M&Aのスキームとは、M&Aで用いられる手法の他、それを実行する一連の手順を指します。
代表的なスキームとしては株式取得・事業譲渡が存在します。
その他にも様々なスキームがあり、どのスキームを選択するかで、得られる利益も注意しなければならない面も異なります。
自社のM&Aの目的と事業の特性に合わせて、どの手法が最適か慎重に考慮することが必要であり、自社の現状に合ったスキームは何か、関心がある方々は多いことでしょう。
この記事では、M&Aのスキームや手続き、メリット・デメリット、M&Aのスキームごとの成功事例等を解説します。
- M&Aにおけるスキーム選びは非常に重要になる。
- M&Aはスキームによって結果が大きく変わる。
- M&Aのスキームには、買収・合併・提携など種類も多い。
- M&Aのスキームには注意点も多い。
- M&Aの目的に合ったスキーム選びが重要になる。
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目次
M&Aのスキームとは?
こちらでは、M&Aの基本とスキームについて解説します。
M&Aは買収が基本
M&Aは、基本的に一方が他方を買収する戦略として位置づけられます。
その他に、M&A当事者が合併する方法も該当します。
バブル経済時のような相手方企業の同意も得ず、株主だけにOKをもらっていきなり買収する「敵対的買収」は、現在では殆ど行われません。
売り手も買い手もWin-Winの関係になるよう交渉・調整を図り進める「友好的買収」が主流です。
いずれのスキームを執るにしても、この基本的な部分はみな同じです。
現在のM&Aは、お互いにWin-Winになる友好的買収が主流となっている。
M&Aは「狭義」と「広義」
M&Aスキームは狭義と広義とに大別されます。
まず狭義のM&Aは更に「買収」「合併」があり、それぞれ細かく分かれていきます。
買収
更に株式取得か事業譲渡かでいろいろなスキームに枝分かれします。
- 株式譲渡
- 第三者割当増資
- 株式交換
- 株式移転
- 事業譲渡
- 吸収分割
- 新設分割
合併
次のいずれの場合も企業そのものに重大な影響が及びます。
- 吸収合併
- 新設合併
一方、広義のM&Aは次の通りです。
- 資本提携
- 業務提携
いずれの場合も、提携したら必ずしも買収等へ進むわけではありません。
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M&Aのスキーム一覧
こちらでは、M&Aの各スキームの特徴について解説します。
- 買収(株式取得・事業譲渡)
- 合併(新設合併・吸収合併)
- 提携(業務提携・資本提携)
買収(株式取得・事業譲渡)
M&Aを行うという場合に、真っ先に浮かぶのがこのスキームでしょう。
こちらでは各スキームを説明します。
株式取得
株式取得とは、株式売買によって経営権の獲得や子会社化、増資等を行う手法です。
次の4種類があります。
①株式譲渡 |
---|
売り手から株式買収して経営権を得る方法。
会社は消滅すること無く、今まで通り事業継続。 |
②株式交換 |
相手方から発行済み株式の全てを取得。
そのかわり自社の発行済み株式を交付する方法。 |
③株式移転 |
新設会社が、複数会社から全ての発行済み株式を取得。
かわりに自社の発行済み株式を交付する方法。 |
④第三者割当増資 |
新しく発行する株式を特定の第三者へ交付。
資金調達等を図りたい場合に用いられる方法。 |
事業譲渡
事業譲渡は、自社や相手方の事業・資産の一部または全部を売買する手法です。
次の3種類があります。
①事業譲渡 |
---|
売り手が持つ事業の一部またはすべてを買収。
対価として買い手が現金を支払う方法。 |
②吸収分割 |
相手方から事業の権利義務の一部またはすべてを引き継ぐ。
対価として株式や金銭を支払う方法。 |
③新設分割 |
新設会社が、既存会社から事業の権利義務の一部または全部を引き継ぐ。
吸収分割とほぼ同じ手法。 |
合併(新設合併・吸収合併)
合併とは、2つ以上の会社を1つの会社に統合するM&A手法です。
次の2種類があります。
①吸収合併 |
---|
消滅会社が有する権利義務の全部を、合併で存続する会社が引き継ぐ方法。
合併の場合は概ねこちらの方法をとる。 |
②新設合併 |
全ての会社が持つ法人格を消滅させ、新しい会社へ全て移転する方法。
煩雑な手続きのため、あまりとられない手法。 |
いずれの合併をとる場合でも、売り手企業は結局消滅することになります。
提携(業務提携・資本提携)
提携とは、2つ以上の会社が協力し合い、共通目的の達成を目指す手法です。
次の2種類があります。
①資本提携 |
---|
互いの経営権を取得しない範囲で出資する方法。
協力関係を構築、目的達成を目指す。 |
②業務提携 |
互いの企業が経営の独立性を維持しつつ、協力して事業に取り組む方法。
資本移動は一切伴わない。 |
会社同士が基本的に対等の立場で契約されます。
ただし、資本提携を足掛かりに、どちらか一方が相手方を買収、その傘下に入れるケースも考えられます。
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M&Aのスキーム別の特徴とメリット・デメリット
こちらでは、各スキームの特徴とメリット・デメリットについて解説します。
- 買収の特徴とメリット・デメリット
- 合併の特徴とメリット・デメリット
- 提携の特徴とメリット・デメリット
買収の特徴とメリット・デメリット
買収とは、売り手と買い手(または増資側・引受側)が明確に分かれるのが特徴です。
しかし、一方の法人が消滅するわけではなく、子会社として傘下に入れ(または入り)事業の存続が図られ、事業自体の売り買いもできます。
買収の各スキームのメリット・デメリットを取り上げます。
株式取得
株式譲渡、第三者割当増資、株式交換、株式移転の長所・短所はそれぞれ次の通りです。
(1)株式譲渡
メリット | デメリット |
---|---|
・権利義務がそのまま承継
・手続きは簡便 ・(買い手)相手企業の経営権を掌握 ・(売り手)譲渡益を獲得 |
・(買い手)簿外債務・不要な資産等を引き継ぐおそれも
・(買い手)現金での支払いが必要 ・(売り手)売却株式数によっては経営権失う |
(2)第三者割当増資
メリット | デメリット |
---|---|
・(増資側)現金を獲得
・(増資側)資金の返済不要 ・(増資側)資本力を高め財務基盤強化 ・(引受側)経営への影響力UP |
・(増資側)持株比率の低下で経営弱体化
・(増資側)資本金増加で課税額がUP ・(増資側)登記変更の手続きが手間 ・(引受側)発行株式1/3未満の獲得では発言力弱い |
(3)株式交換・株式移転
メリット | デメリット |
---|---|
・完全子会社の資産・事業内容等を変更不要
・対価に株式を使用してOK ・少数株主を排除可能 ・(株式交換)全株主から同意不要 |
・負債・簿外債務等を引き継ぐおそれ
・非公開会社株式が交付されると現金換えが困難 ・(買い手)新株発行による株価下落リスク ・(売り手)買い手の業績で交付株価が下落も |
事業譲渡
事業譲渡、吸収分割、新設分割の長所・短所はそれぞれ次の通りです。
(1)事業譲渡
メリット | デメリット |
---|---|
・(買い手)承継資産等を選択可
・(買い手)簿外債務等の承継回避 ・(買い手)節税効果 ・(売り手)事業存続可能 ・(売り手)資本の選択・集中が可能 ・(売り手)法人格を残せる |
・(買い手)許認可の再取得が必要
・(買い手)取引・雇用契約を再締結 ・登録・登記の手続き必要 ・従業員から個別に同意を得る |
(2)吸収分割、新設分割
メリット | デメリット |
---|---|
・対価に株式を使用
・権利義務が包括的に承継 ・従業員の同意不要 ・分割する事業を選択可 ・分割した事業でシナジー効果得やすい |
・簿外債務を引き継ぐことも
・許認可で事前の取得や再取得が必要なことも ・(買い手)非公開会社株式なら株式現金化困難 ・(買い手)スムーズに統合が必要 |
合併の特徴とメリット・デメリット
合併とは、会社の権利義務を他社または新設会社に権利義務を移転させる手法です。
売り手(権利義務を移転させた会社)は、吸収でも合併でも法人格を失います。
合併の各スキームの長所・短所はそれぞれ次の通りです。
(1)吸収合併
メリット | デメリット |
---|---|
・消滅会社の権利義務を全承継
・対価に株式を用いることで現金不要 ・企業価値向上、シェア拡大、コストの削減可 ・人材・ノウハウ・営業権獲得 |
・統合に時間・労力が必要
・非公開会社株式が交付されると現金換えが困難 ・負債・簿外債務等を引き継ぐおそれ |
(2)新設合併
メリット | デメリット |
---|---|
・企業間の格差が生じにくい
・企業価値向上、シェア拡大、コストの削減可 |
・許認可の再取得必要
・統合に相当の時間・労力が必要 ・対価は新設会社株式・社債等を使用、現金不可 ・対価が株式なら旧経営陣が新会社に残される |
提携の特徴とメリット・デメリット
提携とは、緩やかな企業間の協力手法です。
提携というスキームを執ったら、必ず売り手・買い手に分かれるとは限りません。
提携の各スキームの長所・短所はそれぞれ次の通りです。
(1)業務提携
メリット | デメリット |
---|---|
・売り手・買い手に分かれない
・情報共有で業務の質がUP ・提携相手の交流が活発化 ・互いの技術で新たな技術を創造も |
・情報漏洩のおそれも
・担当者が移動すると提携消滅も |
(2)資産提携
メリット | デメリット |
---|---|
・提携先と強い関係性を作れる
・経営資源の獲得 ・財務状況を改善 ・独立性を維持しつつシナジー効果も期待 |
・経営について介入されるリスクも
・株式の買い取りが必要になるおそれ ・想定したシナジーが発揮できない場合も ・解消が難しい |
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最適なM&Aスキームの選び方
こちらでは、スキームを選ぶ3つポイントについて解説します。
- M&Aの目的
- 手続きの簡便さかシェア拡大か
- 売買金額を重視か企業の立て直しか
M&Aの目的
まず自社がどうしてM&Aを行いたいのかについて検討します。
このM&Aの目的によって最適なM&Aスキームは異なってきます。
例えば、ご自分が高齢となり引退を決意している場合、いきなり会社を廃業しては従業員が困ってしまいます。
とはいえ、後継者がいなければすんなり引退をする事は無理でしょう。
この場合には、会社ごと買収してもらうべきであり、株式譲渡が最適な方法と言えるでしょう。
一方、自社のある事業部門で採算がとれず経営の負担となっている場合は、不採算の事業のみを売却するのが妥当であり、事業譲渡を行うことが最適と言えるでしょう。
このように、まずM&Aを行う目的について把握し、どのスキームを選ぶか決めます。
M&Aの目的によって、選ぶスキームは異なる。
手続きの簡便さかシェア拡大か
M&Aを行う際、なるべくスピディーに手続きを進めたいなら、比較的簡単な株式譲渡が最適です。
実際に中小企業をはじめ、多くのM&A希望会社はこのスキームを利用します。
しかし、業界での競争が厳しく生き残りをかけ、その業界で大きなシェアを確保したいならば、手間はかかっても吸収合併を行った方が良いでしょう。
吸収合併でより効果的な企業価値向上とシェア拡大が図れます。
スピードを重視するなら株式譲渡を選び、企業価値の向上・市場シェアの拡大を図るなら吸収合併を選ぶのが良い。
売買金額を重視か企業の立て直しか
M&Aでは、数億円・数十億円、中には数百億円という多額の買収(売却)価格で、契約が来まる場合もあります。
このような、売買金額の大きさを重視してM&Aを行いたいなら、会社全部売買する株式譲渡・株式交換、合併等のスキームが適しています。
一方、売り手の場合、売却価格は大切だけど要らない事業をスリム化し、資本の選択・集中に注力したいなら事業譲渡が最適です。
また、買い手にしても、新規事業をコツコツとGETして、堅実なシナジー効果を目指すなら事業譲渡が望ましいスキームと言えます。
売買価格を重視するか、企業の立て直しを重視するかなど、重要視する事によっても選ぶスキームが異なる。
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M&Aのスキーム別の成約までの流れ
こちらでは、M&Aの各スキームの流れを解説します。
買収(株式取得・事業譲渡)の流れ
こちらでは、M&Aの買収手法である株式取得と事業譲渡の流れを見ていきましょう。
- 株式取得(譲渡)の契約締結
- 株式移転計画作成
- 事前開示書類の備置
- 債権者に対する公告・個別の催告
- 株主総会招集通知
- 基本的に特別決議
- (反対株主がいれば)株式買取請求手続
- 事後開示書類の備置
- 株式移転登記実行
当然、M&A当事者だけで行える手法ではなく、株主総会を開き、株主の同意を得なければいけません。
- 事業譲渡契約締結
- 株主総会の招集
- (事業の全部譲渡、重要な一部の譲渡、全部譲受けの場合)特別決議
- (反対株主がいれば)買取請求手続
- 財産・契約上における地位移転
ただし、事業譲渡で移転する資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額において1/5を超えないケースでは特別決議が不要となります。
合併(新設合併・吸収合併)の流れ
こちらでは、M&Aの合併手法である新設合併・吸収合併の流れを見ていきましょう。
いずれも基本的に同じ流れです。
- 合併契約締結
- 事前開示書類の備置
- 債権者に対する通知・公告
- (反対株主がいれば)株式買取請求手続
- 株主総会招集通知
- 基本的に特別決議
- 合併の登記を実行
- 事後開示書類の備置
新設合併の場合は、全企業の法人格が消滅します。
吸収合併の場合は、吸収される企業の法人格が消滅します。
いずれの合併も双方または一方に大きな影響を与えます。
合併プロセスはより慎重に進められなければいけません。
提携(業務提携・資本提携)の流れ
こちらでは、提携の手法である業務提携と資本提携の流れを見ていきましょう。
いずれも基本的に同じ流れです。
- 提携先の決定
- 提携内容を明確化
- 相互の利益や費用、役割分担を協議・決定
- 提携契約書締結
前述したM&Aスキームと比較すれば、比較的簡易な手続きで契約が可能です。
ただし、当事者の独自の技術を相互に知ることとなるので注意が必要です。
秘密保持契約は他のM&Aと同様に、しっかりと締結します。
なお、資本提携の場合は、その後に一方が相手方の株式を取得して子会社化を目指す動きもあり、資本提携だけでとどまるケースばかりではありません。
よく当事者が交渉し、将来どのように提携戦略を進めるか話し合うことが大切です。
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M&Aのスキーム別の成功事例
こちらでは、M&Aのスキームごとの成功事例を見ていきましょう。
買収(株式取得・事業譲渡)に関する成功事例
こちらでは、国内および海外の買収に関する事例を取り上げます。
- 熊谷総合病院と社会医療法人北斗(事業譲渡)
- キヤノン株式会社とアクシスコミュニケーションズ社(株式取得)
国内企業同士の買収|熊谷総合病院と社会医療法人北斗(事業譲渡)
人材難等で経営が逼迫した病院を事業譲渡した事例について取り上げます。
- 売り手:JA埼玉厚生連(破産)→目的:熊谷総合病院経営逼迫
- 買い手:社会医療法人北斗→目的:他地域への事業進出
①事業譲渡の背景
熊谷総合病院は埼玉県熊谷市にあり、地域の方々に頼りとされる医療機関でした。
しかし、医師の人材難、設備投資が大きな負担となります。
当病院を運営していたJA埼玉厚生連は破産、このままでは地域医療の崩壊につながり事態も懸念されました。
一方、社会医療法人北斗は新たな地域(関東地方)に進出するべく、M&Aの交渉相手を探していました。
②成果
新しい地域へ進出したい北斗と、経営難の解消を何とかしなければいけない熊谷総合病院の利害が合致して、2016年5月熊谷総合病院は社会医療法人北斗に事業譲渡されました。
社会医療法人北斗は関東圏へ進出し大きな足掛かりを得ました。
一方、熊谷総合病院は最新機器の導入、病院の全面建て替えを行う等、積極的な設備投資へ成功、地域医療を担う病院として復活しました。
国外企業の買収|キヤノン株式会社とアクシスコミュニケーションズ社(株式取得)
デジタルカメラ市場が急速に縮小する事態を危惧して新事業へ乗り出すため、外国企業の株式を取得した事例について取り上げます。
- 売り手:アクシスコミュニケーションズ→目的:潤沢な資金確保
- 買い手:キヤノン株式会社→目的:新規事業進出
①株式取得の背景
大手精密機器メーカーのキヤノンは、自社で培われたレンズ技術を活かすべく、2013年に監視カメラ事業に参入しました。
そして更なるシェア拡大を模索し、スウェーデンの監視カメラ企業「アクシスコミュニケーションズ社」に目を付けました。
一方、アクシスコミュニケーションズ社は潤沢な資金を確保するため、理想的な買収先を検討していました。
②成果
キャノンは、2015年にアクシスコミュニケーションズ社の株式を取得(約3,300億円相当)、2018年に売り手の株式を約400億円で買収して完全子会社化に成功しています。
売り手のアクシスコミュニケーションズは潤沢な資金を得て、買い手のキヤノンは監視カメラ事業のシェアを強固にして事業運営を成功させました。
合併(新設合併・吸収合併)に関する成功事例
こちらでは、国内および海外の合併に関する事例を取り上げます。
- グラフィックグループと日本創発グループ(吸収合併)
- 東洋製罐とWPI社・TPI社・TAS社(新設合併)
国内企業同士の提携|グラフィックグループと日本創発グループ(吸収合併)
印刷市場への対応力を高めるため、同業他社を吸収合併した事例です。
- 吸収された側:グラフィックグループ→目的:経営資源の共有・企業価値の向上
- 吸収した側:日本創発グループ→目的:印刷市場への対応力
①吸収合併の背景
印刷・製造業等の苦境を受け、日本創発グループは他社との競争で有利になるため、合併を模索していました。
そこで、日経印刷株式会社の完全親会社であるグラフィックグループへ目を付けます。
グラフィックグループは、教育関連事業向け印刷物や金融事業向け印刷物など、各省庁から発行される白書などの分野で圧倒的な受託実績を有していました。
②成果
日本創発グループは、470億円を投じてグラフィックグループ株式会社の株式の一部を取得、その後にグラフィックグループを消滅会社とする吸収合併が実施されました。
この合併で両社が保有する製造設備や、製造管理技術、印刷技術などの経営資源を融合発展し、グループの企業価値の一層の向上が図られました。
国外企業との提携|東洋製罐とWPI社・TPI社・TAS社(新設合併)
洪水被害からの復興を早めるため、海外で連結子会社3社の新設合併をした事例です。
- 親会社:東洋製罐
- 子会社:Well Pack Innovation Co., Ltd.(WPI社)+Toyo Pack International Co., Ltd.(TPI社)+Toyo Seikan Technical & Administration Service Center(Asia) Co., Ltd.(TAS社)
①業務提携の背景
東洋製罐の子会社があるタイでは、2012年に大洪水が発生、連結子会社であるWPI社、TPI社およびTAS社の3社も被害を受けました。
プラスチック製品の製造販売、飲料用ペットボトルの製造販売等を営んでいた3社は打撃を受けます。
そこで、子会社3社は迅速な復興を目指し、共通機能の集約化・経営資源の効率的な活用を目的に同3社を新設合併することになりました。
②成果
新会社への統合で効率的な事業運営が図られ、飲料用ペットボトルの製造販売および受託充填事業は活気を取り戻します。
タイ・周辺国における飲料市場の需要は堅調に推移、今後も成長の維持も見通しが立ちました。
2018年にはタイで90億円投じ新工場建設されることとなりました。
提携(業務提携・資本提携)に関する成功事例
こちらでは、国内および海外の提携に関する事例を取り上げます。
- エコナビスタ株式会社と東京ガス(資本提携)
- 武田薬品とノババックス・モデルナ(業務提携)
国内企業同士の提携|エコナビスタ株式会社と東京ガス(資本提携)
ガス・サービス充実を目的に、ガス会社が異業種の大学発ベンチャー企業と資本提携、その後子会社化した事例です。
- 当事者その1:エコナビスタ→目的:経営資金確保
- 当事者その2:東京ガス→目的:成長戦略のため
①資本提携の背景
ガス事業にとどまらない新事業の創出を目指す東京ガスでは、「ずっともプラン」というサービスを展開、「ずっともプラン」の拡大に向け、異業種との資本提携等へ力を入れてきました。
一方、エコナビスタは、ガスと無関係な睡眠解析技術を開発し、クラウド型高齢者見守りシステム等の提供を行う大学発ベンチャーです。
スタートアップ企業だけに、事業資金の確保を模索していました。
②成果
東京ガスは、エコナビスタの睡眠解析技術に関するノウハウの蓄積を高く評価して交渉を開始します。
そして、東京ガスはエコナビスタと資本提携後に子会社化しました。
エコナビスタは東京ガスの子会社化として、潤沢な資金確保に成功しました。
また、東京ガス側は新たな事業の創出の足掛かりを得て、そのシナジー効果の獲得に成功しました。
国外企業との提携|武田薬品とノババックス・モデルナ(業務提携)
新型コロナ禍の治療薬の開発を迅速に行うべく、アメリカ企業と業務提携をした事例です。
- 当事者:武田薬品+米ノババックス社・武田薬品+米モデルナ社
- 目的:新型コロナ・ワクチンの供給促進
①業務提携の背景
日本国内で新型コロナウイルスの大流行となり、感染者・重傷者が続出する中、ワクチンの大規模かつ迅速な製造・販売を目指した武田薬品は、2020年8月にアメリカのノババックス社からワクチン製造技術使用権を取得しました。
その後11月に、アメリカのモデルナ社と提携し、同社からもワクチンの供給を受けて製造販売が行われる予定です。
②成果
武田薬品はかねてより世界をリードする他企業と連携、新型コロナ治療薬の開発を推し進めてきました。
また、開発が順調なインフルワクチンと同じ製造技術等を落ち合わせ、この2つ海外企業との提携へ漕ぎつけることに成功しました。
武田薬品は山口県にある工場へ生産設備を準備、日本国内向けのワクチンの開発・製造、流通を速やかに行うことが予定されています。
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M&Aのスキームに関する注意点
こちらでは、M&Aのスキームの選択する場合の注意点とリスクの対策について解説します。
スキームを選んで多額の簿外債務に頭抱える
M&Aで選んだスキームによって交渉が捗ったものの、いざ経営統合の段階になって、多額の簿外債務が発覚したというケースもありえます。
買い手からすれば、予想していたシナジー効果とは程遠い現状が待ちかまえているかもしれません。
簿外債務とは、帳簿外にある債務で、貸借対照表に計上されない債務を意味します。
具体例をあげれば次の通りです。
- 従業員への未払いの残業代
- 買掛金
- 債務保証
- 機器等のリース債務
- 従業員への未払いの社会保険金
- 賞与引当金
- 退職給付引当金
- 顧客との間の訴訟リスク
など
このような債務は、M&A交渉の段階で発見できることが損失回避につながります。
この簿外債務を発見するため買い手の行う調査が「デューデリジェンス」です。
徹底したデューデリジェンスを行い、簿外債務を発見できたら買い手は次の方法が選べます。
- M&Aを中止:M&Aによって得られるメリットと簿外債務によるデメリットを比較検討、デメリットが大きいと感じたら、交渉から手を引く。
- スキームを変更:例えば株式譲渡では簿外債務を引き継ぐ事態となるが、事業譲渡ならその心配が無いと感じたらこちらのスキームへ変更を行う。
たとえM&A後に簿外債務が発覚しても、「表明保証」を契約書に明記していれば、自社に損失が出た場合、表明保証の内容を遂行します。
遂行内容として損害賠償請求・契約の解除等の請求が可能です。
M&Aを行う際に、買収相手の経営状況や金銭状況などをしっかりと確認しなければいけない。
自社がM&A未経験では圧倒的に不利となる場合も
自社がM&A交渉未経験で、相手方が相当の知識・ノウハウを持っていたら、やはり主導権を握られてしまいます。
M&A交渉が進むうちに、自社に不利な事態となることも十分考えられます。
そんなことの無いように、M&A交渉未経験ならばM&A仲介会社にサポートを依頼しましょう。
M&A仲介会社は、M&Aで豊富な知識・経験を有しているので、M&A交渉未経験の自社に有益なアドバイスをしてくれます。
自社の代理交渉を行ってくれるサービスもあり、M&A仲介会社の担当者と話し合いながら交渉を進められます。
ただし、M&A仲介会社は売り手・買い手に中立で利害調整するタイプ、どちらかと言えば依頼者の主張を代弁してくれるタイプと、サービスのスタイルが異なる場合もあります。
また、M&A仲介会社によって完全成功報酬制(つまりM&Aが成功しないと1円も受け取らない仕組み)か、着手金・月額報酬がかかる場合等、それぞれ異なる報酬体系となっています。
事前相談は大概無料なので、気に入ったM&A仲介会社を見つけたら、サポート内容・報酬について詳しく確認しておく必要があります。
M&A未経験なら、M&A仲介会社の力を借りるのが無難と言える。
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M&A スキーム|まとめ
M&Aのスキームはこれまで見てきたように、いろいろな種類があります。
スキームによっては、利益を最大化することが期待できます。
ご自身の企業の目的に合わせたM&Aのスキームを選ぶようにしましょう。
ただし、M&A未経験ではどんな手法が自社の現状にあうのか、よくわからない場合もあるはずです。
そんなときは、M&A仲介会社等へサポートを依頼し、そのアドバイスを活かしながら交渉に臨みましょう。
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