてしまうと自己破産はできません。

そのため、収入が十分あったり、借金が少額だったりする場合には自己破産できない場合が多いです。

あなたが実際に自己破産できるかどうかは弁護士や司法書士に相談しに行くと、客観的な判断を行えるでしょう。

免責不許可事由に該当していないこと

自己破産できる条件としては、免責不許可事由に該当していないことも挙げられます。

自己破産では、以下のような免責不許可事由に当てはまっている場合には借金が免除されません。

免責不許可事由
  • 浪費やギャンブルによって借金を作った
  • クレジットカードを作る時やお金を借りる時などに嘘をついた
  • 過去7年以内に自己破産の免責を受けたことがある
  • 裁判所に必要事項を説明しなかったり、嘘の説明をしたりした
  • 特定の債権者にだけ有利になるような支払いをした
  • 財産を不当に安く売却した
  • 自己破産の手続きを妨害した
  • 財産を隠した
  • うその債権者一覧を提出した
  • 税金、罰金、損害賠償、養育費などの借金 など

ただし、免責不許可事由に当てはまっていても諦めるのは早いです。

免責不許可事由に該当していても、裁判所の裁量次第で自己破産が認められるケースがあるからです。

特に自己破産が初めての場合や、自己破産の経緯について正直に説明し、よく反省している場合には自己破産が認められる場合があります。

あなたが自己破産できるかどうかは、弁護士や司法書士に相談しに行き、客観的に判断すると良いでしょう。

自己破産すべき人の3つの特徴

自己破産すべき人の特徴は主に以下の3つです。

それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

特徴①:資産の額が少ない

自己破産すべき人の特徴としてまず挙げられるのは、資産の額が少ないことです。

資産の額が少ない場合には、借金の支払い能力がないと認められやすい傾向にあります。

また、資産が少なければ、自己破産の手続きで没収される財産も少なくなり、ダメージを最小限にして自己破産することが可能になります。

特徴②:収入に対して借金返済額が多すぎる

自己破産すべき人の特徴としては、収入に対して借金返済額が多すぎることも挙げられます。

裁判所は債務者に借金の支払い能力があるか、収入と借金の返済額を見て数字で客観的に判断します。

たとえば、極端な話、毎月の借金の支払額が収入を超えている場合にはどう考えても借金を返済できないと判断されるでしょう。

特徴③:借入先が多い

自己破産すべき人の特徴としては、借入先が多いことも挙げられます。

そもそも、借入先が多い人は、いろいろな会社から借りなければならないほどお金に困っている傾向にあります。

しかし、それだけでなく、裁判所から見ても借入先が多ければ借金が支払えそうにないと判断されやすいです。

また、複数の借金があり、それを滞納しているのであれば、各社からの督促でかなりのストレスがあるでしょう。

このようなストレスから解放されるためにも、自己破産をするのはおすすめできます。

自己破産するとどうなる?よくある8つの誤解

自己破産についてよくある誤解としては、主に以下の8つがあります。

それぞれの誤解について詳しく見ていきましょう。

誤解①:自己破産をすると会社から解雇される?

自己破産に関するよくある誤解としてまず挙げられるのは、自己破産をすると会社から解雇されるというものです。

自己破産をしても会社から解雇されませんし、そもそも自分から言わない限り、自己破産をした事実を会社に知られることもありません。

また、たとえ会社に自己破産を知られたとしても、自己破産は解雇をするための理由にはなりません。

ただし、以下のような自己破産の手続き中に仕事ができなくなる職業や資格の場合には話は別です。

自己破産手続き中にできない仕事
  • 貸金業の登録者
  • 質屋
  • 良好業務取扱の登録者と管理者
  • 生命保険募集人
  • 警備業者の責任者と警備員
  • 建築業
  • 風俗業管理者
  • 廃棄物処理業者 など

このような場合には業務ができなくなるため、会社から解雇される可能性もあり得るでしょう。

誤解②:自己破産をすると会社にバレる?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると会社にバレるということも挙げられます。

上でも解説しましたが、基本的に自己破産をしたことが会社にバレることはありません。

なぜなら、自己破産をしたことが会社に通知されることはないからです。

ただ、以下のようなケースで自己破産が会社に発覚する場合もあります。

自己破産が会社に発覚するケース
  • 会社に借金をしていて、会社が債権者だった場合
  • 自分から自己破産したことを明かした場合
  • 自己破産関係の書類を会社の人に見られた場合
  • 会社の人が官報を読んでいた場合

しかし、このようなケースは少数派と言えるでしょう。

誤解③:自己破産をすると選挙に参加できない?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると選挙に参加できないというものも挙げられます。

選挙権は18歳以上の日本国民には誰でも与えられている権利であり、自己破産をしても剥奪されることはありません。

また、自己破産をした人が選挙で立候補することも可能になっています。

ちなみに、選挙権が剥奪されるのは禁錮刑以上の刑に処され、その執行がまだ終わっていない場合などになります。

誤解④:自己破産をすると携帯や、賃貸の契約ができなくなる?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると携帯や、賃貸の契約ができなくなるということも挙げられます。

携帯や賃貸の契約は禁止されるわけではありませんが、しにくくなるのは事実です。

まず携帯電話について、新たに契約したり、スマホなどの端末を一括払いで購入することは可能です。

しかし、滞納した通信料金や端末の分割払い料金を自己破産の対象にした場合には、その携帯会社で契約を続けることはできません。

また、賃貸契約について、契約自体はできるものの、保証会社の審査には通らない場合があります。

このような場合には、ブラックリストへの掲載が解消される5~7年先まで待つ必要があります。

誤解⑤:自己破産をするとパスポートが持てなくなる?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をするとパスポートが持てなくなるということも挙げられます。

自己破産をしてもパスポートは持ち続けられますし、自己破産情報がパスポートに記載されることもありません。

また、パスポートを新規に取得することも可能です。

ただし、自己破産の手続き中は裁判所の許可なしに居住地を離れることはできません。

そのため、自己破産手続き中はパスポートを使って海外に移動することは難しくなります。

海外まで財産を持って逃げられてしまうと、裁判所としては困るからです。

誤解⑥:自己破産をすると住宅ローンが組めない?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると住宅ローンが組めないということも挙げられます。

これは半分事実ですが、半分は間違いです。

ブラックリストに掲載される、自己破産から5~7年の間は住宅ローンを組むことができません。

しかし、ブラックリストからの掲載が削除されれば住宅ローンを組むことは可能です。

誤解⑦:自己破産をすると保険契約はどうなる?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると保険契約はどうなるということも挙げられます。

積立の保険であれ、掛け捨ての保険であれ、自己破産しても契約に大きな影響はありません。

ただし、自己破産前に保険の料金を滞納していた場合には、前の保険とは契約が続けられなくなる可能性はあります。

誤解⑧:自己破産をすると戸籍にのり、家族に迷惑がかかる?

自己破産に関するよくある誤解としては、自己破産をすると家族に迷惑がかかるということも挙げられます。

自己破産をしても、戸籍や住民票に記載されることはありません。

そのため、家族が戸籍や住民票を提出した時に不利益を被ることはありません。

自己破産をすると家族はどうなる?家族への影響

自己破産をした時の家族への影響は、家族との関係性によって異なります。

まず、自己破産をした時に一番影響を受けるのは同居している家族です。

自己破産では持ち家や車など、資産価値があるものは多くが没収されてしまいます。

そのため、持ち家や車などが自己破産者名義のものだった場合には、引っ越しの必要が生じたりします。

しかし、自己破産者名義以外の財産が没収されることはないので安心してください。

このように、自己破産をした時の家族への影響は意外と限定的ですが、これには例外があります。

家族が保証人や連帯保証人になっていた場合です。

自己破産をすると、保証人や連帯保証人に一括で請求が行われてしまいます。

これにより、連鎖自己破産が起こるケースもあります。

どちらにしろ、自己破産をするとある程度家族には影響が出ます。

自己破産をする時には、事前に家族にきちんと相談するべきでしょう。

自己破産手続きの流れ【同時廃止事件の場合】

同時廃止事件の場合、自己破産手続きは以下のような流れで行います。

それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。

手順①:弁護士・司法書士への相談

自己破産をする時には、まずは弁護士や司法書士へ相談しに行きましょう

相談だけなら無料ですし、相談することでそもそもあなたに自己破産という手段が合っているかも確かめることができます。

また、自己破産は裁判所がからむ手続きであるため専門性が高く、なおかつ複雑な手続きになるため、素人が1人で行うことは困難です。

その上、弁護士や司法書士が自己破産の依頼を受けるとその段階で債権者からの取り立てが止まります。

弁護士や司法書士が自己破産の受任通知を送り、債権者がこれを受け取ると、法律上債務者に取り立てることができなくなるからです。

手順②:書類作成【2~3ヶ月程度】

自己破産をする時には、次に自己破産をするために多くの書類を作成する必要があります。

書類を取り寄せる手間もあるため、自己破産の必要書類を用意するだけで2~3ヶ月程度かかることも少なくありません。

ただし、書類の作成自体は弁護士や司法書士が行ってくれます。

また、債務者が自分でする必要があることも、弁護士や司法書士が指示してくれるので安心してください。

ちなみに、自己破産の申し立てをする時に必要な書類は場合によって異なりますが、最低限以下のような書類は必要になります。

書類の概要書類名
自己破産を申し立てる書類申立書
自己破産に至る経緯などを説明する書類陳述書
住居に関する書類賃貸借契約書・不動産登記簿謄本・住宅使用許可書
財産に関する書類財産目録
収入に関する書類給与明細書・源泉徴収票・課税証明書・年金などの受給証明書・確定申告書・同居人の給与明細書/源泉徴収票・退職金支給明細書・退職金規定
居住地や戸籍に関する書類戸籍謄本・住民票
財産に関するもの不動産登記簿謄本・固定資産評価証明書・課税台帳に記載がないことの証明書・ローン残高証明書・生命保険証書・車検証・車両の売却査定書・預金通帳・各種証書・証明書類
債務(借金)に関する書類債権者一覧表・滞納公租公課一覧表

手順➂:自己破産の申し立て

次に、自己破産の申し立てを行います。

自分が住んでいる場所を管轄している裁判所やその支部に必要な書類を提出することで、自己破産の申し立てが可能です。

なお、申し立てに行くのは自分が住んでいる場所を管轄している裁判所であり、住民票がある場所を管轄している裁判所ではありません。

手順④:自己破産手続き開始決定

自己破産の申し立てを行うと、次はいよいよ自己破産手続きの開始が決定されます。

具体的には、申し立てを行った後には、債務者本人、依頼した弁護士、裁判官の3者で面接を行うことになります。

ここで、自己破産をすることになった経緯や、自分の資産や借金額などの状況について説明することになります。

上で説明したように、自己破産には同時廃止事件、管財事件、少額管財事件の3種類がありますが、このうちどれになるかはこの段階で決定されます。

ちなみに、自己破産を申し立ててから自己破産手続きが開始されるまでには半月~1ヶ月程度がかかります。

手順⑤:同時廃止決定

次に、同時廃止手続きを行うことが決定されます。

ちなみに、同時廃止は債務者が持っている財産が少なく、財産を処分する意味もないような時に取られる手順です。

そのため、同時廃止では、破産手続きが開始された後、財産を処分するという手順は省略されます。

財産を処分するという手順が開始されたと同時に終了することから、同時廃止という名前がついています。

手順⑥:免責許可/不許可決定

次に、免責許可や不許可が決定されます。

具体的には、まずは弁護士と一緒に裁判所へ出頭し、免責審尋という面接を行います。

免責審尋は最終的に免責すべきかどうか判断するために行われ、形式的な確認が行われたり、不明点について質問されたりシます。

免責が最終的に許可されるかは、免責審尋が行われてから約2週間後に決定されます。

そして、免責許可が行われてから約1ヶ月後に、免責許可の決定が法的に確定することになります。

自己破産手続きの流れ【少額管財事件の場合】

少額管財事件の場合、自己破産手続きは以下のような手順で行います。

それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。

手順①~④:弁護士・司法書士への相談~自己破産手続き開始決定

少額管財事件の場合でも、弁護士や司法書士へ相談してから、自己破産手続きの開始が決定されるまでは同時廃止事件と同じ手順を踏みます。

具体的な手順を簡単に振り返ると以下のようになります。

自己破産手続き開始までの手順
  1. 弁護士・司法書士へ相談・依頼する
  2. 弁護士・司法書士が債権者に受任通知を送る
  3. 自己破産に必要な書類を作成する
  4. 裁判所に自己破産を申し立てる
  5. 債務者本人、依頼した弁護士、裁判官の3者で面接を行う
  6. 同時廃止事件、管財事件、少額管財事件のどれになるか決定される

さて、これらの手順を踏んで、少額管財事件になることが決定されたら、次の手順に移行しましょう。

手順⑤:破産管財人の選任・打ち合わせ

少額管財事件になることが決定されたらまず行われるのは、破産管財人の選任です。

破産管財人とは、中立の立場から債務者に財産に関する手続きを行う人のことです。

裁判所が主に弁護士を選任することになります。

破産管財人が選任された後は、破産管財人との間で面談が行われます。

ここで借金の内訳について説明し、浪費など、免責不許可事由に該当してないかどうか確認するために質問が行われます。

通常、破産管財人との打ち合わせは30分程度で終了することになります。

自己破産では虚偽の説明をすることが一番良くないですから、たとえ免責不許可事由に該当していた場合でも、正直に話しましょう。

正直に話しておけば裁判所の裁量で自己破産を認められる場合があります。

ちなみに、破産管財人との打ち合わせは自己破産手続きが開始されてから1~2週間後に行われるのが一般的です。

手順⑥:財産の調査・換価処分

次に、財産の調査が行われます。

破産管財人が、債務者にどの程度の財産があるのか調査するのです。

そして、調査した財産を債権者に分配できるように現金化していきます。

これを債権者に平等に分配するのです。

手順⑦:債権者集会

次に、債権者集会が行われます。

債権者集会とは、破産管財人が債権者を集め、破産についての概要から配当の見込みまで報告する会合です。

債権者集会が何回開催されるかは以下の2つの場合で異なります。

債権者集会の回数
  1. 初回の債権者集会までに財産の配当が終わっていた場合→債権者集会は1回のみ
  2. 初回の債権者集会までに財産の配当が終わっていない場合→債権者集会は2回行う
    ※配当が終わった段階でもう一度債権者集会を行うため

ちなみに、初回の債権者集会は原則として、自己破産の申し立てから約2ヶ月後に行われます。

手順⑧:異時廃止

次に、異時廃止が行われます。

異時廃止とは、財産を換金して分配する破産手続きを完了する手続きのことです。

破産手続きが開始されるタイミングと終了するタイミングが異なることから、異時廃止という名前がついています。

手順⑨:免責許可/不許可決定

最後に、免責が許可されるか、不許可になるかが決定されます。

ここで免責許可が出た場合には、借金の返済義務が消滅することになります。

なお、厳密に言えば、免責許可が出る前には免責審尋と呼ばれる面接を行われます。

免責審尋は本当に免責をしても良いのか確かめるために行われるもので、形式的な確認が行われる場合が多いです。

免責審尋から約2週間後に免責許可の決定が出ることになります

さらに、免責許可が出てから約2週間後に、免責許可が法的に確定されます。

ちなみに、自己破産の免責は95%程度の確率で許可されると言われています。

自己破産に掛かる期間は?

借子さん
借子さん

自己破産はどんな場合でも認められるわけでないのですか、何とか裁判所から認定してもらいたいです。

自己破産にかかる期間は、どれくらい掛かるのでしょうか。

こちらでは、自己破産にかかる期間の目安と期間中の注意点について解説します。

自己破産の流れ・期間の目安

こちらでは自己破産の流れに沿って、掛かる期間の目安を見ていきましょう。

自己破産の手続きの流れ
  1. 申立ての事前準備(2~3か月程度が目安)
  2. 申立て~破産手続開始決定(1~3か月程度が目安)
  3. 破産管財人選任~免責許可決定(1~6か月程度が目安)

手順1:申立ての事前準備(2~3か月程度が目安)

自己破産を思い立ったら、すぐに申し立てが出来る訳ではありません。

入念な事前準備が必要となります。

事前準備の内容は次の通りです。

事前準備の内容
  • 受任通知の発送:弁護士等へ依頼した場合に可能。弁護士が債務者の代理人として、破産手続を始めることを債権者に知らせる通知。債権者は債務者本人へ督促ができなくなる。
  • 債権調査票の収集:債務者本人の正確な借金状況を把握に、各債権者から債権調査票を提出してもらう。
  • 破産費用の積立:一括または分割で費用を積み立てる。
  • 申し立て書類の作成:債務者本人または法律の専門家(弁護士・司法書士)が作成。

手順2:申立て~破産手続開始決定(1~3か月程度が目安)

地方裁判所へ書類を提出、自己破産の申立てを行います。

その内容は次の通りです。

 自己破産申し立ての流れ
  • 自己破産の申立て:申立後、裁判所は書類を審査、不備があれば修正の指示がある。
  • 免責審尋:裁判所が必要と判断した場合のみ実施。裁判官と10分程度の面談を行う。
  • 破産手続開始決定:管財事件なら破産管財人の選任、同時廃止事件なら裁判所の決定がなされる。

前述したように、申立てをしたからと言って必ず自己破産が認められるわけではありません。

しかし、認定されたならば、管財事件または同時廃止事件となります。

手順3:破産管財人選任~免責許可決定(1~6か月程度が目安)

同時廃止事件では、前段階で裁判所の決定が出て終結します。

一方、管財事件では破産管財人が裁判所から選任され、更に手続きが進められます。

その内容は次の通りです。

 管財事件の手続きの流れ
  • 破産管財人の選任:破産手続開始決定と同時に破産管財人を選任。破産管財人は裁判所が弁護士の中から選任する。破産者の財産管理・売却、債権者へ配分する役割を担う。
  • 破産管財人と面談:破産者は、借金を抱えた経緯・借金の内訳、財産状況等を質問される。
  • 債権者集会:破産管財人が破産者の財産・債務の状況を調査後、その結果を債権者に報告する集会が開かれる。(月1度・1回~3回程度が目安)
  • 換価・債権者に配当:破産者の財産をすべて換価、債権者へ配当され破産手続は終結。
  • 免責許可決定:破産管財人が免責許可について裁判所に報告。裁判所は報告に基づき免責の可否を判断。問題がないと判断されれば、免責決定に至り借金免除へ。

この期間は自己破産の内容によっては、債権者側がなかなか納得せず議論は紛糾して、手続きがなかなか進まない事態も考えられます。

手順1~3から、各手続きに掛かる期間の目安は以下のようになります。

手続きに掛かる期間の目安
  • 同時廃止事件:6ヶ月程度
  • 管財事件:7ヶ月~1年程度
リーガルさん
リーガルさん

自己破産の手続きには、手続き内容により異なるが6ヶ月から1年程度の期間は掛かる。

自己破産手続き期間中の3つの注意点

こちらでは、手続き期間中の制約である「職業・資格」「転居・旅行」「郵便物」について解説します。

自己破産手続き中の注意点
  • 職業・資格の制約
  • 転居・旅行の制約
  • 郵便物の制約

職業・資格の制約

自己破産手続き中および破産後は、一定の期間、以下のような特定の職業に就く資格を喪失してしまいます。

制限される職業
  • 警備員
  • 弁護士・税理士・司法書士・行政書士等の士業
  • 証券会社等の外務員
  • 保険外交員

いずれかの職業になりたかった人は、いきなり自己破産するのは避け、どうするべきかよく検討してみましょう。

ただし、裁判所が破産者に対し、債務弁済責任を免れることを認める決定である「免責決定」が確定したならば、資格を取り戻せるケースが多いです。

転居・旅行の制約

破産手続きの期間中、破産者のご家庭の都合で転居、旅行等を行う際は、事前に破産管財人に報告して、裁判所から許可を得る必要があります

なお、同時廃止事件の場合は、破産者手続開始決定とともに、手続きは終結するので、この制約はありません。

これらの制約を受ける場合、日帰り旅行のような小旅行はともかく、海外旅行はまず認められない可能性があります。

また、転居ならば「心機一転したい」「なんとなく引っ越したい」などという理由は、とても認められない点に注意しましょう。

なお、破産手続終了後であれば、もちろんこのような制約はありません。

郵便物の制約

手続きの期間中に破産者へ送られてくる郵便物は、原則として裁判所が破産管財人に郵送される転送手続きを行います

転送されてきた郵便物は、いったん破産管財人によってチェックされて、その後に破産者へと引き渡されるのです。

つまり、破産のプライバシーがやや制約されるとみて間違いありません。

ただし、郵便物が問答無用に破産管財人から没収される訳ではないので、安心してください。

このような措置は、破産管財人が破産者の財産状況を把握するために必要なのです。

この制約は破産手続き終了まで継続します。

転送された郵便物はその都度、破産管財人から連絡が入り受け取ることになります。

リーガルさん
リーガルさん

自己破産をすると、職業や資格取得に制限が掛かることや、転居・旅行はもちろん、郵送物まで制約が掛かることになる。

自己破産にかかる費用の相場

この見出しでは、自己破産にかかる費用の相場について、以下の項目に分けて詳しく見ていきます。

合計で自己破産にかかる費用の相場

合計で自己破産にかかる費用の相場は自己破産の種類によって異なり、以下のようになっています。

裁判所費用弁護士費用合計額
同時廃止2万円程度30~50万円約30万円~
管財事件50万円~30~80万円約80万円~
少額管財20万円程度30~50万円約50万円~

同時廃止の料金が一番安く、管財事件の料金が一番高いことが分かります。

特に裁判所費用は自己破産のどの種類になるかで異なるため、注意が必要です。

弁護士・司法書士に払う費用

自己破産をする時には、弁護士や司法書士に支払う費用を用意する必要があります。

自己破産の手続きには専門知識が必要で、なおかつ手続きが多く独力で行うのは大変だからです。

個人が管財事件になることは少ないですので、弁護士に支払う費用は30~50万円程度になることが通常です。

弁護士に対しては、具体的には以下のような費用を支払う必要があります。

弁護士・司法書士に払う費用
  • 相談料
    弁護士・司法書士に法律相談をする時にかかる費用
  • 着手金
    弁護士・司法書士に自己破産手続きを依頼する時にかかる費用
  • 報酬金
    自己破産に成功し、裁判所から自己破産が認められた時にかかる費用

なお、相談料については無料に設定されている事務所も多いです。

裁判所に払う費用

自己破産をする時には、裁判所にもお金を支払う必要があります。

裁判所に支払う費用は自己破産の種類によってかなり異なります。

自己破産で裁判所に払う必要がある費用としては、以下のようなものがあります。

裁判所に払う費用
  • 収入印紙(申し立て手数料):1500円程度
    自己破産申し立てをする時に必要な費用で、申立書に収入印紙を貼り付ける必要がある
  • 予納金:1万円~50万円程度
    自己破産手続きにかかる費用をまかなうために支払うお金
  • 郵便切手(通知呼び出し料等):数千円程度
    債権者に自己破産手続きが行われることを通知するために必要な費用

予納金は特に金額に幅があることが分かります。

これは、予納金が主に破産管財人の報酬に使われることが関係しています。

同時廃止事件の場合には破産管財人は選任されないため予納金は安いですが、少額管財事件や管財事件では破産管財人の報酬がある分、裁判所に支払う必要がある金額が増えるのです。

自己破産の体験談

ここまで自己破産について詳しくご紹介してきました。

実際、みなさんが一番気になるのは体験談ですよね。

ここからは実際に自己破産をした方の体験談をご紹介します。

自己破産した方の体験談
  • 体験談①:保証人
  • 体験談②:借入
  • 体験談③:離婚

自己破産した方の体験談

(50代/男性)


保証人になって、知らないうちに30万の請求がきて、他の金融会社から借りて支払いながらを繰り返し、成すすべもなかった。借金は膨れ上がり電話は毎日なる状態で、弁護士になけなしの5千円を持って相談しました。電話攻勢。家に訪問。決心して、自己破産に踏み切りました。弁護士さんに頼めば30万掛かるので、自分一人で手続するこ事になる。だが印紙代「たかが2万されど2万。」認められた時にはほっとして涙が出てきました。初期のうちに相談していたら、こんな事にはと思います。

(40代/男性)


自己破産という形を得ざるしかなく、とても複雑な心境でなりませんでした。断然弁護士さんのアドバイス通りにしていただいて、だいぶ不安もなくなり、自己破産も5か月くらいで解決できたことも本当に感謝しております。自分自身年収500万円の中で、どんどん借入額が増えたり、借りてはまた借金が膨らみ返済ができなく困難になってしまったため、安易には借りない方が無難かと思います。貸す側としてはもっと借りてほしいので、結局返済ができなく、1回借りたらなるべく多めに返済をして2度と借りないように自分に引き締めた方がいいと感じます。

(30代/女性)


離婚をして生活が苦しくなり、借金を重ねるようになりました。どうしても返すことが出来なくなり苦しんでいましたが、友人の勧めで自己破産申請を行うことにしました。たくさんの書類を揃えるのが大変そうで不安でしたが、弁護士の方が全て行ってくれました。私は一度裁判所に行くだけでした。数か月後に免責許可が下りたと弁護士の方から聞きほっとしました。数百万円あった借金が全て0になり、人生をやり直すことが出来ました。

自己破産に関してよくある質問

最後に、自己破産をするときによくある質問について紹介をします。

それでは見ていきましょう。

自己破産には借金の総額に関する条件はありますか?
自己破産において「借金〇〇万円以上」などといった借金の総額による基準はありません。

自己破産ができるかどうかは、借金総額と収入・財産の比較によって個別に判断されます。
法律上では「支払不能」であることが条件になっています。
「支払不能」の内容は以下の通りです。

この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

引用:破産法2条11項
自己破産によって債務者への返済は不要になりますか?
自己破産をすると借金の支払義務はなくなります。

「免責」が確定したあとは債権者へ返済する必要がなくなるからです。
例外として、税金等の公租公課や養育費・罰金などの自己破産をしても免責されない借金や負債もあります。

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れる。ただし,次に掲げる請求権については、この限りでない。

引用:破産法253条1項
自己破産で免責が認められないことはありますか?
ギャンブルなどの著しい浪費による借金については、免責が認められない場合があります。

ただし、東京地方裁判所などでは「少額管財」という手続によって、免責が認められる可能性があります。
少額管財とは、裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産や免責不許可事由の有無を調査する手続きのことです。
少額管財によって、免責不許可事由の内容や程度・反省の有無といった今後の生活を立て直せる見込みを調査し、免責が認められることがあります。