上記の様なお悩みを持つ中小企業の経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
少子高齢化による後継者不足や労働人口の減少の影響で、中小企業によるM&Aの件数は年々増加しています。
本記事では、中小企業のm&aの現状と今後の予測、用いられる手法、中小企業のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。
目次
中小企業のM&Aの現状と今後の予測
まずは日本のおける中小企業のM&Aの現状と今後の予測について解説していきます。
中小企業の定義
中小企業のM&Aの現状と今後の見通しについて知るためには、前提としてどのような企業を中小企業としているのか知ることが重要です。
中小企業法基本法では、資本金と従業員の数を基準として、中小企業者の範囲と小規模企業者の範囲を以下のように定めています。
業種 | 中小企業 | 小規模事業者 |
製造業、建設業、運輸業、その他 | ・資本金額または出資総額が3億円以下 ・常時使用する従業員が300人以下 |
・常時使用する従業員が20人以下 |
卸売業 | ・資本金額または出資総額が1億円以下 ・常時使用する従業員が100人以下 |
・常時使用する従業員が5人以下 |
サービス業 | ・資本金額または出資総額が5,000万円以下 ・常時使用する従業員が100人以下 |
・常時使用する従業員が5人以下 |
小売業 | ・資本金額または出資総額が5,000万円以下 ・常時使用する従業員が50人以下 |
・常時使用する従業員が5人以下 |
一方で、税法上は、資本金額1億円以下の法人を中小企業者として扱っています。
中小企業のM&Aの場合、基本的には上記の中小企業法基本法で分類されている「中小企業」「小規模事業者」にあたる企業を指しているのが通常です。
中小企業のM&A事例は現在増加傾向にある
中小企業庁が発表している「過去のM&A件数の推移」に関するデータによると、M&Aの件数は近年増加傾向であることがわかりました。
2019年には日本ではじめて4,000件を超えており、過去最高の数字を記録しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、2020年は前年度よりも件数は少なくなったものの、それでも3,730件と5年前と比べると約1.5倍近い数字です。
出典:令和 4 年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について |独立行政法人中小企業基盤整備機構機構
また、独立行政法人中小企業基盤整備機構機構が行った令和4年度の調査によると、全国の事業承継・引継ぎ支援センターに中小企業がM&Aに関する相談や依頼をしている件数が、過去最高の数字を記録したこともわかっています。
上記データはあくまでも公表されている数字ですが、小規模のものや非公開のものが一定数存在することを考慮すると、日本におけるM&Aの件数は今後より増加していくことが推察可能です。
中小企業のM&Aの今後の予測
ここまで中小企業のM&Aの現状について見てきましたが、それでは今後の中小企業のM&Aはどのような動きを見せていくと考えられるでしょうか?
全体的に見ると、現在の増加傾向は今後も数年間は継続していくと考えられます。後述で解説するように中小企業がM&Aに積極的なのは「後継者不足」や「人手不足」などが主な理由です。
こういった問題を解決するために、今後も国内の企業同士によるM&Aは積極的に行われるでしょう。
また、企業の国際化も驚くべきスピードで進んでいる現代社会においては、海外に拠点を得るために国内企業から海外企業へのM&Aの利用が増えていくことが予想できます。
中小企業においては、労働者人口の減少や少子高齢化の影響から、後継者不足や人材不足、そして事業承継の問題が深刻化していく可能性が高いです。
このような問題を解決するために、事業承継を目的としたM&Aが日本国内だけではなく海外企業との間でも活発に行われるでしょう。
中小企業のM&Aが増加している3つの理由
中小企業のM&Aが増加している3つの理由は以下のとおりです。
それぞれの理由について、以下で詳しく解説します。
1.少子高齢化による後継者不足
「団塊の世代」と呼ばれた人たちの多くが後期高齢者に達したことで、事業承継の課題が日本ではより一層深刻化しています。
帝国データバンクが行った調査によると、2023年における全国の後継者不在率は過去最低の53.9%(全国「社長年齢」分析調査(2023年)であることがわかりました。
社長の平均年齢は60.5歳であり、33年連続で上昇しています。中小企業の円滑な事業承継には準備と時間が必要ですが、その一方で少子高齢化の影響により後継者不足の状況が続いているのは長年変わっていません。
経営者の交代が間に合わず、事業承継に影響を及ぼすケースも今後増加する可能性があります。こういった理由から、後継者不足の解消の1手段としてM&Aを行う中小企業が増えているのです。
2.親族内承継の減少
少子化の影響によって、地方を中心とした中小企業の多くでは「親族内承継の減少」も問題となっています。
帝国データバンクが行った調査では、事業を継ぐ親族がいない影響で、60歳以上の経営者のうち60%超が将来的な廃業を予定。このうち「後継者難」を理由とする廃業が約3割となっています。
これまでのように自分の親族に事業を継承するということも難しくなっている影響で、M&Aという選択肢を選ぶ中小企業も増えています。
3.人口減少による国内市場の縮小化
人口減少によって日本国内市場の縮小化という問題にも、近年多くの中小企業が直面しています。
縮小する市場に対して、経営のスリム化や統廃合、新規事業への参入やシェア拡大など、中小企業が直面しているさまざまな問題を解決する手段として「M&A」という選択をする企業も増えました。
こういった中小企業が抱えているさまざまな問題や経営上の課題を迅速かつ効果的に解決する手段として、近年多くの中小企業がM&Aを選択するようになったのです。
中小企業がM&Aを行う7つの目的
中小企業がM&Aを行う目的として次の7つが挙げられます。
それぞれの目的について、以下で詳しく解説していきます。
1.後継者問題の解決
近年、多くの中小企業では少子高齢化の影響により、後継者不足が深刻化しています。
もしも後継者が存在しないまま、経営者が経営を退いてしまった場合その企業は廃業を選ぶほかありません。そうなると、従業員の雇用解除や取引先への多大なる影響が懸念されます。
一方で、仮に後継者が見つかった場合でも、企業の株式の承継手続きや税金面での負担がネックとなってしまい、事業承継を諦めてしまうケースも少なくありません。
このような背景があり、会社を持続可能な形で存続するための手段として、M&Aを積極的に実施する中小企業が増えているのです。
2.事業の将来性に見通しが立たない
中小企業や小規模事業者の多くは、市場の急速な変動や景気の動向などによって大きく左右されます。
例えば、エネルギー価格の高騰によって仕入れ価格が従来よりも高くなってしまい、その結果中小企業に大きな影響が出てしまうなどがわかりやすい例と言えるでしょう。
特に国際情勢や市場が不安定な状況で事業を続けるのは非常に難しく、将来性に見通しが立たないことから大手企業の傘下に入って安定した形での会社運営を進めたい、という経営者も少なくありません。
このような中小企業や小規模事業者の問題を解決する目的として、M&Aを活用するケースも増えています。
3.廃業の回避
中小企業が廃業や清算のリスクを回避する目的でM&Aを利用するというケースも多いです。
特に、廃業や清算ではなく会社の債権を考えている場合や将来的なことを考えて清算したくないという思いから、M&Aを選択する経営者も少なくありません。
例えば、業績が悪化している部門のみを切り離したり、大手の企業に買収されるという形で会社を存続させる方法を選ぶケースが考えられます。
4.経営者の引退後の生活のため
中小企業の経営者が高齢化していることによって、特に経営者が老後資金を確保するためにM&Aを利用して会社を売却する場合もあります。
多くの中小企業では、経営者が自社の株式を100%保有しているということも珍しくありません。
このような企業の場合、M&Aを行うことによって経営者が老後のための資金を得ることができます。
5.個人保証から逃れたい
中小企業の経営者が資金調達を行うための手段として、会社に対して個人保証をつけて銀行などの金融機関から融資を受けるというケースも多いです。
仮にM&Aを行った場合、会社の財産移転が生じることによって、経営者の個人保証も解除されます。個人保証から解除されることによって、経営者やその家族は安心して日常生活を送ることが可能です。
このような個人故障から逃れるためのM&Aというのも、多くの中小企業で行われています。
6.会社を大きくしたい
買収側としてM&Aを行う中小企業の場合、より自社の事業を拡大するための手段として活用するケースが多いです。
M&Aを実施することによって、自社にはない技術や新たな販売経路の開拓、買収する企業の優秀な人材などを自社で育てるよりもはるかに短い期間で得ることができます。
その他にも、M&Aを実施することによって次のようなメリットも期待できるでしょう。
- 自社の弱い部分を補填
- 新規エリア参入のための足がかり
- 売り手企業の取引先を新たに確保する
- 事業の多角化やスムーズな新規事業への参入
仮に自社で上記のようなことを行おうとした場合、金銭的にも時間的にもコストがかかり、必要な人材を育成するためにもノウハウが必要になります。
もちろんM&Aを行うにも費用や手間暇などでコストは必要になりますが、上記のメリットをまとめて得られるので、会社をスムーズに拡大することが可能です。
7.従業員の雇用を維持するため
廃業や清算を行う場合、経営者にとって悩みの種となるのが従業員の雇用についてです。中小企業の経営者の中には、一緒に働いてきた従業員を家族同然のように考えている人も多いでしょう。
廃業や清算を選んだ場合、従業員だけではなくその家族も路頭に迷わせてしまう可能性があります。
しかし、廃業や清算ではなくM&Aを実施することによって、従業員の雇用を守ることが可能です。
多くの中小企業のM&Aでは、基本的に株式譲渡という形で手続きが行われます。その場合、既存の雇用契約も自動的に買収した企業へ引き継がれるのが通常です。安定した経営の企業に買収してもらえれば、雇用を維持するだけではなく、それまでよりも従業員の待遇が良くなる場合もあるでしょう。
一方で、買収側の企業にとっても優秀な人材を確保できるので、双方にとってメリットが大きい選択肢と言えます。
中小企業がM&Aを行う際の流れ
中小企業がM&Aを行う際の流れは以下のとおりです。
中小企業のM&Aの実際の流れや手順について、具体的にどのようなことが行われているのか、以下で詳しく見ていきましょう。
1.M&Aの意思確認・戦略の策定
まずは、M&Aを行うかどうかの意思確認と企業としてどのように手続きを進めていくか戦略の策定を行います。
この段階で行わなければならないのは、現時点における自社の問題や課題、M&Aの方向性や目標などを定めることです。
仮に、自社で対処できる問題や課題などを解決するためにM&Aを検討していたり、曖昧な理由でM&Aを進めていようとしていたりしていないか検討した上で、本当に企業として行うべきなのか最終的な意思決定を行う必要があります。
企業としてM&Aをする意思決定をしたら、次に戦略の策定を行いましょう。基本的に戦略策定の詳細はM&Aのアドバイザーと決定しますが、まずは自社内でもある程度戦略を決めておくことが重要です。
2.中小企業M&Aの専門家に相談
中小企業としてM&Aの手続きをすることを決定した場合、次に専門家に相談しましょう。
相談すべき内容は買収なのかそれとも売却側なのかによって異なりますが、少なくともM&Aの相手となる企業の選定基準や手続きを行う目的、メリットやデメリットなどの相談をして明確にしておくことが重要です。
3.M&A専門家との各種契約
中小企業のM&Aの専門家に相談して、手続きを進めることに納得ができた場合は契約を行います。
基本的にこの段階で結ぶ専門家との契約は、秘密保持契約とアドバイザリー契約の2つです。それぞれの契約の具体的な内容については、以下のとおりとなっています。
- 秘密保持契約…M&Aの方向性が決まった後に、企業としての機密情報を守るために結ばれる契約のこと。特にM&Aの専門家との間で契約を結ぶ場合、秘密保持契約の対象となりうる内容や期間、秘密保持の義務を負う人物、情報漏洩があった場合の損害賠償の可否、調査権限や裁判所の管轄などについて定めます。
- アドバイザリー契約…アドバイザリー契約とは、専門家との間で結ぶ業務の範囲や報酬、直接交渉の禁止などについて定める契約のこと。
4.M&A戦略の決定・売却先選定
M&Aを依頼する専門家が決まった後は、その人を交えて具体的な戦略の決定や買収・売却先の選定などを行います。
買収や売却先の候補となる企業の選定に関しては、専門家の意見をもとに会社名が匿名になっている企業概要書などを元にして行うのが通常です。
会社名が匿名になっている資料のことをノンネーム資料と言って、基本的には専門家が所属しているM&Aの仲介会社から提供されます。
この資料には、具体的な企業名までは特定するのが難しいものの、業種や規模、企業のエリアや収益、買収や売却を希望する理由などが記載されています。資料の情報をもとに売却先の候補となる企業を選定し、自社にとって有益となる取引になりそうかどうか検討しましょう。
5.M&Aを打診する
ノンネーム資料をもとに具体的に買い手の候補を絞ったら、実際にM&Aの打診を相手の企業に行います。
仮に詳細情報を求められた場合は、相手先の企業との間で秘密保持契約を結んで情報を開示しましょう。
6.企業のトップによる交渉
相手先の企業の意志が固まって具体的に買収を検討する段階になると、次は企業のトップ同士による交渉の場が設けられます。
この交渉の場では、買収企業と売却側の企業のトップ同士が直接顔を合わせて話し合いをする貴重な機会であり、具体的には次のような話をするのが通常です。
- M&Aを決意した経緯
- 経営ビジョン
- 今後の経営方針
- 社風や会社の特徴
- 会談をとおして経営者の人物像も見極める
7.意向表明書の提示
意向表明書とは、買収や売却の方法、具体的な価格などの条件が記載されている書面のことです。
基本的には買収側のM&Aの意向を売却側に示すものとなるのですが、あらゆるM&Aの実務において必須となっているものではないので省略される場合もあります。
8.基本合意書の締結
基本合意書とは、買収や売却の条件・企業間での独占交渉権・守秘義務・誠実交渉義務・以降の手続きのスケジュール概略などが記載されています。
もっとも、あくまでも合意内容を確認する書類という位置づけとなっており、基本合意書に関しては法的拘束力というのはありません。ただし、例外的に次のような条項に関しては法的拘束力を持たせます。
- 独占交渉権
- 売り手のデューデリジェンスへの協力義務
- 守秘義務
9.デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、基本合意書締結後に買収企業が売却側の企業の実態を把握するために行う調査のことを指します。
具体的には、M&Aの専門家や弁護士などが売却側の企業に訪問して、過去の帳簿をチェックしたり、書面だけでは把握できない会社の実態をチェックしたりする手続きのことです。
なお、デューデリジェンスを行う場合、専門家や弁護士などに支払わなければならない手数料などは、全て買収側が負担するのが通常です。
10.条件交渉と最終契約の締結
仮に、デューデリジェンスを行ってM&Aの手続きを中止しなければならない状況に陥らない限り、買収側の企業と売却側の企業との間で最終合意に向けた条件交渉を行います。
基本的に条件交渉で行うのは、M&Aの売買条件の他に、経営者や役員、従業員などの処遇や最終契約までのスケジュールを詰めるのが一般的です。
両企業が条件などに合意した場合、最終契約の締結を行います。最終契約書の内容には、M&Aにおける売買価格や譲渡の内容などを記載するのが通常です。
また、最終契約を結ぶためには、株主総会や取締役会などが必要になる場合もあるので注意しましょう。
11.クロージング
両企業が最終契約を結んだ場合、売却側の企業は買収側の企業からM&Aの代金を受け取ります。その後に、最終的な手続きを行えば契約完了です。
残っている手続きとしては、売却側の代表が個人的な目的で購入した資産の取り扱いや、株券の引き渡し作業、会社代表印の引き渡しなどが挙げられます。
この最終的な細かい手続きがクロージングです。
12.経営統合
M&Aの手続きを進める上で、もっとも重要なものの1つがこの経営統合の段階です。基本的にM&Aが成立したからといって安心できるわけではなく、経営統合してからがようやくスタートとなります。
まずは、経営陣が経営統合の基本方針やこれからの経営方針、M&Aによって生まれる相乗効果などの説明を行った上で、従業員同士の連携や業務方法の連携などをすり合わせなければいけません。
仮にこの経営統合がうまくいかなかった場合、せっかくM&Aを進めたとしても失敗に終わってしまう可能性があります。
中小企業がM&Aを行う場合の手法
M&Aをスムーズに進めるためには、適切な手法を選択する必要があります。自社にとって最適な手段はどれなのかを知るためには、専門家に相談するのがおすすめです。
M&Aには、主に次の5つの手法があり、それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
M&Aの手法 | メリット | デメリット |
株式譲渡 | ・短期間での完了が可能 ・自社・事業が存続できる(売り手) ・許認可の再取得が不要(買い手 |
・資産だけでなく負債も引き継ぐ(買い手) ・簿外債務・偶発債務のリスクがある(買い手) ・多額の資金が必要(買い手) |
事業譲渡 | ・短期間での完了が可能 ・自社の事業が存続できる(売り手) ・許認可の再取得が不要(買い手) |
・手続きが煩雑なため時間がかかる ・権利や許認可が引き継げない(買い手) ・競業避止義務が課される(売り手) |
会社分割 | ・許認可を再取得する必要がない ・資金がなくても手続きを進められる |
・資産だけでなく負債も引き継ぐ(買い手) ・簿外債務・偶発債務によるリスクがある(買い手) |
株式交換 | ・資金がなくても実行できる(買い手) ・実施後も別法人として存続するため経営統合を急がなくてもいい ・適格要件を満たせば税制優遇が受けられる |
・株価が下落する可能性がある ・株主構成が変わってしまう(買い手) ・手続きが煩雑で日数がかかってしまう |
株式移転 | ・資金がなくても実行できる(買い手) ・実施後も別法人として存続するため経営統合を急がなくてもよい ・適格要件を満たせば税制優遇が受けられる |
・株価が下落するリスクがある ・株主構成が変わる(買い手) ・手続きが煩雑で日数がかかる |
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中小企業がM&Aを成功させるための7つのポイント
中小企業がM&Aを成功させるための7つのポイントは以下のとおりです。
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
1.売却側企業に及ぼす影響を検討する
中小企業がM&Aを成功させるためには、まず売却側の企業に及ぼす影響を検討しましょう。M&Aを行うにあたって、影響を及ぼす可能性のある関係者は以下の通りです。
- 株主
- 取引先
- 従業員
- 親族
- 金融機関
それぞれの関係者に対してどのような影響を及ぼすのかをしっかり検討して、反対などが起きないようにしかるべき対策案を考えておくことが重要です。それぞれの関係者に、どのような影響があるのか以下で詳しく解説します。
株主
株主にとってM&Aは非常に重要な問題です。株主がそれまで受けていた経済的利益を受ける権利や、経営に関与できる権利などを失ってしまう可能性があります。
取引先
中小企業の場合、経営者と個人的なつながりから取引をしている会社もあるでしょう。そのようなケースで経営者がM&Aにより変わってしまうと、取引先から取引の終了や停止を言い渡されてしまう可能性があります。そのため、経営者と個人的な関係から取引をしている会社がある場合、M&Aの手続きを進める際に必ずどのような対応をするか決めておく必要があります。
従業員
中小企業の多くは、経営者と従業員の間が密接な関係になっているという場合も多いです。従業員の中には、経営者が変わると聞いて不安を感じたり、経営者の代わるタイミングでやめてしまったりといった判断をする場合もあります。またM&Aによって会社をクビになるのではという不安を感じる方も少なくないので、手続きを進める上では必ず従業員に対してしっかり説明する必要があるでしょう。
親族
中小企業では、家族が会社の役員や従業員になっているケースも多いです。そのような場合、M&Aによって自分の役職や仕事がなくなってしまうのではと不安を感じます。M&Aによって親族や近親者の扱いをどのようにするのかについても、必ず決める必要があるでしょう。
金融機関
融資取引のある銀行にとって、取引先の経営者が誰かというのは融資の判断をする上で非常に重要な問題となります。将来的に融資が回収できるかどうか、新たな経営者が信用できる人物かどうかなど、場合によっては融資取引の判断を迫られる可能性もあるでしょう。また、会社の借入に対して個人保証をつけている場合、個人保証の解除手続きも必要となります。
2.議決権の確保
会社を売却するためのM&Aに関しては、株主が保有している議決権の2/3以上の賛成が得られなければ実現しません。
このM&Aの成否に関わる議決権の確保に関しては、会社によって株主構成が様々なパターンに分かれることが考えられるので注意しましょう。例えば、オーナー経営者だけではなく配偶者や子供、その他の親族や親族以外の役員、従業員などが株主になっているケースもあります。
特に先代からの相続などで成り行きのまま株式を保有している人にとっては、会社に対するコミットが薄いため想定外の行動をとる可能性も高いです。
そのためM&Aを着手するにあたっては、あらかじめ株主構成を見直して、議決権の確保ができるように分散した株式を集約するなどの対策を行うことが必要となります。
3.利害関係者の把握と調整を行う
中小企業がM&Aを成功させる上で、利害関係者の把握や調整などは欠かせません。
M&Aを迅速に進めるためにも、まずは自社の利害関係者を把握した上で、どのような調整を行っていくべきなのか検討しておくと良いでしょう。
なお、利害関係者とは「株主・取引先・役員・従業員・金融機関」などが挙げられます。この中でも株主は直接的な利害が絡むので、議決権の確保の観点からも手続き前から慎重に対策を行わなければいけません。
仮に持分比率の高い株主がM&Aに反対してしまった場合、取引そのものが頓挫してしまう可能性もあります。手続きを行う前の段階で、どの株主がどれくらいの持分比率を保有しているのか調査して、M&Aの手続きに反対しそうな人物が存在しないか必ず見極めておきましょう。
また、従業員に関しては、経営者や会社の環境が変わることに対して大きな不安を覚えること間違いありません。そこで、買収側・売却側ともにM&Aの事実を従業員に対して伝える際には、必ず両方の企業のトップが同席して、納得がいく説明を直接行うなど安心して働けるようにフォローすることが重要です。
さらには、従業員に対する発表に先立って、幹部社員や役員などに先に知らせておくなど根回しをしておくことも必要となります。M&Aはビジネスにおいて有効な選択肢の一つですが、企業の中で働く従業員の心情を考慮して、伝える段取りなどもしっかりと計画してから手続きを進めましょう。
また、取引先や金融機関などに対しても、継続して取引が行えるように十分に説明できる体制を整える必要があります。
4.適正な売却価格を知る
自社の適切な売却価格がどれくらいなのか、あらかじめ知っておくこともM&Aをスムーズに進めるためには重要なポイントです。基本的には、会社の時価純資産と数年分の営業利益を出した合計額で、大まかな売却価格を算出できます。
もっとも、正確な自社の適正売却価格がどれくらいなのか求めるためには専門的な知識が必要です。そのため、M&A仲介会社などの専門家に相談して、具体的な価格を算出してもらうと良いでしょう。
5.M&Aの戦略をあらかじめ決めておく
M&Aをスムーズに進めるためには、具体的な戦略をあらかじめ決めておくことも重要です。具体的には、希望取引額や相手企業の業種・規模などを事前に検討する必要があります。
あらかじめM&Aの戦略を細かく決めていない場合、買収や売却可能性のある企業に対して手当たり次第に打診をしてしまい、効果的な手続きを行うことができなくなるだけではなく、譲渡の価格も下がってしまう可能性があるのです。
このような最悪の事態を避けるためにも、自社の目的に沿ったM&A戦略をあらかじめ決めておく必要があります。
6.会社のアピールポイントを洗い出す
M&Aで買収側となる企業は、基本的に経営統合をした後にシナジー効果があるかどうか、メリットがあるかどうかなどによって手続きを進めるか決定します。
従って、会社のブランド力や製品の質が高いなど、経営統合後にシナジー効果を見込める場合よりスムーズに交渉を進めることが可能です。
基本的に、買収側の企業がメリットがなければ手続きを行いません。そのため、M&Aを成功させるためには自社の強みやアピールポイントを洗い出して、効果的に相手に訴求することも重要となります。
7.情報管理を徹底する
M&Aを成功させるためには、何よりも情報管理を徹底させることが重要です。
M&Aの成功の秘訣は「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」とも言われており、情報の取り扱いを行う際には最新の注意が必要となります。仮にM&Aの交渉を行っている際に、何らかの要因で情報が外部に漏れてしまうことになると、M&Aの手続き自体が破談に終わってしまいます。
さらに、破談に終わるだけでは済まず、買収側・売却側の取引先に対する影響や、インサイダー取引が疑われることによる企業経営の深刻なダメージなども考慮しなければいけません。そのような事態を防ぐためには、まずM&Aの情報管理を決定して行い、社内でプロジェクトに関わるメンバーを厳選する必要があるでしょう。
最小限の人数によって極秘で進めることにより、情報漏洩などが起きずにM&Aを成功させることができます。
M&Aを成功させるには無料見積もりサービスを利用するのがおすすめ
中小企業がM&Aを成功させる最大のポイントは、まず無料見積もりサービスを利用して自社の価値というのを正確に把握することです。
中小企業のM&Aに関しては、経営者が個人で交渉を進めてしまうことも少なくありません。しかしこのようなケースは、基本的に失敗に終わってしまうことがほとんどです。
M&Aは、専門家による正しいアドバイスと豊富な知識や経験による交渉に基づいて、時間をかけて行わなければ成功しません。
まずは無料見積もりサービスを利用して、自社の価値を正確に把握してから、中小企業のM&Aに強い専門家に相談しましょう。
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中小企業のM&A成功事例5選
ここでは、中小企業のM&A事例をご紹介します。
1.COMBOによるテクノモバイルへの会社売却
売却企業の特徴
COMBOは、VRやARなどの開発を得意としている会社でした。
買収企業の特徴
テクノモバイルは、Webシステムやモバイルアプリなどの開発を主力事業として行なっている企業です。
M&Aの目的や背景
売却企業であるCOMBOは、株式譲渡の方法を利用して、テクノモバイルに対して会社の売却を行いました。このM&Aによって、COMBOはテクノモバイルに対して約90%の株式を譲渡しています。
なお、会社売却手続きの終了後、売却企業と買収企業はシステム開発の業務における連携体制を確立しているのがこのM&Aの特徴です。
参考:VR/AR開発に強みをもつIT企業をテクノモバイルに譲渡|PRTIMES
2.コウイクスによるSDアドバイザーズへの株式譲渡
売却企業の特徴
売却企業であるコウイクスは、システム開発やインフラ構築のサービスを提供しているIT関連の企業です。
買収企業の特徴
買収企業であるSDアドバイザーズは、金融分野に特化したシステム開発や支援を主力事業としている企業です。
M&Aの目的や背景
売却企業は、社外への事業承継を目的としてM&Aによる会社の売却を決断しました。基本的には社内で事業を引き継ぐ予定でしたが、社内承継が困難になったことからM&Aによる売却を行っています。
一方で、買収企業は金融システム以外の分野にも新規参入するため、売却企業の買収を決断しました。
このM&Aでは、株式譲渡の手法を採用して会社売却が行われています。売却企業が買収企業の参加となったことにより、売却企業は業務の効率化やデジタル化などの導入をスムーズに行うことに成功しました。
参考:株式会社コウイクスの事業承継及び資本業務提携のお知らせ
3.ミチによる丸井織物への事業売却
売却企業の特徴
売却 企業は、 ネイルチップの販売サイトなどを運営しているミチです。
買収企業の特徴
買収企業は、石川県に本社を置いている織物メーカーの丸井織物 という企業です。
M&Aの目的や背景
売却事業は、自社の事業を選択・集中するための目的で事業売却を行いました。 一方で、 買収企業は、 M & A を行う前からデジタルマーケティングを行っている 子会社を所有しています。
売却 企業が ネイルチップの販売サイトなどを運営していたことから、 各種 EC サイトに関するノウハウ などを有しており、 シナジー効果を期待して M & A を決断していました。
この M & A では、 事業譲渡 の手法を採用して手続きが行われています。 M & A が完了してから、丸井織物は売却 企業に対して コストを削減する施策を導入しました。
その結果、 短期間で利益率を大幅に伸ばすことに成功しています。また、 売却 側の企業の経営者は、 M & A をきっかけとして新規事業を始めつつ、 買収企業の ネイル 事業にも積極的に協力して シナジー効果が生まれています。
4.森塗装工業株式会社の三和建設株式会社への譲渡
売却 企業の特徴
森塗装工業株式会社は、塗装工事を主に行っている会社です。
買収企業の特徴
三和建設会社は、建設業を主に展開している事業会社です。
M & A の目的や背景
森塗装工業株式会社は、 創業以来塗装工事を 主力事業として手がけていた会社でした。しかし、 事業承継に問題を抱えており 後継者に頭を悩ませていたそうです。
一方で、三和 建設会社は建設業が順調な一方で、 自社の技術やサービス向上による競争力強化が求められていました。 そこで 自社の弱みを補うために、 M & A で森塗装工業株式会社の買収を決断しました。
M & A は株式の取得によって手続きが進められ、森塗装工業 株式会社は三和建設の完全子会社となっています。
参考:【バトンズ成約事例】創業50年以上続く森塗装工業、三和建設がM&A
5.洋菓子のヒロタによるあわ家惣兵衛の買収
売却企業の特徴
あわ家惣兵衛は、和菓子製造を主に行っている会社です。
買収企業の特徴
洋菓子のヒロタは、洋菓子を中心に販売しているお菓子メーカーです。
M & A の目的や背景
洋菓子のヒロタは主に洋菓子を中心に販売している会社でしたが、M&Aを行うことでシナジー効果を生みブランド力強化を狙いました。
2018年6月に、洋菓子のヒロタが全株式を取得する形でM&Aが行われています。
参考:21LADY、子会社の洋菓子のヒロタがあわ家惣兵衛の発行済全株式を取得することを決定|日本経済新聞
中小企業M&Aの際に仲介会社を選ぶポイント
中小企業がM&Aの際に仲介会社を選ぶポイントは以下のとおりです。
- 自社の分野に関する専門的な知識やM&Aの実績を有している
- 自社と同規模の案件実績がある
- M&Aに関する幅広い知識や経験を持っている
- 報酬体系などが分かりやすい
- 担当者との相性
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
1.自社の分野に関する専門的な知識やM&Aの実績を有している
M&Aの仲介会社は、基本的にそれぞれ得意としている分野などが異なります。例えば、中小企業のM&Aを専門に扱う仲介会社であったとしても、小売業やサービス業、工業など特定の分野に強みを持っている仲介会社に分けられるのが特徴です。M&Aの仲介会社を選ぶ上で失敗しないためには、自社が属している業界の分野や希望しているM&Aと似た実績があるかどうか確認することが重要となります。
また、新規事業への参入を検討しており、その手段としてM&Aを活用する場合は、自社の分野だけではなく新規事業参入予定の分野にも精通しているかどうかも確認する必要があります。仮に、自社の事業に関して精通していたとしても、M&Aを行う予定の業界や事業に精通していなければ手続きをスムーズに進められない可能性が高いです。
後からトラブルに発展することを防ぐためにも、あらかじめどの分野に精通している仲介会社なのかは確認しておきましょう。
2.自社と同規模の案件実績がある
M&Aの仲介会社は、それぞれの会社によって取り扱っている案件の規模という点でも異なります。
例えば、大企業の買収を主に扱っている仲介会社があったり、中小企業の案件のみを取り扱っている仲介会社があったりなどです。特に銀行や証券会社などに関連したM&Aの案件をメインで取り扱っている仲介会社の場合、何十億円規模のM&A案件を得意としています。
一方で、中小企業が関係するような一般的なM&Aであれば、基本的に数億円から数千万円程度の案件が通常であり、さらに小規模なものであれば数百万円単位の案件を得意としている会社も存在します。
仮に取り扱う規模が全く異なる仲介会社に依頼してしまうと、自社が希望している相手先をなかなか見つけられないという事態に陥りかねません。そのため、M&Aの手続きを行う際には、必ず仲介会社が自社と同規模の案件実績があるかどうか確認しましょう。
3.M&Aに関する幅広い知識や経験を持っている
仲介会社によっては、M&Aに関する知識の量や得意としている分野、過去の実績なども大きく異なります。
特定の分野に偏った仲介会社を選ぶよりも、実績が豊富で幅広い分野の知識を有している会社に依頼した方が、スムーズにM&Aの手続きを進められる場合もあるでしょう。
そのため、仲介会社を選ぶ際には、M&Aに関する幅広い知識や経験を有しているかどうか必ず確認してください。
4.報酬体系などが分かりやすい
M&Aの手続きを進めるためには、買収資金だけではなく仲介会社に支払う手数料など、多額の資金が必要となります。そのため、仲介会社を選ぶ際には報酬体系や手数料などが分かりやすいところを選びましょう。
一般的なM&A仲介会社の場合、手続きを進める上で必要となる費用は「相談料・着手金・中間金・リテイナーフィー・デューデリジェンス費用・業務実行にかかる費用(実費)・成功報酬」などが例としてあげられます。
基本的にはホームページに報酬体系を掲載している仲介会社がほとんどですが、いずれにしろ相談する際には必ず直接報酬体系や手数料を確認して納得できる企業を選びましょう。
5.担当者との相性
M&Aの手続きを進める上では、担当者との相性が良いかどうかというのも重要です。
信頼できるかどうかというのはもちろん重要なことですが、なかなか話しにくい内容についても相談しやすいかという点でも担当者との相性は大事になってきます。
仮に担当者との相性が悪かった場合、聞きたいことをなかなか相談できずにM&Aをスムーズに進めることができない可能性もあります。
またM&Aは多額の資金が必要となる重要な決断であるため、手続きを納得して進めるためにもとことんまで話し合える担当者かどうかなど、相性が良いかどうかは必ず確認しましょう。
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【まとめ】中小企業のM&Aを成功させるためには専門家に相談しよう!
中小企業にとって、M&Aは事業承継や新規事業への参入、財務状況の建て直しや資金調達など、様々な経営上の課題を解決できる選択肢の一つです。
しかし、手続きを進める上では、法務や会計など専門的な知識が必要となります。個人でM&Aを進めようとした場合、法律や金銭面のトラブルになってしまう可能性が高いので注意が必要です。
中小企業であったとしても、M&Aを行う際には必ず仲介会社などの専門家にアドバイスを求めましょう。専門家にアドバイスを求めることで、自社に適した買収・売却候補の企業を紹介してもらったり、手続きを迅速に進めたりすることが可能です。
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