この記事は、上記のような疑問を持つ方におすすめです。
労働条件の管理をする上で外せない労務管理について、目的や仕事内容、求められる資格などを徹底的に解説します。
従業員の職場環境をより良いものにするため、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
- 労務管理とは「労働条件」の管理をすること(労働条件・休日・福利厚生・賞与など)
- 労務管理の目的は、人材の生産性を上げるため
- 労務管理に専門的なスキルは必須ではない
- 労務管理には経営者の視点が必要
複数の労務管理システムを比較して、自社に最適なシステムを知りたい方はこちらをご覧ください。
労務管理システム比較おすすめ16選【2023年最新】導入するメリット・デメリットも併せて徹底解説
目次
労務管理とは
労務管理とは、従業員の労働環境を整備する仕事です。
労働環境とひとくちに言っても、休日・休暇・福利厚生に始まり、健康・ハラスメントなど多くの分野の管理を求められます。
具体的な業務内容や、労務管理と似た業務との違いまで、見ていきましょう。
労務管理のキホン
労務管理を一言で表すと「より良い職場づくり」です。
従業員の勤務時間や福利厚生など、労働に関する事項を管理することを表しています。
具体的な業務項目は以下のとおりです。
- 労働時間
- 休日・休暇
- 給与・賞与・手当
- 福利厚生
- 健康
- ハラスメント
こうして見ると、業務の幅が実に多岐にわたっていることが分かります。
様々な観点から労働者の環境を見直す労務管理は、どの企業にも必要な仕事です。
労務管理・勤怠管理・人事管理の違い
3つの業務の違いについて、疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
同じ労働者を支える業務であっても、以下のような違いがあります(上から業務範囲の広い順)。
- 人事管理…人材への待遇などを含む、人事に関する業務を管理
- 労務管理…労使関係、労働条件を管理
- 勤怠管理…労働条件の中でも、特に労働時間や休日などを管理
人事管理
人材を効果的に統制・運用するため、人材に対しての体制を整えることを指します。
具体的な業務は、人材育成や人事評価、採用、退職などです。
3つの中では、最も業務の枠が大きいです。
労務管理
労使間の約束事や労働条件に関する制度を整えることを指します。
主に労働時間、休日、給与、福利厚生、健康、ハラスメント、保険、法律順守などの分野に関わります。
勤怠管理
労働条件の中でも、特に労働時間や日数などを管理することを指します。
具体的には、出勤・退勤時刻、欠勤・遅刻、休日取得などの管理を行います。
3つの中では、最も範囲が狭いです。
労務管理の具体的な業務
従業員の労働環境を整備するために、どのような管理が求められるのでしょうか。
基本的には以下の4つの軸をもとに、契約内容を管理します。
- 労働期間
- 労働時間
- 労働の対価
- 業務内容
それでは幅広い業務について、具体的な内容をご紹介していきます。
具体的な業務14種類
労務管理を担当する人には、以下のような業務が任されます。
- 法定三帳簿の作成
- 雇用契約書の作成
- 労使関係管理
- 勤怠管理・労働時間管理
- 給与計算
- 福利厚生管理
- 安全衛生管理
- 就業規則管理・作成
- 業務改善
- 社会保険や雇用保険の加入手続き
- 健康管理
- ハラスメント対策
- 退職手続き
- 休職・異動手続き
ただ内容は企業によって異なり、これらがすべて任されるとは限りません。
細部は企業に確認をとる必要があります。
法定三帳簿の作成について
法定三帳簿とは何か、疑問を持つ人もいるかもしれません。
法定三帳簿は労務管理の基本です。
「労働者名簿」「賃金台帳」「出席簿」の3つから成っています。
労働者を一人でも雇用している場合、企業はこれらを作成・保管する義務があります。
労働者名簿(労働基準法107条)
労働者名簿とは、労働者ひとりひとりの情報をまとめたものです。
氏名や生年月日などの個人情報が該当します。
この名簿の保存期間は3年であり、退職・解雇・死亡の日が起算日として取り決められています。
賃金台帳(労働基準法108条)
賃金台帳は、労働者ひとりひとりの賃金についての情報をまとめたものです。
労働時間や給与の支払い額、税金の控除額などを記載します。
保存期間は3年で、最後の賃金について記載した日が起算日です。
出席簿(労働基準法108条則54条)
出席簿は、従業員の出退勤についての情報をまとめたものです。
タイムカードの記録、労働日数、労働時間などを記載します。
保存期間は3年で、最後の出勤日が起算日となります。
雇用契約書の作成について
雇用契約書とは、企業と従業員が労働条件をもとに契約を結んだことの証明となる書類です。
作成するタイミングは、入社(契約)時、または契約更改時期と定められています。
主に記載する内容は、以下の項目です。
- 雇用形態
- 雇用期間
- 就業場所
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 賃金
- 支払日
- 退職
- 賞与・退職金
- 昇給
これらも労務管理の業務の一環です。
労務管理の目的
上記のような煩雑な活動を行う意義はどこにあるでしょうか。
労務管理の目的は、人材の生産性の向上です。
企業が所有する財産はヒト、モノ、カネ…と様々ありますが、「ヒト」に関する業務はどの企業においても優先度が高いです。
従業員が安心して働ける環境をつくるため、労働環境を適切な状態に維持することが、企業活動の質を高めることに貢献します。
労務管理に必要な知識・スキル
多くの項目に対して管理が求められる労務管理に、特別なスキルは必要なのでしょうか。
ここでは必要な知識とその学び方を解説しています。
労務管理に高度なスキルは必要ない
結論から言うと、現在は労務管理に高度かつ専門的なスキルは必須ではありません。
以前は膨大な知識が必要とされていたものの、労務管理システムなどの普及が進み、その必要性が薄れたためです。
最低限のITリテラシーがあれば、誰でも業務を担当することができます。
それでも、労務管理を担う人に必要な視点はあります。
それは「経営者に近い視点で物事を見通す力」。
適切に業務を遂行し、労働者や社会から信頼を得るために、必要な能力です。
労務管理に求められる視点
先述したとおり、労務管理には「経営者に近い視点で物事を見通す視点」が求められます。
具体的な内容は、以下のとおりです。
- 人件費を抑える
- 利益を増やす
- 労働者のモチベーションを高める
- 働きやすい環境を整える
- 課題は何か
これらはどれも長期的な視点で、すぐに身につくものではないかもしれません。
労務管理に役立つ資格
これらの力に直結するわけではありませんが、資格を取得することももちろん可能です。
ビジネス・キャリア検定試験(ビジキャリ)
労務管理に役立つ資格のひとつに「ビジネス・キャリア検定試験(ビジキャリ)」というものがあります。
厚生労働省が設定した職業能力開発基準に沿っており、年2回、47都道府県すべてで試験を受けることが可能です。
評価されるのは、以下の8分野です。
- 人事・人材開発・労務管理
- 経理・財務管理
- 営業・マーケティング
- 生産管理
- 企業法務・総務
- ロジスティクス
- 経営情報システム
- 経営戦略
難易度は以下の4つです。
- BASIC級(人事・人材開発・労務管理にはなし)
- 3級
- 2級
- 1級
労務管理士
労務管理士の資格をとることも選択肢のひとつです。
こちらもビジキャリと同様に民間資格で、取得により客観的な評価をもらえるというメリットがあります。
資格取得方法は次の4つです。
- 公開認定講座
- 通信講座
- 書類審査
- Web資格認定講座
労務管理の課題と解決法
労務管理には、大きく分けて3つの課題があるといわれています。
これらは「想定外の事態」や「未整備の項目」への対応不足によって顕在化しているため、多様なパターンを想定しておく必要があります。
雇用形態の多様化
働き方改革が進む中、在宅勤務や時短勤務、副業・兼業などが浸透し始めました。
また非正規雇用や業務契約などの形をとる企業も増えてきています。
以前の方法で労務管理を行っていれば、これらの多様化には対応できません。
特に次の2つの課題を見直すことが求められます。
- 就業規則の整備
- 正規雇用・非正規雇用間の平等
勤務時間の管理
不当な労働条件や過労死などが問題になり、現在働き方改革が進んでいます。
そこで勤務時間管理を徹底することが、より企業に求められることとなりました。
特に注意すべき課題を3つご紹介します。
- 時間外労働や残業時間の把握
- 有給休暇の消化率
- コンプライアンス徹底
テレワークへの対応
働き方改革やコロナ渦の影響で、リモートワークや在宅勤務の受け入れが進みました。
リモート勤務には出社の必要がなく時間を有効活用できるというメリットがあるものの、問題も存在します。
特に次の3つが課題として挙げられます。
- 労働状況の可視化
- リモート体制への移行
- 部署間での平等
これらに対する対策は、大きく分けて3つ考えられます。
- 法改正に関する知識を定期的に更新すること
- 規則を定期的に見直すこと
- 社内の課題を把握すること
効率的な業務を行うために、「労務管理システム」を利用することもおすすめです。
おすすめの労務管理システム
労務管理を効率的に進めるためには、ITシステムを利用することがおすすめです。
こちらのシステムを導入するには費用が必要ですが、この投資が企業の課題解決につながる場合もあります。
労務管理システムのメリット
法改正や時代に合った就業規則に対応できる
頻繁に起こる法改正に対応できるのが導入メリットのひとつです。
近年は男女雇用機会均等法の改正や育児介護休業法、女性活躍推進法の行動計画提出の要求など、ジェンダーと関わる法改正も多くあります。
また価値観の多様化や少子高齢化社会への移行など、時代は著しく変化します。
最新の法や若い世代に対応した規則にするのには、メンテナンスが可能な労務管理システムの導入が便利です。
場所を選ばず入力できるため、テレワークにも対応できます。
業務の効率化
申請の作業は、従業員にとっても煩雑でわかりにくい場合が多いです。
多くの書類を埋めるのに、デジタルであることは効率化に寄与することがあります。
従業員にも役立つほか、管理を担当する方の業務負担を軽減する働きが生まれます。
セキュリティ強化
打刻漏れや不正打刻に悩んだことはありませんか。
労務管理システムを導入することで、これらの問題を解決することができます。
バージョンアップが無料で行われるシステムもあり、最新のスパムやセキュリティホールへの対応を随時行うことができます。
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出典:freee人事労務
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まとめ
労務管理は、労働環境を管理することで、人材の質をも左右する重要な業務です。
非常に煩雑な業務が多いですが、基盤をきっちりと固めることで、業務の生産性の向上に大きく寄与します。
労務管理について知り、企業の活性化を図ってみませんか。