後継者がいなくて、事業承継が上手くいかない中小企業は、非常に多いと言われています。
会社を引き継ぐ後継者が現れないと、どんなに経営が安定していても【廃業】という事態も想定されます。
その様な方は、会社を他の会社等に引き継いでもらう【事業承継】を検討してみましょう。
この記事では、事業承継の特徴、事業承継を支援する公的・民間のサービスの紹介とメリット・デメリット、事業承継支援を利用する場合の注意点等について解説します。
- 事業承継とは後継者問題を解決する方法の一つ
- 事業承継支援にはいくつか種類がある
- 公的な事業承継支援には費用が安いメリットがある
- 民間の事業承継支援は実績が豊富
- 事業承継支援を受けるにはいくつかの注意点がある
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目次
事業承継とは
こちらでは、後継者問題を解決する事業承継の方法と事業承継の手順などについて解説します。
- 事業承継とは
- 事業承継の背景と問題点
- 事業承継の方法と手順
事業承継とは
事業承継とは、会社経営権を後継者に引き継ぐことです。
そのため、単に経営者が交代する行為とは異なります。
上場企業ならば、社内やグループ会社の豊富な人材の中から、優秀な人を選定し容易に会社を交代できることでしょう。
事業承継で引き継ぐ要素は主に3つです。
- 経営権
- 株式など
- 知的資産
1.経営権
特に株式会社では、議決権のある株式の保有割合で行使できる権利が違ってきます。
現在の会社の方針のままで運営してもらいたいなら、基本的に全株式を後継者に引き継ぐことが理想です。
ただし、後継者は資質が乏しいと判断されたら、取引先も従業員も離れていってしまうことでしょう。
そのため、誰でも後継者になれるわけではありません。
2.株式など
前述したように株式会社では株式の保有割合で会社の方針が決められます。
その他、自社の所有する不動産・機械等の事業用資産、運転資金・許認可等も引き継ぐ要素に該当します。
3.知的資産
資産は目に見える物以外にも存在します。
それは、経営理念・培ったノウハウ・技術・取引先との太い人脈などの【知的資産】です。
こちらも確実に継承されるべき資産と言えます。
しかし、どんな会社でも円滑な後継者選定が行われるわけではありません。
事業承継の背景と問題点
上場企業や大企業ならば、あまり後継者には困らないことでしょう。
しかし、中小企業の経営者はこれらの企業と同じように安心していられません。
中小企業庁の発行している「中小企業白書」にて、経営者の年齢のピークは、1995年で47歳と若い方々も多かったのですが、現在は60代後半~70代と高年齢化が急速に進んでいます。
もちろん、ご自身が経営者である場合、子供が資質を持っていると認めたなら、自社の後継者として誰もが安心することでしょう。
しかし、どんなに資質が合っても、子供は後継者となるのを拒むこともあります。
そうれば、従業員から選びたいところですが、従業員も高齢化していたり、若くても実績がまだまだだったりと、「この人を後継者に!」という人材がいないかもしれません。
そんな時に、いきなり廃業を考えるのは早計です。
後継者がいないなら、他社にこれまで続けてきた事業を引き継いでもらう選択肢も検討するべきです。
中小企業の経営者の高齢化と人材不足が重なることで、事業の継承が難しくなっている。
事業承継の方法と手順
事業承継はまず、自社の現状を把握することからはじめましょう。
基本的な流れは次の通りです。
- 関係者へのヒアリングと自社の現状把握
- 引き継ぐ方法・後継者の確定
- 事業承継計画書の作成
- 具体的対策の実行
ステップ1|関係者へのヒアリングと自社の現状把握
自社の財務状況・人材等をあらためて把握します。
もちろん、経営者ご自身の資産等もチェックしましょう。
後継者候補がいればリストアップした上でヒアリングしておきます。
ステップ2|引き継ぐ方法・後継者の確定
ご自身の親族(資質の高い)の有無、社内の優秀な人材の有無で次のように後継者を選定します。
- 親族内承継:資質の高い親族がいる
- 親族外承継:資質の高い従業員がいる
- M&A(事業承継):上記2つの存在がおらず他社に事業を引き継ぐ
ステップ3|事業承継計画書の作成
中長期の経営計画に、事業承継の時期や具体的な対策を盛り込みます。
ステップ4|具体的対策の実行
事業承継計画のもと、各ケースに合ったプロセスで進めていきます。
- 親族内承継→事業承継計画の公表・整備→後継者教育→株式・財産の分配→個人保証・担保の処理
- 親族外承継→事業承継計画の公表・整備→後継者教育→株式・財産の分配→個人保証・担保の処理
- M&A(事業承継)→M&Aの実施を公表→仲介機関への相談→会社売却価格の算定→M&A開始→交渉契約成立
当然、この流れも法定されているわけではありません。
しかし、親族内承継・親族外承継の場合であっても、いきなり事業を引き継がせるのではなく、適切なプロセスを慎重に踏んで対応する必要があります。
円滑に事業承継を行えるよう、細心の注意を払って進めていきましょう。
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事業承継支援
こちらでは、事業承継支援の相談先や、支援の受け方・支援助成金制度について解説します。
- 事業承継支援の相談先
- 事業承継支援の受け方
- 事業承継支援助成金
事業承継支援の相談先
事業承継支援の相談先には、公的な事業承継支援と民間の事業承継支援の2つがありますが、いずれの場合も相談は無料です。
事業承継で大切なプロセスや、M&Aを実施する際の注意点など、わからない点があればどんどん聞いておきましょう。
また、公的な機関も民間会社も、100%別々に支援事業を行っているというわけでは無く、公的な事業承継支援機構から民間のM&A仲介業者を紹介してもらうことも可能です。
もちろん、いきなり民間のM&A仲介業者に相談しても構いません。
事業承継支援の相談先については後述します。
事業承継の相談先は、公的機関と民間会社の2つがあり、どちらも相談料は無料。
公的機関から民間会社の紹介もしてくれる。
事業承継支援の受け方
事業承継支援を受けるなら相談はもちろんですが、専門家(仲介会社)のアドバイスや、M&Aの譲受企業(買い手)との調整、クロージングまでのサポートと様々です。
相談までなら無料の場合が多いものの、専門家(仲介会社)をたててM&A(事業承継)を行う場合は、着手金や成功報酬等を支払う必要があるので、費用についてはしっかり確認をとっておきましょう。
また、公益的な法人の中には、事業承継を進める事業者に対して【事業承継支援助成金】で支援してくれる場合もあります。
支援の受け方は様々であり、公益法人の中には【事業承継支援助成金】で支援をしてくれる場合もある。
事業承継支援助成金
公益的な法人の中には、事業承継を進める事業者の支援のため、助成金制度を設けているところもあります。
こちらでは、「公益財団法人 東京都中小企業振興公社」の【事業承継支援助成金】を解説します。
助成対象事業
いずれか一つのタイプを選択します。
- Aタイプ(後継者未定):第三者への事業譲渡(M&A等)に向けた取組
- Bタイプ(後継者決定):後継者への事業承継(譲渡)に向けた取組
- Cタイプ(企業継続支援):令和2年度の企業継続支援を受けて実施する、事業承継・経営・改善などの取組
- Dタイプ(譲受支援):取引先の事業または株式の譲受に向けた取組
助成金額など
交付決定日(令和3年9月1日予定)~最長8ケ月間を助成対象期間とし、事業承継、経営改善に係る委託費として200万円(申請下限額20万円)を限度(助成率2/3以内)に受け取れます。
受付期間等(第1回目)
- 申請エントリー期間:令和3年6月8日(火)~令和3年7月16日(金)17時まで
- 申請書類の提出期限:令和3年7月27日(火)~令和3年7月30日(金)まで
詳細な助成金の給付条件についてはこちらを参照してください。
また、ご自身の地域でも同じような助成金制度が実施されている可能性があります。
事業所所在地にある商工会議所等で助成金制度を確認してみましょう。
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公的な事業承継支援
こちらでは、公的事業承継支援サービスについてとメリット・デメリットについて解説します。
公的事業承継支援サービス4選
こちらでは公的事業承継支援の相談や手引諸に関するサービスを紹介します。
- 事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター
- 後継者人材バンク
- よろず支援拠点
- 事業承継に関する手引書
事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター
こちらは「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」の事業承継・再生支援部が運営している公的相談窓口です。
- 相談窓口:全国47都道府県
- 支援センター:北海道・宮城・東京・静岡・愛知・大阪・福岡
こちらはでは、下記の4つの支援が利用できます。
- 第三者承継支援:後継者が不在の場合に相談・譲受企業の紹介・成約までサポート
- 親族内承継支援:親族や従業員へ円滑に承継する支援を行う
- 後継者人材バンク:創業を目指す起業家・後継者不在の経営者を引き合わせ事業引継ぎを支援
- 経営者保証解除の支援
日本全国に相談窓口が存在し、無料で相談が行えます。
案件にあわせたアプローチでサポートを行い、本センターに登録された民間M&A仲介業者や譲受企業(買い手)を紹介して、交渉の調整を行ってくれます。
後継者人材バンク
前述した事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センターは、いわば事業承継に関するトータル的なサポート・サービスでした。
その中でも【後継者人材バンク】は、創業を目指す人・後継者不在の中小企業とのマッチングに特化したサービスです。
後継者人材バンクの登録・相談は無料です。
後継者に悩む経営者の皆さんには、まさしく事業を承継してくれる方々が見つかるサービスです。
一方、起業家側にもメリットはあり、販売先・仕入先、店舗等の経営資源を引き継ぐので創業時の起業リスク等も低く抑えることができます。
双方、ウィンウィンの関係となるべく、後継者人材バンクが相談・引き合わせを行います。
【後継者人材バンク】は、登録・相談無料で、創業を目指す人と後継者不足の中小企業をマッチングするサービス。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、中小企業基盤整備機構が運営する、国が設置した無料の経営相談窓口です。
事業承継にかかわらず、経営上のあらゆる相談を何度でも無料で対応してくれます。
よろず支援拠点は47都道府県に設置されています。
また、ホームページ上で相談を受けるコーディネーターの経歴も開示されているので、初めての相談でも安心です。
様々な分野の専門家が在籍して、あらゆる角度から⼀歩踏み込んだアドバイスが期待できて、相談者の経営課題に合わせた専門家チームが課題解決を提案してくれます。
よろず支援拠点は全国47都道府県に設置され、あらゆる分野の専門家からアドバイスを受けることが出来る。
事業承継に関する手引書
売り手・買い手の相談やマッチングではありませんが、【事業承継ガイドライン】【農林農業経営の円滑な承継に向けて】という手引書も役に立ちます。
【事業承継ガイドライン】は、中小企業庁が公表している事業承継に関する手引書となり、事業承継についての知識を得る資料として有効です。
【農林農業経営の円滑な承継に向けて】は、農業経営者向け事業承継のノウハウを記載した資料となります。
ただし、いずれの手引書も「専門的な記載が良くわからない」「読むうちに疑問点が出てきた」という方々も多いはずです。
その場合、事業承継ガイドラインなら、前述した事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター等へ、農業経営者の事業承継なら各都道府県にある「農業経営相談所」へ相談してみましょう。
【事業承継ガイドライン】【農林農業経営の円滑な承継に向けて】と言う2つの手引き書があり、事象承継に関する知識やノウハウを得ることが出来る。
公的事業承継支援サービスのメリット
公的な事業承継支援サービスは、費用負担を抑えられる点が最大のメリットです。
前述した、事業承継相談窓口・事業引継ぎ支援センターや、よろず支援拠点は無料で何度も相談可能です。
また、後継者人材バンクへの登録も無料ですが、相談や登録後にM&Aを実施する際に専門家をたてるなら費用が発生することでしょう。
しかし、M&A候補者(買い手)とのマッチング等は無料で受けられますので、民間の事業承継支援サービスと比較しても費用が安くなる場合は多いです。
一方、民間の事業承継支援サービスであるM&A仲介業者では、事業承継が成立した場合のみ成功報酬を受け取るという業者もあります。
事業承継に関する相談や登録が基本的に無料と言う事で、費用を抑えられるのが大きなメリットと言える。
公的事業承継支援サービスのデメリット
費用が安く済む一方、あまり世間に公的な事業承継支援サービスの存在の知れ渡っていないケースが多いです。
大々的に宣伝している民間の仲介業者と比べ、本記事を読んで初めて公的なサービスを知った方々も多いことでしょう。
また、民間と違い他社との競争は無いので、対応のスピードがやや遅く感じられる、これまでの支援実績等で不安が残るという面も否定できません。
その他、民間の事業承継支援サービスでも、マッチングサイトの登録・相談料は無料でサービスしているところが多く、なかなか公的なサービスを活用する場面が無いというのもデメリットと言えます。
他社競合がないために、対応スピードが遅かったり実績面での不安がある。
民間事業者もマッチングサイトなどの登録・相談は無料としている所から、公的サービスを使う場面が少ない。
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民間の事業承継支援
こちらでは、民間事業承継支援サービスについてとメリット・デメリットについて解説します。
民間の事業承継支援サービス3選
こちらでは民間の事業承継支援サービスである、M&A仲介業者を紹介します。
M&A仲介業者とは、売り手・買い手をマッチングさせ、事業承継の相談~契約成立までサポートする業者です。
大概は「M&Aマッチングサイト」も運営しており、売り手・買い手が自由に交渉相手を選べます。
当事者だけで交渉するならサイト登録料も無料の場合が多いです。
当然、M&A仲介業者をたてて事業承継の交渉に臨むなら、いろいろな費用が必要となります。
事業承継におすすめのM&A仲介業者をピックアップしてみましょう。
- 株式会社中小企業M&Aサポート
- TRANBI
- M&A CAPITAL PARTNERS
株式会社中小企業M&Aサポート
出典:https://www.chusho-ma-support.com/
株式会社中小企業M&Aサポートは、中小企業の事業承継を得意とするM&A仲介業者です。
売り手・買い手と直接仲介、双方の利害を調整しつつ成約までサポートします。
中小企業で事業承継に関する交渉が未経験の方々には最適な仲介会社です。
事業承継を含めた成約実績は、8割近くまで達しており高い成約率を誇ります。
項目 | 成約実績 |
---|---|
2017年度/2018年11月末 | 78.3%達成 |
直近3カ年累計 | 80.74%達成 |
基本合意まで売り手は無料となります。
料金設定を見てみましょう。
(1)事前相談→基本合意時
項目 | 金額 |
---|---|
事前相談 | 双方無料 |
着手金 |
・売り手:無料 ・買い手:50万円 |
中間金(基本合意時) |
・売り手:100万円 ・買い手:50万円 |
(2)事業承継契約成立
金額 | 手数料(率) |
---|---|
1,000万円以下 | 150万円 |
3,000万円以下 | 250万円 |
6,000万円以下 | 350万円 |
1億円以下 | 500万円 |
1億円超~5億円以下の部分 | 5% |
5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
50億円超~の部分 | 2% |
TRANBI
出典:https://www.tranbi.com/
TRANBIは、「株式会社トランビ」が運営するマッチング・サービスです。
成約手数料0円という点が特徴的な仲介会社です。
事業承継に関しては、現在84件の公開案件を保有しています。
2021年6月時点の案件数を見てみましょう。
項目 | 案件数 |
---|---|
事業継承公開案件数 | 84件 |
全公開案件数 | 2,139件 |
非公開案件も多数揃えていますので、気になる方々はTRANBIへ問い合わせてみましょう。
売り手は基本的に無料でマッチング・サービスを利用できます。
登録料等をあまりかけたくない売り手には大助かりのシステムです。
(1)無料プラン会員
サービス内容は次の通りです。
売り手 | 買い手 |
---|---|
・M&A案件の掲載 ・買い手との交渉・成約 ・成約時の追加手数料無 |
・M&A案件の閲覧 ・売り手への交渉申込み ・買いニーズの登録 |
(2)プレミアムプラン(有料)
M&A交渉に臨む買い手は、3つのプランを利用できます。(ともに契約期間は6ヶ月)
全て成約手数料0円ですが、売却希望価格の上限が高くなるほど、月額料金は高くなります。
①ベーシック
売却希望価格500万円以内の案件のみ交渉可能です。
基本的に交渉は当事者で行います。
ベーシック | 金額・サービス |
---|---|
月額(税込) | 4,378円 |
付帯サービス | NDA情報漏洩保険 |
②ビジネス
売却希望価格3,000万円以内の案件のみ交渉可能です。
基本的に交渉は当事者で行います。
ビジネス | 金額・サービス |
---|---|
月額(税込) | 10,780円 |
付帯サービス |
・NDA情報漏洩保険 ・人材採用可能 |
③エンタープライズ
売却希望価格無制限交渉可能です。
M&A専門家等が交渉してくれるサービスもあります。
エンタープライズ | 金額・サービス |
---|---|
月額(税込) | 21,780円 |
付帯サービス |
・NDA情報漏洩保険 ・人材採用可能 ・M&A専門家等の代理買い交渉 |
M&A CAPITAL PARTNERS
出典:https://www.ma-cp.com/
M&A CAPITAL PARTNERSは、「M&Aキャピタルパートナーズ株式会社」が運営するマッチング・サービスです。
事業承継にも実績があり、当事者の相談~契約の成約までコンサルタントが一貫してサポートします。
2021年6月時点の案件数を見てみましょう。
項目 | 案件数 |
---|---|
事業継承公開案件数 | 3件 |
全公開案件数 | 122件 |
非公開案件も多数揃えていますので、気になる方々はM&A CAPITAL PARTNERSへ問い合わせてみましょう。
料金は基本合意に達すれば中間報酬(成功報酬の1割)を、契約成立で成功報酬(残り9割)を支払います。
報酬料率は次の通りです。(着手金・月額報酬無料)
株式価値 | 報酬料率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
その他の相談先
事業承継支援には、M&A仲介会社意外にも頼れる場所があります。
ここからは、金融機関や士業への相談について解説をしていきます。
金融機関
事業承継に関しての相談・マッチングは、大手または地方の金融機関でも対応しています。
大手金融機関ならば、M&Aの専門部署を設置しているものの、大手企業のアドバイザーを重視している傾向があります。
逆に地方の金融機関ならば、地元企業と太いパイプを持つ強みが活かされ、中小企業の方々の事業承継支援へ積極的に動いてくれることでしょう。
自社と同じ地元企業に事業承継したいなら、地方金融機関へ相談してみるのも良い方法です。
大手金融機関では、大企業のサポートがメインになる場合が多いが、地方銀行などは地元とのパイプが強いため、中小企業は地元の金融機関に相談するのも効果的と言える。
M&A専門家
事業承継の交渉へ臨む場合、頼りになるのは「弁護士」「会計士」「税理士」という法務・会計・税務のプロフェッショナルです。
いわゆる「士業」と呼ばれる専門家は、厳しい試験を経て資格を取得しているので、事業承継に大きな役割を担うはずです。
ただし、弁護士・会計士・税理士等の方々が、事業承継のサポート経験を必ず有しているとは限りません。
交渉全般の調整・進行は一般的に難しいと考えられます。
とはいえ、仲介業者の中には会計士・税理士の共同出資で創設された会社もあります。
弁護士等との連携に対応でき、事業承継に的確なアドバイスをしてくれる方々もいます。
まずは各サイトで後継者問題を扱っているか確認してみましょう。
弁護士・会計士・税理士などの士業は、専門知識が高いため力になってくれるが、事業承継のサポートに関する経験が少ない方も多い。
民間の事業承継支援サービスのメリット
民間の事業承継支援サービスでは、確かな実績に基づいたアドバイスや質の高いサポートを受けられる点が最大のメリットです。
顧問の公認会計士や税理士や弁護士は、事業承継がうまくいかないと自分たちの事業にも少なからず悪影響が出ます。
そのため、事業承継全般のサポートは難しいものの、当該士業の専門領域からしっかりとサポートしてくれるでしょう。
中でもM&A仲介業者は、他社と競って実績を培っています。
また、成果報酬型の料金体系になっている業者が多く、全力で買い手候補の企業を探し、事業承継の交渉を行ってくれます。
確かな実績に基づいた質の高いサポートが期待できる。
民間の事業承継支援サービスのデメリット
民間の事業承継支援サービスのデメリットとして、やはり費用はそれなりに高くなるという面があります。
公認会計士や税理士・弁護士等の場合は、数万円~数十万円の報酬が一般的です。
M&A仲介業者の場合は、たとえ成功報酬であっても、会社の評価額等に応じて金額が決まるため、予想外に高額となるケースもあります。
また、自社の利益を最大化するあまり、M&Aを成立させることだけを重視し、交渉当事者が煮え切らない状態で、強引に契約させようとするケースも否定できません。
公的サービスと比べると、費用が高くなる場合が多い。
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事業承継支援を受ける際の注意点
こちらでは、事業承継支援を受ける際の3つ注意点について解説します。
- 事業承継の目的をよく考える
- 自社の強みをジックリ考察
- 親族間のトラブル勃発?
事業承継の目的をよく考える
M&Aで事業承継を目指す場合、ご自身が経営してきた全店舗を譲り受けたい企業へ譲渡するかどうか、今一度よく考えてから決断しましょう。
ご自身が全店舗を譲渡する方針なら、M&A仲介業者や他の支援機構は、それを目標に動き出します。
しかし、地域密着で店舗運営をしてきて数店舗を展開している場合、事業承継したいからと言って、無理に全店舗を引き継いでもらう必要はありません。
1店舗であれば、たとえ自分が高齢でもやっていけると感じたら、残りの店舗は他社に譲り、その分の譲渡価格を得ても構いません。
あくまで自身のニーズに合ったM&Aを仲介業者と話し合い慎重に計画を進めていくべきです。
全事業を譲渡するのか、一部の事業を譲渡するのかを、しっかりと決めておく方が良い。
自社の強みをジックリ考察
M&Aは譲受企業(買い手)との交渉しつつ、契約へ結びつけていきます。
その際に、十分にストロングポイントをアピールできないと、M&A仲介業者等をたてても交渉が円滑に進まなくなることでしょう。
交渉前にまずM&A仲介業者等と自社の強みを良く分析することで、今まで気づいていなかった強みを発見できるかもしれません。
自社の強みなどをしっかりと把握しておくことが重要。
親族間のトラブル勃発?
M&A仲介業者等のような支援サービスを利用し、買い手との交渉も順調に進む中、「やっぱり私が継ぎたい!」と、ご親族が名乗りをあげるかもしれません。
その親族が、ご自身も内心継がせたかった人なら大喜びかもしれませんが、この事態は譲受を目指す買い手にとって、たまったものではありません。
M&A仲介業者も「今更破談にできない」と困惑してしまいます。
このようなことの無いよう、特にM&A交渉を進める前に親族や従業員等と後継問題について良く話し合っておきましょう。
M&Aの交渉を始める前に、親族間でも後継者問題の話をしておくことも重要となる。
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事業承継支援によくある質問
こちらでは、事業承継支援でよくある質問を2つ取り上げます。
M&A仲介会社の成功報酬の基準がいまいちわからない
成功報酬制をとる仲介業者は概ね「レーマン方式」の料率で計算します。
料率は下表の通りです。
算出基準 | 報酬料率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
しかし、問題なのは算出基準です。
この基準は次の3つに分かれます。
- 株価が算出基準:株式譲渡対価のみに一定の料率を乗じて計算
- 移動総資産が算出基準:株価+負債総額に一定の料率を乗じて計算
- 企業価値が算出基準:株価+ネット有利子負債に一定の料率を乗じて計算
算出基準は「事業承継の際は必ず〇〇〇を基準に算定しなければならない」と、厳密に法定されておらず自由に設定できます。
完全成功報酬制とはいえ、この算出基準によっては多額の報酬を支払う可能性もあります。
なお、株価のみ算出基準ならば最も費用負担は軽減されます。
完全成功報酬制をPRする仲介業者でも、その算出基準をしっかり確認後、依頼を行った方が良いでしょう。
算出基準によって、支払う報酬額が大きく変わる。
いったん休眠会社しても良い?
廃業・事業承継いずれの選択肢もとらず、「休眠会社」にする方法もあります。
休眠会社とは、会社として登記されているものの、長い間にわたり運営実態がない会社のことです。
休眠会社とするには事業運営を止める他、税務署、都道府県、市区町村に届出をしなければいけませんが、この届出は簡単で費用もかかりません。
廃業の場合は債務の返済や煩雑な手続き等を行う必要があるので、休眠会社にしている方が負担はかかりません。
最近では、後継者が誰もおらず会社を一応休眠させ、対応を練りたいというケースでの利用が目立ち始めています。
いったん休眠会社にしても、もちろん再開は可能ですし、M&Aで会社売却も可能です。
ただし、仲介業者の中には休眠会社のM&Aサポートを拒むところもあります。
そのため、休眠会社にしてM&Aを行いたい場合は、公的な支援機関や休眠会社のM&Aサポートにも応じてくれる仲介業者へまず相談してみましょう。
法人を解散するよりも休眠会社にしておくと、費用も掛からず休眠会社のまま売却も可能だが、M&Aのサポートを断る仲介業者もいることに注意。
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事業承継支援|まとめ
事業承継支援は、公的な機関も民間会社も多彩なサポートを提供してくれますので、いろいろな支援サポートを試してみても良いでしょう。
もちろん、各サポート・サービスには一長一短はあります。
しかし、公的機関・民間会社が連携して支援してくれる場も創出され、経営者問題に悩む中小企業には心強いサポート体制が整っています。
そのため、いきなり廃業は考えず、事業継承で自社を引き継いでもらう企業を冷静に探しましょう。
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