譲渡制限株式とは、他者への譲渡が制限されている株式を指します。
設立間もない企業・中小企業等、規模があまり大きくない企業の発行株式は、概ね譲渡制限株式と言えます。
譲渡制限株式は、その名の通り譲渡が制限されているため、他者へ譲渡したい場合は、やや面倒なプロセスを経なければいけません。
この記事では、譲渡制限株式の特徴や譲渡の方法とプロセス、譲渡の際の注意点をわかりやすく解説していきます。
- 株式の譲渡制限とは、譲渡に関して一定の制限を付けている株式のことである
- 譲渡制限株式の目的は、乗っ取りの防止や株式の所在を明らかにすことである
- 譲渡制限株式を譲渡するには、株主総会などの承認が必要になる
- 譲渡制限株式の譲渡には、承認された場合とされなかった場合の2パターンが存在する
- 譲渡制限株式には、いくつかの注意点がある
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目次
株式の譲渡制限とは?
こちらでは、譲渡制限株式の特徴や制限を設ける目的について解説します。
株式の譲渡制限のメリットとは
株式の譲渡制限は、ご自身が保有している株式について、ご自身の親族はもとより、他の投資家や企業に譲渡する行為を制限することです。
譲渡制限されている株式のことを【譲渡制限株式】と呼びます。
前述したように、設立間もない企業・中小企業等や規模があまり大きくない企業が発行株式の多くは譲渡制限株式です。
もしも株主が譲渡したいなら、株主総会または取締役会の承認を得る必要があります。
譲渡制限株式のメリットは主に次の通りです。
- 乗っ取りを予防:こちらについては後述します。
- 役員の任期を延長:基本的に取締役や会計参与の任期期間は2年、監査役は4年だが、定款にそれぞれ10年まで任期延長を記載可能。
- 取締役会の設置不要:取締役1名でOK
- 後継者に株式を集めることが可能:こちらについては後述します。
- 株主総会の手続きの簡素化:公開会社は2週間前に書面等で通知することが原則、譲渡制限株式会社なら1週間前または条件により、更に短期間での株主総会の招集可能。
乗っ取り防止だけではない、いろいろなメリットがあります。
規模が小さい会社には最適な仕組みと言えるでしょう。
譲渡制限規定とは
譲渡制限を認める規定は譲渡制限に明記されています。(会社法第107条・第108条)
そして株式の譲渡制限を望む場合、自社の定款に『当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受ける必要がある』といった文言を記載します。
もちろん、本来ならば株式は自由に譲渡できるのが原則ですが、会社の経営上、好ましくない人物が株式や議決権を取得する場合もあります。
その様なことが無いように、株式を譲渡制限することが可能なのです。
とはいえ、譲渡が禁止されているわけではないので、基本的に承認機関(株主総会または取締役会)の承認を得れば譲渡が可能です。
株式に譲渡制限を設ける場合は、定款に予め記載しておく必要がある。
株式を譲渡制限にする事で、株式を譲渡する相手を選別できる。
株主などの承認を得られれば、株式を譲渡することが出来る。
株式の譲渡に制限を設ける目的
株式の譲渡制限を設定する目的は主に3つあります。
- 乗っ取りを避けたい!
- 株式の所在はどこ
- 事業承継後のトラブルを避けたい
乗っ取りを避けたい!
会社が経営権を守るために譲渡制限株式を設けます。
株式には基本的に議決権と呼ばれる権利が付帯されています。
この議決権は、株主が株主総会で賛成または反対の投票ができるという権利です。
議決権を一定数保有していれば、経営権も握ることが可能です。
とするなら、株式が自由に譲渡されるとすると、乗っ取りを目論む別の企業が、知ら間に議決権数を増やし、自社の経営に大きな影響を及ぼす事態も想定されます。
別の企業の乗っ取りを避けるためには、株式の譲渡制限をしておいた方が安心なのです。
譲渡相手の選別が出来る事で、会社を乗っ取られるというリスクを避けられる。
株式の所在はどこ
株式の譲渡制限をすれば、仮に株主が譲渡を希望する場合も、会社の株主総会または取締役会の承認を得る必要があります。
つまり、知らぬ間に全く想定外の他人に渡ったなどという事態が避けられます。
また、会社側で誰が何株持っているのか把握もできます。
これにより、自己株式(会社の発行株式のうち、自社で取得した上で保有する株式)を取得するときや、事業承継の際に後継者のため株式を買い集めるとき等の手続きが容易です。
株式の所在が明確に出来る事で、自己株式の取得・後継者のための株式取得がしやすくなる。
事業承継後のトラブルを避けたい
譲渡制限株式にするのは、現経営者から後継者へ事業承継後のトラブルを未然に防ぐためです。
現経営者が自信をもって選んだ後継者でも、株主の中には「経験がまだまだ浅いのに事業運営は大丈夫か?」「何か経営に失敗しそうな気がする」と、不安を抱かれる場合もあります。
このようなケースを想定し株式の譲渡制限を講じておけば、後継者の選任へ不満を持つ株主が株式を買い集めて、会社経営権を後継者から奪取するという事態を回避できるのです。
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株式の譲渡制限が無いと問題になる?
こちらでは、株式の譲渡制限がないとどの様な事態になるかの事例をあげてみてみましょう。
経営者の持ち株比率が低いケース
こちらのケースのように経営者の持ち株比率が低いと次のような事態が想定されます。
株式の譲渡制限がない場合の事例
こちらでは具体的に事例をあげてみましょう。
- 社長A(代表取締役)・55歳:株式の20%保有
- 株主B・55歳:株式の20%保有
- 株主C・53歳:株式の20%保有
- 株主D・59歳(社長Aに不満):株式の20%保有
- 株主F・58歳(社長Aに不満):株式の20%保有
株主D・Fは社長Aに不満があるものの、持ち株比率は40%(A20%+B20%)なので、社長を取締役として再任するのが嫌でも、株主総会で他の株主の同意を得ることは困難と考えていました。
不測の事態が発生
しかし、株主D・Fは一計を案じ、社長Aにあまり良い感情を持っていないG・Hに声をかけます。
株主D・Fは、株主B・Cの持ち株数全部をG・Hに買い取ってもらうよう頼みます。
それに同意したG・Hは、株主B・Cの株式を買い取りました。
G・Hは、社長Aの会社の株主となり議決権を待ちます。
毎年恒例の株主総会が開催された際に、突然株主Dが手を挙げ緊急動議が提出されます。
その動議の内容は、「社長Aを取締役として再任せず、別の候補者を取締役として選任する」というものでした。
すかさず株主F・G・Hは同意をします。
株主の提案内容はそのまま承認され、法律どおりに手続きは進められました。
社長は事実上の解任され、会社を追い出されることになりました。
社長解任に向けて、取締役再任に否定派に株式取得をさせて、社長の解任動議の賛成多数を取得した。
社長Aはどうすれば良かったか?
自社を非公開会社(定款で全部の株式に譲渡制限を設けている株式会社)にすれば、株式の自由な譲渡は認められません。
また、持ち分割合も20%なのも問題です。
非公開会社でない限り、やはり50%以上は株式を保有しているべきでした。
経営者がある程度株式を保有しているケース
経営者の持ち株比率が割と高くても油断は禁物です。
株式の譲渡制限がない場合の事例
こちらでは具体的に事例をあげてみましょう。
- 社長A(代表取締役)・55歳:株式の40%保有
- 株主B(社長Aの親友で信頼厚い人物)・55歳:株式の35%保有
- 株主C(社長Aの知人ではあったが野心あり)・53歳:株式の25%保有
社長Aは株主Bと親友であり、株主Bは愚直な性格から大きな信頼を持っていました。
社長Aは株主Bと合わせて株式の75%(A40%+B35%)なので、会社の運営は問題なしと考えていました。
不測の事態が発生
しかし、株主Bが55歳という若さで死亡してしまいます。
この場合、株主Bの株式は相続人に引き継がれました。
そこで、社長Aの会社を乗っ取ろうとした株主Cが動き出します。
株主Cは株主Bの相続人へ株式の買取を悪くない価格で申し込みます。
株式のことが良くわからなかった相続人が申し出を快諾、株主Cへ譲渡してしまいます。
そうなると、株主Cは社長Aの会社の株式を60%も保有する大株主になります。
社長Aの会社の実質的な支配者は株主Cとなってしまいます。
社長Aは自分の会社の支配力を失い、最悪の場合は代表取締役を辞任しなければいけなくなります。
株主Cの乗っ取りは完全に成功したわけです。
株主Bの死去によって相続人に渡った株式を、株主Cが所得する事で、社長Aよりも多い株式を保有することが出来た。
社長Aはどうすれば良かったか?
こちらも、自社を非公開会社(定款で全部の株式に譲渡制限を設けている株式会社)にすれば、株式の自由な譲渡は認められません。
株主Bの相続人にも株式の売渡請求ができるので、会社を乗っ取られる前に十分な手を打てるはずです。
このようなケース以外でも、株主が第三者へ自由に株式譲渡できなくなるので株式譲渡の制限を講じていた方が無難です。
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譲渡制限株式を譲渡するには
こちらでは、譲渡制限株式を譲渡する際に必要な事柄を解説します。
株式譲渡承認申請書が必要
株式譲渡を制限する会社で、株主が株式譲渡をしたいなら、まず「株式譲渡承認申請書」を提出する必要があります。
株式譲渡承認申請書に何を記載する?
株式譲渡承認申請書には次の内容を明記することが求められます。
(1)株式の種類を記載
株主であるご自身が保有する株式の種類を記載します。
- 普通株:株主への権利を含まない株式
- 優先株:他の株式より、権利の受取が優先された株式
- 後配株:普通株より権利の受取が後回しとなる株式
(2)譲渡株式数
譲渡する株式数の項目を明記します。
書面には例えば『普通株式 100株』というような記載をします。
(3)譲渡したい相手
譲渡したい相手の住所・氏名を明記します。
その他に記載すべき事柄
株式譲渡承認申請書を提出したからといって、承認機関である株主総会または取締役会から必ず承認されるとは限りません。
そこで株主であるご自身は、株式譲渡承認申請書に不承認とされた場合、その要望を記載しておく必要があります。
例えば次のように記載しておきましょう。
承認を得られない場合は『他の相手方を指定して下さい』または『貴社または貴社が指定する相手方の買取を希望』と明記します。
なお、株式譲渡承認申請書は重要な書面のため、押印する際は【実印】を利用した方が良いでしょう。
ただし、届出印を押せるなら、わざわざ実印を選ぶ必要はないです。
なぜなら、株主名簿に登録している届出印で本人であることが確認できるからです。
株価の決定方法は?
詳細は後述することになりますが、株主総会または取締役会から承認された場合、価格は譲渡人・譲受人当事者間で決定できます。
しかし不承認だった場合は、原則的として株主と会社または指定買取人が協議して株価を決めます。
その協議で話がまとまらないと、裁判所に申し出ることで株価が決定することになります。
もちろん、裁判官は専門家(公認会計士等の株価鑑定)の意見を聴いたうえで決定するので、株主や会社等の株価の判断から大幅に乖離する決定とはならないはずです。
株主総会などの承認が得られれば、譲渡人と譲受人の間で価格を決める。
承認されなかった場合は、株主と会社で協議をするが、決まらない場合は裁判所に委ねることになる。
売却価格はどう決める?
株価が決まったら、今度は株価をもとに売却価格を決定します。
もちろん株主総会または取締役会から承認された場合、譲渡価格は譲渡人・譲受人当事者間で決定する事が出来ます。
そして不承認の場合なら、株主と会社または指定買取人が協議して1株いくらかになるか決め売却価格を算定します。
ただし、裁判所が売却価格の決定を下す場合は注意が必要です。
なぜなら、売却価格を決定する基準となるのは「譲渡等承認請求の時点」だからです。
つまり、譲渡等承認請求を行った後、会社の業績が良くなったケースや逆に悪くなったケースなど、いずれのケースも株価の決定では考慮されないことになります。
裁判所が売却価格を決定する際には、譲渡等承認請求時点の価格基準になるため、譲渡等承認請求後の業績は反映されない。
もし承認されなければ
前述したように株主総会または取締役会から承認されない場合、会社または指定買取人に買い取ってもらいます。
会社または指定買取人との協議で上手く話しがまとまるならば、合意して株式を売却することになります。
それでも、話しがまとまらないと適正価格は裁判所に申し出て決定することとなります。
望まない第三者からの乗っ取りを防ぐための仕組みなので、株式の譲渡には相当の手間がかかってしまいます。
これらのプロセスについては次章にて解説します。
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譲渡制限株式の譲渡パターン
こちらでは、譲渡制限株式の譲渡するプロセスをパターン別に解説します。
譲渡制限株式の譲渡の共通プロセス
まずは、いずれのパターンにも共通する手順をみてみましょう。
- 譲渡対象の株式をチェック
- 発行企業(譲渡企業)へ承認請求
- 株主総会または取締役会で承認の諾否を決める
手順・その1|譲渡対象の株式をチェック
対象となる株式の譲渡制限の有無を定款や登記事項証明書で調べます。
手順・その2|発行企業(譲渡企業)へ承認請求
対象となる株式を発行した企業(譲渡企業)に対して、譲渡の承認請求手続きを行います。
このプロセスで前述した株式譲渡承認請求書を提出することになります。
手順・その3|株主総会または取締役会で承認の諾否を決める
株式譲渡承認請求を受けた企業は、原則として株主総会または取締役会を開催して請求を認めるかどうか審議に入ります。
この審議の結果【承認された場合】と【否決された場合】で、その後のプロセスは大きく変わります。
株式譲渡承認請求が認められた場合
請求が認められても、いきなり譲り受ける人へ株式を譲渡できるわけではありません。
こらでも慎重に手続きを踏んで譲渡がなされます。
次の手順で手続きが進行します。
- 株式譲渡を承認した通知が届く
- 株式譲渡契約書の作成・締結
- 株主名簿書き換え請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付へ
手順・その4|株式譲渡を承認した通知が届く
株主総会または取締役会で本請求が認められた場合、会社から請求者へ承認した旨の通知が届きます。
良い知らせで、ひと安心と言えますが、請求者・譲受人が行わなければいけない作業はこれからです。
手順・その5|株式譲渡契約書の作成・締結
承認を受けた請求者は譲受人と株式譲渡契約を締結します。
もちろん、書面で譲渡の事実や取り決めを明記しなければいけません。
譲渡価格は当事者間で決定できます。
ただし、その株式が株券発行会社の場合、譲渡人→譲受人へ株券を交付します。
なお、株式譲渡契約書に必要な項目は後述します。
手順・その6|株主名簿書き換え請求
株式譲渡契約書を取り交わせば、今度は譲渡人・譲受人が共同で、会社に株主名簿書き換え請求を行います。
書き換えのタイミングによっては、二重譲渡のおそれも考慮されるので速やかに行う必要があります。
書き換えも完了すれば、いよいよ最終ステップに進みます。
手順・その7|株主名簿記載事項証明書の交付へ
株主名簿の書き換え完了後、「株主名簿記載事項証明書」の交付請求を行います。
この証明書には、譲受人の個人情報・株式保有数等を記載して、それに加え会社の代表取締役の署名または記名押印が必要です。
一方、株券発行会社の株式を譲り受けたケースなら、株券のある株式は譲受時、譲受人へ株券交付がなされていることでしょう。
この場合には、手間のかかる手続きをわざわざ行う必要もありません。
そのため、株券を有している者が株主であると推定され、株主名簿記載事項証明書の交付請求は不要となります。
株式譲渡承認請求が認められなかった場合
請求が認められなかった場合は、請求者はもちろん会社も込み入った手続きを行う事態となります。
ケースによっては裁判所に申し立て、その判断に従うこととなります。
次の手順で手続きが進行します。
- 否決の通知が届く
- 買取先を決定
- 特別決議(会社の方で買い取る場合)
- 供託(会社または指定譲受人側)
- 株券供託(株主側)
- 協議・申し立て
- 裁判所が適正価格を算定
次の手順で手続きが進行します。
手順・その4|否決の通知が届く
否決後、会社は2週間(定款でそれを下回る期間を定めた場合はその期間)以内に、請求者へ否決した旨の通知をします。
請求者へ2週間を経過後、依然として通知が届かないなら、不手際の有無にかかわらず譲渡企業が「承認した」とみなされます。
手順・その5|買取先を決定
不承認決定後、請求者から会社または指定買取人が買い取る請求を受けた場合、会社側は次の3つの方法から買取先を決定します。
- 会社
- 指定譲受人を指定し
- 二者共同
方法は会社の独断ではなく株主総会または取締役会の決議で決定されます。
(1)買取が会社
- 供託を証明する書面(1株あたり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額)→請求した株主へ交付
- 否決を通知した日から40日以内に買い取る株式の種類・数の決定
「1」「2」双方を行います。
(2)買取が指定譲受人
否決通知の日から10日以内に請求者へその旨を通知します。
手順・その6|特別決議(会社の方で買い取る場合)
否決した承認機関と会社が買い取る場合の承認機関が異なるケースもあります。
- 否決したのが株主総会→買取決議も株主総会
- 否決したのが取締役会→買取決議は株主総会
手順・その7|供託(会社または指定譲受人側)
会社または指定譲受人が、株主への買取通知前に会社の本店所在地で買取相当額(一株あたりの純資産額×買取株式数)を供託します。
株主に対し供託を証明する書面を交付、加えて会社が買い取る旨・買取株式数を通知します。
その期限は次の通りです。
- 会社の方で買取→否決した旨の通知から40日以内
- 指定譲受人を指定し買取→否決した旨の通知から10日以内
なお、定款で期限が短縮されている場合もあります。
手順・その8|株券供託(株主側)
株主は譲渡の対象となる株式の株券が発行されているなら株券を供託します。
供託したことを証明する書面の受領日から1週間以内に行います。
供託後は会社へ遅滞なく供託した旨を通知しましょう。
供託せず1週間経過後、会社・指定譲受人は譲渡契約解除ができます。
放置するとこれまでの努力が水の泡となるので、速やかな対応が求められます。
手順・その9|協議・申し立て
一連のプロセスの最大の山場です。
買取通知受領後、株主と会社または指定譲受人の協議に移ります。
この協議で譲渡価格に合意するか否かを決定します。
残念ながら合意に至らないと、最終的に裁判所に決めてもらうこととなります。
買取通知受領後20日以内に「株式譲渡価格決定の申立」をいずれかが行います。
株主が申立せず20日間を経過すれば、会社または指定譲受人が供託した金額が譲渡価格となります。
株主が価格にどうしても納得できないなら、裁判所に決めてもらいましょう。
ただし、申し立てからと言って株主の言い分が100%通るわけではありません。
株主側は弁護士を立てる場合、企業とのトラブルに詳しい弁護士に依頼しましょう。
適切なアドバイスの下で、これ以上の争いが有効かどうか判断するべきです。
一方、株主が妥協して、しぶしぶお金を受け取る場合は、会社または指定譲受人から協議が合意できなかった証明書を提出する必要があります。
手順・その10|裁判所が適正価格を算定
申立後、裁判所は審問で双方の言い分を聴取します。
もちろん裁判官の独断ではなく、専門家の意見なども参考に適正価格が決まります。
なお、裁判所から和解を促されることもあるでしょう。
和解に至らないと、やはり裁判所が最終的に価格を決めます。
どちらかが裁判所が決めた価格にも不服があるなら、裁判の告知を受けた日から2週間以内に抗告も可能です。
この2週間を経過すれば、裁判所の決定した譲渡価格が確定します。
協議がこじれるとこのように、多大な手間と時間をかけ、ようやく価格が決まることになります。
そのため、双方の歩み寄りが問題解決には大切です。
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譲渡制限株式の注意点
こちらでは、譲渡制限株式の3つの注意点を解説します。
相続時の売渡請求に注意!
譲渡制限株式の特徴として、後継者へも「売渡請求」をすることが可能です。
株主たちが、後継者に対し不満を持つ場合に、この方法をとられたら大変です。
売渡請求は株主総会で特別議決する必要がありますが、売渡請求された後継者は反対票を入れることはできません。
この特別議決に投票する権限がないからです。
株主総会で売渡請求が決議されると、後継者は圧倒的に株式を所有していても、後継者の座を他の人へ渡さざるを得なくなってしまいます。
この事態を未然に防ぐため、定款で売渡請求の定めを置く場合と置かない場合にわけて対処法を解説します。
売渡請求をされてしまうと、請求された側は非常に不利になる。
定款で売渡請求の定めを置く場合
自社の株式を持たせる目的で別会社(持株会社)を設立し、ご自身の全株式を、その持株会社へ持たせる方法が考えられます。
こうすれば売渡請求を回避できます。
また、事前に「拒否権付種類株」を発行する方法もあります。
こちらは、株主総会の決議が成立しても、それを拒否できるという権利が得られます。
別に持株会社を設立して、全株式を保有させる。
拒否権付種類株を発行しておく。
定款で売渡請求の定めを置かない場合
ご自身の株式だけ譲渡制限を外しておく方法が有効です。
非公開会社のメリットが得られなくなるものの、株主の間で後継者に対する不穏な動きを察知したら公開会社にしても良いでしょう。
公開会社となれば、定款で株式の相続人への売渡請求を規定すること自体が不可能となります。
自身の保有する株だけを譲渡制限を外す方法がある。
株式買取請求権に注意!
こちらは前述した通りです。
承認機関が承認しない場合、譲渡したい株主から買取請求権を行使される場合もあります。
協議がこじれると最終的に裁判所の決定にまでもつれますので、買取請求権を実行された時に備え、株式を買取る資金の用意しておいた方が無難です。
とはいえ、譲渡したい株主の主張する売却価格が許容範囲を超えているなら、公正中立な裁判所に価格を決めてもらうことも検討しましょう。
売りたい株主から、買取請求をされる場合があるため、資金確保をしておくのが無難。
決算公告する必要あり
決算公告とは、定時株主総会の終結後に遅滞なく、会社が定款に定めた公告方法で公告する、財務情報の開示を指し、忘れずに公告しなければいけません。
1会計年度(事業年度、会計期間)の終了後の決算で作成された「貸借対照表及び損益計算書」は、株主総会による承認など、法律で定められた手順を遵守後、遅滞なく公告されることが義務付けられています。
なお、決算公告の方法は「官報」「日刊紙」「電子公告」の3つがあります。
決算事に、財務状況を開示する必要があり、公告方法は「官報」「日刊紙」「電子公告」の3種類ある。
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株式の譲渡制限によくある質問2選
こちらでは、株式譲渡制限によくある質問である「非公開会社と公開会社の株式の譲渡制限の違い」と「株式譲渡契約書の内容」の2点を取り上げます。
非公開会社と公開会社の株式の譲渡制限の違いとは?
非公開会社とは、発行している全ての株式に譲渡制限が付いている会社を指します。
一方、公開会社は、一部または全部の株式の譲渡に制限をつけていない会社を指します。
この2つを簡単に比較してみましょう。
項目 | 非公開会社 | 公開会社 |
---|---|---|
取締役会 | 任意設置
取締役1名だけで構わない |
必ず設置
取締役会3名以上 |
監査役 | 取締役会置く:会計参与or監査役必須
置かない:監査役は任意 |
必ず設置 |
監査役の権限 | 会計監査のみの監査役設置OK | 業務監査・会計監査 |
発行可能株式総数 | 発行済株式:何倍でも | 発行済株式:4倍 |
属人的株式 | 可能 | 不可 |
株主総会の招集通知 | 原則1週間前 | 原則2週間前 |
募集株式発行決議 | 株主総会 | 取締役会 |
株主提案権 | 株式保有期間制限無 | 株式を6ヶ月以上保有の株主 |
株主代表訴訟提訴権 | 株式保有期間制限無 | 株式を6ヶ月以上保有の株主 |
やはり、株式に譲渡制限が付いている会社か否かで、設置・設定する・しなくて良い事柄、株主総会の招集通知や株主提案権・株主代表訴訟提訴権の条件も異なってきます。
一定の条件をクリアすれば【非公開会社→公開会社】【公開会社→非公開会社】へ変えることもできます。
基本的に【公開会社→非公開会社】へ変更する傾向が多いと言われています。
しかし、双方、新たな制約が加わるケースもあるので、会社の変更も慎重に行うべきでしょう。
株式譲渡契約書の内容をどう定める?
株式譲渡契約書に記載する内容は主に次の通りです。
- 譲渡合意
- 譲渡代金の支払い方法
- 株主名簿の名義書換
- 表明保証
- 契約解除
(1)譲渡合意
当事者間の株式取引の主な内容を記載する項目です。
具体的は項目は次の2つです。
- 株式の種類
- 譲渡する株数
(2)譲渡代金の支払い方法
こちらも相手方とのトラブルを未然に防ぐため明記します。
具体的には
- 譲渡代金
- 支払期日
- 振込先口座
なお、現金で支払いを行う場合には「現金で支払う」と明記します。
(3)株主名簿の名義書換
前述した株主名簿の名義書換で協力することを明記します。
原則として譲渡人・譲受人が共同して請求するので、土壇場で相手方に協力を拒否されては困るからです。
(4)表明保証
譲渡人が譲受人に対し、特定の事項が真実・正確であることを表明し保証する旨を明記します。
(5)契約解除
相手方の契約違反・表明保証違反が契約解除となることを明記します。
また、契約解除だけではなく被った損害があれば、賠償義務の発生を記載するのが一般的です。
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株式の譲渡制限|まとめ
株式の譲渡制限は自社に恩恵をもたらす一方、前述した通りトラブルのもととなるリスクも存在します。
想定されるリスクには、事前に対策を講じておきましょう。
まずは譲渡制限株式の特徴をしっかりと把握することが大切です。
またM&Aなどで、株式譲渡を考えている方は、株式の譲渡条件や注意点をしっかりと留意しておきましょう。
疑問や不安な点のある方は、M&Aアドバイザーの無料相談まで、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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