事業承継税制は、後継者が非上場会社の株式等を、前の経営者等から贈与や相続で取得した場合に、都道府県知事の認定を受ければ、贈与税・相続税の納税が猶予される制度です。
平成30年度の改正(特例措置)で、大幅にお得な制度となったと評価されていますが、制度を利用する際には注意しなければいけない点が数多くありまうので、制度の活用は慎重に行うべきです。
この記事では、事業承継税制の特徴とその仕組み、一般事業承継税制と特例事業承継税制の違いや適用要件から利用する際のメリット・デメリットについて解説します。
- 事業承継税制とは中小企業などが、事業承継を行う際に税金面を優遇するための制度
- 納税猶予制度の仕組みは相続税も贈与税も同じ?
- 一般事業承継税制と特例事業承継税制とは内容が全く違う!?
- 事業承継税制の要件を会社・後継者・先代経営者に分けて紹介
- 事業承継支援税制のメリット・デメリットとは?
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目次
事業承継税制とは
そんなときには【事業承継税制】の利用がおすすめです。
こちらでは事業承継税制の改正の背景と適用される期間について解説します。
- 事業承継税制の基本
- 事業承継制度改正の背景
- 事業承継税制の適用期間
事業承継税制の基本
事業承継税制とは、中小企業が後継者に事業承継する際の贈与税・相続税を猶予・免除する制度のことです。
資金の限られた中小企業ならば免除はもとより、納税のタイミングを遅らせる意味は非常に大きいと言われています。
事業承継税制では、一定の要件を満たしつつ会社経営を継続すれば、半永久的に納税猶予または実質的に相続税・贈与税が免除されることにつながります。
条件を満たせば、納税猶予や相続税・贈与税が実質免除される制度
事業承継制度改正の背景
事業承継税制は、平成21年税制改正によって導入されました。
中小企業は、その当時から事業承継による贈与税・相続税の負担へ苦しんでいました。
事業承継制度は、事業承継をサポートする制度として成立されたものの、利用頻度は決して高いとはいえませんでした。
事業承継制度の利用がなかなか進まないことで、政府は中小企業の事業承継を積極的に支援する目的で、平成30年度に新制度を創設しました。
それが【特例事業承継税制(事業承継税制の特例)】です。
改正前(一般事業承継税制)・改正後(特例事業承継税制)の内容は次の通りです。
- 対象株式:(改正前)発行済議決権株式総数の2/3→(改正後)全株式
- 相続税猶予割合:(改正前)8割→(改正後)全部
- 対象後継者:(改正前)1人→(改正後)最大3人
- 相続・贈与をする人:(改正前)先代経営者→(改正後)複数の株主
- 相続時精算課税:(改正前)推定相続人等後継者→(改正後)推定相続人等以外も適用可
この改正で、節税効果・対象範囲がより大きくなったことがわかります。
事業承継税制の適用期間
節税効果・適用要件が緩和された特例事業承継税制ですが、一般事業承継税制と異なり適用期間が決められています。
それは、10年以内の贈与・相続等で2018年(平成30年)1月1日~2027年(令和9年)12月31日までとなっています。
2021年現在でも、あと6年ほど余裕があるものの、特例事業承継税制を利用するなら、5年以内の特例承継計画を提出する必要があります。
こちらにも期限があり、2018年(平成30年)4月1日~2023年(令和5年)3月31日までとなっています。
特例承継計画提出締切まであと2年なので、特例事業承継税制を利用したいなら早めに計画策定を行った方が無難です。
特例事業承継税制の期限は2027年12月31日までとなり、特例事業承継税制を利用するための特例承継企画書の提出期限は2023年3月31日まで
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納税猶予制度の仕組みについて
事業承継税制、中小企業の事業承継に大きな節税効果が得られるよう改正されたようですね。
この猶予制度の仕組みについて詳細が知りたいです・・・。
こちらでは、贈与税・相続税それぞれの場合、計算方法・計算例を解説します。
- 贈与税の場合
- 相続税の場合
- 納税猶予額の計算方法
贈与税の場合
贈与税は、期限の定めのない一般事業承継税制の場合も、納税猶予割合は100%でしたが、対象となる株数は最大2/3までと制約があります。
一方、特例事業承継税制の場合は、対象となる株数は全株式、納税猶予割合は100%でより恩恵を受けられるようになっています。
先代経営者が亡くなった場合は、猶予されている贈与税は免除され相続税に切り替わることになります。
なお、後継者が死亡した等の一定の場合も、猶予されていた贈与税は免除されます。
特例事業承継税制の場合、株式の全てが対象になり、猶予割合は100%となる。
相続税の場合
事業承継されれば、いきなり相続税がかかるわけではなく、まず贈与税が課されます。
当初は、贈与税を猶予されるわけですが、先代経営者が亡くなれば相続が開始されます。
期限の定めのない一般事業承継税制の場合、この相続税の納税猶予割合は100%で、更に贈与税と同様に対象となる株数は最大2/3までと制約があります。
一方、特例事業承継税制の場合、対象となる株数は全株式、納税猶予割合は100%でより恩恵を受けられるようになっています。
こちらも、後継者が死亡した等の一定の場合に、猶予されている相続税が免除され、次の後継者の相続税の申告時、新たに相続税の納税猶予を選択することができます。
贈与税と同じで全株式が対象となり、納税猶予割合は100%となる。
納税猶予額の計算方法
こちらでは贈与税・相続税それぞれの納税猶予の計算をしてみましょう。
贈与税の計算方法の場合
贈与税の計算方法には次の2つがあります。
(1)暦年課税制度
暦年課税制度とは1年間を単位とし、それぞれの年度で贈与した金額に対し税金を課す制度です。
税率は条件によって異なります。
- 特別税率:20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた
- 一般税率:それ以外の人が贈与を受けた
それぞれの税率は次の通りです。
①特別税率
基礎控除後の課税価格 | 税率(%) | 控除額 |
---|---|---|
~200万円 | 10 | – |
200万円超~300万円 | 15 | 10万円 |
300万円超~400万円 | 15 | 30万円 |
400万円超~600万円 | 20 | 30万円 |
600万円超~1,000万円 | 30 | 90万円 |
1,000万円超~1,500万円 | 40 | 190万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 45 | 265万円 |
3,000万円超~4,500万円 | 50 | 415万円 |
4,500万円超~ | 55 | 640万円 |
②一般税率
基礎控除後の課税価格 | 税率(%) | 控除額 |
---|---|---|
~200万円 | 10 | – |
200万円超~300万円 | 15 | 10万円 |
300万円超~400万円 | 20 | 25万円 |
400万円超~600万円 | 30 | 65万円 |
600万円超~1,000万円 | 40 | 125万円 |
1,000万円超~1,500万円 | 45 | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 50 | 250万円 |
3,000万円超~4,500万円 | 55 | 400万円 |
4,500万円超~ | 55 | 400万円 |
③事例をあげ計算
- 贈与(自社株式):評価額3億円
- 経営者A:72歳
- 後継者B:42歳(Aの子)
(5億円-110万円)×55%-640万円=1億5,799万5,000円
1億5,799万5,000円が全額納税猶予となります。
(2)相続時精算課税制度
60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与で、子・孫の選択により利用できる制度です。
計算式は「{贈与財産の価額合計額-2,500万円(特別控除額)}×20%」となります。
事例をあげ計算してみましょう。
- 贈与(自社株式):評価額3億円
- 経営者A:72歳
- 後継者B:42歳(Aの子)
(3億円-2,500万円)×20%=5,500万円
5,500万円が全額納税猶予となります。
相続税の計算方法の場合
こちらでは相続税の計算方法を説明しましょう。(特例の場合)
先代の経営者が亡くなり相続開始、後継者A(長男)が経営者に就任していたが、相続人として他に後継者となっていないB(次男)がいる場合の例を紹介していきましょう。
- 後継者A(長男)52歳→自社株式3億円を相続
- 非後継者B(次男)50歳→その他の財産2億円を相続
①まずは相続税の課税価格を計算します。
Aの課税価格3億円+Bの課税価格2億円=5億円
②次に課税遺産総額を計算します。
相続税の基礎控除は
3,000万円+600万円×法定相続人の数なので
3,000万円+600万円×2=4,200万円
相続税課税価格3億円-基礎控除4,200万円=2億5,800万円
課税遺産総額は2億5,800万円です。
③相続税総額の計算に移ります。
相続税額がどれ位かかるのかは下表を参考にしてください。
法定相続分に応ずる各人の取得金額 | 税率(%) | 控除額 |
---|---|---|
~1,000万円 | 10 | – |
1,000万円超~3,000万円 | 15 | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円 | 20 | 200万円 |
5,000万円超~1億円 | 30 | 700万円 |
1億円超~2億円 | 40 | 1,700万円 |
2億円超~3億円 | 45 | 2,700万円 |
3億円超~6億円 | 50 | 4,200万円 |
6億円超~ | 55 | 7,200万円 |
法定相続人は2人なので、法定相続分は2等分です。
2億5,800万円÷2=1億2,900万円
(取得金額1億2,900万円×相続税率40%-1,700万円)×2人=6,920万円
相続税の総額は6,920万円です。
④後継者A・非後継者Bの納税額を算定します。
後継者A:6,920万円×3億円/5億円=4,152万円→全額納税猶予
非後継者B:6,920万円×2億円/5億円=2,768万円→納税が必要
後継者Aのみ全額納税が猶予されます。
非後継者Bは2,768万円の納税が必要です。
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一般事業承継税制と特例事業承継税制の違い
こちらでは、一般事業承継税制と特例事業承継税制はどんな点が異なるのかを詳しく解説していきます。
- 特例承継計画の提出
- 先代経営者からの相続・贈与の期間
- 対象株式
- 猶予対象評価額
- 後継者の人数
- 雇用確保要件
- 相続時精算課税
- 5年後以降に株式の譲渡、解散があった場合
特例承継計画の提出
一般事業承継税制では事前の計画策定は必要ありませんが、特例事業承継税制を利用したいならば、特例承継計画の提出が必要です。
特例承継計画の内容
事業承継税制の特例措置の適用を受けるなら、会社後継者や承継時までの経営見通し・承継後の5年間の事業計画等について記載した「特例承継計画」を策定します。
記載内容は次の通りです。
- 会社について:事業者の名称・資本金額or出資の総額・常時使用する従業員数を記入
- 特例代表者:保有株式を承継する予定の代表者氏名・代表権の有無を記入
- 特例後継者:株式を承継する予定の後継者氏名(最大3名まで)を記入
- 株式を承継する時期等:株式を承継する予定の時期、当該時期までの経営上の課題等を記入
- 5年間の経営計画:後5年間の経営計画を具体的に記入
- 認定支援機関の名称:認定支援機関の所見を記入
なお、提出用紙はこちらから取得できます。
特例承継計画の提出先と期限
特例承継計画は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁へ提出します。(主に商工部や中小企業部等が担当)
前述した通り、2018年(平成30年)4月1日~2023年(令和5年)3月31日までに提出が必要です。
先代経営者からの相続・贈与の期間
一般事業承継税制では先代経営者からの相続・贈与期間に制限がありませんが、特例事業承継税制では前述したように以下の条件に合致しなければいけません。
- 10年以内の贈与・相続
- 2018年(平成30年)1月1日~2027年(令和9年)12月31日まで
特例を適用したければ速やかに特例承継計画の提出が必要です。
対象株式
一般事業承継税制では総株式数の最大2/3までですが、特例事業承継税制では全株式が対象です。
一般事業承継税制でも、贈与税の猶予割合は100%ですが、株式の範囲に制約がありました。
特例事業承継税制を活用すれば、後継者は事業承継しても一気に全額を納税することがなくて非常に安心できることでしょう。
とはいえ猶予が取り消される事態も、その後に発生するおそれがあります。
これについては後述します。
猶予対象評価額
一般事業承継税制では猶予対象評価額が贈与100%・相続80%ですが、特例事業承継税制では贈与・相続とも100%です。
なお、猶予されるばかりか、一定の条件に当てはまると贈与税・相続税が免除されることもあります。
まずは、猶予制度が継続できるよう、取消事由に該当しない心がけが大切です。
後継者の人数
一般事業承継税制の場合は、適用対象として被相続人から1人の後継者だけでしたが、特例事業承継税制では複数の株主から後継者を最大3人まで選べるようになります。
更に特例措置では親族外も含む複数の株主から承継も対象となっています。
中小企業経営の実情に合わせ、多様な事業承継が可能となりました。
雇用確保要件
一般事業承継税制の場合は、承継後5年間で平均8割の雇用維持が必要でしたが、特例事業承継税制では弾力的な配慮がなされることになりました。
ただし、雇用の8割を守れなくても構わないという意味ではありません。
雇用の8割を守れない理由が、正当なものと認められない場合や経営状況の悪化の際は、認定経営革新等支援機関から指導・助言を受けて、書類に内容を記載することが必要です。
いずれにしても従業員の雇用は守っていかなければいけません。
相続時精算課税
一般事業承継税制の場合は、相続時精算課税の範囲は20歳以上の推定相続人・孫への贈与に適用可能でしたが、特例事業承継税制では20歳以上の人への贈与となっています。
つまり、20歳以上なら推定相続人・孫以外にも適用できます。
贈与する側からすれば受贈者の範囲が広がり、より贈与しやすくなったと言えます。
複数の後継者に承継したければ特例措置を選んだ方が無難です。
5年後以降に株式の譲渡、解散があった場合
一般事業承継税制の場合は、民事再生・会社更生時、その時点の評価額で相続税・贈与税を再計算します。
この計算で超えた部分の納税猶予額が免除されます。
特例事業承継税制の場合は、経営環境の変化をしめす一定の要件の場合、売却や合併で消滅・解散時にでも同様の制度を導入可能です。
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事業承継税制の適用要件【会社編】
こちらでは、会社の適用要件を4点取り上げます。
- 上場会社でないこと
- 風俗営業会社でないこと
- 資産管理会社でないこと(一定の要件を満たすものはのぞきます)
- 従業員が1名以上いること
上場会社でないこと
上場会社とは、証券取引所で株式を公開し投資家等が売買を行える会社のことです。
一方、事業承継税制の対象となる非上場企業とは、証券取引所への株式公開を行っていないため、自由に株を売買することはできない会社のことであり、非上場企業のほとんどが中小企業となっています。
中小企業者の要件をみてみましょう。
資本金または従業員数が下表の基準以下の場合です。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ソフトウェア業・情報処理 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 300人以下 |
風俗営業会社でないこと
ここでいう風俗営業会社は、性風俗営業会社のことであり、性風俗関連特殊営業を営む会社が該当します。
具体的にいえば、ソープランド・イメクラ・ピンサロと呼ばれる性接待を行う会社となります。
ゲームセンター経営・パチンコ店等も風俗営業ですが、もちろん性風俗営業会社ではありません。
資産管理会社でないこと(一定の要件を満たすものはのぞきます)
資産保有型会社・資産運用型会社が該当します。
資産保有型会社は、特定資産の帳簿価額の割合が総資産の7割以上の会社を指し、資産運用型会社は特定資産の運用収入が総収入に対して7割5分以上の会社を指します。
しかし、次のようなケース全てに該当するならば、納税猶予の適用は受けられます。
- 相続開始日まで引き続き3年以上、商品販売その他の業務で一定のものを行っている
- 「1」の相続開始時、その資産保有型会社等の親族外の常時使用従業員数が5人以上
- 「1」の相続開始時、資産保有型会社等が親族外の常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、または賃借している
従業員が1名以上いること
親族以外の従業員1名というわけでは無く、社会保険に加入しているなら親族の従業員でも適用されます。
もしも75歳以上で社会保険の加入義務がない従業員の場合、2か月超の雇用契約があるなら対象となります。
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事業承継税制の適用要件【後継者編】
こちらでは、後継者の適用要件を5点取り上げます。
- 会社の代表者であること
- 20歳以上で贈与の直前において「3年以上役員」であること
- 後継者およびその同族関係者が保有する株式が50%を超えること
- 後継者が同族関係者の中で筆頭株主であること
- 相続により取得した株式を1株も譲渡せず継続して保有すること
会社の代表者であること
会社の代表権を持つ人が対象です。
代表権を持つ人とは、企業で社外に対する会社の代表として、取引・業務を遂行する法律上の権限のことです。
代表権を持つのは取締役で、会社の根本規則である定款で代表取締役として登記しなければいけません。
20歳以上で贈与の直前において「3年以上役員」であること
贈与時に20歳以上・贈与の直前において3年以上役員であり、かつ代表者であることが必要です。
贈与税の場合は、上記の要件にも該当しなければいけません。
現経営者も後継者が3年以上役員をやっていることを確認した上で、タイミングよく事業承継を行う必要があります。
後継者およびその同族関係者が保有する株式が50%を超えること
後継者・同族関係者(親族等)の保有する株式が、50%を超えることも必要です。
後継者・同族関係者だけが株式を保有しているなら、あまり心配しなくても良い要件です。
まずは、後継者・親族等が保有する株式を算定して、超えているかいないかを確認してみましょう。
後継者が同族関係者の中で筆頭株主であること
相続開始時または贈与時において、後継者とその親族などで総議決権数の過半数を保有、かつこれらの者の中で筆頭株主であることが必要です。
こちらは、相続税・贈与税共通の適用要件となります。
総議決権数の過半数を占めているか良くチェックしてみましょう。
相続により取得した株式を1株も譲渡せず継続して保有すること
事業承継税制を利用したいなら、相続税がかかるからと安易に株式を譲渡してしまうのは考えものです。
1株でも譲渡してしまうと本制度は利用できません。
しっかり継続して守り続ける心掛けが大切です。
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事業承継税制の適用要件【先代経営者編】
こちらでは、先代経営者の適用要件を3点取り上げます。
- 会社の代表者であったこと
- 先代の経営者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること
- 先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であること
会社の代表者であったこと
もちろん、先代経営者が会社の代表者でなくては話になりません。
なお、贈与税の場合なら代表権を返上する必要があります。
相続税の場合なら会社の代表者であったという要件でOKです。
先代の経営者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること
贈与税・相続税ともに、先代の経営者およびその同族関係者が保有する株式は50%超なら要件に該当します。
こちらも、経営者本人・同族関係者だけが株式を保有しているなら、あまり心配しなくても良い要件です。
先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であること
贈与税・相続税ともに、先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主が要件です。
筆頭株主とは、企業の発行済株式の総数において、議決権のある株式を最も多く保有している株主を指します。
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事業承継税制のメリット4選
こちらでは、特例事業承継税制(事業承継税制の特例制度)の4つのメリットを紹介します。
- 莫大な相続税や贈与税を支払わなくてよい
- そのための納税資金を用意する必要がない
- 株価対策のために利益を圧縮する必要がない
- 先代経営者に事業承継を言いやすく促しやすい
莫大な相続税や贈与税を支払わなくてよい
事業承継税制の特例制度を利用する最大のメリットは、前述したように「特例承継計画」を提出して、一定の要件を満たせば、相続税・贈与税が100%免除になるという点です。
一般事業承継税制でも優遇される面はありますが、対象株数・納税猶予割合は総株式数の2/3まで、贈与税は100%・相続税は80%が免除されます。
一方、特例事業承継税制では対象株数は全株式、相続税・贈与税ともに100%免除されることとなります。
特例措置は適用時期が限定されるものの大きな免税効果が期待できます。
一般事業承継税制よりも、要件を満たせれば免税効果が高くなる。
そのための納税資金を用意する必要がない
一般事業承継税制の場合、5年間事業を継続が前提で、もしも継続できないと承継時の株価を基にして贈与税・相続税を納税しなければいけませんでした。
しかし、平成30年の税制改正にて、経営状況の悪化・正当な理由がある場合なら次のような措置がとられています。
相続(贈与)の税額等を再計算し、再計算した税額・直前配当等の金額の合計額が当初の納税猶予税額を下回るなら、その差額分が免除されることになっています。
特例事業承継税制では、経営環境の変化による将来の不安や、納税資金を要する負担が軽減されたことになります。
特例事業承継税制では、納税資金の負担が経営状況によっては軽減できる。
株価対策のために利益を圧縮する必要がない
基本的に株を贈与するタイミングをよく見ながら、利益圧縮・資産圧縮等の策を講じて、株価が下がった時点で株の贈与すれば贈与税が抑えられます。
しかし、特例事業承継税制の登場で、このよう手間も省くことができます。
条件さえクリアすれば無税で株を承継できるようになりました。
先代経営者に事業承継を言いやすく促しやすい
中小企業経営者→次世代経営者への引継ぎ支援の税制措置の創設・拡充がなされています。
後継者が先代経営者以外の方々から贈与等で取得する株式についても、特例承継期間以内で贈与に係る申告書の提出期限が到来する人限定で特例措置の対象とされます。
この措置で、親族以外を含む複数の株主から代表者である後継者(最大3人)に承継が可能となっています。
今回の特例措置では、20歳以上の推定相続人・孫への贈与に適用可能ですが、子・孫以外にも適用できます。
事業承継を考えている経営者に承継が非常に行い易くなっています。
親族以外の株主からの株式の承継も可能となっている事から、承継に関してのハードルが低くなっている。
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事業承継税制のデメリット3選
こちらでは、事業承継税制の3つのデメリットを紹介します。
- 猶予期間が極めて長期間におよぶ取消事由に該当する
- 取消事由に該当した場合は利子税も支払わなければならない
- この制度に対して経験のある税理士がごくわずか
猶予期間が極めて長期間におよぶ取消事由に該当する
免除対象贈与以外の非上場株式の譲渡や、後継者が代表権を失う等、取消事由に該当すれば納税猶予が取り消されます。
事業承継税制では、納税猶予期間到来後「継続届出書」を提出すれば引き続き猶予がもらえますが、継続した場合でも引き続き取り消しリスクは伴います。
その都度、取消事由に該当しないかどうか、確認する期間が長期にわたることとなるのです。
特例を利用したいなら、猶予期間も緊張感を維持する必要があります。
このような取消リスクは制度を利用する限り、それこそ一生続くことになります。
この手続きが過剰な負担となるのなら、いっそ納税した方が良い場合もあります。
取り消し事由に該当すれば納税猶予が取り消されますので、納税猶予特例を受け続けたければ取り消し事由に注意し続けなければいけない
取消事由に該当した場合は利子税も支払わなければならない
前述したような取消自由に該当してしまうと、猶予税額全額と利子税を合わせて納付しなくてはなりません。
もちろん、継続届出書の提出を怠った場合も同様です。
利子税とは、相続税・贈与税等の延納の許可があったとき、延納額に所定の割合を乗じ、計算した金額で課される附帯税(国税)です。
これは未納税額の納付を延長することで、納税義務者に利益が発生することのないよう配慮された税金です。
つまり、猶予税額全額の他、これに伴い利子税まで支払わなくてはなりません。
そのため、取消リスクは非常に大きいものとなります。
猶予取り消しになると、猶予されていた税金全額と、それに伴う利子税を支払わなければいけなくなる。
この制度に対して経験のある税理士がごくわずか
取消リスクがかなり大きい上に制度も複雑、平成30年に改正されて制度なのでまだ日が浅いこともあり、本制度に対して経験のある税理士はあまり多くいません。
事業承継税制を利用するため、税理士に助力を希望するなら、事業承継税制に関し相応の知識・経験があるのか良くチェックしてから申し出ましょう。
チェックする方法としては、税理士が開設しているホームページを閲覧して、事業承継税制について記載していたり、特例承継計画の提出に協力したりしたことが明記されていれば安心です。
ホームページの記載内容を目安に、その税理士へ問い合わせてみましょう。
改正して日が浅い分、経験が少ない税理士さんも多く、相談する税理士選びにも注意が必要。
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事業承継税制 まとめ
事業承継税制を適用すれば大きな節税が期待できます。
経営者も後継者が存在すれば、本制度を利用し安心して承継ができるはずです。
しかし、事業承継税制を利用する際には制約も多いので、良く内容をチェックしてから然るべき手続きを行いましょう。
また、特例事業承継税制が利用できても、継続届出書を継続的に提出する必要がある点は忘れないことが大切です。
これを忘れると、一気に猶予された税金全額および利子税の納付の必要が出てきます。
また、残念ながら後継者が見つからなかった場合は、「M&A」による事業承継も有効な手段です。
M&Aの専門家に事業承継の件を相談してみたほうが良いでしょう。
M&A専門の仲介会社も存在し、事業承継を解決する手段は非常に多くなっています。
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